時事寸評 書評コーナー

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豪雨災害を防ぐ手立てを着実に進めるべきです

豪雨災害を防ぐ手立てを着実に進めるべきです

台風15・19号で甚大な被害

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 先月、10月に襲来した台風15号と続いてやってきた台風19号によって、日本、特に東日本は甚大な災害に見舞われました。千葉県に上陸した15号による強風の被害は甚大で、多くの家屋が屋根を吹き飛ばされ、地域一帯ブルーシートのオンパレードになりました。また倒木の被害により各所で電線網が切断され、最大93万戸が停電し、一部では長期にわたって電気やガス・水道のない生活を余儀なくされました。
 私がここで取り上げたいのは、更に大きな被害をもたらした台風19号の方です。東日本を縦断したこの台風の被害は甚大で、非常災害対策本部の調べによれば、死者95人、行方不明者5人、重傷者40人、軽傷者435人(11月12日現在)とされています。また家屋の被害も全半壊12,149棟、床上浸水27,861棟、床下浸水32,821棟にのぼっています。断水した家屋も全国で約16万2千戸に達しました。土砂災害も935件発生しています。また農業被害も深刻で、その損害額は2,544億円に達したと報じられています。

寸断された河川堤防

 このような甚大な被害が生じたのはなぜでしょうか。その主因はもちろん想定を超える異常ともいえる雨量にあります。台風19号による雨量は、防災科学研究所の調べで、千曲川、阿武隈川流域で100年に一度と想定される量を超えていました。数十年に一度の降水量が予想される場合に発表される、「大雨特別警報」のレベルを上回ることが裏付けられたのです。
 この大雨により、河川の決壊個所は全国で68河川、125か所にも達しました。これほど多くの個所で堤防が決壊すれば、被害が甚大になるのは当然です。堤防の決壊は、多くの土砂を運びますから、床下浸水であれ、床上浸水であれ、この土砂を排除するのは、容易なことではありません。高齢化が進んだ地方の集落においては、ボランティアなどの助けがなければ、到底排除できないほどの土量であったことは容易に想像できます。テレビ画面などを通して、途方に暮れる住民の方々の表情を見るにつけ、何とかならないものかと同情を禁じえません。しかし、自分自身、後期高齢者の身で、自分が駆けつけても、かえって足手まといになるのは明らかです。

防ぐ手立てはないのか

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 日本は、これまで同じような災害を何度も繰り返してきました。そしてその都度、ため息と同情を繰り返してきました。「鉄は熱いうちに打て」の諺も、被災直後には湧き上がるものの、次第に熱が冷め、記憶のかなたに去っていく。その繰り返しだったようにも思います。
 今回の台風15号や19号の教訓も、より強固な国土づくりが必要であることを多くの国民に認識させたのではないでしょうか。読売新聞の世論調査によれば、「政府や自治体がダムや堤防などの整備に今よりも力を入れるべき」と答えた人は85%に上った、ということがそのことを雄弁に示しています。それはそうです。たった一か所の堤防決壊でも、何百、何千戸の家屋が泥沼に浸かるのです。それが一つの台風で125か所も決壊したのでは国民はたまりません。住民が悲鳴を上げるのは当然です。
 では、実際にどのような対策を講じれば、溢流や破堤を防ぐことができるのでしょうか。それには技術的な側面と経済(資金)的側面から考える必要があります。
第1は、技術的側面です。
 台風19号のような未曽有の量の雨が降った場合、本当に堤防決壊を防ぐことができるのでしょうか。台風19号では関東地域でも同様の大雨が降りました。多摩川は一部決壊しましたが、利根川や荒川など、首都圏を守る大河川は、埼玉県の都幾川など一部を除き、氾濫や決壊はありませんでした。つまり、茨城県、埼玉県、東京都、千葉県内では、埼玉県の都幾川など小河川を除き、甚大な被害は生じなかったのです。その主な原因としては、次の3つが考えられます。
①台風直前に予定工期より早く八ッ場(やんば)ダムが完成したことにより、ゼロベースから満杯までフルに貯水することができたこと
②利根川流域にある渡良瀬遊水地の貯水機能が有効に機能したこと。この遊水地は茨城県古河市の北西に位置し、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県の4県の県境にまたがる面積33平方キロの巨大な遊水地です。

