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生活保護制度は正しく運用されているのか

生活保護制度は正しく運用されているのか

小田急切りつけ男は生活保護受給者

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 8月6日、小田急線の社内で若い男が包丁を振り回し、乗客10人が重軽傷を負うという事件がありました。この事件の犯人対馬悠介という男、現在36歳で、都内の小中高を出て中央大学理工学部に進学したが、その後中退したという経歴をもつ人物でした。その後、職を転々とし、昨年の6月頃には人材派遣会社に登録してコンビニ店やパン工場で働いていたというんです。つまり、最近なら、特に珍しくもない普通の生活を送っていた若者という感じの男です。
 驚いたのは、彼が、数カ月前から生活保護を受けていたということです。そもそも生活保護というのは、36歳で働こうと思えばいくらでも働ける若者が受給できる制度になっているのか、という疑問です。この年齢なら、いくらでも働けるし、現に、彼は派遣社員としてコンビニ店やパン工場などで働いていました。
 そういう人物が、生活保護を受給できたというのは、なぜでしょうか。それほど簡単に生活保護というのは、受給できる制度なのでしょうか。

知人にも不思議な受給者がいる

 私が興味を持ったのは、切り付け行為そのものよりも、学歴もあり、こんなに元気な若者が生活保護をもらえるシステムって一体どのように運用されているのか、ということです。このような疑問をもつに至ったのは、自分の身近にも、不思議に思う事例がいくつか実在したからです。その実例を二つ挙げてみます。
 一つ目は、近くに住む高齢者の例です。高齢といっても私よりも若い70歳代前半くらいでしょうか。いたって元気で、カラオケの集まりなどに出てくると、マイクを握って離さないというくらい元気です。一見して体のどこにも障害があるようには見えません。なぜこの人が生活保護を受給できているのか、不思議でなりませんでした。聞くところによると、身体障碍者ということで、障碍者手帳を持っていると聞いたことがあります。しかし、皆と同じように酒を飲んでカラオケを歌っているんですから、普通の生活を送っているようにしか見えません。特段生活に支障があるようにはみえません。そういう人物でも生活保護を受けられるというのが、私には、不思議でならないのです。
 もう一つの実例は、遠くに住む知人です。彼は、妻と2人の子供がいます。子供たちは既に高校も卒業し、それぞれ社会人になっています。彼は、子供が幼いころから生活保護を受給していました。彼には仕事ができないような精神的又は肉体的な欠陥があるとは思えませんでした。しかも、ある有力な国家資格さえ持っていたのです。この父親は生活保護を受給するためには現在の住所では難しいからというので、関西のある市にわざわざ転居していきました。そして首尾よく生活保護を受給し、子供を育て上げました。
 今は、疎遠になっているので、現在も受給を続けているのか否か不明ですが、子供たちが高校を卒業するまでは、受給していたことは間違いないはずです。つまり、彼は、真面目に働くよりも生活保護をもらった方が得だ、ということで住所も変え、受給し続けたのです。
 そして、今回の小田急線切り付け男です。有名大学の理工学部まで入学した人物が、生活保護を受給できてしまう生活保護制度って、怠け者のための制度になっているのではないか、と思うのは私だけでしょうか。

生活保護費の水準

 巷間、生活保護受給者の受ける給付金は、長年年金を納めてもらう年金額よりも高い、と言われます。
 そこで、一体生活保護費っていくらくらい支給されるのか調べてみました。
 生活保護費というのは、生活扶助+住宅補助から成り立っています。生活扶助は、食費や光熱費などの生活に必要な費用です。住宅扶助は、文言通り、住居を確保するために必要な家賃の保障です。
 その金額は、住んでいる地域や世帯人数により異なる、とされています。そのおおよその金額の具体例を、次の表で示します。

生活保護

 この表を眺めていると、犯人の対馬容疑者は、ほぼほぼ毎月13万円程度の生活保護費を受給していた、ということが推測されます。
 問題は、この生活保護費について、20年以上掛け続けてやっともらえる年金額より多いのではないか、ということです。しかも、驚くべきは、生活保護世帯には、生活保護費とは別に、次に掲げるような項目について、税金や保険料が免除されていることです。

◆生活扶助、住宅扶助以外の支払い免除項目
 •国民年金保険料
 •国民健康保険料
 •介護保険料
 •介護サービスの利用料金(介護扶助)
 •雇用保険料
 •住民税や所得税、固定資産税などの税金
 •医療費(医療扶助)
 •水道料金の基本料金
 •公営住宅の入居の保証金と共益費
 •NHKの受信料
 •公立高校の授業料
 •保育園の保育料
 •粗大ゴミの廃棄料金
 •出産費用(出産扶助)
 •働くために必要な技能の習得にかかる費用(生業扶助)
 •葬儀代(葬祭扶助)など
 これらの項目を眺めて、フ~っとため息をついた人も多いのではないでしょうか。生活扶助、住宅扶助のほかにこんなに多くの項目について支払い免除になる。これらの項目を金銭に換算すれば、一体いくらになるのでしょうか。これでは、下手に年金をもらうより、生活保護費を受給したくなるのは当然ですね。

