さっぱり理解できない放射線報道
さっぱり理解できない放射線報道
あなたは理解していますか?
福島原発報道に関する情報は、あふれるほどあります。しかし、あなたは放射線量について、明確な判断の基準をもっていますか?マスコミでは、シーベルトやマイクロシーベルト、ベクレルなど、いくつかの単位がごちゃ混ぜに出てきますが、それらの数値を聞いて、高いのか低いのか、危険なのか危険でないのか、すぐに理解できますか?実は私もほとんど理解できませんでした。
なぜ理解できないかったかというと、どのような数値であれば安全なのかという基本となる数値が全く分からなかったからです。事故当時の枝野官房長官は、原発周辺でさえ「ただちに人体に影響を及ぼすものではない」なんて言っていた位ですから、何を信じたらよいのか全く分かりませんでした。分からないから、ホットスポットの報道を見ても、どの程度高いのか、どの程度危険なのか、これまた全く理解できないということになります。
「ホットスポットという位だから、多分高いんだろう」。その程度の認識でした。今、がれきの引き受けを拒んでいる住民たちも、何らの明確な指標がないために、必要以上に神経質になっているのではないでしょうか。
まず基本数値を押さえましょう
先ず、理解の出発点を明確にするため、次の数値をしっかり理解する必要があります。
国際的に合意されている安全な被曝量=日本でも法律できちんと定められている被曝量=それは、1ミリシーベルト(年間当たり)です。
ここをきっちり理解しておかないと、何が何だか分からなくなってしまいます。
【日本の法律は、法律書の出版で有名な有斐閣が発行している2分冊の六法全書をすべて読んでも1ミリシーベルトという数字に到達できません。出発点は、「放射性同位元素等による放射性障害の防止に関する法律」ですが、最後の出口は、文部科学大臣の定めですから、六法全書で法的根拠を調べるのは時間の無駄というものです。国民に分かりにくくするのが目的としか思えません。】
1日に換算すると
マスコミでよく使われるマイクロシーベルトという単位と、この1ミリシーベルトとの関係をどのように理解すればいいのでしょうか。1ミリシーベルトは年間の単位ですから、1日単位に換算するならば365日で割る必要があります。
1MS(ミリシーベルト)÷365日≒0.0027 つまり、1日当たり2.7マイクロシーベルトということになります。
でも、マスコミ(例えば読売新聞)などは、「毎時○○マイクロシーベルト」という単位でで表記していますから、この2.7を更に24時間で割らなければ正確な判断ができないことになります。
2.7マイクロシーベルト÷24時間≒0.112ですから、だいたい0.11マイクロシーベルト以下であれば国の定めた基準値を下回っているということになります。
この0.11マイクロシーベルト/毎時という数字をしっかり頭に叩き込みましょう。
マスコミ報道の数値で検証
この0.11を基準にして、新聞に載っている数字を判断して下さい。因みに、3月7日付読売新聞36面に「6日の放射線量」という数値が地図上に表示されています(上の写真参照)。これを整理すると、下表のようになります。表中の○×は0.11を上回っているものを×、下回っているものを○にしています。
公表されている数値を前提とする限り、関東地方はすべて基準値以下、東北地方も福島を除いてすべて基準値以下ということになります。
3月6日の放射線量(単位:マイクロシーベルト/毎時)
都県名 | 市町村名 | 放射線量 | 0.11以上か否か |
---|---|---|---|
青森県 | 青森市 | 0.012 | ○ |
秋田県 | 秋田市 | 0.036 | ○ |
山形県 | 山形市 | 0.036 | ○ |
新潟県 | 新潟市 | 0.061 | ○ |
岩手県 | 盛岡市 | 0.019 | ○ |
宮城県 | 仙台市 | 0.060 | ○ |
福島県 | 福島市 | 0.49 | × |
(30km以内) | 飯館村 | 0.52 | × |
同 | 南相馬市 | 0.36 | × |
同 | 浪江町 | 3.38 | × |
同 | いわき市 | 0.18 | × |
同 | 郡山市 | 0.60 | × |
同 | 会津若松市 | 0.12 | × |
茨城県 | 水戸市 | 0.081 | ○ |
栃木県 | 宇都宮市 | 0.052 | ○ |
群馬県 | 前橋市 | 0.031 | ○ |
埼玉県 | さいたま市 | 0.052 | ○ |
東京都 | 新宿区 | 0.054 | ○ |
千葉県 | 市原市 | 0.039 | ○ |
神奈川県 | 茅ヶ崎市 | 0.049 | ○ |
山梨県 | 甲府市 | 0.051 | ○ |
静岡県 | 静岡市 | 0.041 | ○ |
福島原発周辺は、さすがに数値が高く、表示されている地域はすべて国の基準を上回っています。この数値を前提にするならば、浪江町の3.38マイクロシーベルト毎時という数値は、余りにも高すぎます。こういう地域の場合は、国としても住民に変な幻想を抱かせないように、「村に帰るのは30年以上無理」とはっきり宣言すべきだと思います。飯館村の0.52もとても高いですね。お年寄りはともかくとしても、子供はとても住めないのではないでないでしょうか。こういうところも、「帰るのは無理」と言ってあげた方がむしろ親切というものではないでしょうか。
結 論
次の表を切り抜いて見やすいところに貼り付けておき、放射能の数値に関するニュースがあった時に見る習慣をつけておけば、自分なりにかなり正確に判断ができると思います。
国が法律で定めている安全な被曝量(=国際的合意)
年間当たり | 1時間当たり |
---|---|
1ミリシーベルト | 0.11マイクロシーベルト |
とにかくマスコミは、国が定めた「年間1ミリシーベルト」という基本となる数値を示さず、やたらにミリシーベルトやらマイクロシーベルト、○○ベクレルといった数値のみを報道するので、視聴者は何が何やら分からなくなっているのです。これに対しては、国民の方でもきちんと自衛する必要があります。
【放射能は正しく理解し、正しく恐れる】これが基本です。