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③メディアで「平成の地下神殿」と呼称される首都圏外郭放水路の貯水機能が生かされたこと。この地下神殿は、平成18年に完成した貯水施設で、貯水量はおよそ67万立方メートルで東京・池袋のサンシャインビルの体積とほぼ同じとされています。
 もちろん、既存の川俣、川治、草木、下久保などの各ダムがそれぞれ機能したことは間違いありませんが、完成直後の八ッ場ダムがゼロベースから満杯になるまで貯水できた効果は、計り知れないものがあったと思います。この八ッ場ダムは、民主党政権時、「公共事業=ムダ」との旗印の下で、前原誠司国交大臣により、一時中止を余儀なくされたダムです。その後、建設省出身の前田武志大臣により、事業再開となったいわくつきのダムです。
 いずれにしろ、これらの施設の総合的な力により、南関東、すなわち東京、千葉、埼玉、茨城においては、堤防決壊による甚大な洪水被害は避けられたのです。利根川や荒川といった河川の決壊は、人口の密集する首都圏を直撃することから、洪水被害防止のための公共投資が集中的に行われていた結果、とみることができるのです。多摩川の溢流は、地元民が「景観が損なわれる」として、堤防建設を阻止してきたことによるもので、必ずしも行政側の責任とばかりは言えないでしょう。

ダムをめぐる問題

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 堤防の溢水や決壊を防止するためには、ダムの建設や地下ダム、それに遊水池の拡大を検討する必要があります。ただ、ダム建設をめぐっては、次のような問題があります。
 第1は、一つのダムを建設するのに、長期かつ巨額の建設費を要することです。一つのダムを建設するためには、数十年単位の時間がかかります。また、建設費も、用地買収や内水面漁業補償のための交渉や道路の付け替え、それに実際の建設費など、数千億単位のお金が必要になります。
 第2は、ダム適地の減少といった問題があります。ダムに適した場所から先に建設していきますから、これから建設するダムは、あまりダム建設に適さない場所、とも言えるのです。
 第3は、ダムの堆砂の問題です。ダムは日々上流部から土砂などの堆積物を運んできます。ですから、ダム完成時が最大の貯水量となり、その後年々ダムの貯水容量は減少していく、と言って間違いありません。
 これら問題点をクリアするために、「臨時応急的な対策」があります。ダムには農業用ダムや発電用ダム、それに治水機能を有する多目的ダムがあります。多目的ダムは、農業用水、工業用水、水道用水のほか治水などの機能を併せ持っています。つまり、多目的ダムは、洪水調節の治水用だけに使えるわけではないのです。
 多目的ですから、ダム建設時に、これらの用途に応じて、それぞれの事業者がダムの建設費を負担します。負担の見返りとして、農業用水30%、利水(工業・水道)用水30%、治水30%といった割合で費用を負担しています。残りの10%は、川魚などの生存を確保するため、常時最低限の水量を流すものです。
 このように多目的ダムを管理する国土交通省は、すべての水を自由に差配できるわけではないのです。つまり、大きな台風が直撃しそうだから、ダムの水をすべて空にして待機するということはできないのです。台風19号の直撃に際し、八ッ場ダムがフル稼働できたのは、完成直後で最初から空だったからこそできた幸運でもあったのです。
 このことから言えることは、近年の温暖化に伴う台風の巨大化に対処するためには、急いでダム建設をするというの現実的な対策とは言えません。むしろ、既存のダムの貯水量のうち、農業、工業、水道など利水事業者の理解を得て、緊急時には治水容量を弾力的に増やせるよう、早急に事業者間の調整をすることが現実的ということになります。そうすれば「緊急放流」などもしないで済むのです。利水事業者の協力が是が非でも求められると思います。

