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シンガポールの米朝首脳会談で何が決まるのか

シンガポールの米朝首脳会談で何が決まるのか

慌ただしい世界の動き

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 今、世界は目まぐるしく動いています。中東においては、シリアのアサド政権側が化学兵器を使ったという理由で米英仏がロシアの支持するアサド政権軍に対して空爆を行いました。また、5月10日には、イスラエル軍がシリア国内に展開するイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」から攻撃を受けたとして、報復のため、シリア国内の軍事拠点を空爆しました。
 また、アメリカのトランプ大統領が、イラン核合意からの離脱を正式に表明しました。このことにより、中東において、再びイランの核開発をめぐって、中東情勢は混沌となる様相を見せてきました。イランがアメリカに反発し、再度、核開発に踏み出せば、核のドミノが起こる可能性もあります。更に、アメリカはイスラエルやサウジアラビアと組んで、イランを攻撃する可能性も十分に考えられます。
 アメリカがここまで強硬な姿勢を示すのは、選挙運動中の公約であったことや、中間選挙に向け支持拡大を狙ったという表面的な理由だけでなく、イランと意を通じている北朝鮮に対し、米国の断固たる意志を示したものと受け取るべきでしょう。いずれにしろ、世界の情勢は、アジアにおいても中東においても、大きな活動期に入り、動きを速めていることは間違いありません。

金正恩の豹変ぶりがすごい

 動きを速めていると言えば、北朝鮮の動きも同じです。あれほどトランプを中傷し、敵愾心を剥き出しにしていた北朝鮮が、アメリカの本気モードに怯え始めました。穏健派のティラーソン国務長官を代え、対北朝鮮強硬派のポンペオ長官を任命し、さらに、マクマスター安全保障担当補佐官に代え、超強硬派として知られるボルトン元国連大使を起用しました。ボルトンは、北朝鮮への先制攻撃、イランとの核合意の破棄とイラン爆撃を繰り返し主張してきた人物です。「戦争による体制転換」を信条とする人物なのです。このような人物を敢えて起用すれば、北朝鮮がビビるのは当然でしょう。

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 これまでもトランプ大統領の意思は十分に伝わっていましたが、北朝鮮は高をくくっていました。「脅し」としか考えていなかったからです。しかし、これらの新布陣を見せつけられ、さすがの金正恩も、アメリカの本気モードを肌で感じ取ったのでしょう。早速、文在寅大統領の北すりより外交を見抜いて、南北対話ムードに便乗しました。対話ムードを演出し、「良い子ぶりっこ」を演じ始めたのです。同じ人間がこれほどまでに変われるものか、というくらいの豹変ぶりです。
 それまでソウルを火の海にしてやる、とか言って、国境沿いの戦車群から一斉射撃する映像なんかを見せていたのに、平昌オリンピックへの参加を表明し、南北統一チームを演出し、美女軍団を派遣したりしました。その後、息継ぐ暇も見せず、今度は、板門店にある軍事境界線で文在寅大統領と手をつないで、軍事境界線を渡って見せたり、ハグまでして見せるパフォーマンスも見せてくれたのです。
 それだけではありません。金正恩は、これまで一度も訪問せず、逆に、対中国強硬姿勢をとっていたのに、列車で秘密裏に中国を訪問し、臣下の礼をとりました。そのうえ、米朝会談の日程が決まるや、またしても中国の大連を電撃訪問し、習近平に臣下の礼をとりました。これまでの北朝鮮の態度からすれば、正しく屈辱外交以外の何物でもありません。そこまでする理由は何か。「このままでは北朝鮮という国はもちろん、自分の命が危ない」ということに気づいたからです。文字通り、命乞いの必要が生じたのです。中国に後ろ盾になってもらえば、少しは強気で米朝協議に臨めると踏んだからです。
 国内において、微罪に関わらず見せしめの公開処刑をしたり、強制収容所で過酷な拷問を加えるなど当たり前。自分の伯父を高射砲で(!)撃ち殺したり、外国にいる異母兄(金正男)を殺害したりと、到底まともな神経とは思えない圧政を加えておきながら、自分の身が危うくなると、それまでの強硬姿勢はどこへやら、恥も外聞もなく、保身のための行動を開始したのです。この人物の「人間としての器」が、ここで露呈したのです。

