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日本に再び高度成長の時代がやって来ます

日本に再び高度成長の時代がやって来ます

人口は減っている

 日本は、今後、少子高齢化が益々進行し、そのためこれからの日本は衰退するばかりである、と思っている人が多いのではないでしょうか。マスコミの論調はそのような方向で語られているものがほとんどだからです。確かに、人口の推移をみると、この10年間、年平均で51万人(平成25年は21万7千人)が減少しています。少子化と高齢者の長寿化が同時進行していますから、人口に占める高齢者の割合は益々増えて行きます。高齢者は、いわゆる生産年齢人口に含まれません。よって、日本全体でみれば、活力が失われ経済は衰退していく、と一般的に考えられているわけです。

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 しかしながら、ここで発想を変えて考えてみましょう。赤ん坊から老人まですべてを含めた日本の総人口は、平成25年現在で約1億2,700万人です。これらの人達は、毎日食事をし、テレビを見、レジャーを楽しむなどさまざまな消費活動を行っています。すべての国民にとって、衣食住は必要不可欠のものだからです。つまり、人は生きている限り、すべて消費者となります。この消費者の数が減るということは、全体の消費量も減少する、ということを意味します。

人口減と生産年齢人口減との落差

 他方、これらの消費者に必要な物やサービスを供給するのは誰かと考えてみます。一応、ここでは海外からの供給はないという前提で考えます。供給側は、15歳から64歳までのいわゆる生産年齢人口の人達です。少子高齢化の時代には、これらの生産年齢の人達も同時に減少していくのです。

 問題は、「減少スピードの差!」です。総務省統計局が公表した平成26年11月1日現在の確定値によれば、総人口は1億2,708万2千人で、前年同月に比べ21万2千人減少したとのことです。他方、15歳から64歳までの生産年齢人口は、7,776万5千人で、前年同期に比べて116万3千人減少したとのことです。
 つまり、この時点で、総人口の落ち込みよりも、生産年齢人口の落ち込みの方が5倍以上も大きいということが分かります。

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 このような傾向が今後どのように進行していくのかは、移民の促進など、さまざまな政策の実行による変動要因があるので、確定的なことは言えません。しかし、右の図に示すように、総務省統計局が示した推計値によれば、次年度以降、この差はさらに拡大し、2030年頃になってようやく現在と同じ5倍程度のレベルに戻る、ということが読み取れるのです。つまり、今後、20年ほどの間、人口減少の数よりも生産年齢人口の減少の方が5倍以上も多い、という状態が続くことを統計データが示しているのです。

労働力不足の時代が到来

 この結果は、将来の我々国民に何をもたらすのでしょうか。それは人口も生産年齢人口も減少する中で、「需要は一杯あるのに、供給が全く追いつかない」という状態。つまり需要を賄う労働力が異常に足りないという状態=人出不足の状態が今後20年間は続く、ということです。経済学者は、このような状態のことを「インフレギャップ」と表現しています。日本は、今まさにインフレギャップの時代に突入しているのです。

 私たちの周りを見回しても、このような労働力不足の実態は、徐々に姿を現しつつあります。大手居酒屋チェーンのワタミは人出不足を解消できず、やむなく60店舗の閉鎖を決定しました。すき家でも人手不足のため184店舗の一時閉鎖を余儀なくされました。また、あのユニクロでも、パートタイマーやアルバイト1万6,000人を正社員化すると発表しました。また、新規学卒者も、嘗ての就職難はどこ吹く風。企業による奪い合いが既に始まっています。

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 そうです。日本は、既に完全に人出不足の時代に突入してしまったのです。嘗て、日本でもそのような人手不足の時代がありました。昭和40年代初頭の高度成長期がそうです。当時も人手不足が深刻で、若者ならどんな人間でも即採用、となる時代でした。

