時事寸評 書評コーナー

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国民全員に100万円ずつ配って何が不都合なのか

国民全員に100万円ずつ配って何が不都合なのか

一刻も早く配れ

 私は、この欄で国民一人当たり100万円ずつ配れ、と主張してきました。その理由は次の通りです。
① コロナ禍、経済的に困窮している国民が大勢いる
② 財政悪化にはならない
③ マイナンバーカードを一気に普及させる絶好の契機になる

 こんな主張をすると、精神病院に行けと言われそうですが、いたって真面目です。これら①~③について、少し検証してみましょう。

国民は困窮している

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、消費の落ち込みは鮮明になっています。消費税10%への増税で、消費が落ち込んでいるさなかの新型コロナ蔓延です。2、3か月程度で終息するものと思っていたら、すでに9か月を超えようというのに、未だ収束に至りません。人心に及ぼす影響はもちろんですが、経済的な影響は甚大で強烈なのです。
 総務省が7月7日に発表した5月の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は25万2017円で、物価変動などの影響を除いた実質で前年同月比16.2%減でした。その後も、この前年比マイナスは続き、6月が▲1.2%、7月が▲7.6%、8月も▲6.9%でした。なんと11か月連続のマイナスです。しかもその下げ幅は、比較可能な2001年以降最大だったのです。
 景気の先行指数を表す景気動向指数も、内閣府の調査によれば、27か月連続の下落となりました。需要が減少した自動車や鉄鋼、非鉄金属などを中心に、幅広い業種で生産活動が低迷しているのです。
 このような状況ですから、新規の住宅着工戸数も減少しています。国土交通省の発表によれば、新設の住宅着工戸数は、対前年比14か月連続でマイナスを続けています。
 こういった経済低迷の余波で、三菱重工は国産初のジェット旅客機MRJの量産化を凍結すると発表しました。全日空も賃金カットと冬のボーナスゼロ、加えて3500人の人員削減案を発表しました。
 このように、不況の事例は文字通り枚挙にいとまがありません。多くの国民が、困窮の淵に立たされているのです。

景気回復の突破口になる

 こういった状況の中で、国ができること、いややるべきことは何か。「経済を浮揚させ、雇用を確保する」ことです。しかし、新型コロナの蔓延で、従来のような手法で経済活動を本格化させることはできない。ならばどうするか。国民にお金を配ることです。私は、全国民に一人100万円ずつ配れと主張していますが、どうしてもだめだというなら、その半額の50万でも構いません。とにかく今は、緊急に国民に現金を配ることが重要です。
 全国民に100万円ずつ配るとどうなるか。国民は、喜んでお金を使うようになります。それはそうです。労せずして得たお金ですから嬉しくなって使います。先に配った定額給付金10万円は、預貯金に回った分が多いと言われます。しかし、それは財務省お得意の嘘です。お金に色はついていません。とりあえず預金に回したとしても、必要額はどんどん使っているんです。もらった分に色をつけて、大事に保管してあるわけではありません。
 今は世の中全体に外出制限がかかり、経済活動が縮小し、上に述べたような不景気な話ばかり横溢しているんです。もしかして自分もリストラの対象になるかもしれない、給料も減るかもしれないと思えば、積極的に消費しようという気にはなれないだけのことです。
 しかし、一人100万円ずつだったらどうでしょう。標準家庭(家族4人)で400万円の臨時収入。このレベルなら、大いに消費に回そうという気になるのは当然です。
 私も、後期高齢者ですが、お金があれば使いたいと思っていることが山ほどあります。冷蔵庫や洗濯機が古くなり、妻から買い替えの話が出ています。しかし、手元不如意のため、あいまいな返事をしてごまかしています。古屋なので屋根の補修や外壁の塗装もしたい、車もそろそろ買い換えたい、年に一回くらい海外旅行もしたい、などさまざまな思いはありますが、年金しか収入がない悲しさ。わずかな預金を取り崩して生活しているので、保守的にならざるを得ません。

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 こうした中で、国民一人当たり100万円ずつ配ってくれるというのです。これはもう喜んで使いますね。特に、若い子育て世代は、教育費にお金がかかりますから、どんどん使うでしょう。
 そうなるとどうなるか。景気は確実に、いや格段に良くなります。景気が良くなるということは、「お金が動く」ということです。お金が速く動けば動くほど、景気は良くなります。沈滞していた夜の街も、旅行業界も、飲食業界も、みんな活気が出てきます。もちろん、消費活動全般に活気が出てきますから、あらゆる業種に活気が戻ってきます。消費が活発になれば、それを供給する生産活動も活発になります。生産活動が活発になれば、雇用が増大し、賃金も上昇します。賃金が上がれば、消費が促されます。正の景気循環がそこから始まるのです。
 このような状態こそ、多くの国民が望んでいる生活なのではないでしょうか。菅政権も、それを望んでいるはずです。そのような経済状態を作れば、間違いなく長期安定政権になります。