疲弊する北の国内経済

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 金正恩がここまで態度を変えることになったのは、彼自身の命が危なくなったということが第一ですが、決してそればかりではありません。国内経済が文字通りガタガタになっているからです。経済がガタガタということは、当然防衛力にも大きな影響を及ぼします。
 脱北者からの生情報によれば、兵士の軍服すらも支給することができないというんです。これまでは、軍人になれば、一応、衣食住は何とかなると言われていました。ところが、2006年以降10回に及ぶ国連の経済制裁により、軍人の衣服すらも調達できなくなったというのです。18歳から19歳で軍に入隊すると、本来は衣食住が提供されます。しかし、今は軍服すらも支給できないというのです。初歩的な軍事訓練を施した後、一時帰宅させ、軍服を作ってから出てこい、と命じられるというのです。
 軍人ですらそのような状態ですから、一般庶民の生活がそれ以上に困窮を究めていることは間違いありません。すでに、少なからぬ餓死者も出始めているとされています。
 外貨も大幅に不足し、自国領である沿岸部の漁業権まで中国に売り渡してしまいました。漁場を失った漁民は、ボロ船を操り、寒風の吹きすさぶ日本海に出漁せざるを得ない、というのも頷けます。日本海側に漂着する北朝鮮籍のボロ船の実態が、それを如実に物語っています。
 つまり、現在の北朝鮮は、既に戦えるような軍隊ではないのです。これらはすべて国連決議に基づく制裁や沖合での「瀬取り」と称する闇取引の穴を、日米が結束して塞いできた成果と言ってよいでしょう。経済制裁は、確実に実を結びつつあるのです。

段階的核廃絶を求める北朝鮮

 このような状況下で、米朝の会談がどこで行われるのか、が注目されました。臆病者の金正恩は、飛行機が大嫌い。飛行途中に撃ち落とされる可能性が大きいからです。独裁者の宿命です。金正恩が最初に中国を訪問したのも列車でした。当初、米朝の初会談の有力候補が板門店とされたのもそういう事情からだったはずです。
 しかし、板門店での会談となれば、北朝鮮に擦り寄る韓国の影響力を抜きに考えることはできません。実質的にアメリカと南北朝鮮の会談、という形式になる可能性も大きくなります。北は核兵器の廃絶に応じてもよいが、その見返りとして、経済援助などを求めてくるはずです。核廃棄も一気にではなく、段階的な核廃棄など条件をつけてくるはずです。もちろん、韓国もこれを支持します。
 文在寅にとって、内心、北の核は残ってもよい、と思っているはずです。なぜなら、南北統一を目指す文在寅にとって、労せずして核を保有できることのメリットは計り知れないほど大きいものがあります。核を保有し、北の天然資源を活用すれば、日本に対してはもちろんのこと、中国やロシアに対しても、核保有国として発言力は格段に高まります。これが板門店を交渉のテーブルにすることの意味です。
 しかし、本稿を纏めている今日(5月12日)現在、どうやら交渉のテーブルはシンガポールに変更されたようです。日本としては、大歓迎です。安倍総理とトランプは緊密に連絡を取り合っています。その関係から、安倍総理がトランプに変更を強く助言したものと推測しています。板門店での会談となれば、中立性が確保できないからです。

