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都知事選、鳥越候補だけは避けるべきです

都知事選、鳥越候補だけは避けるべきです

繰り返される知名度選挙

 猪瀬、舛添の2知事の政治とカネをめぐる不祥事を経験し、これからは知名度ではなく、クリーンで実行力のある知事を選ばなければならない。と、深く反省したはずでした。なのに、またまた誰が一番知名度が高いか、誰なら勝てるのか、といった旧態依然とした選挙戦が展開されつつあります。

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 有力候補者は、小池百合子、増田寛也、鳥越俊太郎の3氏です。特に鳥越俊太郎氏など、究極の後出しじゃんけんで、野党陣営、特に民進党は、正式に出馬要請した古賀茂明氏を袖にしてまで、急遽、彼に乗り換えてしまいました。宇都宮徳馬氏も、正式に立候補を表明し、日本記者クラブで4候補による討論会まで済ませたというのに、立候補を撤回してしまいました。いずれも鳥越俊太郎という強力な候補者の出現により、「野党統一候補」という錦の御旗の下に結集したという構図です。

記者会見で「公約はこれから考えます」

 鳥越氏は、立候補を表明した際の記者会見で、「昨夜テレビの開票速報を見ていて、立候補の意思を固めた。だから公約はこれから考えます。すみません。」なんて言っていました。好意的なマスコミは、「鳥越氏は大変正直でいい」なんて好感を持った報道をしていました。
 しかし、公約はこれから考えるなんて、有権者を馬鹿にしているのではないでしょうか。これが自民党の候補なら、滅茶苦茶叩かれていたところでしょう。しかも、野党4党が相乗りしているんです。公約はこれから考えるという候補に先ず相乗りした、と言うことです。野党各党は、「とにかく知名度さえあれば、公約なんて膏薬と同じでどうでもいい」、という何よりの証拠です。「もうこれからは知名度に頼った選挙はやめよう」なんて言っていた〝反省″は、スタート時点にして既に雲散霧消してしまいました。

鳥越候補は正しい選択なのか

 では、この鳥越候補。本当に知事として相応しい候補者なのでしょうか。私見を述べさせていただきます。
 先ず、彼の立候補の動機が気に入りません。参院選の結果をテレビで見ながら、「与党が改憲勢力に届きそうな勢いを見て 〝これではいかん″と思い、立候補の決意を固めた」という趣旨のことを述べていました。
 彼が「これではいかん」と言う理由は、安倍政権による安保法制などは戦争法案である。よってこれを叩き潰さなければならない。一体どこの国が日本を攻めてくるというのか、隣国とは善隣友好の心構えで話し合わなければならない、というのが彼の基本的な立場です。

■「どこの国が攻めてくるというんですか」の発言→こちらから

 こういう視点からすれば、安倍政権の圧勝は許せない。「俺が一肌脱ごう」という気になるのも止むを得ないところでしょう。しかし、都知事になることが安倍政権の政権運営にいかほどのブレーキになるのでしょうか。都知事が時の政権と正面から敵対して本当に円満な都政運営ができるのでしょうか。また、そのことを都民が望んでいるのでしょうか。
 東京は、4年後にはオリンピック開催都市となるのです。その自治体の首長として、時の政権との「対決」を売りにされたのでは、都民は堪ったものではないでしょう。安倍政権と敵対するならば、先ずは国会議員として活動するなど、国会を主戦場として戦うのが本筋というものです。

防災への認識が希薄

 鳥越氏は、民進党や共産党など野党を支持基盤としていることから、公共事業=悪という思想を持っておられるようです。しかし、日本ほど自然災害の多い国はありません。米国の元国務副長官アーミテージもこの点について、次のように述べています。「日本ほど自然の怒りとその破局的な後遺症を、数多く経験してきた国はない。しかし、そのおかげで東京は世界の中でどこよりも自然災害に優れた備えを持つ都市になった。都市基盤も緊急時の即応態勢も、そして市民たちも、自らの強靭性を証明してきた。」
 確かに、東京は自然災害に強い都市づくりを目指してきましたが、日本人の眼から見れば、まだまだ十分ではありません。東日本大震災の例をひくまでもなく、遥か遠くの宮城県沖の大地震が起きただけでも、多くの帰宅難民が生じ、数か月に及ぶ生活物資やエネルギーの調達に深刻な支障が生じました。
 これが首都直下地震ともなれば、無数の交通途絶はもちろん、多くの箇所で火災や津波、住宅やビルの倒壊が生じることでしょう。大都市東京の守り人として、知事の責任は絶大なのです。公共事業は悪なんて、きれいごとを言っている暇はないんです。「その時どうするか」は、知事として、最大の課題であるはずです。顔にできたおできやニキビを治すことも大事ですが、命にかかわる問題への取り組みの方が、それ以上に大事な問題なんです。鳥越氏にはその真剣な心構えが全くできていないと思います。