財政健全化に反するのか

 こんな話をすると、あのケチケチ財務省が「財政健全化をどうするんだ」「プライマリーバランスをどうするんだ」「不労所得を期待するなど国民を怠惰にするだけだ」などと、頭から湯気を出して怒り出すことでしょう。
 財務省の発想は、常に「収入に見合った支出」、つまり「家計」の発想から抜け出すことができないからです。家計は、収入以上の支出をすれば回らなくなります。月給30万円の家庭が毎月40万円の生活をすれば、首が回らなくなるのは理の当然です。
 しかし、家計と国の財政は全く異なります。最大の違いは、次の3点です。
①国には通貨(紙幣及び硬貨)の発行権限がある
②国には国債の発行権限がある
③国には財政を通じて景気を拡大させ、国を発展させる使命がある
 このように、国の財政と家計は全く異なります。これら3つの権限や使命は、国家にのみ特有なもので、家計には絶対に許されないものです。私が暮夜密かに紙幣を印刷したら即逮捕です。個人債権を発行しても見向きもされません。私に景気を拡大させる使命もないのです。
 全く異なるのに、財務省の説明は常に家計に例え、「国の借金は1053兆円になった。国民一人当たり830万円の借金を背負っている計算になる」などといった説明をします。そして、大手メディアも全くこれと同じ説明をします。財政制度審議会会長を務めたような東大の偉い先生(例えば、吉川洋立正大学長)も、財務省と全く同じ主張をします。つまり、緊縮財政によって、財政収支の安定を図らなければならない、というわけです。典型的な家計簿財政主義です。
 マスコミで国の経済指標が発表される都度、「財政健全化」という「迷文」が刷り込まれるんですから、多くの国民は、つつましく生きて、国の財政健全化に協力しようという気になります。東大法学部を出たような頭脳明晰な官僚たちががん首揃えて言うんだから、言っていることに間違いはないんだろう、なんて思います。そして、このような状態が30年近くも続き、気がついたら日本は、先進国の中で一番経済成長から取り残された国家になっていたのです。家計は疲弊し、国や地方もお金がない。よって全国のインフラはボロボロ、満足な補修もできない。もちろん、子育て費用や科学技術予算、国防予算すら確保できない。

財源はどこにあるのか

 全国民一人に100万ずつ配ると、一体いくらになるのでしょうか。日本の人口は2020年1月1日時点で124,271,318人ですから、約12,500万人として約125兆円です。2020年度の国家予算は102兆円ですから国家予算を大幅に超える給付金ということになります。
 そんなお金、一体どこにあるのか、ということになるでしょう。そんな巨額の国債を発行したら、市中消化などできるはずがないではないか、という声も聞こえてきます。それは財務省式の発想で考えるからそうなるのです。
 上で述べたように国には通貨発行権があるんですから、その権限を行使して、125兆円分の「通貨」を発行すればいいんです。通貨発行権の行使は、10万円の定額給付金の「実績!」でもわかるように、銀行振り込みという形式で発行できます。現物の紙幣、硬貨である必要はないのです。法的には紙幣は日銀、硬貨は政府発行ということになっていますが、小さな話です。定額給付金10万円の支給時に、私たちは硬貨でもらったわけではありません。口座に振り込んでもらっただけです。財務省は財政法に違反するとか騒ぐでしょうが、既に実績が示しているではありませんか。財政法が障碍になるというなら、改正すればいいんです。財政法は憲法ではなく法律ですから、与党の意思だけでも改正することができます。
 125兆円を国債発行という形式で発行すると、一度民間(金融機関など)に引き受けてもらい(売却)、それを日銀が買い戻すなどという経路が必要になりますが、国民の口座に直接振り込むなら、売却だの買い戻すだの利払いだのといった問題に、頭を悩ませる必要は一切生じません。
 また定額給付金は予算の枠内で発行しましたから、この100万円も予算計上して発行することになるでしょう。国の貸借対照表の左右、つまり資産の部と負債の部が大きく膨らむ(=パイが膨らむ)だけです。