トランプは妥協するか

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 北朝鮮の段階的核廃絶の要求に対して、トランプはどう反応するでしょうか。私は、トランプは、北朝鮮の求める段階的非核化の要求に応じることはないと思います。なぜなら、北朝鮮は、これまで米国との非核化の合意を何度も破ってきたという実績があるからです。安倍総理もトランプにそのことをくどいほど念押しをしているはずです。新布陣のポンペオもボルトンも、そのことは百も承知しています。 
 ですからアメリカとしては、過去の失敗の轍は踏まない。核撤去を確認しなければ制裁は解除しない、と主張するはずです。いわゆる「リビア方式」というものです。リビア方式というのは、①先ず、すべての核廃棄を完全に実行する、②すべての核廃棄の確認が出来たら、経済制裁を解く、③すべての核施設へのアメリカの介入が前提となる、というものです。
 金正恩は、抵抗するでしょうが、その時は、トランプも言うように、「席を蹴って」退席すればいいのです。臆病者の金正恩は、必ず譲歩してくるはずです。アメリカはキューバ危機の経験のある国です。土壇場での交渉術は、アメリカの方が一枚も二枚も上手なんですから、ここは絶対に譲歩してほしくないものです。しかも、今回の相手は旧ソ連ではありません。弱小国北朝鮮なのです。譲る必要などどこにもありません。金正恩が、かの国からすれば遠いシンガポールまで行こうというほどに譲歩していうんですから、強気一辺倒で行くのが正解なのです。そのためにこそ、ポンペオやボルトンを任命したのです。
 

妥協の可能性もゼロではない

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 一抹の不安がないわけではありません。トランプが、演説中、「ノーベル、ノーベル」という聴衆の歓呼に応え、満面の笑みを見せていたからです。ノーベル平和賞は、アメリカに届くミサイルの廃棄と核開発の凍結だけでも十分に可能でしょう。トランプが、ノーベル平和賞欲しさに、このような妥協をすることもゼロとは言えないのです。
 アメリカに届くミサイルさえなくなれば、枕を高くして寝られます。「アメリカファースト」を唱えるアメリカとして困ることはないのです。トランプの言う「ディール(取引)」とはまさにこのようなことです。
 ただし、このようなディールが成立するのは、トランプと金正恩が直接話し合った際に、金正恩が「核凍結とミサイル廃棄でアメリカの安全は保障されるはずだ。これ以上の譲歩はできない。この条件を呑んでくれないなら戦争も辞さない。」と言い切ることが前提になります。金正恩が、全面戦争の意思を明確にした場合、トランプも考えざるを得ないかもしれません。
 実際に戦闘が開始した場合、北朝鮮は壊滅状態になります。それに要する日数は一日か二日とされています。それほどに圧倒的な軍事力の差があるのです。しかし、韓国はもちろん、日本にも多大な被害が生じる可能性は十分にあります。北朝鮮軍の戦闘能力は殆どないに等しい、とはいうものの、それでもゼロではありません。
 あくまでも韓国政府による情報ですが、北朝鮮は、日本を射程におさめるノドン(射程1,300km)を300基保有しているとされています。破れかぶれになれば、森蔭などに潜んでいる移動式ミサイルなどを使い、それなりに戦うこともできるはずです。これらのミサイルが韓国(韓国向けはスカッドミサイル)や日本に飛来した時、日本は、本当に全弾撃ち落とせるのか、となればそこまでの能力はありません。一発でも核ミサイルが着弾すれば、破滅的な被害が生じます。もちろん、これは金正恩が、自分の命と北朝鮮の壊滅を本当に覚悟した場合の話です。
 私は、金正恩という人物は、実は、極めて肝の小さな人物であると睨んでいます。トランプが本気モードに入るや否や南に擦り寄り、これまで一度も訪問したことのない中国にさえ屈辱的な姿で、庇護を請う姿を見れば、それは明らかです。
 

