時事寸評 書評コーナー

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日本は絶対にAIIBに参加してはいけない

日本は絶対にAIIBに参加してはいけない

自民党の変質が気がかり

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 中国の主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB。以下、「AIIB」と言います。)に参加してはならない、とこのコーナーで何度か主張してきました。自民党首脳も、アメリカともその方向で足並みをそろえてきました。しかし、このところ、何だか自民党の雲行きが変わりつつあるように感じられ、心配でなりません。
 今般、中国で開かれた「一帯一路フォーラム」に、二階幹事長が参加しました。また、二階幹事長に安倍首相の親書を持たせたうえ総理秘書官も同行させるなど、かなり前のめりの姿勢であることが気がかりです。
 特に、二階俊博幹事長は、同行記者団と懇談した際に、中国主導のAIIBに日本政府が早期に参加を決断すべきとして、「参加をどれだけ早い段階で決断するかだ。あまり大きく後れを取らないうちに対応する心構えが必要だ」と述べたというのです。
 私は、何度か繰り返し主張してきましたが、中国の主導するAIIBと一帯一路政策には絶対に協力してはならない、と確信しています。以下、その理由を述べます。

中国接近の理由

 中国は、今、日本にかなりすり寄ってきています。「懐に出刃包丁を隠し持ったエビス顔」というやつです。このエビス顔の理由は何でしょうか。自分達が困っているからです。中国という国は、極めて狡猾で戦略的な国です。自分の力の強いときは居丈高に振る舞って近隣諸国を威圧し、自分が窮地に陥ると、途端に気持ちの悪い作り笑顔ですり寄ってきます。

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 なぜ中国は困っているのか。その理由は簡単です。中国経済が崩壊しつつあるからです。崩壊の途中というよりも、既に崩壊したという専門家も多くいます。中国経済は、当局の発表によれば、2016年の実質国内総生産(GDP)は、対前年比で6.7%増加したということになっています。しかし、まともな経済の専門家で、こんな公式発表を信じる人は誰もいません。中国政府の発表するこれらの経済統計は、全く信用することができないからです。
 嘗て、李克強首相は、遼寧省の幹部だった頃、中国の経済統計で信用できるのは、電力消費量と貨物輸送量、それに銀行融資残高の3つだ、と述べたことがあります。いわゆる李克強指数というやつです。しかし、今ではこれら3つの指数でさえ、実態を反映していない作為的な数字だと言われています。
 高橋洋一、上念司、三橋貴明、渡邉哲也、藤井厳喜、宮崎正弘の各氏、それに中国ウオッチャーとされる福島香織氏などによれば、今では中国の発表する数字で信用できるのは「貿易統計」のみ、とされています。貿易統計は、相手国がありますから、誤魔化しがきかないからです。それによれば、2016年における中国の輸出額は何と-7.7%、輸入額は-5.5%だというのです。
 輸入額が-5.5%ということは、国内の消費が大幅に減少している何よりの証拠です。国民が消費に回せるお金がない、ということです。どうしてそんな国が6.7%も、経済成長をすることができるのでしょう。あり得ないことです。

日米の参加がなければ自然崩壊

 中国のすり寄りのもう一つの理由は、日米が参加しなければ、債券発行に際して、格付け機関の格付けが得られないということです。AIIBや一帯一路構想は、東南アジアや中東など、インフラ後進国に対して資金を融通してインフラの整備を行うものです。そのためには、原資として債券を発行し資金を調達する必要があります。

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 債券を発行するためには、格付けが重要になります。債権は、トリプルAの債権なのかBマイナスの債権なのかによって、金利にも違いが生じます。当然、一流企業の債権ならトリプルAでも、中小企業の債権ならダブルCとして金利が高くなるのは理の当然です。
 日米が参加しないような債権で、しかも組織の本部が北京に置かれ、中国だけが拒否権を持つような不透明な運営をする組織が発行する債券、これがトリプルAの格付けになるはずはありません。それどころか、現在は、格付けそのものが得られていないのです。
 このような現状では、AIIBも一帯一路も頓挫せざるを得ないのです。だからこそ、日本や米国に縋り付いてくるのです。参加国の数が130か国に達するなんて言っていますが、そんなこと問題ではないのです。ゴミはいくら集めてもゴミなのです。中国は、そのゴミの親分にしか過ぎないのです。私たちは、先ず、そのことをきちんと認識しておくことが重要です。