働く意欲がなくてももらえるのか

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 嘗て、民主党政権時、「炊き出し屋台村」というのがありました。民主党や共産党などの支持者が、生活困窮者のため日比谷公園で開いた、無料の炊き出しです。その時感じたのは、炊き出しを振舞うことより、無職者たちが炊き出しの列に並ばないで済むような政策を実行することの方が先だろうに、ということでした。
 更に、この時、無職者を集めて、「これから団体で生活保護の申請に行きます。希望者は集まれ」と号令をかけ、集団で区役所などに生活保護の申請に行っていました。これは想像ですが、民主党政権時に民主党支持者が役所の窓口に引率したんですから、かなり高い確率で生活保護が受給できるようになったのではないでしょうか。
 問題は、生活保護というのは、それほど容易に受給できるのか。また、一旦受給した場合、その後どういう場合に受給停止になるのか、ということです。
 具体的な疑問としては、今回の小田急線車内切り付け男は、生活保護受給者だったんですが、こういう人物は、いつ受給停止になるのか、ということです。

受給資格停止の条件

 そこで生活保護受給資格停止の条件を調べてみました。生活保護が支給停止になるのは、次のような場合だそうです。
 ①生活保護受給者自身が辞退届を提出して承認されたとき
 ②就職して収入の見込みができたとき
 ③結婚または同棲で世帯収入の計算結果が十分と判断されたとき ...
 ④転居・転出など他の都市へ引っ越しをするとき ...
 ⑤死亡や失踪、居住実態不明など生活保護受給者がいなくなったとき
 この条件をじっと眺めていると、今回の犯人のように、働かず求職活動もせず、漫然と生活保護費で生活している場合は、自ら受給停止を申し立てることはない、ということになりそうです。つまり、東京の山谷や大阪の釜ヶ崎などのドヤ街で寝起きしているような人たちは、終身、生活保護費で生活できるということになりそうです。だって、これらの資格停止条件に該当しませんからね。いや、仮に該当したとしても、自ら支給停止にしてくださいとお願いする人はいないでしょう。

働けない場合一定期間で資格停止すべき

 私は、真に生活保護に該当するような人に対して、厳しく当たれと言っているのではありません。母子家庭など、どう頑張っても生活費が十分に得られない家庭を生活保護制度で護ることを否定しているのではありません。むしろ保護が当然だと思います。また、本意ならずも障碍を負い、生活に困窮している人を救わなくてよいと言っているのでもありません。
 私の言っているのは、今回の小田急線切り付け男のように、学歴もあり、体に特段支障もない若い男が生活保護の対象になるということ自体、制度の趣旨に反しているのではないかということです。
 更に言えば、ドヤ街で生活し、生活保護費をもらったらすぐにパチンコ店に駆け込んだり、酒浸りになるような人達の実態がマスコミで報じられることがあります。これらの人たちに対して、国は生活保護で、年金受給者以上の待遇を与えることは、逆に、不平等なのではないか、と言っているのです。
 働く意欲の有無の判定は、極めて困難です。しかし、今の日本、50歳以下であれば、仕事の選り好みをしなければいくらでも仕事はあります。いくらでもあるのに無職だというのは、「労働意欲がない」ということになります。労働意欲のないことは、決して罪ではありません。自由です。しかし、だからと言って、労働意欲のない壮健な人間を、無職だからと言って税金で保護する必要があるのでしょうか。私はないと思います。
現に、支給停止の要件として「働ける状態にあるのに就職せず働かないとき」という項目があります。
 この項目が、制度運用に当たって、厳しく適用されていないのではないかという気がします。要するに、甘々の制度運用がなされているのではないか、ということです。なぜ甘くなるのか。それは、次のような事情があると想像されます。
 ①支給打ち切りになった本人が、窓口で大騒ぎするなどして担当者が対応に難渋することが多い。
 ②このため、生活保護担当の窓口担当は、役所の中で嫌われる部門として、1~2年程度の短期で人事異動がなされる。
 ③その結果、窓口担当者は、制度運用の適正化より、移動の時期が来るまでなるべく穏便に済まそうとする。
 このような実態が、結局、怠け者を蔓延らせる原因になっているのではないでしょうか。そうでなければ、今回の切り付け男が、生活保護を受給できたということが理解できません。
 私は、このような怠け者を排除するためには、「働く場所がない」と言っている人たちについては、例えば、6カ月という期限を付して、自動的に支給要件を停止するといった措置を講じるべきだと思います。
 ならば、支給停止を受けて、野垂れ死にしてもいいのか、と問われれば「どうぞ野垂れ死にしてください」と言うしかありません。生活保護というのはそういう制度だと思います。「働かざる者食うべからず」は、人間としての基本的な倫理なのです。
 ただし、繰り返しますが、母(父)子家庭や障碍者のように、働きたくても、いや、働いても生活に必要な収入が得られない人たちに対して、救済の手を差し伸べるのは当然です。それこそが憲法が保障する生存権なのです。(2021・8・26記)

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