年齢による不安

 鳥越氏は、現在76歳です。76歳という年齢は、男性の平均寿命80.5歳に近い年齢です。一般的に、70歳代の後半は、口では元気というものの、激務をこなすような年齢ではありません。
 石原知事のように、週に2日しか登庁しなかったような人もいますが、きちんと職責を果たそうとするなら、知事職は激職です。扱う予算は韓国の国家予算を上回るほど巨額です。議会は自民・公明が多数を占めており、少数野党の代表という立場から議会運営にも難渋するはずです。
 かく言う私も、現在72歳ですが、76歳から激務をこなせるかと言われれば、とても自信はありません。まして、彼は2005年に直腸がんとの診断を受け、手術を行い、その後、肺と肝臓にも転移し、4度の手術も行っています。いわば全身ぼろぼろの状態と言っても過言ではありません。
 都内の演説会場で、歌手である森進一の応援を受け、彼を紹介する場面なども拝見しましたが、何ともチグハグで全く生気が感じられません。都内での演説回数も、他の候補に比べ圧倒的に少ないように見受けられます。これは、体力の消耗を防ぐため、側近が格別の配慮をしているとみるべきでしょう。立候補をした時点から格別の配慮をしなければならないような健康状態で、今後4年間の激職を務めあげられるのでしょうか。

認知症の不安

 鳥越氏が立候補の挨拶をした時、こんなことを言いました。「私は昭和15年生まれ。終戦の時は20歳です。ですから空襲のこともよく覚えています。防空壕に逃げ込んだこともよく覚えています。」
 私は、言葉の揚げ足をとることは好きではありません。ですから、このことを言うのは気が進みません。でも、余りにも違いが大きすぎます。終戦は昭和20年ですから、終戦の時、彼は5歳だったはずです。15年もの違いを前提として「ですからよく覚えています」と言われてもね~。彼の年齢なども勘案すれば、軽度の認知症の疑いを抱いたのは私だけではないと思います。

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 合計特殊出生率についても「東京の特殊出生率は1.4ですよ」なんて言ってました。合計特殊出生率というのは、1人の女性が一生の間に産む子供の数の平均です。全国平均が1.42、東京は1.15で、全国最低です。東京は、人口が増えているにもかかわらず、女性は子供を産まない。働く場所が沢山あるから勤めには行く。しかし、保育所などが少ないから子供は産まない。つまり、東京はブラックホールのように全国から若い労働力を吸収するばかりで、子供を産み育てるという機能が明らかに欠如している。この基本認識を高名なジャーナリストがもっていない。この程度のレベルでよく都知事候補として手を挙げたものと、その度胸の良さにはびっくりします。
 彼の公約の中には「がん検診100%を目指す」なんていうのもあります。これが一番大きな問題だというんです。
 でもね、都民全員ががん検診を受けたとすると、医療費はいくらになるのでしょうか。がんはその性質上、体のすべての部位で発症の可能性があります。胃がんや大腸がん、肝臓がん、肺がん、すい臓がん、すべての臓器にがん発症の可能性があります。また、臓器以外でも、骨や皮膚、血液などすべてにがん発症の可能性があります。鳥越氏は、がん検診100%を目指すと言いますが、体のすべてに発症する可能性のあるがんを検診で見つけるためには、最低でも1泊2日の人間ドッグが必要になるでしょう。
 しかもこの人間ドッグ、発症を早期に見つけるためには、毎年受診しなければほとんど意味がないということになります。1泊2日の人間ドッグに必要な費用は、1人77,000円(都内病院の1例)です。100%受診なら1,360万人ですから年間でも1兆円以上の費用が掛かります。半数でも5,000億以上です。本人負担が50%だとしても、都の負担は約2,500億円以上ということになります。都税収入は年約4.6兆円ですから、新たな施策として、税収の5%以上を人間ドッグの補助につぎ込むということでしょうか。
 自分ががん手術を4回を受けたため、お医者さんの決まり文句、「早期発見・早期治療が最善!」を盲信されているのではないでしょうか。
 こういう施策を「一番大きい問題だ」と言われても首を傾げるばかりです。私のように、過去25年間、一度も健康診断、人間ドッグにかからず、健康に生きている人間にとっては、「余計なお世話です」と言いたくなるのです。

