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豊洲市場問題、そろそろ決着させませんか

豊洲市場問題、そろそろ決着させませんか

混迷の度深める豊洲市場問題

 築地市場の移転先となる豊洲市場に関する問題が、マスコミを賑わせています。問題の焦点は、豊洲市場の土壌汚染対策として盛り土をすることを外部有識者で構成する専門家会議が提言し、都の公式発表でもそのように図示されていたにもかかわらず、いつの間にか盛り土案が反故にされ、建物の床下部分のみ空洞になっていた。土壌汚染対策として117億円が盛り土費用として計上されていた筈なのに、その費用は一体どこに消えてしまったのか。また、土壌汚染対策は大丈夫なのか。

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 大雑把に言えば、問題発覚の端緒はこのあたりだろうと思います。しかも、この問題発覚の前提として、小池百合子氏が知事選に出馬し、「東京都は伏魔殿」と称し、改革の必要性があることを盛んに強調しました。また、都議会の冒頭解散を口にするなど、議会との対立姿勢も鮮明にしました。対立する都議会のドン、内田茂都議の顔がクローズアップされるようになったあたりから、豊洲市場問題にマスコミのスポットライトが当たるようになったのです。
 それはそうですよね。あの内田都議の顔を見れば紛れもない悪役の顔です。これが都議会のドンだと言われれば、「きっとこのドンが裏で何か差配している」と見るのは常識というものでしょう。世の耳目が集まるのは自然の成り行きです。
 しかも、ここ豊洲市場の移転工事の落札率は99.7%だったいうんですから、工事業者による談合は100%間違いありません。いや、役所が関与した官製談合の臭いさえ漂ってきます。
 内田茂氏は、東光電気工事という電気工事の会社の役員をしており、しかも週刊誌の報道によれば、豊洲市場の電気工事の受注もしているとのことです。まあ、週刊誌の報道ですから、話半分に聞くとしても、彼が豊洲市場の監査役も努めているという事実からして、内田茂氏がこの豊洲市場の移転問題に深く関与していることは間違いない、と言ってもよいでしょう。
 いわゆる盛り土案から地下空洞(=地下ピット)案への変更も、内田茂氏が一切関与することなしに行われたとは考えにくいですね。都職員の立場からすれば、1週間に1日しか登庁しない石原知事より、議会を牛耳る内田ドンの顔色を見て仕事をした方が得、と判断したとしても無理からぬことだからです。

早急な決定こそ重要

 テレビはどのチャンネルを回しても「なぜ変更したのか」「いつ誰が変更したのか」という方向で報道がなされています。まあ、所詮テレビは週刊誌レベルですから、視聴者の興味のある方向へ流れるのは仕方がありません。
 でも、そういう変更経緯の追及や変更に関与した人物の犯人探しも必要ですが、より大事なことは、このような変更が技術的な観点からみて間違っていたのか否かということです。
 なぜなら、盛り土案よりも、地下ピット方式の方が技術的に優れているというなら、「変更そのものは正しかった」という結論になるからです。もちろん、変更経緯の検証や変更関与者の犯人探し、都の不誠実な公表姿勢、更には入札の談合疑惑など、非難又は追及すべき視点は多々あります。が、先ず早急に行うべきことは、「移転するか否かの決定」をすることです。移転を正式に決定し、その時期を明示すれば、関係者は行動を開始することができるからです。
 そのために優先すべきことは何か。それは技術的な検討です。すでに地下空洞は完成してしまっているんです。これからどちらを作るかの検討を行うのではありません。仮に、盛り土案と空洞案を比較検討し、盛り土案の方が優れているとしても、完成している上物をすべて取り壊してやり直すほどの優位性があるのかどうかという視点で検討すべきです。80点と85点の差位なら、80点でもやむを得ないと考えるべきでしょう。
 しかし、本当に盛り土案の方が技術的観点から優位性が高いのでしょうか。ここは冷静に考えてみる必要がありそうです。

根底に事務職と技術職の確執

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 図1は、東京都が公表した図面です。読みにくいかもしれませんが、2.5mと表示された部分は「きれいな土を盛ります」と書いてあります。2.0mと表示された部分には、「きれいな土と入れ替えます」と書いてあります。要するに、どちらもきれいな土を入れるということです。
 この図で見る限り、都が公表した図面には地下空洞の表示はどこにもありません。もしかしたら、この図面を公表した担当者も、この図面が正しいと思っていた可能性が高いと思います。なぜなら、公表を担当する部門は事務系の部門です。一方、実際に設計図を作成し施工・管理を行うのは技術系の部門です。
 役所の中でいわゆる事務屋と技術屋は、基本的に対立関係にあります。ポストと予算をめぐって日々対立しています。対立関係にあるから、お互いに情報を隠したがる傾向が非常に強いのです。私自身、役所に身を置いていたことがありますから、そのあたりの感覚は、皮膚感覚で十分に理解できます。民間だって、ふたつの銀行が合併しても「旧三井銀系」「旧住友系」とか言って対立関係がなかなか解消しない、あれと同じです。人間の性と言ってもよいでしょう。端的に縄張り争い、と表現してもよいでしょう。
 都がこのような図面を公表しているのに、地下空洞案に変更したということは技術部門の職員は十分に理解していたはずです。その情報を公表する事務(広報)部門に伝達する技術担当者が、意図的にか否かは分かりませんが、変更後の内容を敢えて知らせなかった、又は公表図面などいちいち検証しなかった、というあたりに真相があると思います。多分、このような大問題になるとの認識が欠けていたんだと思います。

