時事寸評 書評コーナー

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引きこもり問題への有効な対策はあるのか

引きこもり問題への有効な対策はあるのか

悲しい事件の連鎖

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 川崎の児童殺傷事件に驚いていたら、今度は、元農水次官が41歳の長男を刺殺したとのニュースが飛び込んできました。
 前者の事件は、すでにテレビや新聞などメディアで多くの報道がなされていますから、今更事件の詳細を述べる必要はないでしょう。犯人の岩崎隆一容疑者は51歳。既に分別盛りの年齢です。しかし、彼の生い立ちを辿ると、幼い頃にお婆さんの指示で両親が離婚させられ、どちらの親に引き取られることもなく、伯父夫婦の子として幼年期を過ごしています。この伯父夫婦にはふたりの子があり、彼ら二人ともカリタス小学校に通学していたのに、岩崎容疑者だけが公立の小学校を卒業したとのこと。それが真の原因かどうかは推測の域を出ませんが、敢えて電車を乗り継いでカリタス小学校の生徒を狙ったとすれば、何らかの関連があると言わざるを得ないでしょう。
 後者の事件は、元農林水産事務次官の熊沢英昭容疑者(76)が自宅で長男(44)を刺殺したというもので、同容疑者は調べに対し「間違いない」と供述しているとのことです。近くに住む男性は「一家は10年ほど前に引っ越してきた。娘のような30代ぐらいの女性は出入りしていたが、長男らしい男性は一度も見たことがない」と話していました。典型的な引きこもりの状態にあったということですね。
 テレビの報道を見ていると、東京都練馬区にある熊沢容疑者の自宅は、小学校に隣接しています。刺殺された長男は、日頃から小学校の校内放送などがうるさいと文句を言っていたそうです。父親は、川崎の児童殺傷事件のニュースを聞いて、息子が同じような事件を起こしたら大変だ、と思ったのかもしれません。家庭内暴力もあったとの報道もあります。

引きこもりが共通項

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 この二つの事件に共通している用語は何か。それは、「引きこもり」です。川崎の事件は、引きこもりの人間が加害者になったものであり、元農水次官の事件は、被害者が引きこもりの息子でした。
 社会の深部に滓のように溜まったマグマがブクブクと噴き出たような、不気味な気配を感じるのは私だけではないでしょう。
 最近のニュースで、「40歳から65歳までの引きこもりが61万3,000人いる」との内閣府の調査結果を聞いたとき、大きな違和感を覚えました。違和感を覚えた原因は何か。本来、引きこもりというのは、若者特有の現象であり、40過ぎのオッサン(稀にはオバサンも)がなるものではない、と思っていたからです。もちろん、広い世の中、稀には40歳過ぎの引きこもりはいるだろうとは思っていました。しかし、いくら何でも61万人以上もいるという事実には、心底驚きました。しかも、同じ内閣府の調査によれば、若者(15歳から39歳)の引きこもりは、54万人だというんです。若者の引きこもりよりも、働き盛りの中高年以上の引きこもりの方が6万人以上も多いというんです。
 若者の54万人プラス中年以上の61万人で合計115万人。日本中で、これだけの人間が、家の中に引きこもっているというんですから驚き呆れるしかありません。15歳から65歳までの人口は7,596万人ですから、100人中1.5人が引きこもっている計算になります。5万人の地方都市なら、750人の引きこもりがいるという計算になります。思わずウ~ンと唸ってしまいました。

あまりに多い引きこもり

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 この数字がいかに多いものであるかは、外国人労働者の受け入れ人数との関連で対比することもできます。先頃問題になっていた外国人労働者の受け入れ人数は、5年間で34万人余でした。5年間で34万人も受け入れたら、日本社会は同化する能力を超え、社会的混乱を引き起こすのではないか、と懸念されていました。
 ところが、その34万人のほぼ3倍の人間が引きこもっている。これを普通と見るか異常と見るかは人により異なるでしょう。少なくとも私には、尋常ではないと感じます。
 なぜこれほど大量の人間が引きこもりになってしまうのか。原因は様々考えられるし、個別の事情があり、一律に論じられるものではないことは承知しています。が、敢えて、その原因を探るなら、次のようなことが言えるのではないでしょうか。