増田候補の問題点

 先ず、何といっても人物的に印象が薄い。薄いうえに地味。見栄えがしない。要するに格好良さがない。雰囲気的にも官僚臭さが体全体から漂ってくる。一般的には選挙には向かないタイプと言っても過言ではないでしょう。でも、今回の選挙は、猪瀬、舛添両知事の政治と金をめぐる不祥事のあとに行われる選挙ですから、この際、こういう印象論的な評価は止めることにしましょう。何よりも人物本位、政策本位、という観点から選定すべきものだと思います。

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 ところで増田氏と言えば、地方消滅という衝撃的なレポートを出した「増田レポート」の著者です。私もこのレポートを本で読ませてもらいました。新聞や週刊誌で話題になったレポートですから、ご存知の方も多いでしょう。
 要するに、2040年までに全国の市町村の半数が消滅する。すべての町は救えない。よって、「選択と集中」によって、「小さな拠点5,000箇所程度」を整備し、人々をそこに集約して住まわせる、といった内容のものでした。
 私は、彼の地方消滅の考えには抵抗感があります。人間には、普遍的な欲求があります。家族は一緒に暮らしたい。適齢期には結婚したい。子供を産み、育てたい。高い教育を受けたい、受けさせたい。十分な医療を受けたい。生活に必要な収入を得たい。
 これらの欲求を総合的に満たしてくれる場所、それが相対的に都市ということになっているんです。換言すれば、過疎化の進展は、人間としての普遍的な欲求が満たされにくい環境であるということなのです。これに対して、増田氏は、「選択と集中」によって、対応すべきだというわけです。でも、これではあまりにも寂しい。このやり方では、選択と集中に漏れた自治体は、ますます過疎化が進展してしまいます。
 人間の持っている普遍的な欲求にどう応えて、どのように誘導していけば地方でも生き生きとした生活ができるのか。行政の役割は、その方法を見抜き、民間をその方向に誘導してあげる。人々の欲求に「手を添えてあげる」だけでよいのです。行政の責任は、選択と集中により、一箇所に集めることではなく、農村でも住みやすい環境を作るにはどうすればよいのか、そのことに専念すればよいのです。
 今、日本は訪日外国人客で溢れています。今年の上半期だけでも1,171万人が訪日しました。日本という国がそれだけ観光に適した国だからです。しかも世界一安全な国で、国民もやさしい。何もないと言われていた土地が、逆に宝の山だったなんていう事例は枚挙にいとまがありません。
 増田氏は、岩手県知事時代、大型開発や公共事業を推進し、1兆4,000億円もの莫大な負債をつくったとされています。その額は、知事就任前の2倍にも上っています。退任直前には、競馬組合の借金問題で揉め、結局、有効な手を打てず、借金を330億円にも膨らませ、県などに肩代わりさせたとされています。その責任をとって、彼は給料2カ月分、約200万円のカットを申し出たなんてこともありました。自治体の首長として、必ずしも十分な実績を上げたとは言えないのではないでしょうか。上念司氏流に言えば、大型の「墓標」を乱造した張本人と言えなくもありません。
 また、彼は嘗て総務大臣でした。東京一極集中ではなく、疲弊する地方経済を救済する目的で、東京など税収の多い地域に対して「地方交付税特別枠」という名目で、都税収入となるはずの税金を、一旦国に召し上げたうえで他の自治体に流すという制度を作りました。結果として、増田氏のこの制度のおかげで東京都は過去7年間で累計1兆円以上、税収を失いました。彼が都知事になった時、今度は都のために召し上げられた税収を取り返すことになるのでしょうか。そうなれば、自分の施策が誤りであったことを認めることになりますが、いかが対処するのでしょうか。

