時事寸評 書評コーナー

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高齢ドライバーの事故報道はいじめに近い

高齢ドライバーの事故報道はいじめに近い

毎度おなじみの集中報道

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 朝、起きてテレビをつけると、決まったように高齢ドライバーに関する事故のニュースです。高齢ドライバーによる事故が脚光を浴びるようになったのは、福岡県早良区で発生した死亡事故と東京池袋で発生した旧通産省工業技術院長の起こした死亡事故以来ではないでしょうか。前者は81歳の高齢者が運転する車が交差点に猛スピードで突入し、運転していたその高齢者と同乗の76歳の妻が死亡したあの事故です。この車は、交差点の600メートル手前で別の車に追突し、その後対向車線にはみ出し、交差点に突入していったのです。後者は、現場手前の縁石に接触した後、直線で加速し、赤信号を無視して横断歩道に突っ込んで死亡事故を起こしたものです。

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 これら両事故は、単に「高齢者だから発生した事故」と言えるのでしょうか。後者は、アクセルとブレーキペダルの踏み間違いと言ってよさそうです。前者の事故は、てんかんや心筋梗塞、くも膜下出血など突発的に生じる体の変調によるものかは、本人が亡くなってしまった以上、原因究明は難しそうです。同乗していた妻のシートベルトが外れていたことから見ると、異変に気付いた妻がとっさにアクセルペダルから夫の足を引き離そうとしたようにも見られます。
 いずれにしろ、事故原因が、高齢だったから生じたのか、その他の病的要因によって生じたのかはっきり分かりません。そんななか、「高齢者の運転は危険だ」という「刷り込み」ばかりが先行し、連日、ニュースでは高齢ドライバーが起こした事故のオンパレードとなっています。
 テレビなどマスコミの報道を見ていると、①高齢ドライバーの事故が多発している、②高齢ドライバーの運転は危険だ、③高齢ドライバーの運転に対しては、早急に何らかの対策が必要だ、という空気になりつつあります。
 早速、東京都の小池知事は、新たに事故防止装置を取り付ける高齢者に9割程度の補助をする方針を表明しました。政府も、6月末に閣議決定予定の成長戦略に、高齢者専用の免許を作ることを盛り込む方針を表明しました。

集中報道の後は必ず規制強化

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 私は、後期高齢者になったせいか、性格が少し、いや、かなり、ひねくれてきました。このようなマスコミ報道を正面から受け止めないようになったのです。なぜなら、これまでマスコミによって、多くのフェイクニュースに接し、振り回されてきた経験があるからです。ですから、このように高齢ドライバーに関するニュースが集中的に流されるときには、条件反射的に、「この報道は本当か」「これは政府や取り締まり当局、あるいは、マスコミが何かを企んでいるのではないか」、「誰か得をする者がいるのではないか。」と邪推してしまうのです。
 過去の経験から、こういう洪水のように情報が流されるときは、グリコのおまけのように、決まって「規制強化」というおまけがついてきたことを知っているからです。今回もこれだけ報道が集中すると、高齢者にとってありがたくない「おまけ」がついてくるのは間違いありません。
 おまけの代表格は、先ず、「免許証の自主返納」です。その次は、「認知症検査は3年ごとではなく毎年実施」です。そのほかに「事故防止装置の装着義務化」なども具体化するかもしれません。
 このように規制強化を図ることにより、潤うのは誰か。規制当局です。認知症検査は、当初、全国の自動車教習所で行われていましたが、「美味しい金ずる」と見なされたのか、教習所ではなく、警察OBの組織が「直接」実施することになりました。地元の公共施設などを借りて実施するようになったのです。警察OBの組織は、純粋な民間組織のはずですが、なぜか公共施設を借りるのに、優先的に会場を占拠してしまいます。我々市民は、3か月前の早朝、まだ暗いうちから並んで会場の予約をするのに、これらのOB組織が優先されるため、会場確保もままならないという事態さえ生じているのです。
 それなのに、3年ごとでなく、毎年、実施となれば、警察OBにとって、これほど美味しい天下り組織はない、ということになります。ひねくれ者の私は、今回の一連の報道の裏には、規制当局(=警察)が動いているのではないか、と睨んでいます。当たらずとも遠からず、ではないでしょうか。