マイナンバーカードを活用せよ

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 上に述べたように、国家と家計は月とスッポンほどに違うのに、百年一日のごとく、同一に論じる愚かさから、私たち国民は覚醒する必要があります。
 そうです。頭をガーンと叩いて、発想の転換をするのです。天動説から地動説に転換するのです。
 では具体的に、国民全員に100万円ずつ配るシーンを想定してみます。お金を配るためには、銀行振り込みが最善であることは、定額給付金の実例で勉強しました。支給が遅れたのは、マイナンバーカードが普及していなかったからです。マイナンバーカードがあれば、振り込みは簡単です。通帳所有者の金融機関の口座に100万と記帳すればいいだけです。記帳は、電子データで書くだけですから僅か一行です。マイナンバーカードが普及し、一つだけ金融機関の口座と紐づけされていれば、即日、国民全員に配布することが可能なのです。外国ではそのようにしています。
 政府は、この100万円の振り込みの条件として、マイナンバーカードの取得を義務付けるのです。マイナンバーカードがあれば100万円もらえるとなれば、未取得者も必死になってカードを作るでしょう。結果、マイナンバーカードは一気に普及します。マイナンバーカードは、ワンストップサービスが可能になるなど、その利便性は今後ますます向上していくはずです。引っ越しの都度、役所との関りでどれほど多くの時間を費やしたことか。親の死亡時にどれほど多くの手続きを余儀なくされたことか。そういった徒労にも等しい手続きの多くは、ワンストップサービスで解決可能なのです。そのシステム構築こそが、デジタル庁を発足させる目的なのです。

一体誰が損をするのか

 このようにして発行した電子データとしてのお金の発行によって、一体誰が損をすることになるのでしょうか。結論から言えば、誰も損をしません。
 なぜなら、国債発行と違い、利子をつける必要がありませんし、売却の手間も買い戻す必要もないからです。国のバランスシートから見ても、国は国民に125兆円を支払うことによって、国の貸借対照表上、負債の部に125兆円が計上されますが、同時に国民の側にそれに見合う同額の資産が計上されることになるだけです。国の債務=国民の資産だからです。要するに、貸借対照表の資産と負債の金額が大きくなるだけ、パイが大きくなっただけで、誰も損などしていないのです。全体のパイが大きくなったら誰が困るのでしょうか。誰も困りません。各国政府は、むしろ「パイの拡大」を目指して凌ぎを削っているのです。
 国民は、配られたお金をどんどん使うことによって、景気が拡大します。その結果、税収増をもたらすということになります。お金が動くたびに税金が徴収可能になるからです。タンス預金が誰も幸せにしない、という理屈です。つまり「たった一行」の数字が、すべての国民及び財政当局をハッピーにするのです。

問題はないのか

 強いて問題として挙げるとするなら、次のようなものでしょう。
①不労所得により、常に給付金を期待し、国民の健全な勤労精神が失われるのではないか
②インフレになるのではないか
③国際的な評価に耐えられず、日本の国債が暴落するのではないか。
④為替にダメージを与えるのではないか

 私は、これらの心配はない、と思っています。
 まず、①ですが、頻繁に支給する性質のものではないので、心配する必要はないでしょう。怠け者はいつの世にも存在します。勤労を美徳とする国民性が、そう簡単に失われるものではありません。一度棚からぼたもちをもらったからといって、何年も口を開けてじっと待っている国民はそれほどいないのです。
 ②インフレの懸念が生じたなら、金利の引き上げなど対策は十分に可能です。インフレの懸念があるなら、状況を見ながら50万円ずつ、2回に分けて支給することもありでしょう。
 ③の国際的な評価は難しいところですが、外国からお金を借りて支給するわけではありませんし、外国に迷惑をかけるという話でもありません。日本国債の信用が落ち、暴落するということもないでしょう。なぜなら、国債の増発によって給付しているわけではないからです。既存の国債発行の数量に変化はないのです。それに自国通貨建ての国債発行で、国家破綻した事例は古今東西皆無です。
 ④の為替は対ドルとの関係を見ておく必要があります。アメリカは、新型コロナの不況に対処するため、2兆ドル(約210兆円)の経済対策を打ち出しています。ドルの大量発行はドル安を招きます。その反動で円高になります。せっかくため込んだ対外純資産340兆円はこれによって大部分消えることになります。消えてしまうなら、この際、国民に配ってしまうほうが有効だ、ということです。為替へのダメージどころか、為替の平仄を合わせるためにも、国民にお金を配ることが有効なのです。

