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「保育園落ちた、日本死ね」への過剰反応

「保育園落ちた、日本死ね」への過剰反応

ツイッターに「保育所落ちた、日本死ね」がアップされ、マスコミの話題になっています。先ず、そのツイッターから紹介しましょう。

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保育園落ちた日本死ね!!!
何なんだよ日本。
一億総活躍社会じゃねーのかよ。
昨日見事に保育園落ちたわ。
どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。
子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ?
何が少子化だよクソ。
子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからwって言ってて子供産むやつなんかいねーよ。
不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。
オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ。
エンブレムとかどうでもいいから保育園作れよ。
有名なデザイナーに払う金あるなら保育園作れよ。
どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ。
ふざけんな日本。(後略)
  (「はてな匿名ダイヤリー」より)

 この文章を読んで、最初に思ったことは、「ずいぶん汚い言葉だな~」ということです。日本語は世界でも稀にみる美しい言葉です。その日本語をこのように汚い表現で自己主張するのは感心できません。自分の主張をするためには、こんなに汚い言葉を使わなくても、十分に表現することができる筈です。

保育所は少ないのか

 本当に保育園は少ないのか。そこから考えてみることにしました。先ず、統計データから見てみましょう。

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 上のグラフから読み取れるように、2005年以降、毎年4月1日時点の保育所の定員は増加しています。このため、待機児童数も4年連続して減少傾向を示していました。
 ところが直近の2015年では、保育所定員が大きな上昇を示したにも関わらず、需要はそれを上回り、5年ぶりに待機児童数は増加に転じてしまっています。この点について、厚生労働省は、「景況感の回復に伴う若年女性就業率の向上や、新制度の導入・サービスメニューの多様化による保育サービスの利用ハードルの低下から保育の申請者数の大幅増加が生じたため」、と分析しています。
 要するに、保育所は増えたけれども、利用しやすくなったことや若いママさんたちが働きに出るようになったため、保育所を利用したい親がそれ以上に増加したというわけです。

杉並区の保育園一揆

 勝手な想像ではありますが、保育所問題の多くは総じて大都市特有の現象ではないかと思われます。数年前、東京都杉並区で、保育園一揆というのがあり話題になりました。当時、東京都内だけで、保育園に入れない子供が8,117人にのぼったのです。全国での待機児童は2万2741人でしたが、その中で最多です。

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 こうした事態を1日も早く解決してほしいと、都内各地で巻き起こったのが、入園できなかった子供の保護者たちによる自治体への抗議行動だったのです。小学校は全員入れるのに、認可保育園は希望者の3分の1しか入れないのはおかしい、というわけです。
 このような保育所不足が生じるのは、主に大都市への一極集中に原因があります。都心で高層マンションが数多く建設され、若者世帯が利便性の良さを求めて都内回帰をしたからです。
 都内であれば、交通網は四通発達しており、通勤や買い物に極めて便利。教育施設はもちろんのこと、図書館や映画館、美術館、スポーツ施設、医療施設など、ありとあらゆる利便施設も整っています。しかも、一時期高騰した地価も沈静化し、住宅取得に必要な資金の金利も極端に低くなっています。このような背景から、若者世代を中心に都心回帰が進んでいます。
 その結果、保育園や小中学校が不足するという、これまでに見られなかった現象が起きているのです。

保育士は足りているのか

 保育園があれば、保育士が必要になります。その保育士は足りているのでしょうか。現状では、一部地域では、保育園だけでなく、保育士も慢性的に不足しているようです。その理由は、①賃金が安い、②時間外労働が多い、③保育士の不足により労働負担が大きい、といった事情があるようです。 このため、折角、保育士の資格を持っていながら、保育士として働くことを敬遠してしまう人が多いというわけです。

認可保育園と無認可保育園

 保育園には、いくつかの区分があります。一般的なのは、認可保育園で、児童福祉法に基づく児童福祉施設で、国が定めた認可基準(施設の広さ、保育士等の職員数、給食設備、防災管理、衛生管理など)をクリアして都道府県知事に認可された施設です。 運営費も国や自治体から出ているので、保育料が比較的安いのが特徴です。 運営は公立と私立があります。保育料が一番安いので、多くがここに集中することになります。ツイッター氏が「落ちた」のも、この認可保育園と思われます。

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 保育園には、認可されていない無認可(又は非認可)保育園というものもあります。この無認可保育園は児童福祉法に基づく認可を受けていない施設で、保護者の就労や疾病など、保育にかける事由の有無に関係なく、児童は入所できます。保育を希望する保護者が施設に直接申し込むことになります。
 このほかに、各自治体によって、認証又は認定保育園というものもあります。認証保育園は東京都独自の制度、認定保育園は神奈川県独自の制度というわけです。それぞれの自治体の基準を満たした保育園で、自治体から園に補助が出ているので、無認可保育園よりは割安です。東京23区の中には、この認証保育所に児童を通園させる保護者に対し、補助金を出す区もあるようです。

