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高齢者のアクセルブレーキ踏み間違い事故報道の真の狙いは何か

高齢者のアクセルブレーキ踏み間違い事故報道の真の狙いは何か

マスコミの報道に違和感

 このところ、高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故(以下面倒なので、単に「踏み間違い事故」と言います。)が多発しています。少なくとも、連日、高齢者による同種の大事故が報じられています。これほど毎日報じられると、何とか対策を講じなければいけないのではないか、いや、対策を講ずべきだと思うのが人情というものです。

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 しかし、私は、70年以上生きてきた経験から、基本的にマスコミというものを信用していません。このようにある特定の現象にマスコミの報道が集中するときは、「何かおかしい、何か裏があるのではないか」、「はは~ん、今度はまた何か新しい規制を考えているな」と思う習慣がついているんです。
 私たちは、これまで本当に多くの作為であれ不作為であれ、誤った報道によって振り回されてきました。遠くは教科書の書き換え騒動、慰安婦報道、鈴木宗男・佐藤優事件、遺跡発掘をめぐるゴッドハンド事件、近くは交響曲の佐村河内事件、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ当選なども、マスコミの垂れ流す情報を信じていたら、とんでもない誤りを犯すような事象を数多く経験してきました。
 あれほど大きなニュースになった小保方晴子さんのSTAP細胞事件でも、彼女の著した「あの日」なんていう本を読むと、私たちの方が間違っていたのではないか、むしろ彼女の方が被害者だったのではないか、という気さえします。いつの日か、「見直し」がなされる日が来るような気がしています。私たちは、マスコミの報道に流されず、常に冷静に世の中の動きを見ていく必要があると思います。

高齢者より若者の方が踏み間違い事故は多い

 というわけで、マスコミの報道に流されず、高齢者の踏み間違い事故について、検証してみたいと思います。
 ここに一つのデータ(下図参照)があります。出所は、財団法人「国際交通安全学会」です。このデータは、平成17年から19年まで3年間の合計データをまとめたものです。

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 このデータによると、70歳以上の高齢者の踏み間違い事故件数は6,808件となっており、かなり高いということが分かります。しかし、同時に、18歳から29歳の若者の踏み間違い事故も多いことも分かります。高齢者よりも、遥かに多い9,564件です。要するに、アクセルやブレーキの踏み間違い事故の件数(絶対値)は、高齢者よりも、若者の方が遥かに多いのです。
 マスコミの報道などを見ていると、このような報道にお目にかかったことはありません。件数だけを見れば、若者の起こす踏み間違いの事故の方が多いのに、なぜ彼らの事故は取り上げられず、高齢者の事故ばかりが報じられるのか。先ず、この点から考えてみましょう。

事故率も若者の方が高い

 通常、このような場合、若者の方が人口が多いからではないか、と考えるのが普通です。事故件数が多いか少ないかというのは、母数となる人口に左右されます。つまり、事故率です。1000人当たりどのくらいの割合で事故を起こすのか、ということが判断の基準となります。
 この国際交通学会のデータによれば、平成16年当時の18歳から29歳までの人口は1930万人、これに対して70歳以上の高齢者人口は1753万人ですから、確かに若者の方が人口が多い。人口が多いから事故件数も多い。

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 でも、その人口差は僅か10%です。これに対し、事故件数は40%もの差があります。つまり、踏み間違いによる事故率は、高齢者よりも若者の方が遥かに高いのです。このことがなぜ報じられないのでしょうか。高齢者の事故が問題だというなら、同時に、より事故率の高い若者の事故も同じように問題にされるべきでしょう。
 この点について、「国際交通安全学会」は、若者の方が事故が多い理由を、次のように述べています。
 第1の理由は、若者の方が運転する機会が多いこと
 第2の理由は、免許取立てにによる運転操作が未熟なこと
この2つです。
 被害を受ける方からすれば、命に係わることですから、運転する機会が多いとか、運転操作が未熟だなんて言われても困ります。運転操作が未熟なら、教習所でもっとしっかり教習してから免許を与えろよ、というだけのことです。なぜ非難の矛先が高齢者だけに集中し若者に集中しないのか、アンフェアだと思います。若い人について、「若いんだから少しくらい大目に見てもいいじゃないか」という言い方が通るなら、高齢者も「年寄りなんだから少しくらい大目に見てもいいじゃないか」という理屈も通ることになります。

若者の事故が多い事への私見

 これはきちんとしたデータがないので、独断と偏見に属する私見ということになります。若者の事故が多いのは、若い女性ドライバーが寄与するところが多いのではないでしょうか。

