時事寸評 書評コーナー

welcome to shimada's homepage

中国主導のAIIBに参加してはいけない

中国主導のAIIBに参加してはいけない

中国は日本の参加を期待している

 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)。これへの参加の是非を巡って、国内世論が割れているようです。イギリスやドイツ、フランスなど、先進7カ国の国々も続々と参加表明をしています。その勢いを借りて、中国は、「3月中に参加申し込みをすれば、創設国として扱う」なんて、上から目線でものを言っていました。期限である3月末を過ぎても、中国は、日本の参加を期待して、待ち続けています。

画像の説明

 中国がアメリカや日本の参加を期待している理由は何か。それは、設立したAIIBという投資銀行の格付けが、いわゆるトリプルAを得られないと見られるからです。なぜならば、国際的な貿易決済は、ドル、円、ポンド、そしてユーロ、この4つ(スイス・フランを加えることも)によってなされているからです。アメリカと日本、それに組織としてのユーロが参加していないAIIBの発行する債券は、格付けでトリプルAを獲得できる可能性は極めて低いとされています。シングルA位は確保できるかもしれませんが、それでも日本やアメリカが主導するアジア開発銀行の格付け、すなわちトリプルAには及びません。格付けが低いということは、債券発行に際して、金利が高いということを意味します。金利が高いか低いかは、巨額のインフラ投資を行う際に、大きな足かせになります。我々が住宅を建てる時の金利負担と同じです。
 日本やアメリカが参加してくれれば、最終的に日本が負担することになると見込まれる3,600億円(総額の14.8%に相当)という巨額の資金が加わり、一気に資金量が拡大します。その上、国際間の貿易決済が可能な円が加わることにより、トリプルAの格付けも得られます。「日本よ、おいでおいで」、というわけです。
 先日、インドネシアで開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)において、習近平と安倍首相の会談が実現したのも、中国がいかに日本の参加を心待ちにしているかの表れです。2014年に北京で開催されたときの会談では、終始仏頂面をしていたのとは正反対です。これは何を意味しているのでしょうか。

中国がすり寄る理由

 中国は、今、国内的に大きな問題を抱えています。社会主義国家でありながら国民の貧富の差は拡大する一方です。嘗て、鄧小平は「先に富める者から富め」と言いましたが、これは、富者が増えればその富が次第に国民各層に広がっていく、ということが前提でした。ところが、富が広がっていくどころか、国有企業の経営者や国と地方政府の役人ばかりが豊かになり、市民各層に富が拡大することはありませんでした。それどころか、「裸官」と言われるように、賄賂で肥え太った官僚達は、溜め込んだお金を親族一同とともに、海外へ逃がすことばかり考えています。

画像の説明

 外国資本で設立された企業でも、賃金の引き上げを求める労働者の圧力が強く、既に沿海部では賃金は大幅に上昇しました。そのこと自体は市民の収入を向上させ、購買力の増大につながるという一定の効果をもたらしましたが、他方で、安い労働力で、競争力のある生産物を生みだすというメリットはなくなりました。新興国のジレンマというやつです。
 その結果、外国資本は、より労賃の低いタイやベトナム、バングラディシュなどに生産拠点を移すようになりました。日本企業も、反日暴動を機に、中国から撤退する企業が後を絶ちません。10%前後の高い成長を誇っていた経済も、7%を切る水準まで低下せざるを得ないところまで落ち込みつつあります。地方政府や民間企業によって、不要不急の投資用マンションなどが各地に建てられました。これらの多くは売れ残り、ゴーストタウン化しつつあります。これらは鬼城と呼ばれ、中国全土で200以上もの大規模鬼城が放置されていると言われています。
 その他、格差を助長する原因となっている戸籍制度も、抜本的な対策を打てない状況にあります。中国でも、少子高齢化が日本以上の猛スピードで進みつつあります。このため、一人っ子政策を見直しましたが、特権階級や富裕層以外、2人目を産もうとはしません。子供の進学競争の激烈さと高額な教育投資の負担、更にはせっかく勝ち抜いて大学を卒業しても、特権階級とのコネを持たない者には、就職の機会すらないという現実を、骨身にしみて分かっているからです。

画像の説明

 また、全国に蔓延する環境問題の悪化や食物の品質の劣悪さは、既にテレビ報道でもおなじみの通りです。日本のような民主主義国家であれば、選挙を通じて、これらの悪弊を打破していくことができます。しかし、国民の生活よりも、党の存立の方が優先する独裁国家では、適切な是正手段がありません。国民の健康や福祉の向上なんて概念が、国や地方政府の役人、それに企業経営者には端からないからです。要するに、中国経済は完全に破綻しつつあり、人心も膿んでいるのです。

対中投資

 当然、国民の不満は増大し、各地の暴動や騒乱が頻発しています。発生件数は2011年には年間20万件にのぼり、この10年で約4倍になっているとされています。実際はそれ以上、年間30万件以上起こっていると言う人もいます。あげくその数が増えすぎたため、党はその数字すら公表しなくなってしまいました。「都合の悪いことは隠す」。これが独裁政権の統治ルールだからです。
 国民の不満の目を削ぐため、「腐敗一掃」を掲げ、元重慶市共産党委員会書記の薄熙来や胡錦濤政権時代に最高指導部の党政治局常務委員を務めた周永康など、共産党幹部や地方の幹部を次々に逮捕したりしました。
 しかし、そんな小手先のことで、経済が浮揚することは絶対にありません。逆に、綱紀粛正は、消費に冷水をかけるのと同じで、経済は益々縮小していきます。