拉致被害者はどうなるか

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 さて、日本にとっての重大関心事は、拉致被害者がどうなるのかです。安倍総理は、トランプ大統領との太いパイプを活用して、「日本にとって拉致被害者の救済は重大関心事であり、この解決なしに北朝鮮問題の解決はあり得ない」とくどいほど念を押している筈です。トランプ大統領も、来日時に拉致被害者の家族会と直接面会しており、十分にそのことは承知しています。
 ですから、米朝協議が決裂しない限り、拉致被害者の開放も近いと見るべきでしょう。ただ、北朝鮮にとって、日本の存在は決して恐ろしい存在ではありません。国際社会において、軍事力と外交力はほぼ比例しているというのは常識です。軍事力がなく、他国によって守られている国など、恐ろしくも何ともないのです。むしろ北朝鮮から見れば、軽蔑の対象と言ってもよいかもしれません。
 北朝鮮から見る日本は、単なる「金ずる」でしかないのです。拉致被害者を返す代わりに5兆円だの10兆円払え、と言ってくるかもしれません。戦後賠償とか何とか理屈をつけてくるでしょう。しかし、南も北も太平洋戦争中は日本国として戦った仲間です。それも対等の日韓併合条約によって、双方の合意の下で同じ国家になったのであり、本来、賠償の問題は生じません。北朝鮮が賠償を言い出したら、それは難癖というものです。
 しかし、理屈はともかくとして、北朝鮮は、核を放棄し、民主主義国家として再生するためには、お金が必要だ、となれば、日本が協力しないというわけにはいかないでしょう。恐らく数兆円単位の経済援助を約束させられるのではないかと思います。
 日本としては、経済発展と民主国家としての再生なら、援助する価値はあります。円借款など、経済発展につながり、返済を前提とする資金提供なら受け入れてもよいでしょう。豊富な鉱物資源と安くて豊富な労働力がありますから、経済的にも十分に見合う取引ができるはずです。北朝鮮からの核・ミサイルの脅威がなくなだけでも、日本としては、大きなメリットを受けることができるからです。

直前のG7首脳会議を活用すべき

 シンガポールでの米朝会談は6月12日です。その直前の8日、9日にカナダでG7が開かれます。この場で安倍・トランプ会談も行われるはずです。当然、安倍総理は、非核化の実現と拉致被害者の開放がセットであることを訴えるでしょう。安倍総理のこれまでの実績からして、抜かりはないと思います。
 首脳同士の信頼関係というのは、国際関係においても極めて重要であることが、2人の関係を見ていると十分に理解できます。野党の中には「のんびりゴルフなんかして」といった批判的な意見もありました。これこそ、国際社会も外交もしらない万年野党の弊害極まれり、と言ってよいでしょう。外交と言ったって、所詮、人間の行為に過ぎません。首脳同士の信頼関係が重要であることなど、今更説明する必要などないでしょう。

今の国会のレベルで日本を守ることはできない

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 それにしても、今の日本の国会。18日間も国会をボイコットして、ようやく戻ってきたと思ったら、またしても柳瀬元首相秘書官に対する参考人質疑で、やれ答弁が不誠実だとかますます疑惑が深まっただのと低レベルの議論ばかり。そしてまたまた森友学園問題で、財務省と学園側で行われた面談や交渉記録が出てきただのと、どうでもよいチマチマした問題ばかりです。本当に日本の国会議員の質の低さを痛感せざるを得ません。何とかならないものだろうか、と思うのは私だけではないと思います。
 一番がっかりしたのは、私の購読している読売新聞までもが、「柳瀬氏、不自然答弁」とか、「不誠実対応、傷口広げる」といった政権批判記事ばかり。そのうえ、社説までもが「国会軽視の姿勢が混乱を招いた」だのと、批判的な論調を展開しています。18日間も国会をほっぽりだして、昼寝をしていたのはどちらなんですか。国会を軽視していたなら、1年半にもわたって辛坊強くモリカケ問題に付き合うはずないではありませんか。真に日本のことを考えるマスコミならば、「いつまでもモリカケやセクハラ問題ばかり追求せず、国の安全保障、経済、長期戦略についてしっかり議論せよ」と野党を叱りつけるくらいの、気構えがあってしかるべきではないでしょうか。
 野党ばかりでなく、日本のマスコミにも、猛省を促したいと思います。(文中:敬称略)(H30・5・13記)
 
 

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