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東芝を外国企業の買収攻勢から守ろう

東芝を外国企業の買収攻勢から守ろう

東芝が債務超過

 東芝が揺れています。今年3月末に1,500億円の債務超過に陥る可能性が高く、このため収益性の高い半導体事業を分社化する方針を決めた、とのニュースが流れました。半導体の記憶媒体事業を分社化して作る新会社「東芝メモリ」を事実上売却しようというんです。

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 早速、台湾の鴻海精密工業やウエスタン・デジタル、それに海外の投資ファンドが関心を示しているようです。特に、シャープを買収した鴻海精密工業の郭台銘会長が東芝への出資に「非常に真剣だ」と述べるなど、強い関心を示しています。シャープに続き、東芝までも台湾企業に買収されるのは、日本人として誠に情けない、やりきれないという気持ちで一杯です。
 東芝は2015年にも利益のかさ上げなどの不適切会計処理が発覚し、信頼が大きく低下しました。「不適切会計処理」なんていう穏やかな言葉を使っていますが、本当は「粉飾決算」です。金持ちと未成年女子との淫行を「不適切な関係」と表現するのと同じ偽善です。
 利益のかさ上げは、立派な犯罪行為なんです。ホリエモンこと堀江貴文氏は同じことをやって逮捕され2年6か月の実刑を言い渡され、収監されました。このように小規模の会社なら粉飾決算として即逮捕となりますが、大企業なら不適切会計処理になります。マスコミに巨額の広告費を投じてくれる大企業に、マスコミは甘いのです。これが日本の現実です。

経済原則で放置できない

 それはともかくとして、今回の東芝の半導体事業の売却話、日本国として単なる経済原則に委ねておいてよいのでしょうか。資金調達の都合上、分社化することはやむを得ません。これを国内の同業他社が買収するというなら、それでも構いません。技術が国内に留まるからです。でも、海外の企業や投資ファンドに買収されることには、大きな抵抗を感じます。明らかに日本の技術流出になるからです。譬えは変ですが、「三越」が外国企業に買収されるのとは違うということです。三越の外資乗っ取りは、販売のノウハウの損失はあるでしょうが、「日本の技術流出」の問題ではありません。

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 でも、東芝の持つ半導体事業や原子力事業は、多年の技術の蓄積の上で成り立っている産業です。会社が傾きました、外国企業が買収しました、というのでは余りにも日本国として知恵がなさすぎます。国としても策がなさすぎます。東芝がもつ技術レベルは世界のトップクラスです。その技術蓄積は、長期にわたって培われたものであり、一朝一夕に成し遂げられたものではありません。
 それがWH(ウェスチングハウス)の買収失敗という一事で、根底から崩れ去ってしまうというのでは、余りにももったいない。しかもこの失敗、福島原発の被災に伴う技術基準の見直しが、その根本原因で、いわば天災によってもたらされたものです。決して見通しが甘かったというのではありません。天災を見通せなかったのが甘い、と言われればそれまでですが、不可抗力と言うべきでしょう。もちろん経営陣は、それなりの高額の報酬を得ていたんですから、きちんと買収失敗の責任をとってもらう必要はあります。結果責任もあるからです。
 ただ、これだけの企業実績と豊富な陣容を擁する技術集団を、いとも簡単に外国のハゲタカ企業に買収されてしまう。それをただ傍観するのみ。これでは日本人としてどうにも納得できないのです。

産業革新機構の出番です

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 日本には「産業革新機構」という組織があります。シャープの買収に際して、鴻海と競合した会社です。この会社、一応は株式会社の形態をとっていますが、資本金3,000億円のうち2,860億円を国の財政投融資資金で賄っています。95%のお金を国が負担してるんですから、国有の株式会社と言ってよいでしょう。「オープンイノベーションを通じた次世代産業の育成による国富の増大というミッション実現を行う」というのが、謳い文句になっています。シャープの買収に乗り出したくらいですから、東芝の買収に出動できない理由はないはずです。
 買収対象となる会社に出資して株式を取得し、対象会社と一体となって企業価値を向上させることが目的です。前述したように、東芝の挫折は、東日本大震災に伴う福島原発の爆発に起因するものですから、東芝の技術力に問題が生じたわけではありません。いわば不可抗力です。
 ですから技術力に問題が生じたというのとは次元が異なります。革新機構が、株式の保有という形で当面の資金援助を行い、将来、企業の業績が回復した暁に、保有株式を売却して投資回収を行う。まさに産業革新機構設立の目的に叶うではありませんか。
 また、国益を守るという観点からも、この場面では産業革新機構の出番だと思います。シャープは、鴻海に敗れましたが、東芝については、是が非でも革新機構で買収していただきたい。シャープの場合は、主にテレビを中心とする家電技術であり、既に韓国や中国のメーカーに追いつかれている成熟分野でもあります。しかし東芝の半導体事業は、産業の米とも言われるほど、産業の成長に欠かせない技術です。また、原子力技術も、将来を見据えるならば、失ってはならない分野だと思います。
 

ジャパンファーストで行くべき

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 東芝にはグループ会社を含めれば16万7,000人の従業員がいます。鴻海に買収されても、即失業するわけではないとしても、これらの従業員のモチベーションは大きく低下するはずです。鴻海傘下の企業の従業員として働くのと日本企業の社員として働くのでは、意欲が違ってくるからです。人間は意欲をもって働くのと、嫌々働くのとでは、能力の発揮度合いは全く異なります。
 アメリカでのトランプ大統領は「アメリカファースト」を掲げ、米国の雇用を守る、と宣言して当選しました。同じように日本に「ジャパンファースト」が許されない理由はありません。
 東芝の有する原発技術も、長期的にみれば日本国内に留めおくべき技術です。3.11により原発には負のイメージがついてしまいました。でも、すべての技術に共通ですが、最初から完成形はありません。飛行機が安全な乗り物になるまでに、どれほど多くの人命が失われたか分かりません。多くの失敗、トラブルを乗り越えたからこそ、今日があるのです。新幹線だって、最初から新幹線になったわけではありません。新橋、横浜間の蒸気機関車からスタートして今日があるのです。三河島事故をはじめ、多くの人命も失われました。それでも私たちは、将来の成長、安全を夢見て今日に至っているのです。今はリニア新幹線が現実のものになりつつありますが、更に進んで真空チューブ列車の時代になるかもしれません。技術は、常に過渡期にあるのです。

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 原発だって同じではありませんか。毎日私たちが見ている太陽だって、宇宙に浮かぶ巨大な核融合炉です。その核融合炉のお陰で、私たちは命をつなぎ、生活しているんです。福島原発の事故は大変不幸な事故ではありました。民主党政権下で生じたということも、不幸を増大させました。それでも、幸い、直接人命は失われていません。今回の福島の事故を教訓に、改善を積み重ねていけば、事故のない、あるいはあっても最小限に留められる方策が見いだせるはずです。それが成長、進化というものです。一度の失敗に懲りて、今ここで歩みを止めてしまったら、将来の成長はありません。その間にも世界は確実に歩みを進めていきます。技術大国日本が、今ここで歩みを止めてしまって良いはずがありません。
 東芝の原発技術を温存する上からも、是非とも革新機構に東芝株の買取りをお願いしたいと思います。国民の多くは、必ずや革新機構が乗り出すことに対して、好感を持って迎えるはずです。
 あ、私は東芝の株は一切持っておりませんし、親戚縁者に東芝の関係者はおりません。念のため。(H29・3.3記)

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