大局を見ないマスコミ

 マスコミの論調の中には、多くの国が参加する状況をみて、「バスに乗り遅れるな」式の論を展開するものがあります。しかし、これは、木を見て森を見ずの議論です。
 若いころ私は、新聞やテレビの言うことは素直に受け入れていました。それだけ純粋だったのかもしれません。でも、長じてからは、マスコミは平気で嘘をつく、いやそれどころか平気で事実を捻じ曲げて報道する組織である、ということに気づくようになりました。このため、ありもしない慰安婦問題や南京大虐殺事件がでっち上げられ、それが国際問題になったりします。侵略を進出に書き換えたということで有名になった教科書書き換え問題も、マスコミ人は誰一人事実を検証もせずに報道し、中国もそれに合わせて怒っていたんですよね。
 このAIIBや一帯一路構想への参加問題も、マスコミの人たちは、本当に日本にとって賢い選択なのかどうか、どれほど真剣に考えたのでしょうか。私には、彼らが真剣に検討したとは到底思えないのです。

戦略的意図がある

 AIIBや一帯一路構想には、中国の明確な戦略的意図があります。
 第一の狙いは、経済的な側面です。崩壊寸前、いや既に崩壊した中国経済を立て直すためには、東南アジアや中東、アフリカなどで生じるインフラ需要を取り込み、中国国内で余剰になった鉄鋼やセメントなど余剰生産物の捌け口として利用したい、ということです。同時に、国内で失われた雇用の場を海外に求める、という狙いもあります。それほどに中国国内の経済は急減速しているのです。

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 急減速の経済を立て直す手立てはありません。中国は、唯一安くて豊富な労働力を武器に、世界の工場としての機能を果たしてきました。しかし、中国人労働者の人件費は既に大きく値上がりしてしまいました。2005年の製造業の平均時給は1.20ドルであったものが2016年には3.60ドルまで上昇しました。10年で3倍です。もやは中国人民は、低賃金労働者ではなくなったのです。しかも、何かといえば、労働争議を起こし、暴れる。経営者としては堪ったものではありません。
 そのうえ、模倣国家ですから、創意工夫を尊重する風土がありません。自ら努力をせず、何でもパクッて済まそうとする体質はそう簡単に改めることなどできません。
 それでも民主主義国家なら、政権を交代し、抜本的な対策を講じるということも可能ですが、一党独裁国家ではそれもできません。あくまでも強権的に対応するしかないのです。

軍事戦略の狙いも

 二つ目の狙いは、軍事的な側面です。中国は、経済力が増すにつれ、眠れる狸から獰猛な獅子に変身しました。ウイグルやチベットを侵略し、自国領としました。台湾も、歴史上、一度も中国領になったことがないのに、中国の一部だと言って憚りません。南シナ海においても勝手に九段線なる線を引き、この内側は中国の海だと決めつけて憚りません。ハーグの国際仲裁裁判所が下した判決にも、「ゴミ屑」と決めつけて一切無視を貫いています。

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 東シナ海においても、尖閣諸島への領土的野心を剥き出しにしています。私は、毎日、「八重山日報」という沖縄の新聞を読んでいます。この新聞では、尖閣列島周辺で領海侵犯を繰り返す中国艦船の情報が毎日掲載されています。5月14日の1面に「中国船が15日連続」で領海侵犯や接続水域への侵入を繰り返している、との記事が掲載されています。
 日本が強く反論しないのをいいことに、今では沖縄も中国の領土だなどと言い始めています。膨張主義国家の典型です。アメリカに対してさえ、軍事的に対抗しようと、航空母艦の建造に励んでいるのは周知のとおりです。
 今の世界で、中国を侵略しようなどと考えている国はどこにもありません。それなのに毎年、軍事費を10%以上も増大させ、周辺国に軍事的脅威を与えているのです。
 このように今の中国は、世界の覇権国となるべく、経済力・軍事力の強化に励んでいます。AIIBや一帯一路構想は、このような中に位置付けられているのです。ですから、一帯一路として位置づけられる港湾や鉄道などのインフラは、同時に、軍事的目的を持っていると理解すべきなのです。
 港湾が整備された暁には、必ずや中国軍の寄港地として位置づけられる筈です。そういう軍事的戦略性が秘められている、ということを私たちは知るべきです。

人民元は危機的状況

 中国の外貨準備高は、既に3兆ドルを切ったと言われています。2014年当時は、4兆ドルを超えていましたから、僅か3年で1兆ドルも外貨準備を減らしたということになります。しかも、2014年当時は、1ドル6.1人民元の価値がありましたが、現在では1ドル6.9人民元というレベルまで、人民元の価値も落ちています。
 そもそも人民元というものに対して、国際社会は信を置いていません。現地に住んだことのある人なら分かることですが、銀行のATMはもちろんのこと、銀行の窓口でさえ、偽札が混じるのは当たり前という国柄です。そんな国の紙幣を信用する人がいるのでしょうか。第一、中国人自体が一番人民元を信用していません。普遍的価値を持つ金が値上がりしているのはそのためです。
 これまでは中国経済が急成長し、貿易量が拡大してきたことは事実です。その結果、いやが上にも人民元が使われる量と範囲は広がりました。その勢いを借り、中国政府はIMFに対し、人民元を国際通貨、すなわちSDRとして承認するよう強く働きかけを行い、結果的に条件付きながら認められました。現在のラガルド専務理事は、中国が専務理事就任をバックアップするとの裏取引の結果、就任した人物とされています。成功報酬としてSDR承認を専務理事に求めたのです。
 しかし、SDR通貨になっても、人民元に対する信頼が確立されたわけではありません。なぜなら、人民元は完全に中国共産党によって「統制」されているからです。独裁国家によって統制された通貨が国際通貨であるはずがありません。

外貨持ち出しの制限

 一例を挙げれば、現在、中国国内からドルを自由に海外に持ち出すことはできません。中国人が持ち出すことができないだけではありません。外国人すらも持ち出すことができないのです。

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 中国から撤退しようとする日本企業が資金持出しの制限を受けて撤退できない状況にあるため、日本の経済界は史上最大の訪中団を結成し、昨年9月下旬、陳情のため北京を訪問したなんてこともありました。また、国際問題アナリストの藤井厳喜氏によれば、中国を見限って脱出しようとする民間企業の人たちが、一方的にスパイ容疑をかけられ、帰国できないという例がかなりの数に上ると言うのです。同氏によれば、マスコミに取り上げられないから大きな問題になっていないが、これは事実だというのです。
 外貨持ち出しの制限は、日本だけに限った話ではありません。一昨年10月、ドイツ銀行でも同様の問題が生じました。
  ドイツ銀行は米司法省に140億ドルの罰金を科せられる、という事件がありました。サブプライムローンをめぐって不適格の債務者にお金を貸し、それを安全な投資として他の投資者に転売したから、というのです。ドイツ銀行はその罰金を用立てするため、2015年12月、所有する華夏銀行の19.99%の株を中国人民財産保険に売却したのです。取引価格は230億~257億人民元で、これは約32億~36億ユーロに相当します。
 米司法省に罰金を支払うために用意したのですが、この資金は、今でも中国から持ち出せていないというのです。中国の外貨為替管理局は、ドイツ銀行から何も申請がない、と言ってとぼけているというのです。
 当然、外貨持ち出しの禁止措置は、中国人にも適用されます。中国政府は近く、個人が分割で為替決済を行うことさえ禁止することとし、為替売買の年度総額をごまかせないよう管理する通達を出す、と言われています。外貨管理局の規定では、個人が7日間以内に同じ外貨預金から1回につき約1万ドルを5回以上引き出すこと、また、個人が外貨預金を5人以上の直系親族の口座に移すことは、為替決済の分割行為であるとして認めない、というのです。
 このように、今の中国は、強烈な統制経済の状況下にある、というのが実態です。中国がエビス顔で日本にすり寄ってくる理由が、十分に理解できるではありませんか。

遅らせるほど深刻の度を増すバブル崩壊の後遺症

 日本はバブルを経験しました。バブルの後遺症がいかにつらく長いものであるかも経験済みです。中国も、統計数字は信用できませんが、上海株のピークは2015年6月につけました。その時点で、民間非金融部門の対GDP比が220%から250%程度まで上昇しているのではないかとされています。
 細かな数字はともかくとして、既にバブルの頂点は過ぎているというのが大方の経済人の見立てです。日本の場合は、この時点から長銀や日債銀、拓銀、山一證券などが次々と債務破綻しました。
 ところが、中国の場合は、日本と同じような現象は起きないのではないかと言われています。ほとんどの大手企業はバックに政治家が関わっていることが多く、政治力を使って倒産を防いだり、シャドウバンキングなど、闇の金融機関が暗躍したりするからです。
 しかし、バブルというものは、一時的に支えることはできても、長期的視点で見れば、債務が膨らむばかりで、解消されることはありません。それどころか、手術を先延ばしすればするほど、傷が深くなる。これがバブルの本質です。借り換えを繰り返すほど、借金は増大していくからです。
 となれば、中国のように、既にバブルが崩壊しているのに、無理やりこれを支え続けようとする共産主義体制は、必然的により深刻なバブル崩壊を生じさせるということになります。

二階幹事長の行動は売国的

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 二階幹事長は、日中関係について、「いい方向に変化していると帰国後に報告できるのではないか。今まで寒い関係が続いたことは間違いないが、ようやく春の暖かさが生じてきたので、安倍総理大臣ともよく相談して、誤りなきよう期していきたい」と述べたとされています。
 何という国家観のない下卑た政治家なのでしょうか。ノー天気なんて言葉では天気に失礼です。媚中派の面目躍如です。中国が経済的にダメージを被ることは、軍事力強化にブレーキがかかることであり、周辺諸国への膨張圧力が弱まることを意味します。こういう時こそ、日本の大チャンスなのです。

今こそ毅然と対応すべき

 具体的には、中国がすり寄る姿勢を見せている今こそ、要求すべきは要求する、毅然とした姿勢を見せなければなりません。

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 要求すべきことの第1は、尖閣諸島への侵犯行為の即時停止です。連日、日本の領土である尖閣列島に対し、侵犯行為を繰り返している中国に対して、先ず、これらの侵犯行為を即時に停止するよう求めるべきです。片方で侵略行為を行いながら、もう片方でえびす顔なんて通る話ではありません。
 第2は、ありもしない南京大虐殺事件を国連のユネスコの記憶遺産に登録したことの撤回を求めるべきです。もちろん、ユネスコに対しては、これを取り消すまでは、日本の分担金の支払いを差し止めるべきです。日本が2番目に多い分担金を負担しているというのに、9番目の負担国である中国だけの意見で記憶遺産に登録したのは、手続き的にも極めて不明朗で許されることではありません。もちろん、これを体を張って阻止しなかった外務省の責任も問われなければなりません。
 第3は、南シナ海における仲裁裁判所の判決の受入れです。南シナ海は、日本の石油輸入量の90%以上がこの南シナ海を通ってくるのです。この重要な海域に独善的に線を引き、自国の海だなんて主張されたら、日本の貿易は大打撃を受けます。
 このようなことをないがしろにしたまま、揉み手で迫るAIIBなどへの参加要請を、唯々諾々と受け入れるわけにはいかないのです。これらの要求が通るまでは、絶対にAIIBや一帯一路構想に、日本は参加してはなりません。
 それこそが日本の矜持であり、正当な要求でもあるのです。もっともっと日本の外交力を高めていただきたいものです。
 安倍総理が参加の決断をしたときには、自民党支持を止めます。日本にはやっと健全野党となるべき日本維新の会という受け皿ができたからです。(H29・5・18記)

 

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