遊水地など遊水機能の拡大も検討すべき

 ダム建設や事業者間の調整のほかに、遊水機能の増大も検討すべきです。前述した地下神殿のような巨大な貯水施設がどんどん建設できるなら結構です。しかし、このような巨大な構築物は、人口密集地を背景にする場合には適するものの、過疎化が進み、人口の減少している地方部では費用対効果の面から、実現は難しいでしょう。
 人口減少地域においては、耕作放棄地なども多いことを考えると、既存の低地を広範囲に買収し、さらに深堀していくということを検討すべきではないでしょうか。渡良瀬遊水地のような大規模なものでなく、中小規模の遊水地を各地に作り、水の遊び場、豪雨時の受け皿とする方向で検討すべきだと思います。

資金調達は可能

第2の問題は、予算的裏付けです。
 結論から言えば、国債の発行です。国債の発行というと、財務省の役人は、家計理論を持ち出し、プライマリーバランス(基礎的財政収支)を損なうとか、財政健全化の基本方針に反する、インフレを助長する、といったカビ臭い論法で、これを拒否します。財務省の論拠の基本は、次の財政法4条にあります。

財政法4条(歳出削減の制限)
1項 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。 

 財務省は、国債(公債)を発行するためには、この規定を根拠に、公共事業費、出資金、貸付金に限定されると解釈しているわけです。
 本来は、このような財務省の主張する家計簿論法を駆逐するよう、財政法など法改正を行うべきだと思います。が、ダムや調整池の建設など公共事業に関しては、現行法の枠内でも、国債発行は十分に可能です。

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 話が脱線しますが、嘉悦大学教授の高橋洋一氏によれば、教育費や科学技術研究費などもこの第4条の解釈で読めるというのです。
 その根拠は、小村武・元大蔵事務次官の「予算と財政法」(三訂版)の101ページに次のように解説されている、というのがその理由です。

 「財政法第4条第1項ただし書きは、公共事業費、出資金及び貸付金の財源となる場合に例外的に公債発行又は借入金を許容している。これらはいずれも消極的支出ではなく、国の資産を形成するものであり、通常、その資産からの受益も長期にわたるので、これらの経費については公債発行又は借入という形でその財源を賄い、その元利償還を通じて後世代にも相応の負担を求めることを許しているものと考えられる。」(アンダーラインは筆者)

 この解説書の著者は、元大蔵次官の個人名になっていますが、財政法の逐条解説書として、財務省主計局のバイブルとされてきたものです。しかも、その後も逐次改訂されており、事実上の公的見解と言ってもよい、と高橋氏は述べています。
 確かに、役所には「有権解釈」という用語があります。法律を所管しているのは役所です。その法律の解釈権限は、原則としてその法律を所管している役所にある、ということです。もちろん、法文解釈に疑義がある場合、最終的に裁判所に訴訟という形で異議を申し立てることもできますが、通常は、有権解釈でこと足ります。
 そして、その有権解釈は、所管省庁が作成した「○○法解説」といったもの、通常、コンメンタール形式(つまり逐条解説書)が発行されているのです。法律上可能か可能でないのかといった法的判断は、通常、この逐条解説書によってなされているのです。
 このような前提に立つならば、養育費、教育費、科学の基礎研究費は、公共事業と同じく、「懐妊期間が長く、大規模で広範囲に行う必要のある投資」と位置付けることができ、国債発行で賄うのが適当ということになります。私には、「公共事業ですら!」国債発行が可能と明記されているのに、教育費が明記されなかったことが不思議でなりません。しかし、この「予算と財政法」の解説に基づけば、公共事業と同様に、国債によってこれらの財源を賄うことは十分に可能と言えます。財務省が可能でないというなら、財政法を改正すればよいのです。財政法は憲法ではありませんから、多数をもつ与党の意思で改正できるからです。
 教育の場合、教育期間が22年という長期を要しますが、逆に、22歳で卒業すると同時に、65歳の定年に至るまで、「優良な納税者」として、超長期にわたって国に貢献してくれる超優良な借主なのです。これほど「貸しっぱぐれのない」長期投資はないのです。

