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米朝は今後はどうなるのか

米朝は今後はどうなるのか

合意の内容

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 アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩労働党委員長の歴史的会談が実現してからすでに、ほぼ1ケ月が経過しました。
 この共同声明でなされた合意は、次のようなものでした。

米朝会談の合意内容

①金正恩は朝鮮半島の完全な非核化に向けた堅固で揺るぎない決意を再確認
②トランプ大統領は北朝鮮に対し安全の保証の提供を約束
③新たな米朝関係樹立を確約
④朝鮮半島での永続的で安定した平和体制の構築に協力して努める
⑤米国と北朝鮮は戦時捕虜・行方不明者の遺体回収に取り組む

 この時の両首脳の会談を巡っては、その成果について、賛否両論がありました。失敗だったとする意見は、CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)という言葉を盛り込めなかったことや、朝鮮半島の非核化としたことによって、米軍の撤退にお墨付きを与えたとするものです。また、成功だったとする意見は、とにもかくにも、敵対する両国が「非核化」という点で合意に達したことに大きな意味がある。北朝鮮としても世界に向けて非核化を宣言した以上、実行せざるを得なくなったという点で大きな前進だ、とするものです。

合意は大きな前進と評価すべき

 私は、この両国間の合意は、十分に評価に値するものだと思っています。その理由は、北朝鮮が、「世界注視の中で非核化を宣言した」、というところに意味があります。ごく近い将来、北朝鮮が、さまざまな理由をつけて非核化をごね始めた時、アメリカが軍事攻撃をすることに寛容になることは明らかです。それだけでも、大きな前進なのです。
 アメリカにとって、北朝鮮問題は、喉に刺さった棘としての意味はありますが、トランプ大統領の世界戦略の中で、北朝鮮という小さな国の対処は大きな問題ではありません。アメリカの真の狙いは、軍事大国として台頭する「中国の封じ込め」にあるのです。中国という国を叩き潰すこと、その大事に比べれば、北朝鮮問題なぞ、ほんの些細な問題でしかないのです。
 そもそも、北朝鮮という小国が巨大な軍事大国であるアメリカに対して、本気で戦いを挑むなどということはあり得ません。アメリカからすれば、自分の回りを飛び回っているうるさい蚊程度の重みしかないのです。そんな小国がどのような体制を維持しようと、また、どのような行動を取ろうと、本来はどうでもよいことなのです。
 ただ、この小国が、核を保有し、アメリカまで到達するICBMまで開発し、それを、中東の火薬庫であるイランを通じ、中東全体に北朝鮮型のミサイルや核が拡散する事態は放置できません。アメリカの北朝鮮に対する関与は、そのような位置づけであるということを、先ず押さえておく必要があります。
 

中国潰しが真の狙い

 現在のアメリカにとって、是が非でも今叩いておかなければならない相手は中国です。中国は、ここ数年、経済が鈍化したとは言うものの、これまではGDPの伸び10%以上を維持し、軍事費も毎年10%以上伸ばしてきました。その高い軍事費の伸びと経済力を背景にして、周辺国に対して、威圧的な影響力を行使してきました。

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 台湾に対する軍事侵攻の意図もその一環です。日本に対しても、尖閣諸島へはもちろん、沖縄本島についても領土的野心を示し始めています。南シナ海においては、南沙諸島、西沙諸島など、海洋を埋め立て、軍事拠点化を強力に推進してきました。フィリッピンが申し立てた国連海洋法仲裁裁判所は、中国の海洋埋め立ては違法との判決を下しましたが、これを「紙屑」と切り捨て、完全に無視しました。
 他方、国内的には、チベット住民を強烈に弾圧し、ウイグル自治区においても、各所に無数の監視カメラを設置し、息苦しい監視網社会を構築しました。100万人とも言われるウイグル人を「再教育施設」に送り込み、弾圧しているだけでなく、彼らの臓器を売買の対象にしているというのは、ウイグル人の間では常識になっています。
 このように非人道的な一党独裁国家である中国が、更に、習近平によって、終身国家主席の地位を確立し、軍事大国化の意図をより一層鮮明にしたのです。このような中国の膨張主義の意図は、周辺諸国はもとより、世界の国々も周知の事実となっています。このことは、中国軍の内部教材である「習近平強軍思想」において、文書の上でも、明確に示されています。この教材において中国は、中国人民軍を「国土防衛型」から「外向型」、すなわち外に向って戦いを挑む、という姿勢に転換したことを明らかにしたのです。