最後は小池百合子氏です

 私は彼女のことをほとんど知りません。でも、環境大臣、防衛大臣、党総務会長を歴任したほどの人物ですから、マスコミ情報程度のレベルでは存じ上げています。安倍政権ではあまりパッとしないな、とは思っていました。つまり、要職で使われていないと思っていたんです。その理由は、第2次安倍政権発足時に、従来の安倍支持を翻し、石破茂支持に回ったことで、安倍総理の不信を買うことになったからと評されています。
 それにしても彼女の政界遍歴は凄いですね。日本新党、新進党、自由党、保守党、自由民主党と5つの政党を渡り歩きました。自発的に離党したのは自由党だけですから、結果的に所属した政党は、潰れそうな政党ばかりだったということになります。つまり、幸運の女神が微笑まない星の下に生まれた議員、と言えるかもしれません。
 しかし、この点について彼女は、次のように弁明しています。「政党がコロコロ変わるというようなご指摘を頂いているが、それは政党の離合集散の結果であって、私の主張、思想、そして信念は一度も変えたことがない。」
 なるほど、政治家ですから主義・主張・信念を変えなければ、立派なものだと思います。ただ、人間の社会というのは、裏切り的な行為があると、なかなか信用されないものです。ある時は小沢一郎に近づき、ある時は安倍総理にすり寄り、石破茂に勢いがありそうだとこれに近づく、というような世渡り術がうまい人間を、人は信用しません。これからはそのあたりのことを注意する必要があるでしょう。

小池氏の政策

 ところで小池氏の政策です。少子高齢化対策として、「保育所の受入れ年齢、広さ制限の見直しや遊休空間を利用した保育・介護施設の不足解消」を謳っています。

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 遊休空間というのは、空き家の活用なども含まれているようです。この点は評価してよいと思いますが、子供の人数に応じて何人の有資格の保育士を置かなければならないとか、国の定める面倒な施設設置基準などがあり、一朝一夕に解決するのは難しいでしょう。都民も、自分の子供が大きくなれば、今度は保育施設を「迷惑施設」として邪魔者扱いをする人が少なくありません。住民の我儘にも対応しなければならないのです。
 本来、子供の保育施設など、全国一律に定める国の基準そのものがおかしいと思います。小池さんはそのあたりの隘路をどう打開してくれるのか、彼女の実行力に期待したいと思います。
 また、彼女は都道の無電柱化や住宅の耐震化・不燃化も公約しています。いずれやってくる大地震に備える対策は絶対に必要です。住宅の延焼を防ぐ街路を整備し、幅広で緑地空間ともなる歩道の整備も必要です。
 民主党政権は口を開けば「公共事業=悪」を唱えますが、余りにも短絡志向です。公共事業は、道路・河川・水道・下水道など、私たちの生活の基盤です。人間でいえば、骨格、背骨です。骨格・背骨がしっかりしていなければ、いくら厚化粧をしても健康にはなりません。都市の骨格作りは、子育て施設のような人気取り施策にはなりませんが、真の為政者ならば、人気のない地味な政策にも意を用いるものです。

上杉隆氏は泡沫候補ではない

 立候補者の中に上杉隆氏が入っているのに気づきました。彼は、マスコミの区分では泡沫候補とされているようですが、これでは気の毒です。

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 彼は、官房機密費の一部が官庁詰めのマスコミ記者に配られていたなど、衝撃的な事実を暴露した人物です。記者クラブというのは、官庁内の一室を無料で借り受け、官庁の取材を専門に行う「大手」マスコミ人たちの溜まり場です。取材する記者にとってはもちろんですが、記者発表する官庁側にとっても、都合のいいシステムなんです。官庁側からすれば、部屋を無償提供しているわけですし、ある程度のコミュニケーションも可能です。従って、都合の悪い記事は書かないように頼むことも可能だからです。
 役所が直接現金を配るなんてことはありませんが、政権与党は官房機密費という現ナマをもっていますから、その一部を記者たちにお小遣いとして配っていたんです。「書かないでくれ」と頼まれれば断りにくいのは当然です。現ナマはそのための撒き餌なんですから。上杉氏がそのことを暴露したんです。でも、こんな破廉恥な暴露に対して、すべてのマスコミ人は、誰一人名誉棄損として彼を訴えませんでした。このことが事の真実性を証明しています。
 たった一人のフリーのジャーナリストですが、存在感のある人物です。官庁の記者発表の場に大手マスコミの記者しか入れないというのはおかしいと噛みつき、是正させた気骨のある人物です。
 彼の政策は、五輪組織委員会の白紙改編、森喜朗会長の「名誉ある勇退」。本来、東京都に入るはずの税金、年間約3,200億円を取り戻し、待機児童問題解消など都民のために使う。東京五輪のむだ遣いをやめて当初案の4,500億円(現在は2兆円!)に戻す。横田基地の軍民共用化をめざす、などかなり具体的です。
 泡沫候補扱いにするのは、余りにも気の毒なので、彼の名誉のために、ここで付記させていただきます。