結 論

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 議論が思わぬ方向に飛んでしまいました。要するに、ダムや調整池など洪水調節用の施設は、明文通り、国債をもって充てることが可能ですから、この際は、現在の公共事業費と別枠で年間10兆円単位で最低10年間、思い切って国債を発行し、これらの施設を作るべきだと思います。「最低でも10年」と言ったのは、公共投資は、持続的・安定的になされるのでなければ、事業者は投資をしようという気にならないからです。千葉県下で多くの家屋がブルーシートで覆われたまま、半年先、1年先まで工事業者の手当てができない、という実態をご存じでしょうか。既存の建設業者が、事業の先細りを懸念して介護や農業など、他分野に転廃業してしまった結果です。
 いうまでもなく、公共投資は、消極的な投資ではなく、「現在および将来世代に対する積極的投資」なのです。そのことによって、インフレ率が仮に年3%を超えるようであれば、国債発行にブレーキをかければよいではありませんか。
 今回の台風19号は、武田信玄公の言うとおり、「水を治めるものは国を治める」という言葉を改めて思い出させてくれました。公共事業を悪とする民主党政権のような政策をとっていると、必ずやまた、近い将来、日本は大きなしっぺ返しを受けることになるでしょう。
 最後に平成の今太閤と呼ばれた田中角栄元総理の言葉を載せておきます。

田中角栄の言葉
 子供や孫たちに借金を残したくないという考え方は、一見、親切そうに見えるが、結果はそうではない。生活関連の社会資本が十分に整備されないまま、次の世代に国土が引きつがれるならば、その生活や産業活動に大きな障害が出てくるのは目にみえている。美しく住みよい国土環境をつくるには、世代間の公平な負担こそが必要である。このような積極財政は、社会資本の充実や教育、医療の改善、技術開発の促進につながるだけでなく、経済の高成長をうながす道にもなる。(「日本列島改造論」72頁)

 高度な技術により、人工衛星が月の裏側や宇宙のかなたの小惑星まで往復する時代に、洪水被害で多くの住民が泥まみれになった家屋の前で泣いているなんて、あまりにも悲しすぎます。安倍総理は、財務省の小役人の言説に振り回されるのではなく、必要なところに必要な投資をし、経済の活性化と国民生活の安定を確保していく。それこそが政治というものではないでしょうか。安倍総理は、そのために政治家になったのではありませんか。


<後日記>
月刊Hanada1月号、田村秀男氏の「常識の経済学」のコーナーに、次のような記事が載っていました。そのまま転載します。(転載はボックスの中だけ)

 安倍政権周辺に成長重視派がいなかったわけではない。2012年1月から2年間、内閣府事務次官を務めた松本崇氏で、意外なことに、もとは成長に背を向ける財務省本流出身だ。彼は日経新聞の経済教室11月1日付寄稿記事末尾で、「他の先進国より成長率が1%ほど低い現状は、その分国民の所得が伸びないという形で、毎年5.5兆円ずつ隠れた増税になっているようなものだ。」「投資をしない会社が成長しないのと同様に、投資をしない国は成長しない。成長しない会社の社員の給料が上がらないように、成長しない国の国民の所得も増えていかない。」と断じた。

 何のことはない。財務省は、本当は投資なき国は成長しない、という当たり前のことを知っていたのです。知っていながら、知らないふりをして増税増税を主張していたんですね。これこそ国を見ず、省益を見る、悪しき官僚の典型です。国家的犯罪というべきです。
 この国家的犯罪を放置したのは、財務省だけでなく、財務省の二枚舌を許した政治家にあります。政治をコントロールする政権与党に最大の責任があるのは当然ですが、野党にも大いに責任があります。天下国家を語らず、雨男発言や身の丈発言、桜を見る会問題など、天下国家と程遠い、三流週刊誌レベルのスキャンダルで大騒ぎする野党の責任も重大です。
 加えて、マスコミの責任も問われるべきです。今のマスコミは、財務省の提灯持ちのように、財務省流の緊縮財政を支持してきました。軽減税率の適用と引き換えに、消費増税に賛成していたマスコミなど、もはや「マスゴミ」と断ずべき存在です。マスコミには経済に精通した専門家はひとりもいないのでしょうか。

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