中国の軍事力の大幅増強

 中国の国防予算は、独裁国家の性格上、正確な数字は把握しにくいものの、近年、毎年10%以上の高い伸びを続けてきました。今年も8.1%増となり、GDPの伸び率を上回っています。軍事予算は日本円で、昨年は16兆7,000億円、今年は18兆円です。日本の軍事予算は約5兆円ですから、既に日本の4倍近い水準まで軍事予算を拡大しているのです。
 装備についても、ステルス戦闘機(J(殲)20)、地対空ミサイル(PL15)、攻撃型原潜(095型)、大陸間弾道ミサイル(DF41)など、最新兵器を開発・装備する一方、原子力空母は、就航済みの遼寧に加え、独自に建造した空母もすでに進水済みです。現在、3隻目を建造中で、4隻目からは原子力空母を建造するとされています。
 このように海洋強国を目指す中国は、米中の海洋戦力の構図を、大きく転換しようとしているのです。
 更に、急速に軍事力の増強を図る中国は、音速をはるかに超える「極超音速滑空兵器」を搭載して打ち上げる新型弾道ミサイル「DF(東風)17」を開発中とされています。北米全域を射程に収め、核弾頭10個を搭載できる新型大陸間弾道ミサイルDF41を、今年前半にも配備する予定とされています。

貿易戦争も中国封じ込めの一環

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 このように、一党独裁の習近平終身国家主席の中国が、年々、軍事大国化し、周辺諸国を威圧するばかりか、アメリカの覇権にも挑戦しつつある事態は、異常であり、極めて危険です。軍事大国であるアメリカには、「世界の警察官」という呼称がつきますが、中国のそれは「世界の無頼漢」ともいうべき呼称がふさわしいと言えるでしょう。
 トランプの真の意図は、この危険極まりない中国という覇権主義国家を叩き潰すことにあります。そのため、目の上のたんこぶである北朝鮮問題を、早期に解決しておきたかったのです。トランプは、大統領就任前から、金正恩と直接会ってもよい、などと融和的な発言をしていたのは、まさにそのためだったのです。
 今、アメリカと中国の間には、貿易を巡って熾烈なバトルが展開されています。これは、何のためなのか。言うまでもなく、中国の覇権主義、膨張主義を抑えるためです。強大な軍事大国、中国が出現したのは、貿易を通じて、富を蓄えたからにほかなりません。自由貿易による富こそが、中国の軍拡の源泉だったのです。それはまた、中国と好を通じたオバマ政権までのアメリカの歴代政権の責任でもあります。自由貿易を通じて、アメリカの先端技術などが大量に中国企業に流れました。中国企業は、国営企業であり、国営企業は軍に奉仕する立場にあります。軍産一体なのです。中国経済の伸びは、中国軍の伸びに直結しています。もちろん、中国の経済発展には、日本もODA援助などを通じて、貢献したことは間違いありません。反日国家を、これほど支援してきた日本という国は、本当にお人好し国家と言わなければなりません。
 世界が中国経済の発展を許容してきたのは、いずれ中国が豊かになれば、国民が自由を求め、自から自由と人権を尊重する資本主義国家体制に移行していくはずだという読み、いや、願いがありました。しかし、現実は厳しく、一党独裁のうえ、更に習近平による終身独裁体制が確立し、しかも、軍事強国・軍事大国化の道をひた走り、周辺諸国を恫喝する覇権主義国家になってしまったのです。可愛い羊になるだろうと思って育てていたら、実は手のつけられない獰猛な虎に成長してしまったのです。
 獰猛な虎であることに気づいたイギリスは、ファロン国防相が、南シナ海におけるプレゼンスを高めると表明し、来年、この海域で自由の航行作戦を展開するため、軍艦を派遣すると表明しました。またフランスのパルリ国防相も、7月3日、中国が主権を主張する南シナ海の海域に英国と合同で艦船を航行させると表明しました。中国の一方的な覇権主義を許せば、世界の秩序が保てない、ということを示したのです。英仏よりもはるかに利害関係の深い日本が、この問題に手を拱いていることは決して許されません。

