時事寸評 書評コーナー

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健康になりたければ病院を減らせ

健康になりたければ病院を減らせ

NHK番組「AIに聞いてみた」

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 タイトルは大変衝撃的なものです。この結論は、AI、すなわち人工知能に聞いてみた結果、このような結論になったということです。AIの能力は、中学生プロ棋士藤井聡太4段の29連勝の際にも話題になりました。もはや、将棋のトップ棋士ですらAIに負ける時代になったのです。その進化したAIが下した診断結果が「健康になりたければ病院を減らせ」だったというわけです。
 この結論は、NHKが「NHKスペシャル」として2017年7月22日に放送した「AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン」という番組で放送されたものです。番組では、公的な統計データや民間のデータ、大学や研究機関の調査など700万を超えるデータを「パターン認識」や「機械学習」という手法を用いて、社会に関する5,000種類の情報の「つながり」や「近さ」をネットワークとして描き出したものです。
 その結果得られた結論の一つが「健康になりたければ病院を減らせ」だったというわけです。

結論に違和感はなかった

 皆さんの中には、この結果を見て、「何を言ってるんだ!」とお怒りになられる方も多いでしょう。病院は病気を治すところ、その病院は多ければ多いほど良いに決まっているではないか、と思うのが普通だからです。確かに、病院は病気を治すところです。ですから病院が多ければ多いほど、病気が治り、病人も少なくなる・・・はずです。
 でも、実際は違うということは、賢明な読者ならご存じのはずです。そう、本当は「医者の数が増えれば増えるほど病人も増える」という厳しい現実を、です。
 では、標題の「健康になりたければ病院を減らせ」は本当なのか。次の表は、人口1万人当たりの病院総数のランキングです。この表から分かるように、人口1万人当たり病院数の多い順、ベスト3は、高知県、鹿児島県、徳島県です。これらの県はさぞかし病人も少なく、そのため県民の平均寿命も長いだろう、と思うのは常識的な反応です。

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 ところが、これら3県の男性の平均寿命は、47都道府県中、徳島県が39位、鹿児島県が43位、高知県が44位だったんです。何と3県とも上位どころか、ワーストテンに入っていたんです。
 つまり、医療体制が整っている県ほど平均寿命が短い、という常識に反する結果が生じていたということです。もっとも、女性に関しては、高知県が21位、鹿児島県が29位、徳島県が30位ですから、辛うじて中位を保っているとは言えそうです。
 逆に、人口1万人当たり病院数の少ない3県について見てみましょう。ワーストワン、つまり人口当たり病院数の最も少ない神奈川県は、男の平均寿命は3位です。ワースト2位の滋賀県は2位、ワースト3位の愛知県も14位です。愛知県を除けば、人口当たり病院数が少なければ少ないほど、平均寿命は長い、ということを示しています。
 もっとも、これは男の平均寿命のデータであり、女性で見ると、18位、13位、40位ですから、それほど極端な逆相関は見られません。
 このように、男の平均寿命に関する限り、標題のような「健康になりたければ病院を減らせ」という結論は、ズバリ適合している、と断定してもよさそうです。

夕張市でも同様の結果

 夕張市は、財政破綻をした町として有名です。財政破綻した町ですから、元気の良い若者は町を捨て、行くところのない高齢者が多く残されました。当然、高齢化率も上昇しました。財政破綻をした上に、高齢者の割合が増加するんですから、財政負担はより一層深刻になります。当然、病院も減少しました。171床あった市立総合病院はやむなく閉鎖され、19床の市立診療所と3人の開業医だけになったんです。現在、高齢化率は48・9%と全国の市で最高。人口も、炭鉱最盛期の13分の1の約8,700人にまで減少してしまいました。
 その結果どうなったか。その結果については、地元で開業医をしていた森田洋之医師の講演会の内容をお読みいただくことで、答に代えたいと思います。

財政破綻後の夕張市で開業医をしていた森田洋之氏の講演(一部のみ)