高齢者の事故は本当に増えているのか

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 高齢ドライバーに対する規制を強化するというなら、先ず、高齢ドライバーによる深刻な事故が増えている、ということが客観的なデータで立証される必要があります。単に事故件数が増えているということは立証にならないからです。図1で示したように、人口の高齢化に伴い、年々高齢者人口が増えているんですから、事故件数もそれに比例して増えるのは当然だからです。
 ところが、テレビなどを見ていると、こうした基本的なデータが全く示されないのです。強烈な事故現場の映像を繰り返し流し、コメンテータが免許の返納が必要だの、認知症検査を強化する必要があるだのと、表層的な感想を述べているだけです。
 高齢ドライバーが加害者となる深刻な事故が増えている、と言えるためには、その事実を「事故率」で証明しなければなりません。100人当たり、あるいは1,000人当たり、どの程度増えているのか、データで示さなければならないのです。
 では、警察庁発表のデータで調べてみましょう。図2は、年齢別の事故件数の推移です。警察庁発表の図に矢印などを加えて見やすくしたものです。図中の「第一当事者」とは、その事故に関わった人のうち、いちばん過失が重い人のことです。
 このグラフで分かるように、交通事故全体の件数は、どの年齢層で見ても減少の一途をたどっています。高齢者による事故件数は増えているのではなく、逆に減っているのです。先ずこの点を押さえておくことが重要です。減少の度合い、つまり減少率は、若年層が急激に減少しているのに対して、高齢者層の減少割合が少ないように見えます。しかし、これは、高齢者人口の増加(このグラフでは、免許保有者数の増加)に対して、若年層人口が減少していることから説明できます。つまり、高齢者が第一当事者となる事故件数は、総数として増えているわけではない、ということが理解できます。
 次に、高齢者が第一当事者として死亡事故に関与した件数を見てみましょう。

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 警察庁発表のこのデータをみて、初めて得心できました。高齢者が第一当事者となって起こした死亡事故は、確率的にも多いということが理解できます。これら2つのグラフから言えることは、次のようなことでしょう。
①高齢者が第一当事者となって引き起こす死亡事故数は、減少している。
②しかし、他の年齢層との対比でみると、高齢ドライバーによる事故率は相対的に高い。
③また、高年齢になるほど事故率は高まっている。

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 なるほど、ここまで見てくると、80歳以上の高齢ドライバーに対して、何らかの対策が必要である、ということが何となく理解できます。しかし、図4で確認できますように、高齢ドライバーが第一当事者となった死亡事故の推移をみると、年々減少の一途をたどっていることが分かります。年々高齢ドライバーによる死亡事故は減少しているのに、これほどまでマスコミによって叩かれるのはなぜでしょうか。
 その理由は、直近に際だった大事故が高齢者によって引き起こされた、ということに原因があるのではないでしょうか。マスコミは、常に皮相的な報じ方をするので、何等か注目すべき大事故が発生すると、集中的に類似事案の報道がなされるのです。いじめが問題になれば、連日いじめ問題ばかり。煽り運転が問題になれば、連日煽り運転報道。引きこもりによる殺害事件が起きると、連日、引きこもり問題ばかり、となるのです。
 いずれにしろ、上のグラフからみれば、高齢者ばかりが責められる理由はない、と私には見えるのですがいかがでしょうか。

