時事寸評 書評コーナー

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免許更新時の認知症検査や講習は高齢者いじめ

免許更新時の認知症検査や講習は高齢者いじめ

過大に報道するマスコミ

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 先月(5月)28日、神奈川県茅ケ崎市内で高齢者による事故が発生し、4人が死傷するという事故が発生しました。連日、大きく報道されましたから、覚えている方も多いはずです。
 車を運転していた90歳の女性は、今年3月免許更新の際の検査で「問題なし」と判定されたばかりだったということで、そのことも話題になりました。テレビ報道では、この女性の長男が取材に応じ「免許を更新させるべきではなかった」と悔やんでいる様子も、併せて報道されていました。
 このようなマスコミ報道を見ている人は、すぐに「やっぱり高齢者のドライバーは怖い」「免許はもっと早く返上させるべきだ」「認知症検査をもっと徹底してやらなきゃダメだ」といった感想をもったのではないでしょうか。そのような率直な感想は、決して誤りではありません。警察庁は、正にそれが狙いだったからです。高齢ドライバーは→身体機能が低下している→運転技能が低下している→だから怖い
 こういった思考の流れを作り、一般国民にこれを浸透させているのです。その結果どうなるか。「そのための対策が必要だ」ということになります。具体的な対策としては、「もっと認知症検査を徹底すべきだ」、あるいは「安全運転サポート車など機能限定免許を導入すべきだ」、といった警察にとって、美味しい予算・組織の拡大、天下り組織の拡大につながることを企図しているのです。認知機能検査や高齢者講習などは、既に警察組織の拡大、警察OBの有望な天下り先となっている現実があります。これは警察OB組織である交通安全協会の、重要な資金源にもなっている筈です。なぜなら、認知機能検査だけで、全員が650円、高齢者講習に至っては、最低でも4,650円、通常は7,550円が徴収されるのです。しかも、その金額、この4月1日から一方的に750円、5,100円、7,950円に値上げされているのです。
 今後、高齢者は増加の一途を辿ります。高齢者の増加、一方的な値上げによって、収入の大幅アップは間違いありません。高齢者を狙い撃ちにしたこのような集金システムが、一片の通知文書だけで値上げできるんですから、警察庁にとって、これほど美味しいシステムはないでしょう。「認知症ドライバーは怖い」というプロパガンダは、マスコミの協力を得て、ほとんど批判らしい批判も受けず、既に、いともたやすく国民各層に浸透してしまったのです。

認知症検査に溢れる高齢者

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 私は、今年9月で後期高齢者、つまり75歳になります。そのため、早速、埼玉県公安委員会から通知が来ました。9月の誕生日前に「認知症検査」と「高齢者講習」を受けろ、というわけです。
 この認知症検査は、予約を取るのが大変だと聞いていたので、通知を受けたその日に、「検査・講習実施場所」と記載された教習所に電話をしました。ご丁寧に太字で「予約は大変混雑しています。お早めに電話予約してください。」と書いてあったからです。ところがいくつかの教習所に電話をしてみるとなかなかつながらず、やっとつながった教習所での説明は、次のようなものだったのです。
 教習所では認知症検査の受け付けはできないことになりました。申し込みは、直接、運転免許センターに申し込んでください。
え~!何で~?「認知機能検査受検から高齢者講習受講方法」と書いてあり、その後に手順として、
1.検査・講習のお知らせ(この通知書)を受領
2・裏面の実施場所一覧から認知機能検査を予約
と書いてあり、しかも、「認知機能検査を予約」の部分が太字で記載されていたんです。そしてそこから、特大の矢印で
※予約の際は教習所等に免許番号をお伝えしていただきます。