①戦後の民主主義教育により、家庭が礼儀・作法・しつけを学校に丸投げしてしまったこと
②受け入れる学校側も、日教組による誤った自由平等主義教育により、子供たちに権利ばかりを教育し、守るべき義務をきちんと教えないなど、甘えの体質が蔓延したこと
③社会的背景として、就職氷河期世代は、就職時に安定した職業に就けなかったこと
④親世代は終身雇用、年功序列の雇用環境で生活してきたため、持ち家を確保し、老後の年金生活も比較的安定している。このため、精神的に弱くなった子供世代が安易に親に依存するようになってしまったこと。また、親も安易にこれを受け入れてしまったこと

犯罪の未然防止には高齢者の活用も有効

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 この引きこもりの問題に対して、有効な対処法はあるのでしょうか。後者の事件は、息子の将来を心配しての犯行であり、事務次官や駐チェコ大使まで務めた人間の犯行ですから、引きこもりという事実さえなければ防げた問題です。
 しかし、前者のように、引きこもった人間自身が犯行を思いついたようなケースは、未然防止はほぼ不可能と言ってよいでしょう。安倍総理は関係閣僚を集めて再発防止を督励したようです。柴山文科大臣も、「学校・通学路の安全確保に一層取り組んでいきたい」と述べていますが、具体的な防止策は示せていません。当然です。日本国中に115万人も引きこもりがいるんです。彼らがどのような思いで引きこもっているのかさえ分からないというのに、彼らの行動を阻止することなどできるはずがありません。しかも、このような凶行に走るのは引きこもりに限定されるわけではありません。一般人による通り魔もいるし、精神異常者や社会に不満を持つ、歪んだ思考を持つ者もいます。
 つまり犯罪予備軍は沢山いるのです。凶器と殺意をもった彼らから、完全に身を守ることは不可能です。それをやろうとするなら、海外並みに登下校時のすべてに親が同伴せよということになります。それでは、子育て中の親の負担が余りにも大きすぎます。また、日本の美徳とされた「小学生がひとりでも通学できる」という日本の治安の良さは、一気に外国並みに低下した、ということになります。これでは「羹(あつもの)に懲りてなますを吹く」ということになってしまいます。
 現在の治安状況を維持するためには、いくつかの方法が考えられます。
一つは、高齢者の活用です。学童の被害が集中しているのは登下校時とされています。その登下校時に、時間に余裕のある高齢者の力を借りるのです。私もそうですが、リタイヤした多くの高齢者は「365連休!」の身です。時間はいくらでもあるのです。高齢者であっても、見張り番くらいは務まります。このような見張り番が沢山いれば、犯人も手を出しにくくなるのは当然です。
 この場合、高齢者にも、犯罪抑止力として、機動隊が持っているような護身用の棒くらいは支給していただきたい。全国共通の護身棒くらい税金で負担してもよいではありませんか。自治体や学校が呼びかけてくれるなら、後期高齢者の私でも、いくらでもお手伝いします。機動隊員ほどの体力はありませんが、犯行を犯そうとするものから見れば、かなりの心理的な抑止効果はあるはずです。