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 因みに豊洲新市場の移転を担当する部局は中央卸売市場長の下に管理部、事業部、新市場整備部といった組織がありますが、テレビ報道によれば、管理部は本庁内に、新市場整備部は現地、つまり豊洲に設置されていると報じられていました。新市場の設計や建築、管理部門が現地にあることは自然であり、少しも違和感はありません。
 つまり、ここで情報の意思疎通の齟齬が生じる可能性があるんです。広報を担当する総務課は本庁にあり、設計など実務部隊は現地にいる。現地での設計変更の詳細はその都度、広報部門に上がってこなくても不思議はないんです。
 そもそも設計施工などを担当する技術部門からすれば、「なぜ市場長が事務職のポストなんだ」という不満があるはずです。事務職にいちいち情報を上げることは面白くない、という気持ちがあるんです。都の広報図面が、最後まで修正されることなく全面盛り土案になっていたことは、そう考えれば容易に理解できるのです。技術職の立場からすれば、「だから市場長を技術職にしておけばよかったんだ。そうすれば変更後の情報はすぐに上げたんだ」ということになるからです。相手方の失点は、自分達の得点というわけです。
 

地下空間の必要性の有無

 このような巨大な施設を設置し、管理する場合、このような地下ピット(空洞)は必要なのでしょうか。一般にマンションやオフィスビルなど大型の建築物の場合、冷暖房などの空調設備が必要になります。また、上下水道のための配管も必要になります。冷暖房などの空調設備を維持管理するためには、通常、一箇所で管理することが合理的とされています。そのため、地下一階部分などに管理スペースを設けることが多いはずです。そこでビルの管理やボイラーの管理を行うわけです。これらの管理を行うビル専門の技術者として、国家資格であるビル管理士やボイラー管理士がいることはご存知だと思います。

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 上下水道の管理も、配管の維持修繕を容易にするためにビル本体に併設して別途、パイプスペースなどを設けています。これは建物本体の耐用年数と配管などの耐用年数が異なる(配管の方が寿命が短い)ため、配管部分の維持修繕を容易にする必要があるからです。
 施設そのものは青果棟、水産仲卸売場棟、水産卸売場棟、管理施設棟など多岐にわたりますが、最高で8階建ての施設も有するなど大規模なものです。しかも、生鮮食料品を扱う施設ですから、ネズミやゴキブリの跋扈する築地の反省を踏まえ、冷暖房の完備が必須とされます。また、大量の水も必要となります。
 これらのことを考えると、相当の規模のダクトの管理、上下水道の管理が必要になります。それらの施設は、地下空間など、表面には出ない部分に設置するのが常識というものでしょう。
 となれば、これらの設備は基本的に地下部分に収容する、というのは頷ける話です。その部分を埋め立ててしまったのでは、設備の収容スペースがなくなってしまうからです。
 もちろん、専門家会議の提言の通り、盛り土をし、その上に更に地下ピッドを設けるということも可能ですが、それを実現するためには、既に出来上がった建物を取り壊し、一旦更地にし、再度盛り土工事をする必要があります。経済合理性の観点から、とても呑める案ではありません。

地下ピットの水は排水処理できる

 テレビ画面などをみると、地下ピットの底部に水が溜まっている、という画像が繰り返し流されています。そして、ここにこんなに水がたまる構造は問題である、と言っているかのように見えます。
 この部分は、都に好意的すぎるかもしれませんが、現段階ではまだ「水処理施設」が機能していないせいではないでしょうか。図1にも明示されているように、地下水位が上昇してくることは十分に予想されますし、台風、洪水、高潮によって、水位が上昇することも考えられます。そういう場合に備えて、水処理施設を作っているわけです。
 これがフル稼働し、機能するようになれば、地下ピットに溜まった水はおのずから排水されていく筈です。「排水施設」という表現でなく、水処理施設という用語を使っているのは、たまった水を国の定める環境基準に適合する水質までろ過洗浄し、そのうえで排水するということを意味しているのです。
 水処理施設が十分に機能するようになれば、現在地下に溜まっている水はすべて排水されます。排水後にコンクリートを打てば、簡易な重機なども搬入可能になります。そうすればビル管理士もボイラー技士も活動できるようになるはずです。もっとも、映像などで見る限り、地下ピットに通じる階段や通路もなさそうですから、別の使い方を想定している可能性もあります。都の担当者は、そのあたりのことをきちんと説明すべきでしょう。