結論

 候補者たちに望みたいのは、本当は、首都東京の100年先を見据えた壮大な構想を語って欲しいというのが本音です。嘗て、後藤新平という人物がいました。医療・交通・通信・都市計画等の内政から、対ユーラシア及び新大陸の世界政策まで、百年先を見据えた先駆的な構想を次々に打ち出し、同時代人の度肝を抜いた人物です。関東大震災直後に、内務大臣兼戦災復興院総裁として首都東京の復興計画を策定し、実行した人物です。

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 東京には放射状に伸びる道路と環状道路の双方が必要であると主張し、南北軸としての昭和通り、東西軸としての靖国通り、環状線の基本となる明治通りなどを作った人物です。
 これ自動車が普及する以前の時代の話ですよ。主要街路の幅員は広い歩道を含め70mから90m、中央または車・歩道間に緑地帯を持つという大規模なものでした。都市の将来像を明確に見通していたということができます。
 今立候補している候補者にそこまでの先見性は求めませんが、少なくとも首都東京の首長として立候補するならば、こうした先達の業績の記録位はきちんと精査し、勉強しておいていただきたいものです。
 さて、それならば、次善の選択として、自分ならだれに投票するか、と考えてみます。消去法でいえば、上述したとおり、鳥越氏ではダメ。都知事選に左翼思想を持ち込んで、反核だの憲法擁護だのと言っているようではダメです。上杉隆氏も死に票になる可能性が高いので一応避けておきます。
 残るのは増田氏と小池氏ということになります。どちらもどっこいどっこいという感じがします。このような場合、女性を優先した方がよいでしょう。時代感覚にも会っています。外国では、女性でも有能な政治家がかなり出てきています。日本でも、そろそろ有能な政治家が出てきてもいい頃合いではないでしょうか。安倍政権も「女性活躍社会」と謳っているんですから、メンツを捨てて、小池氏を応援すればよかったんです。
 どちらも似たようなものだとすれば、地味すぎる増田氏より、華のある小池氏の方が引き立つというものです。東京オリンピックも、女性知事の方が世界にアピールする力が大きいと思います。テレビで帳簿などを拝見しましたが、彼女は、これまで政治資金の使い方についても極めてクリーンとお見受けしました。
 さて、都民はどのような判断を下すのでしょうか。都民でない私は、他人事ながら、結果を楽しみに待つことにします。



<後日記>

週刊誌に中傷記事

 後日記をこんなに早く書くことになるとは思いませんでした。選挙戦の真っ最中だというのに、週刊文春と週刊新潮が軌を一にして鳥越候補の中傷記事を掲載したのです。両誌ともトップ記事の扱いです。
 週刊文春は、「鳥越俊太郎「女子大生淫行」疑惑 被害女性の夫が怒りの告白!」という見出しです。週刊新潮は、「「岸恵子にバラ100本!「鳥越俊太郎」無節操の履歴書」という派手な見出しです。

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 選挙戦の真っ最中に両週刊誌が同じ日(7月21日の広告)にこんなド派手な見出しの広告を出したんでは、選挙戦に影響を与えるのは間違いないでしょう。このような週刊誌のやり方は極めて卑劣だと思います。明確な選挙妨害の意図があるとみて間違いないでしょう。
 このような中傷記事で迷惑をこうむったのは先の参院選で立候補した青山繁晴候補でした。彼の場合は、女性問題ではなく、20年も前の共同通信社時代の会社のお金の私的流用疑惑というものでした。当然青山氏は選挙妨害だとして刑事告発するとともに、街頭演説やYoutubeなどの場で猛反撃しました。