北朝鮮は非核化したくない

 北朝鮮が本当に非核化を進めるのか、世界は大いに注目しています。北朝鮮の本音は、「非核化したくない。できればあれこれ理由をつけて非核化の手順を先送りし、トランプ政権が交代するまでじっと待つ」というところにあると思われます。なぜなら、核兵器は、中国に対する防御という意味もあるからです。北朝鮮にとって、本当は遠く離れたアメリカよりも、過去に数知れず侵略蹂躙された中国をけん制する狙いがあるのです。
 核兵器は、一度開発してしまえば、通常兵力を維持するよりもはるかに経済的に安上がりとされています。しかも、相手国に与える打撃力、威嚇能力も、通常兵器よりはるかに優れています。経済力のない北朝鮮にとって、これほど便利な兵器はないのです。その兵器は簡単には手放したくない、という金正恩の気持ちは十分に理解できます。
 では、北朝鮮は、トランプとの約束を反故にして、非核化交渉をズルズルと引き伸ばすことが可能でしょうか。専門家の中には、非核化を実現するためには10年以上かかると断言する人もいます。全米科学者連盟(FAS)核情報プロジェクト代表のハンス・クリステンセン氏は、核廃棄の工程表を作り、査察体制を含め、具体的な手続きをし、核廃棄をするためには、最終的に10年以上かかる可能性がある、と述べています。
 この前提に立てば、非核化は事実上困難で、トランプ政権の交代を待って、北朝鮮は、再び核開発を進める、とする見方も可能ということになります。
 

トランプは許さない

 しかし、10年以上かかるような非核化の手順をトランプが許すはずはありません。そのような非核化なら、わざわざ合意などするはずがないのです。トランプは、金正恩がその気になれば、非核化は超短期でできるはず、と見ている筈です。なぜなら、独裁国家において、核関連施設と核物質がどこにあるか、その所在はすぐに分かる話です。隠す意図がない限り、即刻提出することができるのです。科学者が自分の命を懸けてまで隠す必要など、一切ないのです。
 それは拉致被害者問題とて同じです。北朝鮮は、今後、日朝間で拉致被害者の返還について協議することになるでしょう。北朝鮮は、拉致被害者がどこにいるか調査するため、相当の期間が必要だ、とか何とか言うはずです。しかし、かの国において、拉致被害者が自由に国内を移動できるはずなどありません。「招待所」と呼ばれる「拘置施設」で、厳重に管理されているのです。経済援助と引き換えに、数人ずつ小出しに出そうとしている筈です。本当は、即日でも全員の名簿提出と開放は可能なのです。
 このように、核関連の施設や核物質も、どこにあるかが分からない筈はありません。それを検証し、どのように廃棄するか、IAEAが引き取るか。問題があるなら、アメリカが直接引き取ればよいのです。核開発に関わった技術者の頭の中に技術は残されますが、中東などへの人材の流出を防ぐため、アメリカがまとめて彼らを引き受ける、ということも考えられます。
 

金正恩が隠ぺい工作を行った場合

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 隠ぺい・捏造国家である北朝鮮のことですから、核廃棄を行う、とのそぶりを見せながら、実際には、核物質を隠ぺいするということは十分に考えられます。
 すでにその兆候は出ています。米紙ウオール・ストリートジャーナル(電子版)が報じた情報によると、米専門家による衛星写真の分析として、北朝鮮が北東部咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムフン)市にあるミサイル製造施設の拡張工事を進めている、と報じました。専門家は「北朝鮮が核開発やミサイル計画を廃棄する考えがないことを示している」と警告しています。この施設は、米朝首脳会談が行われた頃に、工事がなされつつあったということですが、会談後も引き続き工事が行われていたのです。
 このような不誠意な行動が続いたときに、アメリカはどうでるのか、です。その時は、文字通り、合意を一方的に破棄したということですから、アメリカによる強力な制裁は免れません。当然、軍事力の行使もありうることです。
 アメリカは、中国や北朝鮮、それに中東や対ロシア向けに軍事費の拡大をしました。特に、北朝鮮に対して軍事力を行使するため、昨年よりも7兆円軍事費を増大させました。7兆円という金額は、日本の軍事費が5兆円であることを考えれば、いかに巨額なものであるかが分かります。
 前述したように、北朝鮮が世界注視の中で行った合意を無視するような行為を行った場合、アメリカが軍事力を行使することを世界は非難しない筈です。世界注視の中での合意は、そのためのものだったからです。トランプは、世界に向けて軍事攻撃の正当性を得るため、特大の演出をしてみせたのです。