社会に引き出すことが先決

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 対処法の二つ目は、迂遠な方法ではありますが、引きこもりそのものを減らす工夫です。引きこもりになった人たちは、端的に言って、「社会の落ちこぼれ組」です。落ちこぼれた原因は様々ですから一概に決めつけることはできません。しかし、その多くは、いったん就職したが企業体質に馴染めなかった、上司や同僚とそりが合わなかった、待遇に不満があったなど、勤務先との不適合が原因となっているケースが少なくないと見られます。それでも多くの人はそういう困難を我慢し、あるいは乗り越えて、勤務を続けています。引きこもった人は、その段階で脱落したケースが多いのではないでしょうか。
 特に、就職氷河期に就職した人の多くは、希望する企業からの募集がなかったり、あるいは募集人数が少なかったなどの事情から、思うような就職ができず、已む無く非正規など不安定な職に就かざるを得なかったという事情もあるでしょう。日本の企業社会は大卒一括採用が多いですから、一度落ちこぼれてしまうと回復がなかなか難しい。非正規であるがゆえに給料も安い。よって、思うような結婚ができなかった。その結果、転職を何度か繰り返すうちに、次第に意欲を失い、年金暮らしの親元に逃げ込み、社会に背を向けるようになった。というようなケースが多いのではないでしょうか。
 だとすれば、この状況を改善する工夫をすることこそが行政の役割と言うべきでしょう。行政は、こういう人達を「外に引っ張り出す」工夫をすべきです。行政と企業と時間に余裕のある私たち高齢者がタッグを組むのです。
 今は人手不足の時代です。外国から若い労働者を入れるのもありですが、国内に眠っている人材を掘り起こすのは、日本国全体として極めて有意義です。そのためには、行政と企業と高齢者が協力して、職業訓練、職場体験、面接会などを行うことは有効でしょう。行政と高齢者が主導して男女の交流会などを催すなんてのもいいでしょう。私が若かった頃は、世話焼き婆さんたちが、「お見合い」という形で男女の仲を取り持ってくれたものです。私もその恩恵にあずかった一人です。
 経済団体も、傘下の企業に対して求人募集や就職面接会の開催を呼びかけるなどの努力をすべきです。もちろん、「中途採用大歓迎」が前提です。
 いずれにしろ、引きこもりの人を、何とかして外に引っ張り出すことが重要です。外に出ることにより、会話が成立します。会話が成立しなければ、就職も結婚もありません。迂遠な方法ではありますが、このような地道な方法で、何としてでも引きこもりの人達を外に連れ出すことが最優先なのではないでしょうか。
 引きこもりや家庭内暴力に悩んでいる家庭は多いし、その悩みは極めて深刻です。誰にも相談できず、夜も寝られないというほどの大きな悩みであるはずです。眠れる労働力を掘り起こし、悩める家庭を救う。少子化対策の一環と位置付けることもでき、正に国家的大事業と言っても過言ではないと思います。(R1・6・3記)


<後日記>
 米国出身のケント・ギルバート氏によると、アメリカには引きこもりという問題はない、とのことです。なぜなら、アメリカの親は、子供をそんなに甘やかすことはなく、自立する年齢になったら、家から出て行かせるからだそうです。学費なども親が立替てやったんだから、働いて返せ、というのが一般的なんだそうです。3食付きで部屋にこもっているなどということは、全く考えられないんだそうです。

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 その意味では、日本の家庭は、余りにも子供を甘やかしすぎているのかもしれません。75歳の私から見ても、私たち世代を含め今の親世代は、子供に甘すぎるように思います。幸い私の2人の子供たちは引きこもりや親に反抗するというようなこともなく育ってくれたので、そのようなことで悩むことはありませんでした。
 仮に、子供が反抗することがあったとしても、ある程度は認めたとしても、親に対して悪態をついたり、馬鹿にしたり、まして暴力を振るったりなどしたなら、どんなことがあっても家から放り出していたと思います。子供たちもそういう気配を感じていたから反抗しなかったのかもしれません。
 その代わり、私は学業に関しては基本的に寛容でした。中くらいの成績で、中くらいの学校に行き、中くらいの勤め人にでもなってくれたらそれで十分、と鷹揚に構えていました。子供に負担になるような期待を一切しなかったのです。そのため、今は子供たち2人とも、すべて中程度の大人として中程度の生活をしています。お互い、その方が疲れなくてよいのではないでしょうか。
 子は親を見て育ちます。妻が夫を小馬鹿にすれば子供も父親を馬鹿にします。その逆も然りです。夫婦が尊敬しあっていれば、子供が大きくぶれることはないはずです。
 いずれにしろ、日本の親たちは、子供に対して、もう少し毅然とした態度をとる必要があるのではないでしょうか。(R元年6・15記)

▶▶▶ケントギルバート氏の発言は、40分頃からご覧ください→こちら

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