時事寸評 書評コーナー

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政策次第で日本経済は絶対良くなる

政策次第で日本経済は絶対良くなる

腰の定まらない岸田政権

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 先ずは謹賀新年。今年もよい年でありますように。来年は80歳、健康に気をつけなければいけない歳になりました。
 さて、日本の置かれた現状は大変厳しい。台湾や尖閣諸島など、周辺国を威圧し隙あらば侵略しようと企んでいる中国の台頭は、大きな不安材料です。そして中国の属国と化し、日本に牙を剥き続ける韓国。国民を貧窮のどん底に陥れながら核開発に勤しむ北朝鮮。ウクライナ侵攻の危機をはらむロシアなど、日本の周辺国だけでも懸念材料に事欠きません。
 その中で、昨年誕生した岸田政権。国民目線から見ると、何か腰の定まらない政権に見えます。コロナ水際対策として、すべての外国からの旅客機の運航をストップすると言明したのに、わずか一日で撤回。日本国民が帰国するのを忘れていましたとのこと。子育て世代に支給する給付金10万円も、現金5万円とクーポン相当分5万円と言っていたのが、全額現金でいいと修正。中国に対しては、「責任ある行動を強く求める」などと述べていましたが、北京オリンピックに対し外交ボイコットをしないばかりか、ウイグル人人権問題に関し、非難決議一つしようとしない。「責任ある行動を強く求める」と言っていた言葉の虚しさよ。立候補に際し、株式投資益に対する金融課税はしないと断言していたのに、首相になってほとぼりが冷めるとソロリソロリとこの問題を蒸し返し様子を窺う。
 このように、岸田政権は、嘗ての中曽根首相のように、将来、首相になるためにさまざまな問題について思索を巡らしていたという人物でないため、何か問題を指摘されるとすぐに変更してしまう。国家の舵取りを任せられるに足る器ではなさそうです。

高度成長から低成長へ

池田勇人

 では、今年1年、日本はどうなってしまうのでしょうか。いや、どうすべきなのでしょうか。政治には外交、防衛、経済など多岐にわたる問題を含んでいますが、論点が発散してしまうので、今回は経済、特に、「日本の経済を向上させるにはどうすればよいのか」、というところに焦点を当て考えてみたいと思います。
 よく言われるように、日本は、過去30年近くに渡り、デフレに苦しんできました。デフレはインフレの逆ですから、賃金・物価が上がらないという生活です。物価が上がらないのはいいとして、賃金も上がらないとなれば、悲惨です。現に、父親と息子の初任給がほぼ同じ、などという信じ難い状態が続いているのです。
 その同じ日本が、嘗ては、年に20%、30%給料が上昇したなんてこともあったんです。高度成長期、すなわちバブルの時代です。私も現役の頃、こんなに給料が上がっていいものかと思ったものです。池田勇人首相は、「10年間で所得を倍増させる」と公約しました。まさか、と思いましたが、僅か7年でそれを実現してしまいました。そういう時代だったのです。

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 ところが、その後、時代は大きく変わりました。石油ショックの大波が日本を襲いました。1973年から2000年にかけ、第1次、第2次オイルショック(石油ショック)により、原油の値段がいきなり4倍に引き上げられたのです。当然、物価は高騰し、庶民はトイレットペーパーなど必需品の確保に奔走しました。
 労働組合も、物価の値上がりを賃金上昇でカバーすべく、経営者に賃上げを要求しました。太田薫なんて総評の議長がこぶしを振り上げ、組合員の団結を呼びかけていた時代です。つまり、賃金も物価もともに大幅に上昇していたのです。1979年、エズラボーゲルが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本を出版していました。1980年代後半頃には、東京23区の土地代でアメリカ全土が買えるとまで言われました。

グローバル化の大波

 しかし、その後、バブルは崩壊します。物価は上がらず、嘗て世界一と言われた日本の労働者賃金は低迷を続けます。国内企業の日本脱出が始まったのです。なぜか。世界一高い賃金を払うより、より安価な労働力を得られる中国や東南アジアに生産拠点をシフトし始めたのです。グローバル化の時代の始まりでした。港湾、空港が整備され、海運、航運が著しく伸長したことが背景にありました。

