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AIJ投資顧問会社のお粗末

AIJ投資顧問会社のお粗末

 AIJ投資顧問が企業から運用を受託している年金の資金約2000億円が消失してしまったという。この投資顧問会社は、毎年、年率7%程度の高利回りで運用していたんだそうです。高利回りという触れ込みにつられて、84もの年金基金が資金を委託していたというのです。アドバンテストや安川電機、ライオン、富士電機、日本ユニシス、大日本印刷、コスモ石油など名だたる大企業も、今となっては怪しげなこのAIJに委託していたんだそうです。誰かがAIJというのは、「有り金が、いつの間にやら、蒸発する」の略ではないかと言っていましたが、全くにその通りだと思います。大手企業ならば、企業が補てんしてくれる可能性もあるでしょうが、中小のタクシー業界のように、資金力のない業界の場合には、そのような方途もないでしょう。

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 委託していた企業には、気の毒ですが、身から出た錆と言うほかありません。今回の事件では、次の二つの問題点を指摘しておきたいと思います。

 一つは、このような高いパフォーマンスが可能であると信じた委託企業の担当者の責任についてです。億円又は数十億円単位の資金を運用するのに、高利回りで運用されているという実績、しかもそれは営業マンの虚言にすぎない言説を信じて委託するその安易さはとても信じがたいのす。過去10年をとってみても、コンマ以下の利率しか得られない現実は、その辺の中学生でも知っているレベルの知識です。そういう状況の中で、「毎年7%もの利益を確保している」と言われたら、眉に何度も唾をすりつけ、疑ってみるというのが常識ではないでしょうか。少なくとも、そのカラクリをじっくりと見極めようとするはずです。しかもタックスヘイブンとしてつとに有名なケイマン諸島経由で運用が行われていたということは、AIJのパンフレットにも明記されていた事実です。オレオレ詐欺に引っ掛かるお爺さんお婆さんならいざ知らず、れっきとした企業の運用担当者が、揃いも揃って引っ掛かるというのは、集団催眠にかかったとしか言いようがありません。運用責任者として、一体どこに責任感があるのでしょうか。
 二つ目は、このような投資顧問会社を許可制から登録制にしたことにちてです。小泉政権の時代、「民間でできることは民間に任せる」という合言葉のもとに、多くの業務が公共から民間に下ろされました。その流れ自体は、決して間違っていないと思います。しかし、民

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間に任せるということは、責任も任せるということと同義です。つまり、何か問題が生じた時でも、決して「役所が悪い」とは言わないということです。「税金で補てんしろ」だのと、泣き言を言わないということです。過去に、民間に任せ過ぎて問題が生じた事件もありました。建築設計事務所の偽装工作が行われた、あの姉羽事件です。あれも、行政が行っていた建築設計の技術的審査を、民間に下ろした結果生じた事件でした。公共の業務を過度に民間に下ろし過ぎ、弊害を生じた一例です。

 確かに、投資顧問業法の改正で、2007年に認可制が登録制に変わっています。金融自由化の流れに沿った改革でした。では、今回の事件も、投資顧問会社に対する規制緩和が行く過ぎたケースなのでしょうか。私は、そうは思いません。億単位の資金の運用は、本来、運用者自身が自由に判断すべきもので、行政が関与すべき問題ではありません。高齢者がだまされるのとはわけが違います。
 ただ、行政としては、今後、このようないかがわしい投資顧問会社が跋扈しないように、毎年の運用実績の内訳を報告させるほか、決算書については、会計事務所による厳密な監査を義務付ける程度の監視は必要だと思います。

【追記】
 この記事を書いた後で、旧社保庁OBが深く関与していたことが判明しました。中小企業などが業種や地域単位で作っている厚生年金基金が、その運用を旧社保庁OBに任せていたんだそうです。社保庁OBの中の仕切り役的な立場の人間が、AIJと組んで年2回ほど資産運用セミナーを開催し、その中で各基金に天下ったOBに対してAIJを推奨していたというのが実態のようです。

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 それにしても、役人のOBを有難がって受け入れる体質、そしてそういう人間を信じる体質、なかなか治らないものなんですね~。社保庁OBは、年金のプロではあっても、資産運用のプロでないことくらい、誰が考えても分かることです。そういう彼らに任せてしまうその体質、構造にこそ問題の本質があるのではないでしょうか。
 自ら運用するノウハウを持たないのであれば、一切上乗せ年金などに手を出さないか、又は、401Kの思想通り、資産運用はすべて個々人の責任と運用に任せる、という原点に戻るべきだと思います。

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