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今度こそ日本経済の本格的復活を

今度こそ日本経済の本格的復活を

経済指標が好転するも消費は振るわず

 第二次安倍内閣が発足してから、まもなく5年が経過しようとしています。この間、アベノミクスの効果が見られない、との批判もなされてきました。

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 しかし、最近では多くの経済指標が好転の兆しを見せ始めています。雇用は、バブル期を上回る水準に回復しました。有効求人倍率も1.38倍と1991年以来の高い水準に達しています。当然、失業率も2.8%と94年以来の水準に改善しています。大企業の賃上げ率も4年連続で2%を上回っています。また、株価も2万円を回復し、すでに2万2千を上回っています。投資家の保有資産も大幅に改善されていると見られます。
 景気の拡大期間は、平成24年12月から29年9月まで58ヶ月となり、戦後2位の「いざなぎ景気」を超えた可能性が高い、ともされています。
 このように多くの経済指標が好転し始めている中、ただ一つ、消費が拡大していないのです。総務省の今年7月の家計調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出額は27万9,197円で、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比0.2%の減少です。6月に1年4か月ぶりにプラスに転じたのに、またまたマイナスに沈んでしまったのです。
 なぜ消費が振るわないのか。このあたりの事情について、一般的に言われているのは、消費者の根強い節約志向が背景にある、とされています。賃金が伸び悩み、将来への不安が根強いため、なかなかお金が消費に向わないというわけです。

節約志向は財務省とマスコミの影響

 消費が伸びない理由は、上にあげたような節約志向や将来への不安といった漠然とした意識があるとされています。これらの不安が生じる原因は何なのでしょうか。

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 それは、従来から財務省及び、その意を汲んだマスコミが「プライマリーバランス」とか「均衡財政主義」といった節約志向を奨励するかのような言説を振りまいているからです。財務省だけでなく、マスコミの論調でさえ、「収入にあった生活をしよう」、そのためには「消費増税はやむなし」というのでは、国民の方でも消費意欲が喚起されるはずがありません。「収入にあった生活をしよう」というのは、家計レベルではもっともな話ですが、国家予算のレベルになると決して同じではありません。なのに、常に家計レベルの話にすり替えて説明するので、節約やむなし、増税やむなし、ということになるのです。
 「ユニクロ」を展開するファーストリテーリングは、2014から15年にかけて2度の値上げに踏み切りましたが、客離れを招いて売り上げを落としました。このため、16年以降は再び値下げに舵を切ってしまいました。イオンの幹部も「脱デフレは大いなる幻想だった」として、最近は値下げ攻勢を強めています。
 このように、今の経済状況は、インフレではなく、未だデフレ状況から脱却できていないのです。デフレが続くということは、端的に言って、今ある1,000円のお金が来年は1,050円、あるいは1,100として使えるということです。消費者が、今使うよりも節約しようと考えるのは当然のことです。

「景気」の気は「気分」の気

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 身近な話で恐縮です。今月15日に私の住む埼玉県幸手市内の大手系列のスーパーに買い物に行ったんです。そうしたら、店内がむやみに混んでいたんです。レジの行列はいずれも10人近くが並び、なかなかレジまでたどり着きません。妻が言うには、毎月15日から3日間、は高齢者のみ10%引きだというんです。15日は年金支給日だ、というわけです。年金支給は偶数月ではないかと問うと、「それでも毎月15日から3日間と決まっているの」と言うんです。なるほど、それで高齢者が10%の割引を目的に、押しかけたというわけです。節約志向の傾向はこういう場面でも肌身で感じ取れるのです。高齢者の主な収入源は年金です。株式収入などのある人はそれほど多くないでしょう。ですから値引き期間中に買い溜めをするという心理は、十分に理解できるのです。
 しかし、このような節約志向が高齢者だけでなく、若者世代や現役世代にまで及んでいるということになれば、穏やかではありません。消費拡大など望むべくもないからです。
 財務省もマスコミもこぞって節約志向を奨励するかのような物言いを続けているんですから、デフレマインドを脱却できないのは当然のことです。そのうえ、安倍総理まで「消費税率10%への引き上げを2019年10月から実施するのは既定路線」と言うのでは、将来不安により、国民の消費意欲が減退するのは当然のことです。
 そもそも消費税を上げるかどうかというのは、経済の動向によって決めるべきものです。デフレが脱却できていない状況なら上げない。物価上昇が3%以上になっているようなら上げる。つまり、増税というものは、「経済動向を睨みながら機動的に」対処すべきものです。それなのに最初から、法律で引き上げを決めてしまったら、国民はそれを見越して、財布のひもを締めるのは当たり前なのです。こんな下手な経済運営はありません。