◆死亡率、医療費、救急車の出動回数、全て下がった

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 何か(夕張には)すごい世界が広がってるなって思ってましたけど、実は印象だけじゃなくて、数字にも出ていました。例えば、救急車の出動回数。下がっちゃったんですね。ちなみに全国的にはこの10年でほぼ1.5倍。高齢化率が高まれば高まるほど、救急車の出動回数はドンドン増える。普通に考えたらそうだと思います。でも、高齢化率1番の夕張市。高齢化率下がってはいないんですよ、まだまだ上がってるんです。2,3年前は43%でした。今45%。まだまだ上がってる。でも何とこうなっちゃいました。ほぼ半分ですね。
 救急車が呼ばれなくなった。どういうことか。さっきのお婆ちゃん、救急車呼ばないんです。なぜか。だって、もう、命の終わりを受け入れてるんですね。救急車っていうのは、この命を助けてくれ、っていう叫びのもとに呼ばれるものです。あのお婆ちゃんは、助けてくれって思ってないんです。最後まで自分の家で生活したいって思ってるんです。だから呼ぶのは訪問看護師、在宅医。もちろん、発熱とか一時的なことで、これは良くなるよってことであれば家で点滴したりして治療します。でもそうでない時は、残念ながらお看取りすると。そういう世界です。だから救急車が減る。
 しかも医療費も減っちゃったんですね。高齢者一人当たりの医療費。全国的にはものすごい勢いで増えてます。夕張市は一時よりだいぶ下がった。すごいですよね。たぶん、救急車が減るとか、高齢者の医療費が減るとか、そういう地域って全国でもほとんどないと思います。でも夕張市は出来た。しかもですね、何と死亡率まで下がっちゃったんです。これがすごい。日本人の死因の1位がガン。2位が心臓系。3位が肺炎。1,2,3全部下がっちゃった。すごいですよね。

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 何がポイントか。多分、僕が思うに「予防の意識」ですね。市民が予防のほうに意識を変える。病院があるから安心、ではなくて、しっかり自分で出来る事はやるんだぞ、と。この予防の意識。日本人の病気の大部分は、生活習慣病からおきているといいます。だったら、生活習慣を変えればいいじゃないですか。みんな分かってるけど、できない。
 あともうひとつ。終末期医療。残念ながら日本人の死亡率は100%。日本人だけじゃないですけどね。いずれ医療が解決できない問題がやってきます。その時に、しっかりと終末期のイメージを持っているか、持っていないか。家族と話し合っているか、話し合っていないか。地域の人たちとそういう話をしているか、していないか。もちろん、文章にまとめてればいいですよ。そこまででなくても、地域で話をしている、家族で話をしている、その事実があるだけでも結果は全然違うと思います。さらに、地域社会。若い時は予防の意識を高める。地域のみんなで予防の意識を高める。そして年をとってきたら、地域みんなでその命を受け止める。そういうあたたかい地域社会を作る。これがポイントだと思います。

長寿NO1の長野県は

 日本で一番の長寿県は長野県、ということは広く知られています。確かに男性は79.8歳でトップです。女性も86.4歳で5位にランクされています。男女ともに、ベスト5に入っているんです。
 では、人口1万人当たりの病院数はどうか。長野県は31位で全国平均よりもかなり下位に位置付けられています。このことは、「病院数が多いから長生きするということではない」、ということをはっきりと示しています。

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 長寿県としてトップを走る長野県ですが、昭和40年代には、高血圧などを原因として引き起こされる脳卒中の死亡率がワースト1になるなど、生活習慣の改善が課題とされていました。このため、長野県では、医療環境の向上、健康的な住環境への改善とともに、地道な栄養教育を行うなど、行政指導のもと、健康な環境づくりに取り組みました。
 県は、平成27年3月に、その結果を「長野県健康長寿プロジェクト・研究事業報告書(健康長寿要因分析)」として発表しています。この報告書によれば、長寿の要因は、次の3点だと結論付けています。
①高い就業意欲と、積極的な社会参画
 平成19年度の就業率、男性5位、女性4位に加え、男性の高齢者就業率1位、平成18年度の女性の社会活動・ボランティア参加率14位など、県民の社会参画への高い意識
②地域医療保険活動の充実
 出張診療や、へき地巡回診療などを行い、医療格差の解消に努めるとともに、夜間・休日の診療体制の整備など、県民が安心して医療行為を受けられる環境づくりに取り組んだ。そのほか、保険補導員や食生活改善推進員による、具体的な健康指導など、県民と医療機関を結ぶサービスを充実させた
③健康意識の高さ
 県をあげた健康運動に呼応するように、平成22年の統計データでは、男性の習慣的喫煙率が全国47県中44位、メタボ該当者の割合45位、さらに、女性の野菜摂取量1位という結果が出ており、日々の生活における県民の健康意識の高さ
 このように、長寿県長野は、行政が積極的に動くことにより達成されたものです。決して病院に丸投げせず、住民意識を変えさせるという方向に舵取りをしてきたことが分かります。