週刊誌は虚報に満ちている

 この週刊誌報道は、多分いい加減な取材方法で得たヨタ記事だと思います。でも、週刊誌のトップ記事でこのような見出しをつけられて大手新聞紙に掲載されてしまうと、この見出ししか見ていない読者にとっては、「印象」だけが残ってしまうんです。記事の詳細を見て確認する人は多くはないからです。
 このような週刊誌のヨタ記事によって、どれほど多くの芸能人や政治家が血祭りにあげられ、人生を狂わされたことでしょうか。その意味で、鳥越氏が落選したとすれば、ご愁傷さまというしかありません。
 しかしながら、鳥越氏には相応の責任もあります。今回のこの記事の真実性というよりも、こういった週刊誌がいかに虚偽に満ちた作り物であるかを一番知っているのは、ほかならぬ鳥越氏だからです。
 鳥越氏は、嘗て週刊誌「サンデー毎日」の編集長をしていたことがあります。当然、政治家や芸能人のスキャンダルはお手の物だった筈です。彼が編集長だった1989年当時、時の宇野宗佑首相の不倫問題をめぐる告発記事を特報し、結果的に退陣に追い込んだことは有名です。

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 「愛人になってくれたらこれだけ出す」と三つ指で示したという話は、「三つ指の総理」として記憶に残っています。当然、宇野総理側は否定していますが、週刊誌に大きく報道されてしまえば、いくら弁明しても「男女の仲」の真実は所詮やぶの中です。絶対に男に勝ち目はありません。男に勝ち目はないのを百も承知のうえで、鳥越編集長は報道したのです。この件が影響して、同年7月に行われた参院選で自民党は惨敗し、宇野内閣は退陣に追い込まれました。
 私は直接読んでいませんが、鳥越氏が立候補した後、7月20日付の毎日新聞朝刊(地域面)に「知事選 主な候補者の横顔」で、当時の「三つ指騒動」に関し、そのエピソードが次のように紹介されていたそうです。
「上に相談せず、クビをかけて自分の判断で世に出した。『やった』という思いと、一人の人生を狂わせるかもしれないという湿った気持ちが入り交じり、複雑だった」と振り返っています。
 一人の人生ではなく、「国民の選択」を狂わせたのです。

壮大なブーメランによる反撃

 私は、今回の週刊誌報道には、これまで鳥越氏がサンデー毎日などで貶めてきた多くの人々の怨念が込められているような気がしてなりません。あることないことではなく、「ないことないこと」を週刊誌に書かれ、泣き寝入りしてきた多くの被害者たちの、「積年の恨み」が込められているように思えるのです。いわば時を経て、巨大なブーメランが鳥越氏を直撃したのです。
 男女関係が問題になった場合には、「絶対に男に勝ち目はない!」ということを、思い知ることになるでしょう。週刊誌はそれを売り上げアップの常套手段としてきたのです。

鳥越氏は言論によって反撃すべき

 今回の報道に関して、鳥越氏は選挙妨害として刑事告発したようです。しかし、街頭演説などでは、「弁護士に任せているので」などと言って、余り声高に反論していません。
 でも考えてみてください。鳥越氏はマスコミ人、言論人です。言論の力によって、時の総理まで引きずり下ろしたほどの人物です。ならば、堂々と言論によって反撃するのは当然なのではないでしょうか。「弁護士に任せているので」などというセリフは、舛添知事の時に聞き飽きました。
 今からでも遅くありません。女子大生淫行など絶対ありえない、嘘八百だ、週刊誌というものは本当にくだらないものだと切って捨てて頂きたいものです。
 あ、これ「天に唾する」行為でしたね。


<後日記2>(H28・8・1)

 結果が出ました。小池百合子氏291万票、増田寛也氏179万票、鳥越俊太郎氏134万票という結果でした。
 正直、ここまでの大差がつく、とは思っていませんでした。自民党の敗因は、基本的には事実上の分裂選挙になったことでしょう。加えて、小池いじめの雰囲気になってしまったこと。1人の女性を大組織の自民党がいじめている、かのような雰囲気になってしまったことです。逆に言えば、そのような雰囲気を醸し出した小池候補の作戦勝ちと言えるかもしれません。