今こそ景気拡大の絶好のチャンス

 よく「景気の気は、気持ちの気」と言われます。気持ちが明るくなれば、消費意欲も増大します。経済政策といえども、人間が行っているものですから、為政者が「さあ、これから世の中明るくなるぞ」と言えば、国民にもそれは伝染します。それを実行したのが池田勇人総理です。所得倍増計画をぶち上げ、「10年以内に国民の所得を2倍に増やします」と公約したんです。国民の方は「いくら何でもそこまでは」と半信半疑でした。

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 しかし、結果は物の見事に、7年で所得を2倍にしてしまったのです。「景気の気は、気持ちの気」を文字通り実践した有能な政治家でした。杓子定規の官僚を説得する政治力もあったということでしょう。最近は、官僚、特に財務官僚の力が強く、総理といえども容易に思うような経済政策を実行することができません。
 でも、池田総理の頃よりも、今の方がより政策を実行しやすいはずです。なぜなら、今は中央官庁の幹部人事は、内閣官房で行っています。菅官房長官を筆頭に、官僚に対する睨みが聞くようになっているのです。官僚の命は「人事と予算と権限」です。特に人事は、自分に関することですから重大な関心事です。幹部人事を直接コントロールできるようになった効果は計り知れないのです。
 絶大な権限を誇った財務官僚といえども、幹部の人事権を内閣官房に握られているかぎり、総理に対してあからさまに反旗を翻すことはできません。前川前文部次官は反旗を翻しましたが、あくまでも8,000万円の退職金をもらった後での反旗です。天下りさえ諦めれば、実行可能なのです。
 このように、安倍総理は、官僚さえもコントロールできる立場にいるんですから、この際、思い切って、消費拡大に向けた経済施策を実行して頂きたいと思います。

なぜ消費拡大が必要なのか

 今、日本にとって、なぜ消費を拡大することが必要なのか、それは二つの観点から見ることができます。
 第1は、デフレマインドを脱却することができます。
 消費が拡大するということは、当然ながら、企業収益にプラス効果をもたらします。企業の収益が拡大すれば、従業員の賃金上昇と規模拡大などの投資に資金が回ります。従業員の賃金が伸びれば、家計の消費拡大に結びつきます。新たな工場建設など投資は、新たな資金需要をもたらし経済を発展させます。このように消費の拡大は、正の景気循環が実現するのです。当然、雇用の増大や公的部門の税収拡大にもつながります。税収の拡大になるということは、国債などで賄っていたいわゆる国の借金の返済に回すこともできるようになるということです。

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 第2は、国のGDPが拡大すれば、国の防衛予算をはじめ、社会保障や教育投資、公共事業に回すお金を増やすこともできます。
 特に、重要なのは、国の防衛予算に充てる原資が確保できるということです。日本はこれまで国防費をGDPのほぼ1%以内に抑える、という目標の下で予算を使ってきました。1976年に三木内閣によって閣議決定されたものです。その後、第3次中曽根内閣がこの枠を撤廃することを决めましたが、枠撤廃後も、防衛費がGNP比で1%を超えたのは3回しかなく、しかもその数値は、1.004%、1.013%、1.006%と1%近辺で金縛り状態になっているのです。実質的にはGDP比1%枠の亡霊が生き残っているのです。
 他方、日本を取り巻く周辺諸国の現況は、北朝鮮や中国など、予断を許しません。北朝鮮からミサイル攻撃を受けた場合、日本国民はどうするのか。迎撃できるのか。あるいは反撃できるのか。核攻撃を受けた場合、どのように身を守るのか。大量の避難民が押し寄せた場合、どう対応するのか。拉致被害者はどのように救出するのか。韓国在住の4万人をこえる邦人はどのように救出するのか、等々、問題は山積なのです。
 北朝鮮ばかりではありません。中国による尖閣諸島への領海侵犯行為はほぼ毎日続いています。私が取り寄せてまで購読している八重山日報紙によれば、毎日中国公船の侵犯状況が掲載されています。北朝鮮有事になれば、混乱に乗じて、尖閣奪取という事態も想定しておかなければなりません。これに対する軍事的備えは絶対に必要なのです。中国は、遼寧に続く2隻目の原子力空母を建造中であり、また、軍の装備を備えた巨大海警船を尖閣周辺に配備する予定と伝えられています。慰安婦像を許容する韓国の文在寅大統領も「日本は同盟国ではない」、と明言しているのです。
 これらの近隣諸国からのあからさまな侵略行為等に有効に対処するためにも、防衛費の拡大は是非とも必要なのです。現在のように、デフレ下のもとで防衛費を拡大することは、さまざまな政治情勢からかなり厳しいものがあります。ならばせめて、GDPを拡大することにより、相対的に防衛費を拡大するしかありません。