長野県と夕張市に共通していること

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 ここにあげた夕張市と長野県に共通していることは何でしょうか。「病院が少ない」という所与の条件を克服するにはどうすればよいかということを、皆が考えたということです。夕張市では、住民自身が覚悟を決めることによって克服した。長野県は行政が中心となって住民意識を変えさせた、ということです。つまり、この両者に共通しているのは、「住民の意識が変わった」あるいは「住民意識を変えさせた」ということです。
 夕張市は、厳しい現状を前に、住民自身が意識を変えざるを得なかった。長野県は行政の主導により住民の意識を変えた、という違いはありますが、共に、「住民の意識が変わった」という点では共通しているのです。自律的か他律的かの違いはありますが、「住民の意識!」が変わらなければ何も変わらない、ということです。
 例えは違いますが、家で親を罵り暴力を振るっていたようなバカ息子でも、一旦、都会に出て就職したりすると、ガラッと人が変わり、親思いになったりすることがあります。他人の飯を食うことによって、家の有難さが分かったからです。家にいる間は、いくら親が言っても言うことを聞きませんが、他人の釜の飯を食べることによって、家の有難さが実感できるようになったのです。
 病院数が少ない、ということも似たようなものです。行政側の財政が何とかなる間は、少しくらい病院数を増やしても不満たらたら。もっと増やせと要求ばかり。バカ息子状態です。でも、財政破綻という現実を目の前に突き付けられると、否応なく住民自身、意識改革をせざるを得なくなるのです。

人生最期の迎え方

 以上のことから言えるのは何か。それは、「健康で長生きするために必要なのは病院の多さではなく、住民の健康意識を高めること」だということです。住民意識とは、病院に頼ることではなく、自ら健康に生きる方法を模索する、ということです。
 すべての人間に死は訪れます。99.99%ではなく、100%です。死が迫ってきた時に、開腹手術でも胃ろうでも何でもやりたい、1分1秒でも長く生きたい、と思うのは自由です。しかし、誰にでも死が訪れるなら、「自分の人生は幸せだった。もう余計な医療行為は一切必要ない。」という感謝の気持ちで死を迎える方が、はるかに幸せではないでしょうか。それは心の持ちようひとつなのです。

 実は、前述した夕張市の森田洋之医師の話には、次のような内容も含まれていたんです。

 50代、60代で元気な人は、まあいいでしょう。じゃ、80代、90代の爺ちゃん婆ちゃん。さすがに病院がなかったら不安でしょうがないんじゃないかと思いませんか? 思いますよね。この方、90代の女性、お婆ちゃんです。まだお元気な頃の写真。この人ですね、診療所で肺に影が見つかって札幌の病院で検査しました。そしたら肺がんが見つかったんですね。

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 肺がんが見つかったら、普通は抗がん剤をやるとか、入院して治療しましょう、って話になります。もちろんそういう話をされたそうですが、このお婆ちゃんは、札幌に行って1回検査をしたきり、2度と行かなかった。夕張に帰って、最後まで生活しました。
 その亡くなる直前の写真がこれ。すごく良い笑顔ですよね。亡くなる前の日の晩まで、まんじゅうを食べてたそうです。好きなものを食べて、ご家族に、地域の人々に囲まれながら、最後まで生活することをこの人は選んだということですね。こういうことをしている高齢者がいっぱいいるわけです。よくよく考えたら、僕が総合病院時代に感じていた事、胃瘻の方がいっぱいいるような世界。夕張では、そういう生き生きとしていない高齢者はひとりもいませんでした。