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 当然ですが、グローバル化の時代は、世界のどこであれ、より安いコストで生産した方が競争力が高まる。日本の文化では労働者の人件費はコストではなく資産とする考え方が定着していました。ピータードラッカーの言う「事業の目的は利益を生み出すことよりも、顧客を生み出すこと、したがって労働賃金は企業のコストではなく資産である」を体現していたのです。しかし、グローバル化の時代においては、人件費は輸送費、原材料費などと同じ単なるコストと見做されます。
 かくして、自動車や家電をはじめとする日本の主要産業も、次々と生産拠点を労働力の安い海外に移転し始めました。日本の労働者は企業に捨てられ、高い賃金を得ることは叶わなくなったのです。世界一だった日本の半導体産業も、米国から「日米半導体協定」という名の理不尽な約束を強制され、弱体化されてしまいました。
 現在の日本経済の長期低迷は、このような大きな背景の中で理解することができます。グローバル化した世界で、労働者が高い賃金を得るためには、生産性を上げるしかありません。政府の成長戦略会議の委員などを務めるアトキンス氏はこのことを主張し、三橋貴明氏など経済学者から「日本の中小企業を潰すつもりか」と厳しく非難されたりしています。
 確かに、グローバル化した世界市場においては、競争に勝ち抜くため、技術力を高め生産性を向上することが求められます。が、高度に発展した世界市場において、高い技術力を磨きそれを維持するのは容易なことではありません。
 しかも、今は高度に発達したコンピュータやIOT技術を活用するなど、多くの国がこれらの技術習得にしのぎを削っています。差別化することは極めて困難なのです。これらの技術はGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に代表されるように、アメリカがほぼ独占状態にあります。これらの巨大企業、スーパースター企業だけが一人勝ちし、他は、その傘下に入ることを余儀なくされます。資本の論理が世界を席巻しているのです。ソフトバンクのように、自らは独自の技術を持たず、資本の力によって企業買収を繰り返し、巨大企業にのし上がることが可能になったのです。

社内留保の拡大

内部留保推移

 このような資本の論理によって、企業買収を繰り返すことによって、今後、世界はどう変わっていくのでしょうか。グローバル化した世界において、企業の評価は「如何に利益を出したか」が基準となります。僅か3か月という四半期単位で、企業業績が集計され公表されます。そして決算期ごとの利益と配当によってのみ、経営者の能力が評価されるようになったのです。賃金を上げ、福利厚生施設を充実させることは利益に直結しないとして、切り捨てられていきました。全国に展開した大企業の保養施設が売りに出されたのも、このような背景で理解することができます。
 このような資本の論理は、労働者を資産とみる日本人的考えからすれば、余りにも理不尽です。松下幸之助さんや本田宗一郎さんなど、名だたる企業の創業者は、草葉の陰で泣いていることでしょう。
 しかし、現実を直視すれば、このグローバル化こそが、日本において、賃金が上昇しない最大の原因と認めざるを得ません。賃金が上がらなければどうなるか。当然、家計は苦しくなりますから消費は盛り上がらない。消費が拡大しなければ、企業も投資意欲がそがれます。当然、税収も増えません。負の循環、デフレ現象です。
 企業は、経済が長期に低迷していますから、将来不安に備え守りに入ります。つまり、従業員に対して報酬で報いることをせず、社内留保という形で資金を内部にため込むことになります。こうしてため込んだお金の総量は、財務省データによれば、2020年度末で前年度比2%増の484兆円というわけです。2012年度以来、9年連続過去最高を更新し続けているのです。

対外純資産の拡大

内部留保推移

 財務省は、毎年、貿易による収支を公表しています。2021年5月に公表した最新のデータによれば、政府や企業、個人が海外で保有する資産の残高は前年比5.1%増の1146兆1260億円となり、9年連続で過去最高を更新したとされています。また、資産から海外投資家らによる対日投資を示す負債を差し引いた対外純資産も、過去最高だった前年末とほぼ同じ356兆9700億円。「世界最大の純債権国」の座は30年連続で維持したと報じられています。
 これらのお金は、本来、日本に還流し国民の生活向上に活用されるべき性質のものです。なぜなら国民が働いて生産した商品を輸出して得たお金だからです。しかし、現実には、そのような活用はなされず、もっぱら外国に保有(滞留)されたまま、巡り巡って、中国の経済発展に貢献しているとされています。
 これら企業の当事者は、外国で稼いだお金だから海外への投資に使うのは当然だ、と言うかもしれません。それでは日本人に恩恵が及びません。貿易によって得られた利益は、国内に還流されてこそ意味があるのです。日本国民は、未だその恩恵を受けていないのです。出稼ぎに行った夫が現地で蕩尽し、その地の飲み屋が潤っても、首を長くして待っている家族には何の恩恵もない。これでは余りにもひどいではありませんか。