教育費無償化は有効な景気浮揚の梃子になる

 安倍総理は、先に行われた衆議院選挙の際に、教育費無償化を公約として掲げました。安倍総理はこの教育費無償化の費用を消費増税の使い道を変えることで賄う、なんてことを言っていましたが、これは本心ではないと思います。
 つまり、安倍総理は、本心とは異なる二つのことを考えている筈です。一つは、予定通り消費税を10%に上げる、と言っていましたが、あれは本心と違うはずです。また、教育費無償化を消費増税のお金の使い方を変更することで賄う、なんて言っていましたが、あれも本心ではないと思います。教育費無償化は国債発行で賄う、というのが本根だと思います。
 消費税を予定通り10%に上げたら、今でさえデフレマインドだというのに、益々デフレを深刻化させてしまいます。多くの経済指標が好転し始めているというのに、そこにバケツで水をぶっかけるような施策は愚策中の愚策です。了見が狭く頭の固い財務官僚は消費増税に拘るでしょうが、絶対に妥協してはいけません。

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 教育費無償化も消費増税で、なんて言っていますが、そんなことをしたら、これまた教育費無償化が中途半端になってしまいます。教育費無償化というのはあくまでも「長期投資」なのです。十分な教育を受けられない子供たちを大量に社会に送り出すことのマイナスと、十分な教育を受けた子供たちを社会に送り出した後のリターンのどちらが大きいか、考えるまでもありません。教育投資は公共事業投資よりも大きなリターンが得られる有効な投資案件なのです。
 教育を投資と考えることを不謹慎と言う人もいるかもしれません。しかし、国が国民に対して等しく教育を施す目的は、優良な国民を育て、立派な国づくりを行うと言うところにあります。そのこと自体、正しく「国家百年の計を見据えた」国づくりのための「長期投資」なのです。
 しかも、教育費無償化により、子育て中の家庭に経済的余裕が生まれ、消費意欲が刺激されます。未婚の若者たちは教育費にお金がかからないならば、結婚して子供を作ろうという気持ちになります。日本は教育費にお金がかかりすぎるからです。また、教育費無償化により、長期的には少子化問題も解消されます。少子化問題が解決されれば、年金問題さえも解決されることは、多くの説明を要しないでしょう。
 ですから、安倍総理には、是が非でも本心通り、消費増税の廃止と教育費無償化を国債発行で賄うよう、是非とも実行していただきたいと思います。教育費無償化については、高額所得者にまで無償化するのは行き過ぎだとか、実務上の問題は出てくるでしょう。それはそれで個別に対応していけば済むことです。「教育費無償化」という骨格さえ維持して頂ければそれでよいと思います。

最後に

 私たちは、国家財政と家計を同列に論じる呪縛から解放されていません。それは財務省もマスコミも、常に同じ発想で語るからです。新聞やテレビで「家計に例えると」式の説明を何度見たり聞いたりしたか分かりません。そのため、私たちの脳細胞は、すっかりマインドコントロールされてしまったのです。
 しかし、家計と国家財政は全く違います。国は徴税権という伝家の宝刀を持っています。嫌だといっても、国家権力を使って税金を徴収することができるのです。私たちが隣近所に行って無理やりお金をとれば、強盗になります。また、国は手元にお金がなければ、国債を発行すれば、資金調達ができます。私が個人で「島田債」を発行しても誰も買う人はいません。国債なら、ゼロ金利だというのに、いくらでも買う人がいるのです。
 また、国はお金が不足する時は増税という形で税金を増やすこともできます。私たちは、お金が足りなければドロボーをするか、汗水垂らして働くしかないのです。また、私たちには寿命という制限がありますが、国家には寿命がありません。私たちは100年ローンを組むことはできませんが(もしかして2世代ローンなら可能なのかも)、国なら理論上は500年でも1000年でも可能です。しかも、借り換えさえ可能なのです。

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 このように、国と家計とは月とスッポン程にも違いがあるのに、常にこれを同列に論じようとする財務省とマスコミ。そこには別の意図があります。つまり、家計と同じ発想をさせることにより、借金は早く返す必要がある→そのためには緊縮財政にする必要がある→税金も増やす必要がある、という連想ゲーム方式に引きずり込む魂胆があるのです。
 私たちは、もうこの連想ゲームから抜け出し、どうすれば日本経済が本格的に復活できるのかを考えなければなりません。総理の知恵袋とされる嘉悦大学教授の高橋洋一氏によれば、「今の日本経済なら500兆円の国債発行の余力がある」と述べています。同氏はまた「安倍総理は経済の本質を十分に理解している」とも述べています。国債発行によって長期投資が必要であることを十分に理解できている、というわけです。
 いまこそ、安倍総理には、本音に従い、過去20年以上に及ぶ長期デフレから脱却し、日本経済を本格的に復活して頂きたいと思います。そして、周辺国だけでなく、諸外国からも畏敬される日本にして頂きたのです。それができるのは、傑出した外交力と内政を担ってきた安倍総理にしかできない、と私は確信しています。(H29・11・19記)

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