経済成長は絶えざる大目標

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 国家は何のために存在しているのか。それは国民の豊かな生活を守り、外国勢力から国民の生命財産を守る、ということに尽きるでしょう。これを実現する最良の方策は何か、となれば、私は「経済成長」、この一言に尽きると思っています。
 海外のまともな指導者は、等しく「経済成長」を国家の大目標に掲げています。これなくして国民に豊かな生活と、国家の安全を保障できないからです。対する日本は、30年近く清く正しく慎ましく、ゼロ成長を続けてきました。父親の初任給と息子の初任給が同じなんて状態が、長く続いてきたのです。野党が政権を奪取したときは、「事業仕分け」やら「コンクリートから人へ」とやらで、ケチケチちまちました政策で、日比谷公園では炊き出し屋台村が繁盛しました。炊きだしに並んだ失業者を引き連れ、生活保護係に引率する姿を、マスコミは美徳として称賛する雰囲気さえあったのです。
 私たち国民はそんな生活を望んでいるのではありません。きちんと経済成長し、未来に希望が持てる安定した生活を望んでいるのです。経済成長がゼロ以下だとゼロサムゲームとなり、誰かがパイを切り取れば誰かが損をする荒んだ社会にならざるを得ないのです。このように未来への希望と安定した生活は、経済の成長なくして実現することはできないのです。
 私たちの生活は、経済の成長という現実の下で成り立ってきました。通貨の単位も、古代なら米・絹・布、江戸時代では、両、分(ぶ)、朱(しゅ)、明治からは円になりましたが、1万円が高額の象徴でもありました。私の子供のころは、100万長者という言葉が使われていました。その円も、億円、兆円と進み、これからは京が頻繁に登場することになるでしょう。要するに、経済は、常に歩みを止めることができないのです。計算の煩雑さ故、デノミも必要になるかもしれませんが、常に「経済の成長」という大原則、大本は揺るがないのです。
 菅政権は、行政の縦割り打破や規制改革に注力するとのことです。具体的には、携帯料金の引き下げや地銀再編など、課題ごとに「一点突破」する戦略を描いています。

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 しかし、私に言わせれば、何といっても「経済の成長」、これこそ一点突破でやっていただきたい。なぜなら、この一点突破で、多くの問題が一気に解決してしまうからです。少子高齢化、地方創生、雇用増大、社会保障の充実、科学技術の振興、国の防衛、あらゆる問題は経済成長という妙薬によって、ほぼ解決できてしまうのです。菅総理は「携帯料金の値下げ」や「不妊治療を健康保険で」なんて言っていますが、一国の総理の発言として、余りにもスケールが小さい。例えば不妊治療です。あくまでも一般論ですが、これは結婚年齢が遅くなったことにより生じているケースが多い。早く結婚すれば、不妊にならなくて済むケースも多いはずです。
 終身雇用と安定した給料、その裏付けの下に早いうちに結婚、出産、となれば、少子高齢化問題も解決してしまうのです。家庭の平和は、亭主が職場で終身雇用が認められ、給料が着実に増えていく、という明るい見通しがたつことによって実現できます。
 いま菅政権に求められているのは、チマチマした政策でなく、嘗て池田勇人総理が唱えた「所得倍増計画」のように、経済全体を強力に引き上げていく、スケールの大きい政策目標なのです。
 

最後に

 私の述べた意見は、暴論のように聞こえるかもしれません。いや、大部分の人がそう思うはずです。しかし、「経済成長」という大目標を達成するためには、これを起爆剤にするのが、最も効果的だと確信します。財務省は必ず「財政法の下ではそんなこと」と言うことは間違いありませんが、それでは今の逼迫した経済状況を打破することはできません。私に言わせれば「財政法が」ではなく「たかが財政法ごときが」です。
 銀行振り込みで定額給付金が支出できたんですから、一人100万円が支給できない理由はありません。その支給も国債ではなく、現金=電子データで、という明白な実績があるんです。そして「そんなことしたらハイパーインフレが」という主張も、この度の定額給付金で全くの出鱈目であったことがバレてしまいました。あとは実行あるのみなのです。
 これまでのべたような発想の持ち主は、良心的な識者の中にもたくさんおられます。大西つねき、上念司、高橋洋一、田村秀男、三橋貴明、藤井聡各氏などは、ほぼこのような考えをお持ちのように思われます。政界でも安藤裕衆議院議員など、少数ではありますが、進歩的な議員もおられます。
 特に、高橋洋一氏は、この度内閣参与に任じられましたので、是非、政権の内部から大胆な発想で菅総理を説得していただきたいものです。「令和の所得倍増計画」、これを私の冥途の土産に、是非拝ませていただきたいものです。このままでは、日本は本当に沈没してしまいますよ。(R2・10・26記)

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