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 さらに、東京都連が自民党の党員に配布した文書もひどかったですね。党が推薦していない候補者を応援した場合、「除名などの処分対象になる」というんです。しかも、議員本人だけでなく親族による応援も除名の対象になるというんですから驚きました。
 これでは北朝鮮や中国と同じではないですか。今時、こんな独裁国家のような文書を天下の公党が出すなんて、時代錯誤も甚だしいと思います。石原伸晃氏は都連会長として、この文書は見ていたはずです。見ていながらそれを出すことの影響が想定できないというなら、とんでもない大馬鹿者です。これで50万票は確実に減らしたでしょう。
 また、応援演説で石原慎太郎元都知事の発した「大年増の厚化粧」発言。これも50万票減くらいの威力がありましたね。
 つまり親子で100万票は減らしたということです。石原慎太郎という人物、私は個人的に嫌いではありません。「NOと言える日本」をはじめ、何冊か彼の本を読んだこともあります。
 でも、高齢になってからは失言も目立つようになってきました。歯に衣着せず発言しますから、応援弁士としては不適格です。応援演説は「LIVE」ですから、一度発言したら取り返しがききません。応援弁士に担いではいけないんです。多分、出来の悪い伸晃氏が「お父さんお願い」なんて頼んだんでしょうが、そういうところも、大物になれない未熟児の特徴が出ていますね。
 いずれにしろ、小池候補の勝利、先ずはよかった。問題はこれからです。初の女性都知事として、きちんと仕事をしなければいけません。泣いてすむ話ではありません。後に続く女性たちのためにも、「やっぱり女性はだめだ」なんて言われないように頑張って頂きたいと思います。「女の武器」で勝負をしてはいけませんよ。



<後日記3>(H28・8・8)

 小池候補が言っていた「都のブラックボックスを正していかなければいけない」との発言がどのようなことを意味しているのか、俄かには判断ができませんでした。しかし、その後、さまざまな情報が出てきました。それによって、次第に視界がはっきりしてきました。
 先ず、自民党東京都連の真の実力者は石原伸晃氏ではなく、都連幹事長の内田茂氏であったということが分かりました。この男が例の除名処分するとの時代遅れの文書の発信者だったんですね。それを伸晃氏が抑えきれなかったというのが、事の真相のようです。

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 なにせこの内田幹事長、落選したのに都連の幹事長職を手放さず、議員でないのに幹事長室にふんぞり返っていたというんですから、その権勢は想像に難くありません。
 それを支えていたのが、都議会議長の川井しげおという人物です。小池知事が挨拶に行ったときに一緒に写真を撮ることを拒否したあの人物です。カメラマンが一緒に写真をと言った時、「君たちの要望を聞く必要はない」と言ったあの人です。
 都議会の内情について、元都議会議員で自民党に所属していた野田数(教育評論家)という方が次のように語っています。

<野田数氏の証言より>
 都議会議員の数が圧倒的に多く、多勢に無勢であった国会議員と石原知事は都議会議員の抵抗になすすべがなかった。加えて東京都連の幹事長職は、東京都内の各級選挙の公認権を持ち、業界団体に対しての影響力も強いため、小選挙区選出の国会議員は最後まで抵抗しきれなかったのである。そのときの抵抗も内田氏本人が前面に出るのではなく、側近で現議長の川井しげお氏が数少ない国会議員の前で机をバンバン叩いて威嚇していたという。私も会派の控え室で「内田先生じゃないとカネ作れないじゃないか!」と凄んでいるのを聞いたことがある。

■元都会議員野田数氏の全文をお読みなりたい方はこちらから

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 このあたりの事情が分かると、なぜオリンピック関連の施設整備費が、簡単に当初見積もりの2倍3倍になってしまうのかのカラクリが分かってきます。都議会を牛耳るこれら自民党の都議団が、さまざまな裏工作をしているのでしょう。 
 小池知事は、元々東京都選出の国会議員で、自民党東京都連の一員でもあったわけですから、この間の裏事情は十分に分かっており、だからこそこのような利権構造をブラックボックスと呼び、これを壊す必要性を感じていたのでしょう。
 都民ばかりでなく、国民すべてが小池知事の采配を支持していけば、もう少し風通しの良い自治体に変われるかもしれません。きちんと見守っていきましょう。

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