と書いてあったんです。そのため、いくつかの教習所に電話をした、というわけです。ところが、やっとつながった教習所のウグイス嬢の返答が、「運転免許センターに、直接申し込んで下さい」ということだったのです。よくよく読んでみれば、「★お知らせ」というところに、「認知機能検査の予約は、運転免許センターまで直接お申込み下さい」なんて書いてありました。だったら、「裏面の実施場所一覧から認知機能検査を予約」なんて書くなよ、ということです。
 一枚の通知文書に、免許センターに直接申し込めという文書と、裏面の実施場所一覧から予約という記載があること自体が極めて不親切です。

免許センターへの申し込みがこれまた大変

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 やむなく、改めて免許センターに申し込むことにしました。そしたらこれがまた大変だったんです。いくら電話をしても「話し中」のプープー音が流れるばかり。恐らく多くの高齢者が、ここに集中して電話をかけていたんでしょう。それでも今日中には何とかして予約を取ろうと、必死で電話をかけ続けましたが、全くつながらない。妻にも協力してもらい、二人で別々のスマホからかけ続けたんです。その所要時間、約2時間。その間、相当イライラが募ってきた頃、受付時間が終了したのでしょうか。
 自動音声で「本日の受け付けは終了しました。また明日お電話ください。受付時間は・・・」とかいうではありませんか。もちろん、最後まで聞かず電話を切りました。黒電話の時代なら、思い切りガチャン!と切っていたはずです。文字通り100回以上は電話をしたはずなのに、一度もつながらず、あげく、午後4時で受付終了。お役所仕事もいいところです。頭に血が上らないのが不思議というものです。
 この憤懣をどこにぶつけてやるべきか。電話がつながらない以上、残る手段はメールしかありません。埼玉県運転免許センターなるところにメールを書き、断固抗議しました。勝手に制度をいじくり回した上に、適切な窓口の整備もしないとは何事だ、というわけです。これで免許が失効にでもなったら、一体だれが責任を取ってくれるのでしょうか。もちろん、損害賠償ものです。

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 その後、免許センターから電話が来て、何とか検査場所を確保することができました。しかし、体制も整えずに、教習所での受付を一方的に廃止し、センター一本の受付にしたこと自体、余りにも手前勝手としか言いようがありません。
 新聞報道によれば、この検査待ち状態、全国で問題になっているようです。警察庁によると、この待ち日数、予約から受検まで平均で49.6日、奈良県では4か月待ちだというんです。高齢者講習も平均40.6日かかるというんです。高齢になってから、このような難行苦行をさせるこの制度、本当に必要なものなのでしょうか。根本から考えてみる必要がありそうです。

高齢者のための認知症検査は詐欺と同じ

 私は、高齢者のための認知症検査や高齢者講習というのは、詐欺的商法だと思っています。なぜなら、この検査や講習は、事故の未然防止をするために必要ということになっているはずです。つまり、高齢者には事故が多い。その事故の多くは、年齢を重ねることによって生じるボケ、つまり「認知症に原因がある」、という前提に立っているのです。
 今、なぜ認知症だけが殊更に問題視されるのでしょうか。事故というものは、その原因が認知症であろうと、飲酒によるものであろうと無謀運転によるものであろうと、事故という現象面から見れば、いずれも同じです。
 認知症によって起こした事故がけしからんと叫ぶなら、飲酒による事故も同じ、若者の無謀運転による事故も同じです。被害にあった人間、不幸にして事故死することになった人間の立場からすれば、何の変りもないのです。認知症だけが親の仇のようにされるのは、全く理屈に合いません。
 では、認知症による事故件数は、目の敵にされるほどに突出して多いのでしょうか。認知症と事故との間に、本当に強い相関があるのでしょうか。
 まず、事故件数そのものから調べてみることにしましょう。

