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米ケルトン教授のMMT理論に賛同します

米ケルトン教授のMMT理論に賛同します

ケルトン教授が来日

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 アメリカのニューヨーク州立大学のスティファニー・ケルトン教授が来日しました。昨夜のWBS(ワールドビジネスショウ)にも出演し、自論を述べていました。
 彼女の主張するMMT理論(Modaern Monetary Theory)とは、一言で言ってしまえば、「自国通貨を持つ国は、債務返済に充てる貨幣を無限に発行できるため、物価の急上昇が起こらない限り、財政赤字が大きくなっても問題ない」というものです。
 もう少し具体的に言うと、①変動相場制が機能する国であること、②自国通貨を有する国であること、③国債を自国通貨で発行できる国であること、この3つの要件を備える国は、MMT理論が適用できる、と言っているのです。
 このことを今の日本に当てはめてみると、正にぴったりです。日本は変動相場制の国であり、自国通貨を持つ国です。国債も自由に発行できます。ケルトン教授に言わせれば、日本こそがMMT理論を実証している国だというわけです。
 ですから、日本は、国債発行を恐れることなく、必要な額だけ国債を発行してよいということになります。その結果、物価が急上昇を起こすような気配になったら、貨幣発行を止めるなり、金利を上げるなどすれば、物価上昇は止まります。財政危機の生じたギリシャでこれができなかったのは、EU加盟国であるため、自国通貨であるドラクマを発行する権限がなかったからです。
 このようなMMT理論を提起されると、既存の政府(財政)担当者はもちろん、経済学者などもほぼ軌を一にして反対の声を上げます。条件反射と言ってもよいでしょう。これまで自分たちが主張してきたことと全く相容れないからです。

▶▶▶ケルトン教授の記者会見の模様は→こちらから

既存の財政担当者や経済学者の主張

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 これまでの経済理論では、政府の財務残高がGDP比で100%のラインがインフレが急激に進む節目になる、とされてきました。しかし、実際には2012年以降、その水準を突破しても一向にインフレが急上昇する気配は見られませんでした。その結果、政府債務比率がどの水準になればインフレが急激に上昇するのかが分からなくなってしまったのです。
 EUの取り決めたマーストリヒト条約でも、財政状況については、財政赤字の限度は原則としてGDP比で3%、政府債務残高はGDP比で60%を超えないことが基準とされています。しかし、その後、この基準から外れた国が出現しても、特に大きな混乱が生じているというわけではありません。
 翻って、日本はどうか。日本の借金残高(国債発行残高)は1,326兆円で、GDP557兆円(ともに平成30年末現在)ですから、政府債務残高の対GDP比は238%となります。GDPの2倍以上の債務があるということになります。
 この数字を見ると、政府債務残高がGDP比で100%に達した場合に、インフレが急激に進むとした理論はすでに破綻している、ということは明らかです。100%どころか、日本のように238%のレベルになっても、急激にインフレになるような雰囲気は全くありません。それどころか、今の日本は、インフレの恐れよりも、長期化するデフレの恐怖におののいている始末なのです。
 このことは、何を意味するのか。政府財務残高とGDPの相関関係については、明らかに既存の経済の理論では説明できない、あるいは何かが間違っているということになります。