大都市集中は自己責任の一面も

 反発を受けることは承知で言います。このような待機児童問題は、自己責任の側面もあります。過度に東京や大阪といった大都市に集中すれば、一時的にこのような問題が生じるのは避けられません。引っ越す前から、ある程度の予測もついていた筈です。前述した杉並区の保育園一揆が起きたのも、今から3年前の2013年のことでした。その当時は、杉並区だけでなく、足立区や大田区でも保育園不足が問題になっていました。
 ですから、幼児を抱えて都心に移転するには、それなりの覚悟をもって引っ越しをしたはずです。自分の住む場所の状況を調べもせず、いきなり引っ越して保育園がないのはけしからん、と怒りの声を上げる、というのは少々虫が良すぎるからです。
 大都市の外延部では、逆に、子供の減少により幼稚園や小中高の生徒数が減少し、統廃合に追い込まれるところが増えているのはご存知だと思います。私の2人の子供が通っていた小学校と中学校、それに県立高校も、今は統廃合されてしまいました。国全体として少子化が進んでいるなかで、若年層が都心回帰をすれば、当然に生じる問題なのです。
 このように、大都市のあらゆる利便性を享受し、そのうえ更に認可保育園もよこせ、というのは、少々虫が良すぎると思います。大都市の中心部に住んでいない人たちは、利便性は少ない場所だけれど、保育所などを探すには苦労しないで済むかな、という妥協をしているのです。利便性を重視するのか、子育てのしやすさを重視するのかの違いと言ってもよいかもしれません。
 もちろん、だからと言って、行政が保育所作りに手を抜いてもいいなんて言ってませんよ。

国や自治体が講ずべき対策

 国や自治体は、待機児童対策として、さまざまな対策を講じてきたようです。その代表的な方策は、エンゼルプラン、新エンゼルプランです。
 エンゼルプランは、1994年に文部省・厚生省・労働省・建設省(いずれも当時)が合同で制定した子育て支援策です。続く新エンゼルプランでも、前のエンゼルプランを引き継ぐ計画として、2004年度末の目標として策定されています。
 この新エンゼルプランによれば、3歳未満児の保育収容数を68万人、延長保育施設10,000ヶ所、一時保育施設3,000ヶ所、多機能保育所2,000ヶ所、休日保育300ヶ所、病後児保育500ヶ所を設置するとされています。

横浜市の事例

 横浜市は、待機児童ゼロを実現した自治体として知られています。この方策は、他の自治体にも十分参考になるはずです。どのようにしてそれを実現したのか。その概要をみてみましょう。

<横浜市の待機児童ゼロ対策の概要>


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① 保育所整備を特に進めたい地域を「緊急整備地域」として指定し、整備費補助額を1.5倍に増額して、整備を誘導する。
② 保育所整備に適した市有地が不足しているため、整備可能な民有地等と保育運営事業者をそれぞれ公募し、マッチングを行う。
③ 保育施設を整備するのに適した物件を保育運営事業者が自身で探すことが困難になってきたため、UR都市機構神奈川地域支社や不動産業者から横浜市に物件情報を提供してもらい、運営事業者へ紹介する。
④ みなとみらい地区など、賃貸物件の賃料水準が高いため、整備が進まない地域について、家賃助成額を引き上げる(上限25→50万円)。
⑤ 横浜市住宅供給公社の協力、国家公務員宿舎を活用する。
⑥ 27年度から法定化される小規模保育事業を先取りして、0~2歳児の低年齢児を最大19人まで保育する事業を行う。
⑦ NPO法人等がマンション等の賃貸物件を活用して、複数の保育者が、0~2歳児の低年齢児を対象に、少人数の保育を行う家庭的保育事業を実施する。
⑧ 一部の認可外保育施設で行っている一時的な預かりに対し、理由を問わず1時間300円で預けることができるよう補助を行う。


 このように横浜市は、積極的に待機児童問題解消のために取り組んだ結果、待機児童ゼロを実現できたのです。
 このことは、自治体が本気で取り組めば、待機児童問題は解消できる、ということを証明しています。
 横浜市の施策で、注目すべきは、⑦です。NPO法人等がマンション等の賃貸物件を活用して、複数の保育者が、0~2歳児の低年齢児を対象に、少人数の保育を行う家庭的保育事業を実施する。私は、この「少人数の保育を行う家庭的保育事業」という部分に注目すべきだと思っています。緊急対策としては、最も有効だと思われるからです。

取り組むべき課題

 待機児童問題は、総じて大都市問題ですから、行政として取り組むべき課題は、前述したエンゼルプランのほかに、さまざまな施策を総動員する必要があります。取り組むべき課題としては、次のようなものが考えられます。

★第1は、保育所の設置基準の緩和です
 現在の保育所設置基準は、「設置認可等取り扱い要綱」なるもので定められていますが、余りにも厳格すぎます。
 例えば、定員は60人以上、建物・設備は0歳児及び1歳児は1人当たり3.3㎡以上、屋外遊戯室は2歳児1人当たり3.3㎡以上、建物は耐火建築又は準耐火建築物であることなど、様々な制約があります。

