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消費税増税には反対

消費税増税には反対

日本は破綻するのか

 野田内閣においては、消費税の増税はもはや既定路線になっているような雰囲気があります。前原政務調査会長など、「先ず10%に上げ、その次は15%、更には20%位まで上げないと日本の財政はもたない」なんて、物騒なことも言い始めていますね。言うまでもないことですが、このような「もつ」とか「もたない」という議論は、国家財政との関連で語られています。

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 それでは、日本の財政がもつとかもたないという議論の根拠は何なのでしょうか。北海道の夕張市は、財政が破綻しました。ギリシャも破綻する、いや実質既に既に破綻していると言われています。嘗ては、ブラジルやロシアも破綻しました。しかし、これらの破綻している国に共通な要素とは何なのか。なぜ破綻したのでしょうか。
 それは、もう借入のための「借金手形」を発行しようとしても引き受けてくれるところが何処にもない、という状態になったから破綻したんですよね。つまり発行母体の信任が損なわれたためです。夕張市は、市債の発行権限はありますが、総務省の規制の枠内で発行権が認められているに過ぎません。ギリシャもユーロ加盟国共通のユーロ通貨を使っていますから、勝手に自国通貨を発行することはできません。菅前総理は、消費税を引き上げなければ、ギリシャの二の舞になるということも盛んに言っていました。しかし、これは子供でも分かるようなデタラメな発言です。

夕張とギリシャの共通点

 夕張市とギリシャに共通なことは何か。それは自分の判断で市債や国債を勝手に出すことができないということです。一方、日本国どうか。国は、国債をいくらでも発行することができます。国債は国民が買います。元々日本国債は、その大部分が国内で消化されてきました。外国人が買っていた割合は、僅か5%程度に過ぎません。ですから、今ここで20兆円や30兆円発行しても、少し時間をかければ、国内でいくらでも消化することは可能です。
 しかし、今は、東日本大震災という非常時です。時間をかけてゆっくりと消化している余裕はありません。即刻、国債を発行して、日銀が一括して全額引き受け、日銀の倉庫に保管しておけば済むことです。勿論、少しずつ売却していってもかまいませんが、売却しなくてもかまいません。国は、国債を発行するために、輪転機を回すだけです。もっとも、日銀は、必ず言い訳をします。日銀法によって国債の日銀引き受けは禁じられている、と。日銀法には、「特別の事由があるときは」引き受けることができる、ということも同時に書いてあるわけですから、そんなことは理由になりません。この度の東日本大震災とそれに続く津波・原発災害のような事由が特別な事由に当たらないというならば、一体どのような事由が特別な事由に該当するというのでしょうか。是非教えてもらいたいものです。

国債発行は借金を残すことか

 国債を大量発行することは、大きな借金を将来の子供達に残すことだ、というような議論もよくなされます。しかし、これは本当なのでしょうか。確かに家計というレベルで考えるならば、親が大きな借金を背負えば、子供や孫も苦しむという構図になるでしょう。そのように説明した方が、一般の人たちには分かりやすいはずです。しかし、そもそも国の財政と家計とは、同じレベルで議論できることなのでしょうか。私は、明らかに違うと思います。国の家計簿、すなわち財政は、基本的には企業の会計帳簿と同じ構造でできていると考えるべきなのです。つまり、国の財政は、会計の基本原則である「資本と資産と負債」というバランスシートで成り立っていると考えるべきです。
 バランスシートで考えれば、国債を発行し、日銀に一括引き受けさせれば、すぐにお金が入ってきますから現金という資産が増えます。同時に、借金(国債発行勘定)という負債も同額で増えます。バランスシートの数字というのは、一つの項目だけが増えるということはなく、必ず、他の項目にも影響を及ぼします。予算を使って道路を作れば資産勘定に計上されますし、公共事業費を支出することによって現金が減少しますから、資本勘定である現金が減少します。道路や河川といった公共物は、通常、売却することが出来ない資産ですが、公務員用の宿舎や公園などは、その気になればいつでも売却できます。公務員宿舎などは、民間に一括して売却して、今度はそれをそっくり宿舎として借り上げた方が安上がりになるでしょう。国から買って、国がまとめて借りてくれるんですから、買いたい人はいくらでもいます。国は借金を減らせるし、買主は、安定した借主がついてくれるんですから、お互いにハッピーです。

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 いずれにしろ、国債の発行は、孫子の代まで借金を残すことだ、という議論は間違っていると思います。むしろ、バランスシートの考え方によれば、借金の発生と同時に、孫子は、国に対して、同額の債権をもつことになるのです。つまり、お爺さん、お婆さんの代に国債を買っておいてくれたので、それを相続することにより、長年にわたって、国からお金を返してもらえるのです。国家が債務不履行(デフォルト)に陥るのは、外国から外国通貨建てで借金している場合に限られるのです。つまり、日本は、デフォルトにはなりようがないのですから、孫子は喜ぶ安定した財産ということもできるのです。