ポンペオ訪朝で成果出たか

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 米朝合意の履行を迫るため、ポンペオ国務長官が3月7日、訪朝しました。2日にわたる協議を重ね、帰途、日本に立ち寄りました。長官は、記者団に対して、「主要な問題のほとんどすべてで進展があった」と成果を強調しました。ロイター通信によると、非核化の今後の進め方や核・ミサイル関連施設の申告について、多くの時間を割いたとされています。
 しかし、どうも嫌な予感がします。ポンペオ長官は、訪朝時、2日間も平壌に滞在したのに、金正恩委員長に一度も会っていません。超大国アメリカの国務長官(外務大臣)が2日間も滞在していたのに、金正恩は、これを完全に無視したのです。
 案の定、北朝鮮外務省報道官は、ポンペオ長官が北朝鮮を発つやいなや談話を発表し、「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)だ、申告だ、検証だと言って、一方的な非核化要求を持ち出した」、「遺憾極まりない」と非難したのです。また、同じ談話で「朝鮮半島の平和体制構築問題には一切言及せず、すでに合意された(朝鮮戦争の)終戦宣言にまでさまざまな条件と口実を持ち出しながら遅らせる立場をとった」と批判したのです。
 この結果を見ると、北朝鮮はやはり、非核化を真剣に履行する意思はなさそうに見えます。

金正恩は小心者

 ならば、北朝鮮は、本当に米朝合意を言を左右にして、のらりくらりとかわしていくつもりなのでしょうか。私は、それはあり得ない、と見ています。なぜなら、トランプは、早期の決着を望んでおり、金正恩がそれを望むなら可能だからです。金正恩が協力の意思を示さない場合には、今度こそ本気で軍事行動を起こすでしょう。世界もこれを許容せざるを得ません。
 軍事行動を起こす前提として、アメリカ人の犠牲は最小限に減らす必要があります。このため、アメリカは、現在、ソウルにある米軍キャンプをソウルの南方60キロの地点まで移しました。この移動は、攻撃の下準備と考えるのが常識です。米韓合同軍事訓練の延期も、アメリカとしては誠心誠意、合意に基づく配慮をした、ということを内外に示す意思表示だったのです。米側は、譲歩し過ぎと言われるほどに、真摯に対応しつつあります。
 これに対し北朝鮮は、合意に基づく具体的な行動は何らとっていません。そればかりか、前述したように、金正恩はポンペオ長官に会いもせず、また、長官の帰国直後に非難の談話を出すなど反発する姿勢を見せています。
 このような状態を見ていると、今回の合意に基づく非核化の実現はかなり難しく、軍事制裁の方向に傾き始めたように私には見えます。
 最後は、米軍の軍事攻撃の威嚇に金正恩がどこまで耐えられるかです。しかし、すでに結論は出ています。彼が国内にいて、米軍を声高に非難していた頃は、世界中が「このエリンギ頭の坊やは本当に頭が狂っているのではないか」「何か精神異常をきたしている人物ではないか」との疑念がありました。

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 しかし、米軍が空母3隻を日本海に終結させるなど、攻撃の本気モードを見せると、これまで犬猿の仲と見られていた中国に飛んでいき、必死に助けを乞いました。しかも、習近平の「戦略的意思疎通」との言葉を必死でメモに取り、その後の夕食会でこの言葉を繰り返し述べたことから分かるように、想像以上に小心者であることがバレてしまいました。小心者は、猜疑心が強く、自分の側近でさえ信じられない、という特徴をもちます。叔父の張成沢(チャン・ソンテク)や異母兄の金正男の殺害は世界中に大きな衝撃を与えましたが、それを裏書きしています。
 この小心者の金正恩が、本格的な攻撃態勢を整えたアメリカの前で、なお非核化に断固として抵抗できるのか。私は絶対にあり得ないと思っています。抵抗しない、というより抵抗できないとなれば、後ろ盾となっている習近平に泣きつくしかありません。しかし、習近平も、世界注視の大団円の会談で非核化を誓いながら、これを履行しなかった金正恩を体を張って守るのか、となれば、そこまではできないでしょう。すでに世界中から悪評さくさくの中国が、更に約束を履行しない性悪の北朝鮮を守ることなど、到底できないからです。(H30・7・10記)

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