AIIBの本当の狙いは

 AIIBの本当の狙いは何か。目的は2つです。一つ目は、高度成長期に作られた過剰な製造設備や資金の行き場をAIIBをテコにして開拓するということです。具体的に言うならば、高速道路や港湾施設、更には、日本から盗み取った新幹線技術と原発技術を独自技術と称して、売り込むことです。
 もう一つは、インフラ建設を通じて、アジアへの影響力・支配力をより一層拡大することです。あわよくば完成した高速道路や港湾の一部を軍事施設として転用できるようにすることです。
 要するに、これらの施設建設を通じて、中国の景気と雇用の悪化を食い止め、アジア支配をより強固なものにする、というところに最終的な狙いがあるのです。
 

絶対に参加してはならない

 中国が安倍首相との会談を行い、表情も前回よりもにこやかだったのは、このような事情が背景にあるからです。
 しかもです。この組織。その本部は北京に置かれる見込みです。総裁も中国人の金立群という人物が予定されています。彼は、「AIIBは銀行であり、政治的な機関でもなければ政治同盟でもない。不透明なやり方で運営するのは不可能だ」なんて述べていますが、とんでもありません。

画像の説明

 それならば、今すぐに組織の透明性と採択案件の決定方法を明確に示すべきです。いつになっても抽象的な表現しかしないのはなぜか。その理由ははっきりしています。最終的には、中国政府によって任命された総裁が投資案件を決定したいと考えているからです。
 敢えて中国政府と書きましたが、中国においては、政府よりも中国共産党が上です。中国政府は、中国共産党の支配下にありますから、党の言うことを聞かざるを得ません。
 日本がいくら組織の透明性を確保せよとか、投資案件の決定システムがどのようになるのか、と質しても明確に答えないのは当然です。「先ずは中に入ってからみんなで議論して決めよう」なんて、とんでもありません。中に入って、お金を出してしまったら、その時点ですべて終わり、決着がついてしまいます。

すべて政治的に決めるのが中国式

 中国は何事によらず、すべて政治的に物事を決めてきました。しかも、権力的・高圧的に、です。新疆ウイグル自治区やチベット自治区で見られる権力的・強権的支配の実態は、すでに広く知られている通りです。天安門事件に見られるように、国内での人民抑圧の実態もすべて闇に葬ります。一国二制度なんて言っていた香港支配における二枚舌。言うこととやることは、完全に180度異なるのです。これがこれまでの実績です。

画像の説明

 このような共産主義国家は、その時その時の政治情勢や社会情勢で、たちまち方針が変わりますから、北朝鮮や韓国、ロシアに対する姿勢も変幻自在に変わります。拉致問題を抱える日本政府の方針に反して、北朝鮮に対してインフラ投資を行う、なんてことは十分に想定できることです。北朝鮮の羅都(ラジン)や清津(チョンジン)辺りに、港湾建設と称して、軍港を作りかねないのが中国という国なのです。その目と鼻の先にあるのは日本です。
 また、ありもしない従軍慰安婦問題を言い続ける韓国に対して、インフラ投資を行う、なんてことも想定の範囲でしょう。台湾に対しても、巨額資金をちらつかせて、懐柔するなんてお手のものです。
 気がついたときには、インド洋や南シナ海のあちこちにAIIBの支援を受けた中国の軍港が出現していた、なんてことになりかねないのです。
 中国という国家の成り立ち、これまでの立ち居振る舞いをみれば、AIIBの将来は、容易に見通せるのです。国民の生活を犠牲にしながら、軍備の拡張に邁進してきた強権的拡張主義国家。その中国という国家をあなたは信用できるんですか、ということが日本国民に問われているのです。

日本は何をなすべきか

 それならば、今、日本は何をなすべきなのでしょうか。結論から言えば、①AIIBに関しては傍観を決め込むこと、他方では、② アジア開発銀行(ADB)の総裁を擁する国として、融資決定までの期間の短縮策を検討するなど、実務面での改善策を講ずることでしょう。

画像の説明

(1)AIIBの発足後5年程度、じっくりと観察していれば、すぐに実態が分かります。いかに中国の意のままに運営されているか、が透けて見えるはずです。公平・中立、参加国の意向を尊重しつつ運営がなされていたならば、その時に参加表明をしても何ら遅くはないのです。でも、すぐに「中国共産党の意のままに」運営されている、という実態が見えてくるはずです。
(2)日本は、これまで一貫してアジア開発銀行の中心メンバーとして活動してきました。総資本の15.6%、金額にして約254億ドルを拠出しているのです。67カ国・地域が加盟する堂々たる国際的な機関です。この機関の総裁は常に日本人が務めてきました。投資案件の審査方法も極めて民主的で、透明性の高いものです。
 ただ、それが故に、投資案件を決定するまでの手続きや期間が長すぎ、使いにくい、という批判が一部にあったことも事実です。
 日本としては、これらの批判に応えられるよう、審査期間の短縮を図るなど、実務的な対応を重ねることが求められるのではないでしょうか。

a:1986 t:1 y:0

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional