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東北に国際リニアコライダーを誘致しよう

東北に国際リニアコライダーを誘致しよう

国際リニアコライダー(ILC)とは

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 国際リニアコライダー( International Linear Collider)計画というものがあります。英語の頭文字をとって「ILC計画」です。
 これだけ聞いても何のことやらさっぱり分からないと思います。実は、私もさっぱり分かりません。ただ、この研究や研究のための施設づくりが日本にとって、極めて重要であるということは、私のような物理音痴でも何となく理解できます。
 このリニアコライダー計画というのは、全長約20kmの直線状の超電導加速器をつくり、現在達成しうる最高エネルギーで、電子と陽電子の衝突実験を行うという計画です。宇宙創成初期に迫る高エネルギーの反応を作り出すことによって、宇宙創成の謎、時間と空間の謎、質量の謎に迫る、というのが研究の目的というわけです。
 このILC計画は、現在、欧州CERN研究所で稼動しているLHCの次に実現するべき有力な大型基幹計画として、世界中の素粒子物理学者の意見が一致している計画だというんです。この計画を進めるため、アジア・欧州・米国の3極の素粒子物理学者による国際共同研究チームが作られ、日本の研究者も世界中の研究者と協力しながら研究を進めているというものです。

日本にILCが建設できたら

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 門外漢の私がこの計画に興味を持ったのは、経済評論家の三橋貴明氏の話を聞いたからです。同氏によれば、この加速器を建設することのメリットとして、建設時における雇用はもちろんのこと、建設時から世界のトップクラスの物理学者が集うことになる。その結果、日本の科学研究が今後も継承され、少なくとも約半世紀にわたって地域の発展にもつながるというわけです。

▶▶▶詳しくは、同氏の発言を直接お聞きください→こちらから超技術革命で世界最強となる日本!

 また、この計画を推進するため、すでに先端加速器科学技術推進協議会という社団法人も設立されています。この協議会のホームページに掲載されている内容をそのまま掲載する方が、その意義、効果などが一目瞭然だと思います。よって、以下、原文をそのまま掲載することとします。

先端加速器科学技術推進協議会のホームページより(図は別です)

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■国民の誇り、世界の尊敬と安全保障
 日本は世界が認める素粒子と加速器の大国。ノーベル賞候補者を多数もち、加速器の技術でも世界のトップを誇ります。
 米メリーランド大学と英BBC放送が2006年におこなった世界約4万人を対象に実施した共同世論調査では、33カ国中31カ国で「世界に好影響を与えている国」のトップが日本でした。ところが「尊敬される国」としての位置は決して高くない、という残念な結果になっています。
 世界拠点となる国際研究施設が日本にでき、素晴らしい成果がそこから産まれることは、日本の国際的な地位の向上にもつながり、世界から尊敬される日本への足がかりになることが大きく期待できます。また、ILCの実現によって、国民の日本に対する誇りも醸成することができるでしょう。ILC国際研究所の誘致は、世界で「最も好まれる国」から更に踏み込んで、日本が一番多くの国から尊敬を受ける国となる契機となります。
 そして、ILCから産まれるソフトパワーとしての最先端科学技術を、国家の明確な意思をもって、外交の穂の一つとすることは、日本の安全保障にも貢献することが出来るでしょう。

■日本発、世界へ。科学を創造する「知の拠点」
 宇宙の謎を解明するために世界中から日本に「優れた人」が集まり「新しい知」を生むーILCはそんな「世界の知の拠点」となることが期待される研究所です。
 宇宙の起源の解明は人類誕生以来の共通の目標です。それは宗教・国境を超え世界が協力できる数少ない共通の目的といえるでしょう。実際に今も、イスラエル・パキスタン・中国・日本・アメリカなど、世界の様々な人々が融け込んでひとつのチームとなって研究を続けていることが、それを象徴しています。
 ILCが日本にできることにより、世界中の素粒子物理および加速器科学の研究者及び学生は日本に集うことになります。世界の様々な文化を背景とする多くの人々が日本を舞台として活躍し、日本は新たな文化・技術の創造・発信の拠点となることでしょう。

■ものづくり大国・日本の再生へ

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 素粒子物理学の研究は、現代の産業、暮らしを支える様々なテクノロジーを産み出しました。電子の発見がエレクトロニクスを、量子力学がライフサイエンス・ナノテクノロジー・ITを生み出した。そして、X線やPETなどの医療診断装置や粒子線治療も生み出しました。加速器のつくる放射光は、創薬・材料設計・分析の必須の基盤となり、電子線滅菌装置は医療・食品衛生を根底から支えています。インターネット社会を創ったウェブWWWも素粒子の研究から発明されたものです。
 このように、素粒子物理の研究から派生する分野は幅広く、ILC周辺には、長期的に関連産業分野の企業立地が促進されることが期待できます。また、中小企業をはじめ、地域の企業が競争力をつけることによって、高い成長力を持った、先端科学技術産業の集積が加速化することでしょう。これは、ものづくり大国・日本の再生に向けた、次世代の科学技術・産業の「土台」作りとなります。
 また、ILCの建設・運用で、新たな雇用・人材育成機会が創出されることも期待できます。推計では、ILCの建設段階から運用段階に至る30年間で、全国ベースで約25万人分の雇用機会が創出されるとされています。(野村総合研究所資料より)

■未来の人材を育成する
 資源小国の日本の財産は「人」です。ILCは未来の人材育成にも大きく貢献します。
 2003年に経済協力開発機構(OECD)が行った学力到達度調査(PISA)の結果が発表されて以来、日本の子どもたちの理科離れ・意欲の低下の危機が叫ばれています。高学歴で成績は良い。けれど意欲が無い・・そんな状況は日本の持つ特有の現象であり「日本病」といっても過言ではありません。
 「知の拠点」ILCの形成は、未来を担う子どもたちへの教育や人間形成にも役立つことが期待できます。世界から集積する一流の国際物理学者と直接ふれあい、ノーベル賞級の発見を目のあたりにする子ども達は挑戦することの喜びを見いだすことでしょう。ILCは、子どもたちが日本で世界を感じ、同時に日本の文化と伝統を考える機会も提供できるでしょう。
 国民参加型で産学官が連携してILCを実現する過程は、「日本病」克服のひとつの契機になるのです。

■日本だからこそできること
 このような国際研究施設を日本に作り、世界の文化・技術の発展に寄与することは、世界の素粒子物理学をリードする日本の責務でもあります。宗教・人種を超え、世界中の人々が集う国際研究施設を作ることは、世界に門戸を開くことのできる寛容な国「日本」だからこそできることでもあります。
 アジアの時代が強調される昨今、欧・米の2極に加え、第三の極としてのアジア地域に国際研究所が設置されることの人類史的意義は非常に大きなことです。米にはNASAが、欧州にはCERNが、そして近年はITERが誘致され、世界の研究拠点を形成しています。米国では既に中国人・インド人などのアジアの若手研究者がポスドクの主流となっています。アジア地域における代表として日本にILC研究所を設置し、宇宙の謎を探る世界の研究拠点となることは、アジア全域にとって大きな意義を持つものです。実際に、中国、韓国、インド、ベトナム、フィリピン等のアジアの国々の研究者がILCの日本誘致に強い期待を寄せています。
 宗教・人種を超え、世界中の人が自然に集う場である「ILC」の立地する場は、世界に門戸を開けられる平和国家・日本こそ最もふさわしいと言えましょう。もし日本に建設されれば、他に例を見ない史上初の「世界の」基礎科学拠点となるのは間違いないことです。日本において民族の融合・宗教の融合が実現し、日本は新たな文化・文明の創造とその発信拠点となるのです。

 以上、先端加速器科学技術推進協議会の文章をそのまま掲載しましたが、その意義や必要性については、これだけでも十分に理解いただけるのではないでしょうか。
 地元である岩手県や秋田県はもろ手を挙げて賛成しているのはもちろんです。過疎化が住んでいる農村地帯に、世界最先端の研究をしている物理学者が5,000人規模で集まるというんですから、地元が歓迎しない理由はありません。しかも、この事業、原発などとは違って、地震などの自然災害によって、地域がダメージを受ける可能性は全くありません。

事業誘致の障害は何か

 事業そのものを推進することについては、地元も歓迎の意向を示しています。建設候補地の中心部に位置する岩手県一関市の勝部修市長は、市役所にILC推進課を作り、国際化推進員として日本語も堪能な豪州出身のネイト・ヒルさんを採用するなど、誘致実現に手を尽くしています。また、地元商工会議所が中心となった「岩手県国際リニアコライダー推進協議会」は、2015年7月、国内誘致の早期決定などを求める「県民決議」を採択しています。懇親会に駆けつけた達増拓也知事も「オール岩手でがんばろう」と気合を入れています。ということで、地元自治体は受入れに歓迎の意向を示しています。
 問題は、やはりお金です。建設費は、加速器に1兆円、測定器に1千億円、総額1.1兆円ほどが見込まれています。また、毎年の運営費は500億円が見込まれているようです。もちろん、これらの費用は日本だけが負担するものではありません。外国も、一定割合を負担することになります。日本が6、外国が4という負担割合が取りざたされています。いずれにしろ、日本が「国として」本格的に取り組むことを表明していないことから、具体的な費用分担の割合などについて、話が進んでいないというのが実情です。例によって、財務省が予算確保について難色を示しているからです。

国は科学技術投資を惜しむな

 このような国際プロジェクトを、単に費用負担の問題で日本に誘致できないとすれば、日本の未来はありません。このようなビッグプロジェクトは、日本の誇る物理学の分野のいわば集大成をなすものであり、世界の一流の物理学者が集う、研究学園都市ともなりうるものです。また地元の雇用や地方活性化の基盤ともなるものです。
 しかも、この事業は、単なるお金のバラマキではありません。今後半世紀という長期にわたって継続される長期投資なのです。上記推進協議会の説明にもあったように、電子やX戦の発見、インターネット社会をもたらしたウエブWWWの発明、加速器のつくる放射光が創薬、材料設計の基盤となるなど、先端技術の分野からは、さまざまな発明発見につながる新技術が生み出されているのです。
 もちろん、投資というものの性格上、100%結果を保証するものではありません。が、少なくとも、半世紀にわたって世界の物理学研究の最先端の拠点として機能し、副次的に雇用や地域活性化にも寄与する。有効な投資として、これ以上のプロジェクトはないではありませんか。

ノーベル賞受賞者も心配する研究費不足

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 今年のノーベル医学・生理学賞に、京都大特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏(76)が決まりました。受賞そのものは、喜ばしい限りですが、ここ数年の受賞者が共通して述べるのは、「日本の基礎研究費が不足している。このままでは、これから日本人のノーベル賞受賞者は、確実に減少するだろう」ということです。
 同じノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥氏も、同様の発言をしていました。しかも、山中教授は、研究費の確保のため、研究よりも資金集めの方が忙しい、とも述べていました。本庶教授も、「ライフサイエンスは未来への投資。ぜひ基礎研究にかかわる若い人を長期的に支援してほしい」などと、賞金全額を後進の研究者のために寄付する意向を示されています。
 これは美談ではありますが、裏返せば、それだけ日本では科学の基礎研究に投資するお金が少ないということを意味しています。人材以外に資源を持たない日本で、優秀な研究者が安心して研究に取り組めないこの現状こそ、憂うべきことではないでしょうか。
 それもこれも、国の財政を担う財務省の石頭、すなわち、「日本は借金大国、よって消費税の引き上げが必要」という妄想に取りつかれているこの組織を、政治の力によって押さえ、頑迷なる石頭を切り替えさせる以外に方法がありません。ここは安倍総理の決断が、是非とも必要な場面だと思います。(H30・10・10記)

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<後日記>

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 令和2年5月13日の読売新聞の報道によれば、2月中旬に米国務省のスティーブン・ビーガン副長官が茂木外相あてに次のような書簡を送ったとのことです。
「素粒子物理学研究における日米の先進性を引き続き確保するために、断固たる行動をとる必要がある。国際リニアコライダー(ILC)の計画を進展させることへの我々の強い支持を伝えたい。」
この書簡では、次のようにも指摘しているそうです。
「中国が同様の施設の設置を検討している。建設が発表されればすぐに、世界の科学者にとって中心的な取り組みになる可能性がある」
 9人ものノーベル物理学賞受賞者を輩出している日本が、たった一人の受賞者もいない中国に、予算が捻出できないからと言って、研究施設建設を先取りされてしまうのはあまりにも情けない。この研究への予算8000億円のうち、日本の負担はその半額程度です。こういう場面でこそ国債を発行すべきは当然です。財務省が日本の国をそして科学技術を潰さないことを祈るのみです。(R2・5・14記)
 

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