 このように、自分の人生の最期は、前の晩までまんじゅうを食べて過ごせるようになるのがベストだと思います。肺がんになったこのおばあちゃんも、治療など一切せず、死の前日まで、こんなに楽しそうに過ごし、まんじゅうまで食べて過ごしていた。私たちもこういう生き方こそ学ぶべきなのではないでしょうか。

私の死に支度

 私も、来年9月に後期高齢者となります。老い支度どころか、死に支度を急がねばならない歳になりました。だから不幸か、と問われれば、逆です。「今が一番幸せ」と感じることができます。
 何が幸せなのか、と問われれば、特に「これ」というものはありません。全てのことに感謝できるのです。

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 朝起きて、太陽を見れば自然と頭が下がります。トイレに入って大小便をするだけでも幸せ。自室で新聞を読み読書をするだけでも幸せ。電車に乗って仕事に行かなくてもいいことも幸せ。庭仕事、散歩をするのも幸せ。孫の顔を見られるのも幸せ。夜布団に寝られるのも幸せ。雨の漏らない家に住んでいることだけでも幸せ。蛇口をひねって水が出るだけでも幸せ。世の中に幸せが満ち溢れているんです。
 体も健康です。幼少より、目にできたものもらいの手術をしたのが最大のもので、大病はしたことがありません。肩こり、腰痛、冷え性、便秘、アレルギー、花粉症など、一切無縁です。
 正直に言うと、現役の頃はそれなりに病気をしました。胃潰瘍や帯状疱疹、腰痛、40肩なども経験しました。20代には腰痛で悩み、コルセットまでしていました。
 しかし、48歳の時に、近藤誠先生の「患者よがんと闘うな」という本を読んで以来、すべてが変わったような気がします。がん治療は一切しないことを心に決めたんです。ガンと戦う必要がないんですから、健康診断や人間ドッグも、その時以来、25年間一切受けていません。市からの通知も一切無視しています。
 食べ物は、日本の伝統的な食べ物、納豆、みそ汁、酢の物、漬物、魚類など何でも食べることにしています。もちろん、肉類も好きです。毎日、晩酌をするのが最大の楽しみです。毎週1回は、妻と二人で近所の居酒屋に飲みに行きます。そこには知人もいるので、会話に困ることはありません。その後、カラオケに行くのがお決まりのコースでもあります。
 ここのコーナーで書いているようなホームページのサイトも3つ持っており、その保守管理も楽しみのひとつです。もちろん、お金になるものは一つもありません。
 また、週に2日のヨガ教室(NPO法人幸手げんき社)も私の生活習慣の柱になっています。毎週2日、ヨガ教室を主宰しているんです。生徒さんから1回400円、お金は頂きますが、それらはすべて、インストラクターへの謝礼、会場費、そして手伝ってくれた高齢者仲間に支払い、私は一銭の得にもなりません。それどころか、毎月、持ち出しです。でも、みんなに喜んでもらえばそれで満足なんです。

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 なぜヨガなのか。48歳の頃からヨガを習慣とするようになってから、病気というものをしなくなったんです。目に見えて変わったというわけではありませんが、体に柔軟性が備わり、基礎体力がついたように感じられました。そのヨガを20年以上続けた体験から、こういうものを一人でも多くの人に知ってもらうことが必要だと感じ、ヨガ教室を始めることにしたというわけです。
 こういう私の生活は、面白くもおかしくもなく、皆さんのお役には立たないかもしれません。特に、若い人たちには役に立たないでしょう。でも、60代以上の人には多少、お役に立つかもしれません。とりわけ健康管理に神経質になっている方々には、お役に立って欲しいとさえ思います。
 ガンなんて、達観すれば怖いものでも何でもなく、前述した夕張市のおばあちゃんのように、死の前日までまんじゅうを食べて元気に過ごせるのです。気持ちをそのように切り替えて生きると、世の中本当に楽~に生きられるようになりますよ。
 「健康になりたければ病院を減らせ」というAIの診断、決して間違ってはいないのです。AIは結果を示しているのであって、決してあるべき姿や未来を予測するものではありません。そこから何を学ぶべきかは、あなたの気持ちの持ち方ひとつなのです。(H29・8・2記)

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私はガンで死にたい

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