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 職員についても、保育士の定数は、0歳児おおむね3人につき1人以上、1歳児及び2歳児おおむね6人につき 1人以上、3歳児おおむね20人につき1人以上、4歳以上児おおむね30人につき1人以 上とする。定員90人以下の施設にあってはこの定員のほかに1人以上の保育士を配置しなければならない。配置する保育士の数は、常時2人を下回ってはならない、等々さまざまな制約があります。そのほか、調理員や嘱託医などに関する規定まであり、読んでいるだけでうんざりします。
 認定保育園を開業することの困難さが、これだけでもよく理解できます。このようながんじがらめの縛りがあったのでは、保育園を開業しようとする者が恐れをなすのは当然です。
 よって、今後取り組むべき方向としては、このような行政によるがんじがらめの基準を、大胆に緩和することです。

★第2は、通勤途上駅の活用です
 都内に限らず、通勤途上にある駅に保育所の設置を義務付けるなど、検討すべきです。駅は利便性が高いので、その一角に保育所を設置すれば、利用者にとって極めて利用価値が高いはずです。
 鉄道というものの公共性からすれば、利用者のために「便益」を提供するのは、いわば社会的な義務でもあると考えます。

★第3は、都心ビルの活用です
 都心の高層マンションの低層階部分に、保育施設を併設させるよう建築確認の段階で義務付けるべきです。高層マンションは、住民のための居住スペースですから、保育施設の併設はいわば当然の義務と言っても過言ではないでしょう。
 また、オフィスビルも、テナントがあって成り立つ事業です。そのテナントは、子を持つ労働者が働く場です。その労働者が働きやすい環境を作るのは、重要な業務の一環の筈です。保育所が併設されているか否かによって、オフィスの入居率に差が生じるといった状況も作り出せるのではないでしょうか。
 
★第4は、高齢者の有効活用です
 リタイアした高齢者も、嘗ては、現役の子育て世代でした。リタイアして、孫の世話を経験した人も多いはずです。自分の子と孫の世話、2度の経験を積んでいます。いわば「子育てのベテラン」なのです。これら子育てのベテランを活用しない手はありません。しかも、時間を持て余した経験豊富な高齢者が、子育てママさんの身近にいくらでもいるのです。

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 本来、子どもを育てるのに資格など不要です。神代の昔から、子供は親や親族、あるいは隣近所の人たちの協力によって育てられてきました。「保育士」などという資格も、「役人」の予算獲得のため人為的に作られたものに過ぎません。
 そもそも私たちの育った幼年時代、保育所はおろか幼稚園なんていうものも存在しませんでした。もしかすると東京や大阪の大都市には一部あったのかもしれません。しかし、田舎暮らしの私には無縁の存在でした。幼児の面倒は、母親か祖父母又は兄弟姉妹が面倒を見る、というのが当たり前だったのです。今でも祖父母に頼る家庭が多いのではないでしょうか。
 要するに、頭の切り替えが必要です。「子どもは近くの高齢者に任せる!」というようにです。多くの高齢者は、何らか「社会の役に立ちたい」、と思っているのです。その際、おこずかい程度のお金をもらえれば、万々歳です。行政がそれをバックアップすればよいのです。民泊という制度があるなら、同様の制度をどんどん作ればいいじゃないですか。自宅で面倒を見るのが大変なら、空き家を活用するという手があります。空き家の活用(空活)には自治体が仲立ちするなど、側面的な支援も必要でしょう。個人には貸しにくいが役所が間に入ってくれるなら貸してもよい、という人はいくらでもいる筈です。空き家を活用して、高齢者がチームを組んで幼児を預かるのです。いくらでもヒントはあります。

民主党は批判できる立場にない

 民主党は、今回のツイッターを大袈裟に取り上げ、安倍政権を激しく攻撃しています。では、民主党が政権を担っていた3年3か月の間、どれほどの努力をしたのでしょうか。

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 民主党が政権を担ったのは、2009年9月から2012年1月です。その間の待機児童はどのようになっていたのでしょうか。上の図1を参照してください。この間の待機児童数がピンと跳ね上がっていることが分かります。それまで1万9千人程度だった待機児童が、民主党政権になった時期に2万5千人台に急上昇しているのです。しかも、政権の座から陥落するまで、待機児童数は、天井に張り付いたまま減少していないのです。そして安倍政権になってから待機児童数は3年連続して減少を続けています。
 このデータが示すように、民主党政権時には、待機児童の減少のため特段の対策をとらず、野党になったとたんに、急に居丈高になり、与党攻撃をする。大人になりきれない、駄々っ子の民主党の体質がそのまま出ていると思います。
 自分の党の党名すら決められない政党ですから無理もありません。真に待機児童を減らしたいと思うなら、大向こう受けを狙うパフォーマンスにばかりに力を注ぐのではなく、地道な政策の勉強に励んでいただきたいものです。
 

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