国債を買うのは金融機関

 もっとも、国債は国民が直接買うというより、ほとんど銀行や郵便局などの金融機関によって購入されていますので、一般に人には実感が薄いと思います。普通の人は、金融機関にお金を預け、そのお金を原資として金融機関が大量に国債を買っているわけです。金融機関は、景気が悪いせいもあり、国債よりも安全で利回りの良い投資先が見当たらないため、国債に集中投資しているわけです。日本の金融機関は、今、ほぼ慢性的に金余りの状態にあるんです。
もちろん、私は常に増税というものを否定するわけではありません。経済がインフレ状態になった時は、増税は有効です。消費意欲を削ぎますから当然ですよね。インフレというのは、お金の価値が下がるということを意味しますから、お金の価値が下がらないうちに早く使ってしまおう、という気持ちになります。しかし、デフレの時は逆です。デフレというのは、お金の価値が上がることを意味しますから、出来るだけお金を使わないで、我慢しようという気持ちになります。購買意欲が落ちるということです。しかも、今は長期デフレの真っ最中です。こんな時に増税などしたら、ますますデフレに拍車がかかり、益々景気は下降線をたどるばかりになってしまします。
 こんな小学生にでも分かるような幼稚な話を、なぜ国、政府は進めようとしているのでしょうか。一般に言われているのは、財務省の入れ知恵だと言われています。財務省という役所は、国の景気よりも、財政のバランス、健全性を重視する役所だと言われています。財務省は税金を配分する役所ですから、税収を増やすことが重要命題なんです。現在の安住財務大臣も、財務大臣になったとたん、増税こそお国の至上命題とばかりに増税必要論をぶっています。野田総理も、財務大臣になった時に洗脳されたんでしょう。菅総理も財務大臣を経験し、洗脳されていますから、消費増税の必要性を説いていましたね。現内閣を裏で操縦しているのは、財務省と言われていますから、増税路線が軌道修正されるのはかなり難しいかも知れません。

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税収増には二つの方法

 よく考えてみましょう。税収を上げる方法には大きく分けて二つの方法があります。一つは、今すぐ消費税などをアップすることです。もうひとつは、景気を良くして増収を図ることです。景気が良くなれば、企業の収入も増え、結果、個人の収入も増えますから、税収もアップします。どちらの方法でも増税効果が期待できるのに、なぜ増税することにばかり固執するのでしょうか。
 国民の立場に立てば、景気を良くして、知らず知らずに増税にも貢献していた、という方法の方がいいのに、なぜそのような政策が取られないのでしょうか。確かに、今のようなデフレで得をしている人もいます。年金暮らしのお年寄りにとって、今のデフレは決して損ではありません。年金の額は変わらないのに、お金の価値が上がっていくんですから、むしろ得と考えることもできます。お年寄りの多くは、インフレになるよりも、今のままデフレを継続してもらった方がいいと考えているのかもしれません。戦後のハイパーインフレの記憶が染みついているのかもしれません。しかし、戦後のハイパーインフレは、生産設備が何もない段階でのインフレですから、需給のバランスが取れなかったのです。今は、需要があればいくらでも生産は可能ですから、需給のバランスが取れますので、ハイパーインフレになどなるはずがありません。

デフレによる歪み

 今のようなデフレが長期化することによって、社会的には、大きな歪みが生じてしまいます。景気の長期停滞によって、企業収益は悪化し、そのためにサラリーマンの収入は減少せざるを得ません。雇用の場も減少し、大学生の就職先も先細る一方です。家庭も収入が増えないんですから、支出も減らそうとします。もちろん税収も増えません。まるで真綿で首を絞めるように、徐々に徐々に体力が失われていくような状態です。元気のいいのは年金暮らしの人ばかり、というのでは、社会に活気も生まれません。

日本は幸せな国か

 もちろん、どのような生活がいいのかというのは、一概には言えません。ブータン国のように、国民総福祉指標で換算すれば、景気は悪くても国民の心は豊かに暮らせると言うことも可能でしょう。私たちのように年金暮らしをしているような人間は、子供の頃の貧しい生活を知っていますから、今のように電気も、水道も、ガスも自由に使える生活は、本当に素晴らしいと思っています。指先一つで、お風呂も沸かせるし、洗濯もできる。トイレも水洗で清潔です。屋根から雨漏りがするわけでもない。腹が減れば近くにいくらでも飲食店があるし、コンビニもある。夜はスナックでカラオケも歌える。
 紙に火をつけ、カマドでご飯を炊いていたような時代は、既に遠い昔になってしまいました。ですから、ブータン国の国民総福祉指標を導入しても、日本は、きっと高順位に位置づけられるのではないでしょうか。唯一失われたものと言えば、お互いに助け合う心、温かい人の心なのかもしれません。でも、この度の東日本大震災で見られたように、助け合いの心は、まだまだ日本人の中から失われていなかったと思います。
 話が変な方向に向いてしまいましたが、結論として、私は、消費税アップによる増税ではなく、3%程度の緩やかなインフレを起こすことによって景気を喚起することこそ、今求められている最良の選択肢であると確信しています。

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