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消費増税の本質は、財務省の省益のため

消費増税の本質は、財務省の省益のため

増収にならないのは百も承知

 野田総理は、確信犯のように消費税増税を唱え続けています。これほど一途に消費税増税に拘る理由は何でしょうか。増税をすれば本当に税収は増えるのでしょうか。これに対する答えは、過去の記録から既に結論が出ています。決して増収にはなっていません。それどころか逆に、税収は、明らかに下がっています。下の図は、財務省の公表しているデータをそのまま転載したものです。
               税収の推移

画像の説明

 消費税が実際に導入されたのは、竹下内閣の時、1990年(平成3年)です。また、消費税率が3%から5%にアップしたのは、1997年(平成9年)橋本内閣の時です。消費税を導入し、あるいは税率をアップしたら税収が上がるという根拠がないことがこのグラフから一目瞭然、読み取ることができます。それどころか、消費税を導入した途端、税収は、つるべ落としのように右肩下がりになっているのがはっきりと読み取れます。
 最初に消費税が導入されたのは平成3年。以後3年間、税収は減少する一方です。そして、平成6年をボトムに次第に税収は回復基調に戻りますが、消費税導入後6年経過した時点でもやっと88%のレベルまで税収が回復したに過ぎません。ところが、税収が元の水準にまで回復していない段階で、平成9年、橋本内閣において、消費税率を3%から5%にアップ下のです。その結果、またしても税収は右肩下がり、6年間下降線をたどります。そして、平成15年をボトムに再度、税収が回復基調に乗りますが、今度は、平成19年、アメリカのサブプライムローン破綻の直撃を受け、またもや経済は減速し、税収も落ち込みます。
 グラフをよく見ていただきたいのは、消費税を上げた平成9年からサブプライムローン破たんまでの10年間、税収は、元の水準に回復していないということです。このように、消費税の導入、税率アップは、経済に及ぼすマイナスの影響が極めて大きく、ボディブローのように長期に亘って影響を及ぼし続けるということです。
 そして、現在は、税収は約42兆円の水準で低迷しています。このようにして、日本の経済は、過去20年の長期に亘って、デフレの状態が続いているわけです。国民の生活の基本となる仕事、職場は失われ、収入も減少し、家計の貯蓄も年々減少し、年金も毎年目減りする一方です。生活保護世帯が急増しているのもむべなるかなです。

消費税の基本理念は正しい

 誤解してほしくないのですが、私は、消費税の基本的な理念は決して間違っていないと思っています。税金は、憲法30条で定める通り、国民が等しく負担すべきものです。しかしながら、実際の税金の徴収は、「クロヨン」あるいは「トーゴーサンピン」とも言われるように、税の補足が十分でないため、サラリーマンと自営業者、それに農林水産業に従事する者の間に、課税の不公平があると言われています。これらの課税の不公平を是正するためには、直間比率、すなわち直接税と間接税の比率を是正するというのは、必要な政策です。
 消費税は、すべての国民に平等に課税される仕組みですから、むしろ税の負担の公平という観点から、サラリーマンなどにとっては歓迎すべき制度であるということができます。暴力団組織では、組の収入を申告しなくても、税務署員が税金の取り立てに行くこともなかなか難しいでしょう。宗教団体であれば、お賽銭やお布施などは非課税扱いでしょう。これらの税金を払っていない人たちに対しても等しく消費税はかかってきますから、課税の不公平感を緩和する意味でも有効なのです。
 このように消費税の理念は間違っていませんが、きちんとインボイス制度を導入したり、国民総背番号制(民主党のマイナンバー制度)を導入するなど、課税の漏れがないようにする施策を併せて導入することが必要です。「自分の財産を公に知られたくない」などという我儘が許される時代環境ではないのです。そのような手当てもすることなしに、消費税の税率アップだけを図ろうとするから、逆に、税収減という皮肉な結果になってしまうのです。

デフレ脱却こそ国民の願い

 今、国の政策として求められるのは、このような長期にわたるデフレからの脱却、すなわち、新たな職場を作り、収入を増やし、年金や医療の後退を阻止する政策です。うつむき加減で歩いている国民の意識を、明るく前向きになれる施策、上向きに転換させることなのです。
 そのために一番有効な施策は、今の円高基調を円安方向に誘導すること、そのためには、円の大量発行によって相対的に円安傾向に誘導することが最も効果があると考えていますが、余りに文章が長くなってしまうので他日に譲ることとし、今、ここではその問題には言及しないことにします。