汚染水の問題

 都の共産党都議団が地下ピットを視察した際、若干の水を採取し、民間の専門業者に分析を依頼したことがあります。その分析結果によれば、その水は強アルカリ性であったこと、また、環境基準値を超えない0.004ミリグラムのヒ素が含まれていたとされています。

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 また、東京都が調査した水質検査の結果では、5街区(青果棟)から、ヒ素が環境基準(1リットルあたり0.01ミリグラム)に対して最大で0.003ミリグラム、6街区(水産仲卸売場棟)からは0.002ミリグラム。5街区からは、六価クロムが環境基準(1リットルあたり0.05ミリグラム)に対して0.005ミリグラムが検出された、と報告されています。また、7街区(水産仲卸売場・管理施設棟)からは、ヒ素も六価クロムも検出されなかったとのことです。更に、ベンゼンやシアン化合物、なまり、水銀、カドミウムは、5、6、7街区の地下ピット内からは検出されなかったとされています。
 この結果をどう読むかということですが、私は、これらの物質が含まれていたとしても、環境基準値を大幅に下回っている以上、特段問題にすべき事柄ではないと思います。信頼を失った都の検査結果を信用しない、というなら議論の余地はありませんが、一応公的な検査機関で検査した結果ですから、これを受入れるべきだと思います。
 そして、その結果によれば、有害物質が含まれてはいるものの、大幅に環境基準値を下回っているわけですから、ことさらに問題にする必要はありません。環境基準値を下回っている場合には、それを河川や海など外界に放出することが公に認められているんですから、それを問題視する方がどうかしている、と言わざるを得ません。

豊洲問題はなぜ生じたか

 今回、豊洲市場に関して生じた一連の問題の根本原因は何でしょうか。ひとつは、前述した事務職と技術職の対立があると思っています。もちろん、当時の石原知事が週に一日しか登庁しなかったということも、原因のひとつに加えられるかもしれません。
 私は、より根本的な原因は、「東京都の財政が豊かすぎる」ことにある、と睨んでいます。つまり、東京都は、財政収入が韓国の国家予算に匹敵するほどの予算規模があり、国からの交付金を受け取っていません。国のお金が入りませんから、会計検査院の検査を受ける必要もありません。
 国や一般の地方自治体にとっては、国の税金を原資とする以上、会計検査院の検査を免れることはできません。

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 会計検査院の検査は、受検した経験のある人ならお分かりのことですが、大変厳しい検査です。決して個人の懐に入れているわけでもないのに、「使い方が適切でない」だの、「所期の目的を達していない(=いわゆる未達事業)」だのと、さまざまな指摘を受けます。そして、その結果は、マスコミに公表され、「○○億円の税金の無駄遣い!!」などといった表現で、大きく報じられます。ですから、国や一般の自治体の職員は、予算の使途について厳しい行動規範が求められているんです。
 ところが、国からの補助金を一切受けない東京都は、身を律するための外部的制約が一切ないのです。伏魔殿になるのはいわば当然なんです。舛添知事が19人もの随員を引き連れ、ファーストクラスで海外出張し、スイートルームに宿泊し、オープンカーで手を振ることができたのも、すべて税金の使途の自由度が大きいからなのです。
 今回の一連の杜撰な対応が許されたのも、そのような背景があると断じて差支えないでしょう。多分、鳥越俊太郎氏や増田寛也氏が知事になっていたとすれば、都政に対してこのような毅然とした態度をとっていなかったと思います。石原知事や舛添知事の路線を継承していたとみて間違いありません。
 小池知事は、嘗て女性初の防衛大臣を務めた時、就任早々に防衛庁のドンと言われた守屋次官を退任させ、後任に警察庁出身の西川官房長をあてる人事を決断しました。これに守屋次官が強く反発し、最終的には小池防衛相も守屋次官も辞めることで決着したなんて「事件」もありました。小池知事にはそのような気骨もあるんです。
 その小池知事でなければ、今回の一連の問題が正面に出てくることはなかった筈です。その意味でも、私は、小池知事の胆力に敬意を表しています。稲田防衛大臣を総理に近い人物という評もありますが、失礼ながら、前髪を垂らした根暗の感じと外交力に大きな不安があります。小池知事の方が根が明るく、国際性に富んでいます。彼女の方こそ、むしろ総理に近い、いや相応しい人物と思いますが、いささか買いかぶりすぎでしょうか。(H28・10・10記)

 
 

 
 

  

 

 
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