政府の赤字は悪でも脅威でもない

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 こういう中で発表されたのが、ケルトン教授のMMT理論というわけです。このケルトン教授の考え方は、中野剛、藤井聡、三橋貴明、上念司、田中秀臣、高橋洋一、それに日本人でノーベル経済学賞候補と言われる浜田宏一などの各氏によって、同様の考え方が示されてきました。これら各氏は、直接MMT理論として主張してきたというよりは、財政は家計と同じに論じるのではなく、貸借対照表(バランスシート)の論理で説明すべきだと主張してきたと思われます。つまり、バランスシートの右の欄(債務)だけを見るのではなく、常に債務に対応する資産の欄と関連付けてみるべきだ、という極めて常識的な主張をしていたのです。バランスシートで評価するならば、負債に見合う資産が十分に確保されているのだから、日本の財政は健全である。健全だから、もっと国債を発行するなど財政出動をして、経済の活性化を図る必要がある、と主張してきたのです。
 今回のケルトン氏の主張は、これを裏付ける主張と言っても過言ではありません。彼女も、「政府予算と家計を同じように考えることは大きな間違いだ」と指摘し、次のように述べています。
 「日本の債務残高は国内総生産(GDP)の約2.5倍で、主要国では最も大きいが、物価の上昇は鈍い。今後も日本で急激に物価が上昇する可能性は限りなくゼロに近い。保育や介護を担う人材の処遇改善などで個人消費を刺激すべきだ。政府の赤字は、悪でも脅威でもない。」

主流派経済学者などからは批判

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 このようなケルトン教授の主張に対しては、批判も相次いでいます。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も、このMMT理論に対して、「自国の通貨で借金をするのは問題ないという考え方は間違っている」と明確に反対の意見を述べています。サマーズ元米財務長官も、MMTの理論では「極端な物価上昇を引き起こす。為替レートの崩壊を招くだろう」と述べています。
 また、日本でも麻生財務大臣が「極端な議論に陥ると財政規律を緩めるということで、極めて危険なことになりうる。日本を実験場にする考えは持っていない。」と反対の意見を述べています。黒田日銀総裁も、ニューヨークのコロンビア大学で行われた会合で、「財政赤字の拡大を容認するMMT理論については全く賛成できない」と述べています。
 このように、ケルトン教授のMMT理論に対しては、既存の政府、伝統的経済学者、金融当局者の立場からは受け入れがたい主張なのでしょう。
 しかし、国の財政をバランスシートに落とした数字で見ることが、どうしておかしいのでしょうか。大企業だって、企業買収などに兆円単位の資金を投じます。投資資金に対する見返りが期待できるなら、何の問題もないからです。
 国のレベルでも、投資の観念は基本的に同じです。公共事業や教育投資はその典型でしょう。科学技術投研究も投資に馴染むと思いますが、基礎科学研究などは、具体的な成果目標が出しにくいかもしれません。防衛技術研究も同様です。ですから、投資の観念に馴染むものを国債発行で賄い、馴染みにくいものは一般会計予算で充ててもよいでしょう。予算として全体のパイが大きくなればよいからです。

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 そうすれば、今の窮屈な予算編成を大幅に緩和し、経済成長の軌道に乗せていくことも可能になるはずです。そもそも論として、財務省はインフレを極度に恐れていますが、過去20年以上もデフレに悩んできた日本が、これまでインフレの恐怖におののいて生活をしてきたということ自体、その不自然さにどうして気付かないのでしょうか。病弱で20年以上激やせで困っている人間が、「オレ太ってしまったらどうしよう」と悩んでいるとしたら、「お前頭おかしいんじゃないか。太り過ぎを心配する前に標準体重に戻してから心配しろよ。」と言うはずです。
 財務省の悩み、心配が馬鹿々々しいと思うのは普通の感覚のはずです。なぜ財務省は、この愚かしい発想から抜けきれないのでしょうか。私には全く理解できません。私たち日本国民は、この財務省の愚かしい発想に20年以上も付き合わされ、挙句、所得は伸びず、経済発展もせず、中国のような無法国家に経済力で追い抜かれ、あまつさえ軍事的脅威まで受けるようになってしまったのです。このことに関して、今一度、日本国民は真剣にこの問題を考えるべきではないでしょうか。
 京大の藤井聡教授と経済評論家の三橋貴明両氏が、このような日本国民の気持ちを慮り、日本の硬直した財政制度に風穴を開けるべくクラウドファンディングを活用して旅費を調達し、ケルトン教授を招聘したのです。ケルトン教授には、1日でも長く日本に滞在して頂き、多くの日本の政財界の要人たちにMMT理論を説明していただきたいものです。(令和元年・7・20記)

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