現預金の拡大

 では、家計における現金・預金の現状はどうなっているのでしょうか。日銀が2021年6月25日に発表した資金循環統計によれば、家計の金融資産は、同年3月末時点で何と1945兆7887億円に達するというのです。そのうち、現金・預金は54.3%に当たる約1056兆円です。およそ30年にわたる長期デフレ下においても、家計の金融資産、特に現金・預金は着実に増加してきたのです。
 この数字を株式投資の総額と対比してみることにしましょう。日本取引所グループの発表したデータによれば、2021年11月30日現在における東京証券取引所における株式時価総額は、733兆6821億円となっています。これは家計が持っている現金・預金の約69%ということになります。
 普通預金の金利は僅か0.001%です。定期預金でも0.002%です。100万円預金していても利息は年に1000円です。文字通りアホみたいな利息です。それでも家計は辛抱強く、コツコツと預貯金に励んでいるのです。これって何か変だと思いませんか。

発想の転換が必要

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 これらのことから何が見えてくるか。少なくとも、次のようなことが言えるでしょう。
① 今のままでは、国民の所得は伸びず、経済発展を期待できない
② 経済発展がなければ、国の安全保障や年金など社会保障、教育投資や科学技術への投資など、必要な分野への財源が確保できなくなる
③ よって、これら3つの財源、すなわち、企業の保有する社内留保金484兆円、対外純資産356兆円、家計の保有する現預金1056兆円。これらをいかに有効に活用するかを考えることこそ、岸田政権の役割ではないのか。

 このようなことを言うと、少なからぬ国民は、民間企業や個人の保有する資産にまで手を突っ込み、奪おうとしていると反論するかもしれません。決してそうではありません。現に今ある財源を、有効に活用する方策を考えることは、個人であれ国家であれ、当然のことです。
 少し考えれば分かることですが、僅か0.001%の利息しかもらえない銀行預金より、株式投資により、毎年、安定的に年4%の利息がもらえるとしたら、はるかに家計は潤います。仮に、1000万円の預金があるとして、銀行に預けるだけでは利息は1万円。株式投資なら配当金40万円です(正確には20%の税金がとられるので、32万円)。そして、この配当金4%という数字、決して珍しいものではありません。
 配当金4%以上を出す企業はいくらでもあります。私の利用するネット証券で企業数を検索すると、1月4日現在で229社あります。企業名も即時に検索することが可能です。
 もちろん、株式投資には一定の危険もあります。しかし、いくつかの企業に分散投資をすることにより、その危険は大きく軽減されます。ベテランになってくれば、信用取引などで、投資額を大きく増やすことも可能になります。
 現在、そのようになっておらず、1056兆円もの巨額な金額が、預金という形で銀行に滞留し、僅か0.001%という金利に甘んじている状態は、余りにも異常というものであり、もったいないというほかありません。

国債発行に頼らなくても実現可能

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 国は、「投資」というものの重要性を国民に啓蒙する必要があります。なぜなら、この1056兆円の半分、528兆円ほどを株式投資にまわせば、株式市場は大きく活況を呈することは間違いありません。前述したように、株式の時価総額は約733兆円ですから、徐々に株式市場に時価総額に近い資金が流れ込むからです。シブチンの財務省も、国債増発による財政出動をする必要もなく、税収も大幅に拡大します。
 更に、前述したように、巨額の社内留保金、対外純資産を国内で有効に活用すれば、空前の好景気を実現することも夢ではありません。これら社内留保金は本来、社員のためにこそ使うべきものであり、対外純資産も、国民の労働の結果生み出されたものです。ともに、国民に還元すべきものなのです。
 岸田政権は、財務官僚にやさしい政権とみられるため、大幅な財政出動は困難でしょう。ならば、これら3つの財源を有効にフル活用して、日本経済に活況をもたらし、国の安全保障、国民生活の向上を図ることこそ、岸田政権の使命というべきなのではありませんか。(2022・1・4
記)

<付記>
◎株式投資に当たっては、注意すべきことが多々ありますので、別途、項を改めて書かせていただきます。

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