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 右のグラフは、平成28年度版の人口10万人当たりの交通事故死亡件数を示しています。これを見ると、確かに75歳以上の死亡事故件数が8.95人とダントツに多くなっています。しかし、同時に、16歳から24歳の死亡事故も7.24人と多くなっています。
 この二つの数字だけでは、物事の判断はできません。事故率こそが問題だからです。各年齢層ごとの免許保有者数と事故件数を対比して見る必要があるからです。
 警察庁交通局運転免許課が公表した平成28年版の運転免許の保有者数は、16歳から24歳までが5,695,117人です。これに対して75歳以上の免許保有者数は7,219,062人です。
 この免許保有者を分母にし、死亡事故件数を分子にして、事故を起こした確率を計算してみると、16歳から24歳までが、0.0000012%、75歳以上が0.00000123%です。つまり、百万分の1.2と百万分の1.23の違いです。これは文字通り「誤差の範囲」であって、どちらの方が多いということはできないはずです。つまり、高齢者の事故率が高いから、認知機能検査や高齢者講習が必要だという結論を導き出すことはできないのです。

交通事故件数

 更に、免許保有者が起こした交通事故件数そのものも、比較してみましょう。これを示したのが右のグラフです。このグラフから分かるように、免許保有者10万人当たりの交通事故件数は、毎年、10歳から19歳がダントツに多いのです。事故率が高いからこそ、損害保険会社は、この年齢層の保険料を最も高くしているのです。次に事故率の高いのは、20歳から29歳です。この傾向は、過去10年以上全く変わっていません。
 本当はここでは数字を出していませんが、女性の事故率も高いというのは、常識になっています。保険会社も女性の場合、保険料率を高くしている筈です。でも、女性のことを言うと、反発が大きいので、皆さん大きな問題にしないだけです。
 このように、事故率も、事故件数の比率も高齢者より若者の方がより高いのに、何故に高齢者、しかも認知症だけが殊更に問題視されるのでしょうか。全く理解不能です。

ブレーキの踏み間違いでも同じ現象

 嘗て、私はこのコーナーで、ブレーキとアクセルの踏み間違いの問題について取り上げたことがあります。その時も、高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違いが多い、という問題提起がなされたのです。その時の私の記事は、次のようなものでした。

 マスコミの報道に流されず、高齢者の踏み間違い事故について、検証してみたいと思います。
 ここに一つのデータ(下図参照)があります。出所は、財団法人「国際交通安全学会」です。このデータは、平成17年から19年まで3年間の合計データをまとめたものです。

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 このデータによると、70歳以上の高齢者の踏み間違い事故件数は6,808件となっており、かなり高いということが分かります。しかし、同時に、18歳から29歳の若者の踏み間違い事故も多いことも分かります。高齢者よりも、遥かに多い9,564件です。要するに、アクセルやブレーキの踏み間違い事故の件数(絶対値)は、高齢者よりも、若者の方が遥かに多いのです。
 マスコミの報道などを見ていると、このような報道にお目にかかったことはありません。件数だけを見れば、若者の起こす踏み間違いの事故の方が多いのに、なぜ彼らの事故は問題視されず、高齢者の事故ばかりが報じられるのか。先ず、この点から考えてみましょう。
 通常、このような場合、若者の方が人口が多いからではないか、と考えるのが普通です。事故件数が多いか少ないかというのは、母数となる人口に左右されます。つまり、事故率です。1000人当たりどのくらいの割合で事故を起こすのか、ということが判断の基準となります。
 この国際交通学会のデータによれば、平成16年当時の18歳から29歳までの人口は1930万人、これに対して70歳以上の高齢者人口は1753万人ですから、確かに若者の方が人口が多い。人口が多いから事故件数も多い。
 でも、その人口差は僅か10%です。これに対し、事故件数は40%もの差があります。つまり、踏み間違いによる「事故率」は、高齢者よりも若者の方が遥かに高いのです。このことがなぜ報じられないのでしょうか。高齢者の踏み間違い事故が問題だというなら、同時に、より事故率の高い若者の事故も同じように問題視されるべきでしょう。いや、若者の事故の方がより問題にされて然るべきです。
 この点について、「国際交通安全学会」は、若者の方が踏み間違い事故が多い理由を、次のように説明しています。
 第1の理由は、若者の方が運転する機会が多いこと
 第2の理由は、免許取立てにによる運転操作が未熟なこと
この2つです。
 被害を受ける方からすれば、命に係わることですから、運転する機会が多いだとか、運転操作が未熟だなんて言われても意味がありません。運転操作が未熟なら、教習所でもっとしっかり教習してから免許を与えろよ、というだけの話です。同じ事故を起こしても、なぜか若者には優しくて、高齢者には厳しいのです。これでは余りにも不公平です。
 若い人について、「若いんだから少しくらい大目に見てあげてもいいじゃないか」という言い方が通用するなら、高齢者に対しても「年寄りなんだから少しくらい大目に見てあげてもいいじゃないか。どうせ先が短いんだからさ。」という言い方があってもよいはずです。