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 例えば、私の妻は既に70歳に達しましたが、未だにバックでの車庫入れが苦手です。白線が引いてあるんだから、それに合わせればいいんだ、と言ってもなかなか合いません。バックしながらのハンドル操作が本当に苦手なんです。「あれ、右に回すのかな、左かな」なんて言いながら、何度やっても同じことの繰り返し。何年経ってもほとんど上達しないんです。なるべく文句を言わないようにしていますが、それでも時々「頭の中が捩じれてるんじゃないか」などと言ってしまうんです。
 また、嘗て私の事務所に乗用車が突進してきて、ドアを打ち破った事故がありました。アクセルとブレーキを踏み間違えたんです。私は気絶しそうなくらいに驚きました。誰が運転していたのかと見ると、若い女性でした。その時は「若い女性でも、アクセルとブレーキを踏み間違えるんだ~」と意外に思ったという記憶があります。
 私は決して女性差別で言っているのではなく、男と女には、生まれながらに脳の構造に何か違いがあるのではないか、という気がしてならないのです。あくまでも私見です。

趨勢的に高齢者の事故は多くなっているのか

 次に、高齢者の起こす踏み間違い事故は、趨勢的に多くなっているのか、という点について考えてみましょう。
 これほど高齢者の踏み間違い事故が大きく報じられるなら、きっと趨勢的にも高齢者の「事故率!」が高まってきているに違いない、と普通なら思うはずです。いや、誰でもそう思うのが当然です。
 そこで、人口の推移と事故件数を対比させてみることにしましょう。下の表は、平成16年と平成25年における若者人口(18歳から29歳)と高齢者(70歳以上)の人口と踏み込み間違い事故の推移を対比させたものです。

図1

 
 本当は、この表の事故件数を若者世代と高齢者世代に分けて表示しなければ正確な相違を示すことはできません。しかし、残念ながら、いろいろ探しても、詳細な数字が分からないんです。
 数字が判明次第、掲示しますが、この表の段階で言えることは、若者世代の人口は10年間で20%も減少するというかなり急速な変化をしているということです。しかし、高齢者世代は同じ10年間でそれを上回る32%も人口が増えているのです。
 これほど急激に高齢者人口が増えれば、事故の絶対件数も増えるのは当然です。ですから、単に「高齢者の事故が増えている」と皮相的な表現をするのでは、フェアではありません。人口が増えれば事故も増えるのは当然です。増えたというなら、「事故率」を前提とすべきなのです。
 しかも「自動車保険ガイド」によれば、この10年の間、全体の事故件数は、7,660件から6,402件へと逆に減少しているんです。つまり、高齢者の人口は32%も増えているのに、踏み込み間違い事故の全体の件数は逆に減少しているのです。
 それなのにマスコミの報道は、「高齢者が増加し、そのため踏み込み間違いの事故が増えている」という視点からのみ報道しているのです。これでは高齢者ばかりが一方的に非難されているようで、公平ではありません。

高齢者への負担増が狙いか

 このように高齢者による踏み込み間違いの事故率は減少しているのに、マスコミが連日高齢者の事故を大きく取り上げているのはなぜか。私の見るところ、高齢者にまた新たな負担を課することが目的、と考えられます。
 つまり、高齢者に対して、行政目的として「認知症の検査を義務付ける」、「高齢者特別教習の年齢を引き下げる」、「免許証の自主返納を促す」などが考えられます。高齢者人口が増加していますから、取り締まり当局がそこに狙いを定めるのは当然です。
 これによって得をするのは誰か。医療業界と警察と自動車教習所です。認知症の検査が強化されれば、医療業界は文句なしにお客が増えます。高齢者教習が強化されれば、自動車教習所は潤います。この教習所には警察OBもかなりの数お世話になっている筈です。

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 マスコミが高齢者の事故を大きく取り上げてくれれば、高齢者を狙い撃ちした負担増も受け入れやすくなります。マスコミも、警察の言うことをきいていれば、取材もしやすくなるなど何かと好都合です。
 これまでも酒酔い運転の取り締まりを強化するときは、酔っ払いによる悲惨な事故をふんだんに提供しました。シートベルトを普及させるときは、シートベルトなしで運転した時の被害がどれほど大きいかなど、悲惨な事故をタイムリーに提供してきたのも警察です。最初は車の前席だけ、次いで後部座席も、その次には幼児にもチャイルドシートの着用が義務付けられました。そして今では、観光バスの乗客にも着用を義務付けました。楽しい観光旅行もシートベルトで固定されたんでは興ざめです。でも、警察の提供する悲惨な事故情報の前では、国民は黙るしかありません。茹でガエルのように、最初は真綿で首を絞めるように、少し窮屈になったかな、という程度に締めます。そして気がついたときには、もうその状態から逃げ出すことはできない。こうして今でも余裕のない社会が、さまざまな規制でますます息苦しくなっていく。私たちは、これを繰り返してきたのです。
 今回の連日の報道を見るまでもなく、必ずや高齢者に対しては新たな負担を求めることになります。高齢者による踏み込み間違いの事故率は決して高くなっていないにもかかわらず、です。さあ、みんなで一緒に茹でガエルになりましょう。(H28・12・6記)

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