消費増税の真の狙いは「軽減税率の導入」

 ここでは、なぜ野田総理が消費税増税に拘っているのか、その理由について言及してみたいのです。私は、その理由を次のように分析しています。
 歴代、大蔵大臣、財務大臣を経験した政治家は、ものの見事に大蔵省親派となっています。大蔵省、財務省の権限の巨大さに圧倒され、親派に取り込まれてしまうのかもしれません。野田総理、菅元総理、前原政調会長、そして安住現財務大臣、すべて財務省親派と断言してもよいでしょう。財務省の役人の懐柔策、手練手管は並みのものではないのでしょう。財務省を後ろ盾にすれば、総理の道も見えてくるし、敵に回せば総理の道は閉ざされる。このような政治力学から、政治家は財務省親派として、財務省の振り付け通りに動くという構造が出来上がってくるのでしょう。

 ならば、なぜ財務省は税収が上がるわけでもなく、しかも経済の足を引っ張ることになる消費税増税にこだわり続けるのでしょうか。彼らだって、消費税率をアップしても税収が増えないことくらい、百も承知のはずです。彼ら財務省当局の真の狙いは、決して、税収増ではないのです。彼らが真に狙っているのは、消費税率のアップに伴う痛みを和らげるための「軽減税率の導入」にこそあるのです。
 消費税率を上げれば零細な消費者は、課税による生活の負担感が増します。このため、「米や野菜」などの生活必需品の税率を軽減して欲しい、と必ず要望し、マスコミも強くそれを支持します。味噌や醤油の業界も、消費者と一体となって、税率の軽減を陳情することになるでしょう。味噌や醤油が軽減されるなら「肉や魚」も軽減して欲しい。「果物や冷凍食品」だって軽減して欲しい、と要望はエスカレートすることになるでしょう。その要望は、生産者、消費者、業界がこぞって財務省に陳情することになります。例えば、納豆業界なら地元の有力議員を仕立て、「納豆の消費減少を阻止するために」と言って、霞が関詣でをすることになります。
 その時財務省は、ニンマリとほほ笑み、鷹揚に「分かりました。要望をお聞きいたしましょう。ただし、とりあえず5年間の暫定措置として認めましょう。」とか、注文をつけることになるでしょう。そして、5年後は、再度、財務省詣でが必要になるのです。その後、納豆業界団体の専務理事くらいのポストは、業界としても受け入れざるを得ないということになるでしょう。もちろん、年収保障・お車付きです。つまり、財務省の本音は、国家の税収が増えるかどうかとは関係がないのです。「財務省の権限がどれほど拡大できるか」その一点にこそ彼らの狙いがあるのですから。

租税特別措置は蜜の味

 このような軽減税率の適用なんてそれほどの権限拡大にならない、と皆さんはお思いかもしれませんが、とんでもありません。税金の減免、つまり税金を負けてやるという行為は、絶大な権限なんです。「金の切れ目が縁の切れ目」という諺がある位、お金の威力はすごいんです。
 因みに租税特別措置法という法律をご存知でしょうか。この法律は、一言でいえば、「本来納めなければならない税金を、この法律によって、一定の期間、特別にまけてあげます」という法律です。税金の種類は、所得税、法人税、印紙税、不動産取得税、相続税等々、課税の根拠となるあらゆる国内法に適用されるものです。税金が免除されたり、軽減されたり、還付されたりするというわけですから、個人にとっても特定の業界の人にとっても死活問題なのです。いきおい、何とか税の減免を受けたいと陳情合戦を繰り広げることになるわけです。
 今度新たに消費税の軽減について、減免措置を講じるということになれば、より一層、財務省の権限は増大します。財務省の狙いは正にその一点にあるのです。そのうえ、一般個人はもちろん、政治家でさえ、租税特別措置法なんて面倒な法律の条項には関心がありません。一般の人は、条文を読んだだけで目眩がします。因みにインターネットで「租税特別措置法」と入力し検索して下さい。そして、どこかの条文を1条だけでもいいから真面目に読んでみてください。きっと、「ウーム」と唸り声を上げるか「なんじゃこりゃ」と吐き捨て、二度とこのWEBには来たくないと思うはずです。前述したとおり、財務省は、この税の減免措置の拡大こそ、わが省の権限拡大になると確信しているはずです。法案成立の暁には、勝栄二郎事務次官は、めでたく勇退し、財務省の権限を拡大した大物次官として省内では高く評価され、将来は日銀総裁か東証理事長というコースにのることでしょう。
 多分、野田総理は、このような役人の深慮遠謀にまでは気づいておらず、財務省幹部から「政権が安定している今こそ、財政の再建と社会保障の一体改革が必要です。これを成し遂げた野田総理は歴史に名を残すことになるでしょう。」などと吹き込まれ、その尻馬に乗って、旗振りをしている、これが今の政治の実態だと断言してよいでしょう。(H24・7・30記)

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