今回の事故も防げなかった

 以上見てきたように、認知機能検査や高齢者研修は、単に説明しやすい高齢者をターゲットにしたものであって、決してデータに基づいた説得力のあるものではない、ということは明白です。
 高齢者=社会の厄介者=年々体力・能力が衰える。高齢者もその自覚がある。よって、これらの層をターゲットにしても社会的に受け入れられやすい環境がある。ということで、強引に認知機能検査や高齢者講習が導入されたんだと思います。
 そもそも、今回事故を起こした神奈川県茅ケ崎の90歳の女性だって、免許更新の際に検査を受け「問題なし」の判定を受けているではありませんか。このような検査をしても、何の役にも立ったなかった何よりの証拠でもあります。
 

検査も講習も警察OBの組織を守るためのもの

 では、警察はなぜこのような役にも立たない検査や講習という制度を急ごしらえで作ったのでしょうか。もちろん、警察の予算と組織の拡大、並びにOB達の飯の種を作るためです。

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 少子高齢化や経済情勢の変化を受け、免許取得者の人数が年々減少しています。免許取得者が減少するということは、取り締まるべき車や対象となる人間が減るということを意味します。加えて、近い将来、自動運転車の登場により、交通事故の大幅な減少が予測され、交通法規の簡素化、自動車教習所の減少などが視野に入りつつあります。
 AI化の進展により、さまざまな分野で事業の見直しは、必須です。金融機関などその典型です。私たちは、もうほとんど銀行の窓口に行くことはありません。コンビニのATMやパソコンの操作で振込などもできてしまいます。大手銀行における大幅な人員削減は、そのためです。
 自動車運転の世界でも、自動運転車が普及すれば、高齢者にとって福音となるでしょう。警察庁が、何のかんのと注文を付けて、自動運転の発達を邪魔をしてきたのは、既得権を守るためのものにほかなりません。世界で最も進んでいた自動車産業も、自動運転の分野で後れを取っているのは、警察官僚による妨害行為によるものだということを認識する必要があります。先進的な取り組みをしたのは自動車メーカーではないGoogleでした。同社は、2000年代後半には、一般道で試験車を走らせていました。トヨタが走行試験を実施できたのは2015年です。
 いずれにしろ、世界の趨勢は、自動運転車の時代に移行することは間違いありません。タクシーなども、近い将来、間違いなく無人タクシーの時代になるはずです。
 こういう時代の流れに危機感を抱いた警察庁が、当面の「飯のタネ」として飛びついたのが、高齢者ビジネスだったのです。役にもたたない認知症検査や高齢者研修といった名目で、ひとり1万円近くのお金を高齢者から徴収できるんですから、役人にとってこんな美味しい話はありません。しかも、その値上げは通知文書に「○月○日から料金が変わりました」と書けばいいんですから、本当に素晴らしい、いや、素晴らしすぎる制度です。
 警察は、これらの認知症検査や講習を受けた人に対して、本当にこの制度が必要と思うか、きちんとアンケートを取るべきです。
 また、私たち高齢者も、このような警察のやり方にきちんと声を上げ、反旗を翻すべきではないでしょうか。(H30・6・11記)

 

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