嘗ての高度成長時代

 その当時、私の個人的な経験でも、さまざまな思い出があります。タクシーは殿様商売で、客を選り好みしてなかなか停まってくれませんでした。乗車拒否は禁止されていましたから、歩道側を走らず、センターライン寄りを走りながら、遠距離客を物色していたものです。客は溢れるほどいたからです。会社の交際費もふんだんにありました。喫茶店に入ると、ウエイトレスが水を持ってきて、こぼれるほどの勢いで置いて行く、なんていう光景もありました。人手不足ですから、叱るとすぐに辞めてしまうので、店主は叱ることもできなかったんです。勿論、給料も右肩上がりで上昇を続け、1年に30%近くも給料が上がった、なんてこともありました。高度経済成長の時代というのはそういうものだったのです。不動産価格も年々上昇し、千昌夫が「歌う不動産屋」なんて言われた時代です。

 今、日本は、再びこのような時代に入りつつあります。その理由は、上に述べた統計データから明らかなように、総人口の減少と生産年齢人口減少のギャップがそれをもたらすからです。労働者は大幅に不足しますから、新規学卒者は奪い合いとなります。中高年齢者や家庭の主婦も奪い合い。もちろん、リタイアした高齢者も家でのんびり鼻毛を抜いている暇などありません。引く手あまたですから、いくらでも働く場所があるのです。

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 このように間もなく、完全雇用の時代がやってくるのです。子供や体の動かせない老人を除けば、全員が労働者になれる、いやなるのです。
 このような時代においては、少ない労働力をカバーするため、必ず生産性は向上することになります。生産性を向上させなければ、需要に応じきれないからです。この生産性の向上こそが経済の発展、すなわち経済成長をもたらすのです。毎年、5%や6%レベルの経済成長は当たり前、いやもっと上になるかもしれない、という時代になるのです。

高度成長の時代が来ると

 このような時代になった時、世の中はどのように変わって行くのでしょうか。企業は増収増益が続きます。当然、配当も増え投資家も潤います。中高年は給料が増え、飲み食いやレジャーなどにお金を使うようになるでしょう。タクシー業界も潤います。高齢者にも仕事はいくらでも回ってきますから、消費に回すお金も格段に増えるでしょう。要するに、お金がぐるぐると回る景気の良い時代になるのです。

 一方、若者はどうなるのでしょう。人手不足が深刻ですから、失業者はいません。完全雇用になりますから、失業の心配などありません。非正規雇用の職種など見向きもされませんから、希望すればほぼ全員が正規雇用になります。正規雇用になれば収入が安定します。収入が安定すれば、結婚でもしようという気になります。当然、マイホームもマイカーも欲しくなります。正規雇用ですから住宅ローンも問題ありません。愛する妻とマイホーム、それに安定した職場という条件が整えば、子供を産もうという気になるのは当然です。放っておいても子供の数は増えていきます。
 このように消費が活発になれば、いやでも国の税収は増えてきます。もちろん生活保護世帯も少なくなり、税金による支出も減少します。税収が増えれば、介護や年金の充実、公共投資の拡大が可能になるほか、国債の償還など国の借金の返済も容易になります。
 その結果、高度経済成長の再来によって、日本は少子高齢化という長期低迷の時代を抜け、本格的な「多子高齢化」の時代へと移っていくのです。

高成長には負の側面も

 もちろん高度成長の時代には、負の側面も内包されています。上に述べたように、労働者は、いくらでも職があるので、自己研鑽をしなくても仕事にありつける。採用側も厳しい指導をすることができない。タクシーだって、客の選り好みをするようになるかもしれません。つまり、サービスの質が低下するという負の側面も生じる可能性があります。
 また、嘗ての高度成長期のように、ものがない時代ではありません。すでに、どこの家でも、ものが溢れる時代になっています。そいう時に経済が急成長したらどうなるか。単純に物を買い増しするようにはならないでしょう。