認知症検査で何が分かるのか

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 私も後期高齢者の仲間入りをしたので、認知症検査や教習所で高齢者研修を受けました。高齢者研修も認知症検査も、私には規制当局の新たな金儲けの業務にしか見えませんでした。
 特に、認知症検査など、16種類ほどの絵を記憶させたり、時計の針を書かせたり、まるで幼稚園の授業のようです。こんな子供だましの検査をして、1万円近くのお金を取るというんですから、あきれるばかりです。しかも、私の場合、2時20分を表示せよ、というのでその通り記載したところ、減点対象になり、3千円ほど余計に払わされる羽目になりました。減点になった理由は、文字盤の文字を「すべて」記載せよ、との指示だったのに、12、3、6、9の文字のみを記載し、その間は単なるー(横棒)で記載したためだったようです。減点の理由を説明してくれませんから、真の理由は分かりません。
 いずれにしろ、こんな幼稚園レベルの検査をして1万円近くの金をとるシステム。本当に国民を馬鹿にしている、としか思えません。形を変えた増税策としか思えないのです。
 しかもです。こんなレベルの試験をするのに、何度予約の電話を入れてもつながらない。妻にも協力してもらい、ふたりで3時間ほど電話をかけ続けましたが、つながりませんでした。おまけに5時になったら、「受け付けは5時で終了しました。また、明日お電話ください」なんて自動音声が流れるんです。当然、頭に血が上り、県の警察本部に、メールで断固抗議しました。

私自身の認識

 私の運転歴は、50年近くになります。これまでの経験を踏まえて言えることは、若い頃よりも事故を起こさない、という自信が強くなったということです。免許取りたての頃は、都内の片側3車線の道路を走る時など、運転未熟のため、車線変更の都度恐怖感を抱いていました。一時停止線なども、しばしば見落としていました。雨上がりの道を走る時なども、水たまりに気づかず、思い切り歩行者に水をかけてしまったなんてこともあります。
 しかし、今は、一時停止線を見落とすこともなくなりましたし、きちんと一旦停止します。車線変更のため、サイドミラー、バックミラーできちんと確認する余裕もできました。水たまりがあれば、歩行者にはねないよう、気遣いをする余裕もできました。
 いずれにしろ、自分の個人的体験に照らせば、若い頃よりも、運転技術は格段に上達していると思います。少なくとも、気持ちの持ち方には大きな違いがあります。
 ですから、最近の高齢ドライバーいじめとさえ思える、マスコミの報道の仕方には大きな抵抗、違和感を感じています。74歳の杉良太郎氏が免許を自主返納したというので、テレビで報道されていましたが、75歳の私にはとてもできません。これだけモータリゼーションの発達した社会において、高齢者から免許を取り上げるのは勘弁していただきたいと思います。もちろん、都内のように、地下鉄など交通網が四通八達した場所なら別ですが、田舎暮らしの者にはできない相談なのです。

抜本的な対策は自動運転車

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 世界的に自動運転の技術は、格段に進歩しつつあります。日本でも自動車各社が技術開発にしのぎを削っていますが、中国やアメリカに比べると技術開発に遅れがあるようです。アメリカでは、グーグル社が2012年初頭から自動運転の路上実験が開始されていました。既に7年も前から手放しでの路上実験が認められていたのです。中国でも、山手線の内側ほどもある広大な敷地を自動運転開発専用区域に指定し、先行的な技術開発に取り組んできました。

▶▶▶2012年当時のGoogle社の自動運転の様子は→こちらから

 日本では、今もって手放しでの実走実験すら認められていません。運転手が走行中、常にハンドルに手を添えていなければ一般道路を走ることさえできないのです。その理由はなにか。規制当局が、開発の妨害をしているからです。
 信頼性の高い自動運転車が完成すると、先ず、自動車教習所の採算に影響します。警察OBの教習所への天下りは周知のとおりですから、天下り先を失うからです。また、完成度の高い自動運転車が完成すると、交通事故は劇的に減少します。交通事故が起こらないような社会になれば、警察官の仕事も劇的に減少します。交通違反切符が切れなくなれば、警察(裏で督促しているのは財務省ですが)の収入も激減します。様々な事情から、あれこれ理屈をつけて自動運転車の開発競争を阻害してきたのが取り締まり当局なのです。
 ですから、高齢ドライバーから免許証を取り上げるというなら、自動運転車の開発を急加速させるべきです。また、後付けで急発進防止装置や踏み間違い装置も付けられるようですから、国が補助してでも整備すべきではないでしょうか。
 私自身、安心して乗れるレベルの自動運転車が開発されたなら、今すぐにでも免許を返納し、自動運転車に乗り換えることでしょう。もっとも、今のような家計状況では、車の買い替えなど逆立ちしてもできそうにありませんが・・。(R元年6月14日記)

 

 

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