時事寸評 書評コーナー

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日本のIWC脱退は英断です

日本のIWC脱退は英断です

日本が脱退を決断

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 日本は今年6月限りで国際捕鯨委員会(IWC)から正式に脱退しました。加入していることによって受けるメリットよりも、脱退することによって受けるメリットの方が大きいと判断したということです。
 私も、IWCに参加していること自体に大きな疑問を感じていました。捕鯨という行為を、純粋に科学的な調査に基づき決定するのではなく、捕鯨行為自体を野蛮とする思想的判断に基づき事を決する機関ではないか、と思っていたからです。
 環境保護団体のグリーンピースや反捕鯨団体シー・シェパード(SS)などの活動も異常でした。正に捕鯨を野蛮行為と決めつける思想的な動機に基づく行為で、これら団体の無法極まる行為の方がよほど野蛮行為というべきです。
 通常、物事の決定は多数決によってなされます。それが一番民主的な方法と考えられているからです。ところがこのIWCという組織、商業捕鯨再開のための捕獲枠の決定や、反対に禁漁区を設定するといった際には、総会に参加した国の4分の3以上の賛成が必要なんです。現在は全加盟国89カ国のうち、捕鯨支持国41カ国に対して反捕鯨国48カ国です。多数決でさえ難しいというのに、4分の3以上の賛成が必要なんて、もはやいじめの世界と言うべきでしょう。これほど高いハードルでは、日本などの捕鯨支持国が商業捕鯨を再開しようとすることは、未来永劫不可能と断定してもよいでしょう。

食文化を賛否で決める不合理

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 そもそも論として、捕鯨行為を参加国の多寡で決めるべき問題なのか、ということがあります。すなわち鯨を食するなど食文化に関する事柄は、それぞれの国に歴史的・文化的背景があり、その行為について他国がとやかく言うべき問題ではありません。捕鯨に反対しているアメリカだって、嘗ては捕鯨をしていました。日本に開国を迫ったペリー艦隊の目的も、捕鯨船団に対して燃料など補給基地を提供させることが目的でした。しかも、彼らの捕鯨の目的は、食用としてではなく、潤滑油やランプの灯火用の鯨油を採取するためでした。油をとった後はすべて捨てていたのです。
 日本は、あくまでも食用として捕獲してきたものであり、鯨油は目的の一つに過ぎませんでした。文字通り頭のてっぺんから尾の先まで、すべて有効に活用してきたのです。そういう日本の捕鯨の歴史を無視して、非捕鯨国から捕鯨を中止せよというのは、おかしいと思います。他国の食文化に対して、あれこれ文句を言う権利などどこにもないのです。イルカ漁についても全く同様のことが言えます。韓国や北朝鮮には犬を食用とする文化があるようです。日本人は眉を顰めますが、決して非難はしません。それがその国の食文化だからです。インドでは牛を神聖な生き物として崇められています。ですから食用にするなど御法度です。それもその国の食文化であり、尊重されるべきものです。鯨も全く同じ位置づけなのです。

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 もちろん、漁業資源保護という観点から漁獲量を制限すべきだというなら、それはそれで十分傾聴に値します。ならば、資源保護という観点から、世界の海でどれくらいの鯨が生息しているのか、調査をしてみなければ実情が分からないということになります。日本は、正にそのための調査として、約30年にわたって調査捕鯨活動を行ってきたのです。
 ただ、このIWCの動きを見ていると、漁業資源の保護という観点からではなく、知能の高い鯨を捕る行為は野蛮だとする「食道徳」の側面から、捕鯨国を非難しているように見えます。つまり、IWCは、1頭たりとも捕獲を許さない、完全保護に目的が変質してしまったように見えるのです。

日本も多数派工作をしてきた

 捕鯨大国日本も、決して手をこまねいてきたわけではありません。政府開発援助(ODA)を通して、アフリカ諸国を捕鯨支持陣営に引き入れるなどの努力はしてきました。しかし、「4分の3以上」という高いハードルをクリアすることはできませんでした。
 そこで日本としては、この決議要件をごく常識的な「2分の1以上」とするよう提案してきましたが、認められませんでした。アメリカやEU、オーストラリアなど、裕福な先進国・地域が中心の反捕鯨国陣営の壁を突き崩すことができなかったのです。捕鯨支持国はアジア・アフリカの開発途上国が多数を占めており、外交力や資金力の面で大きな開きがあったのです。
 事ここに至り、日本はIWCからの脱退を模索し始めます。多数決すらも許さない、一方的な主張で他国の食文化を拘束するこのような国際機関に留まることが、国益に資するのか、ということを真剣に考え始めたのです。
 つまり、IWCに加盟している以上、その枠に拘束されざるを得ない。IWCを脱退すれば、その拘束には縛られない。縛られないと言っても、脱退した以上は、外国の海にまで出かけて漁をするわけにはいかない。日本の領海および排他的経済水域(EEZ)内での漁に限定される。日本は、この後者の道をとったということです。

機能不全に陥ったIWC総会

IWC総会

 IWCは、1948年に設立された組織です。この組織、本来は、捕鯨国で作った国際機関でした。参加国がすべて鯨肉や鯨油を利用する国だけで構成されていたのです。日本も、1951年に参加しました。しかし、1960年代に入り、イギリスなど欧州各国が捕鯨から撤退し始めました。撤退とともに、次第に日本をはじめとした捕鯨国に対し、反捕鯨キャンペーンを展開するようになったのです。環境保護などを主唱する各種環境団体の圧力が強まった結果といってよいでしょう。
 このIWCの総会の状況について、「現代ビジネス」は、次のように、伝えています。

IWC総会の状況について

 IWC総会が2年に1回開かれるのだが、近年その模様は、捕鯨支持国と反捕鯨国の間の「罵り合い」と言っても過言ではない悲惨な状況となっている。最重要の論点とされる商業捕鯨再開について、捕鯨支持陣営のリーダーである日本が「健全な資源量の鯨種については、持続可能な範囲で捕鯨を始めるべきだ」と主張すると、反捕鯨国の中でも最強行派であるオーストラリアが「わざわざクジラを殺さなくても、ホエールウォッチングなど、ビジネスとしてクジラと付き合っていく道もあるのではないか」「鯨肉の需要は減っている。日本の調査捕鯨も、国の補助金に頼っている(商業的に成り立っていない)ではないか」と、真っ向から反論。

(松岡久蔵2018・10・23「現代ビジネス」より)

 こんな状況で、4分の3以上の圧倒的多数を獲得していくのは、もはや不可能と言うべきでしょう。よって日本がIWCを脱退したのは、称賛はできないけれども、苦渋の選択としてやむを得ない選択だったというべきでしょう。
 今回の脱退について、外務省の世論調査によれば、約7割の人が「評価している」とのことです。私も、国連人権委員会など極めて偏向した機関の存在を苦々しく思っていただけに、今回の脱退については、好意的に受け止めています。「国連」というものの存在を、神の如く信奉するのはもうやめにすべきです。是は是、非は非と明確に主張し、余りに理不尽な組織からの脱退は、やむを得ないというべきです。しかも、この1WCという組織、国連のような普遍的機関ではありません。知名度の高い国際的な機関というべきものです。日本が脱退することによって、より一層弱体化していくのではないでしょうか。そして、他国の食文化に不当に干渉する、こういう組織の在り方についても改めて問い直されべきだと思います。私も、子供の頃に食べた記憶をたどり、もう一度鯨を食べてみたいと思います。(令和元年・7・13記)

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