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 私は、生活の質が大幅に改善する方向で、お金が使われるようになるのではないかと考えています。例えば住宅です。これまでは40坪程度の狭い敷地に、住宅が密集していました。人口減少の時代ですから、既に空き家は沢山あります。こういう空き家を取り壊し、周辺の住宅の延長として、隣接する住宅の敷地面積を広げる。敷地が広がれば、今までできなかった野菜作りでもしようか、という気になります。郊外の住宅では、マイカー用の駐車場だけは足りず、子や孫が遊びに来ても駐車スペースがなくて困っているなんていう家はざらにあります。これらの家の駐車場用地としても活用できるかもしれません。敷地延長によって使える面積が広がることは、精神的な豊かさももたらすのです。
 また、これまでは年金が減ることばかり心配していたので、発想が広がりませんでした。雇用の場が増え、収入が増えるなら、田舎に広い土地を買って野菜作りでもしようか、という夢を持つこともできます。田舎にも職があるからです。このようにモノ余り、飽食の時代でも、お金の使い道はいくらでも広がってくる筈です。
 

安倍総理に望むこと

 このように我が国は、再び高度経済成長の時代に突入しようとしているのですから、人為的な政策によってこの流れを押しとどめてはなりません。

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 愚策の最たるものは、労働規制の緩和や外国人労働者の受け入れです。急場しのぎで外国人労働者を大量に受け入れてしまうと、せっかく高度経済成長に進みつつある流れが、中断されてしまうのです。外国人労働者の多くは、低賃金労働者だからです。折角正規労働者として安定的な職場が確保できるというのに、横から低賃金の労働者を大量に入れるなんて、愚策もいいところです。
 しかも、この外国人労働者の多くは、反日教育を受けた中国人、韓国人になる可能性は非常に大きいと思います。多くの人は気づいていると思いますが、中国の国内事情はボロボロ。韓国もボロボロです。韓国人の7割以上が「韓国を出たい、この国には住みたくない」、という国民なのです。
 外国人労働者を大量に受け入れたイギリスやフランス、ドイツにおいて、既存の住民との間で、所得の格差を生じ、近隣住民とのさまざまな軋轢を生みだすなど、大きな社会問題になっていることに思いを致すべきです。もっともこれらの国は、嘗て植民地とした負い目があり、それらの国から受け入れざるを得なかった、という特殊な事情も背景にあったのです。

 ここで、次のような反論がなされることでしょう。日本経済は国内だけで完結しない。外国との競争は不可避だ。国内の高い労賃で生産した商品では国際競争に太刀打ちできない。

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 確かに、韓国程度の人口規模ならその通りです。でも、日本の人口は1億2千万を超えているんです。これだけでもう立派な巨大市場なのです。何も外国に持って行って売る必要はないんです。韓流スターが日本にきて稼ぐのは、韓国の市場規模では食っていけないからです。1億2千万の市場を前提とするならば、家電でもスマホでも衣類でも住宅でも、一大市場として十分に採算がとれるのです。もっともこのことが、多くの家電製品や携帯電話のガラパゴス化を招いた原因になったとの指摘もあります。
 でも、前述したように、高度経済成長は、生産性の向上も伴いますから、外国企業との競争には十分に対抗できます。生産性の向上に伴って生み出された商品が競争力を失うことはないのです。

 また、いま、安倍政権が行おうとしている労働規制の緩和も、人件費の増加を抑制するため、非正規雇用を大量に増やす方向に作用します。このようなやり方は、折角、実質賃金の上昇という、良い流れになっている道筋を台無しにしてしまいます。安倍総理には、是非とも、この経済の高度成長の妨げになるような政策を行わないよう、念じてやみません。

【お断り】
 この記事は、ラジオ番組「おはよう寺ちゃん活動中」に出演した経済評論家三橋貴明氏のコメントをベースに、私見を交えて独自に書き下ろしたものです。実際の音声はこちらのyoutubeから視聴することができます→こちら(24分頃からお聞きください)

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