時事寸評 書評コーナー

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日本経済復活には財政法の改正が必要

日本経済復活には財政法の改正が必要

日本経済の長期低迷は国民の共通認識

 私は6年前、このコーナーで「日本が抱える大問題」と題して、つぎのような文章を掲載しました。以下にその一部を再掲します。6年前ですから、数字はすべて当時のままです。
 

<日本が抱える大問題>
今の日本は、少なからぬ閉塞感に包まれています。国民の多くが日本の将来についてかなり悲観的になっているように思われます。その原因は何なのでしょう。考えられる原因としては、漠然としてではありますが、次のような事柄が意識の底流にあるのではないでしょうか。
① 国の借金は1,053兆円に達し、1人当たりの借金額は830万円になる。国債発行額も既に918兆円になる。このままで日本は大丈夫なのか。
② 日本経済は長期間低迷しており、容易にデフレ脱却ができない。個人消費は伸びず、国全体の需給ギャップは年15兆円にも達している。このため、企業も投資意欲が乏しく、将来リスクに備え内部留保を増やすばかりだ。
③ 子どもの教育にお金がかかり、家計が苦しい。家計をやりくりするため、パート労働などに出ようとしても、保育園などの施設が足りない。このため、日本の人口は、嘗て人類が経験したことがないほどの速さで減少しつつある。
④ やっと大学に入学し、奨学金をもらうこともできたのに、卒業時には平均で400万円にものぼる借金として残り、就職と同時これを返済しなければならない。現在、奨学金返済の滞納者は30万人にも上る。滞納するくらいだから結婚もできない。何とか安月給からこれを返済しているが、結婚など夢のまた夢。
⑤ 道路や川、橋、上下水道、小中学校など公共施設の老朽化が問題となっているが、国や自治体は予算が足りず、必要な維持補修が進まない。
⑥ 毎月引かれる年金の掛け金は毎年上がるのに、それに見合う賃金上昇はない。しかも、年金は賦課方式だから、自分の払った掛け金は現在の高齢者に支払われるだけ。出生数が少なく、将来の年金確保は絶望的だ。
⑦ 労働者も不足している。特に建設現場や介護施設など、3Kと言われるような職場には、必要な労働者が集まらない。

 このような状況は、当時も今も、基本的に変わっていません。それなのに、新たに発足した岸田内閣の布陣を見ると、基本は「財政健全化」路線まっしぐらです。

画像の説明

 先ず、首相自身、防衛費の増額について、「(5兆円の)つなぎ国債で防衛費を調達する」と述べています。つなぎ国債とは、将来見込まれる特定の歳入を償還財源として発行する国債のことです。償還財源を確保するまで資金繰りを「つなぐ」ために発行されるものです。
 これを受け、宮沢洋一自民党税調会長は、「本当に防衛費がそこまで(5兆円)必要であれば、社会保障の水準を切り下げてもよいのか」と国民を恫喝するような発言をしています。社会保障の水準を引き下げるのでなければ、財源は一体どこから持ってくるのか、というわけです。つまり、防衛費の増額を認めてもよいが、その代わり新たに課する「防衛増税」も我慢しろ、ということです。新規項目での課税が嫌なら消費税の増額を認めろということです。
 留任した鈴木俊一財務大臣は鈴木善幸元首相の息子ですが、この人物も、経済に関しては、財政健全化路線まっしぐらの人物です。6月8日の衆院財務金融委員会で、閣議決定された経済財政運営の指針(骨太方針)に関し、「財政健全化に取り組む姿勢に変化はない」と述べています。また、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2025年度に黒字化する目標について、「既定のこととして明確だ」とも述べています。
このように、岸田政権においては、財政健全化路線まっしぐらの人物が重用される半面、高市早苗、萩生田光一政調会長など、安倍元総理の路線を汲む、積極財政派の人物たちは、完全に脇役に置かれたと言ってよいでしょう。
 つまり、岸田政権においては、財務省の主導するプライマリーバランス(PB)路線、すなわち緊縮財政路線は堅持される、ということです。

日本経済復活には財政法4条の削除が必要

 日本が30年近くに亘る長期停滞から脱却できない、ということについては何度も触れてきたし、そのこと自体は、すでに国民共通の基本認識になっていると言ってよいでしょう。ここでは、これに対する根本的な問題についてのみ、説明したいと思います。
 それは、財政法4条に関するものです。国民は、この条文の本当の意味を知る必要があります。この財政法4条こそが、長期に亘る日本経済の足を引っ張り、経済成長を阻んできた最大のガンだからです。
同条には何が書いてあるのか見てみましょう。

財政法第4条
国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以って、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
② 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。
③ 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。

 第1項の「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以って、その財源としなければならない。」普通に読めば、ふんふん、それはそうだろうということになります。しかし、これこそが日本経済の足を引っ張る最大のガンなのです。極端な話、国が戦争をするような場合、巨額の資金が必要になります。しかし、そのお金でさえ、この規定を前提とする限り、賄うことはできないのです。なぜなら、公債、すなわち国債は、「公共事業費、出資金、貸付金」として使う場合以外、使うことができないからです。国債発行の用途はこの3つの用途に限定されているのです。
 公共事業費は、未来の子孫にも残る国民共有の財産です。決して現在の国民だけが使うものではありません。つまり長期投資です。出資金も、開発途上国の実施するプロジェクト等に必要な資金に対して融資などを行うもので、国際協力の観点から実施するものですが、基本的に返還されるものです。貸付金も返還を前提とした資金の融資です。
 つまり、これら3つの項目は、公共事業のように、長期投資となるべきものか、回収可能な資金以外は、すべて歳入の範囲内で国家予算を賄え、ということです。この前提があるからこそ、前述した「つなぎ国債」なる概念が必要になってくるのです。

財政法4条は日本を抑え込むためのGHQの策謀

マッカーサー様

 戦争というのは余りにも極端な例ですが、分かりやすいので敢えて極端な例を引きます。
 戦争という国の存亡の危機においてさえ、国債を発行することができないなんて余りにも不合理。どうしてこんな規定が設けられたのか。
 それは、この財政法が、戦時下、つまりGHQの占領下にあった昭和22年に制定されたものだという背景を知る必要があります。占領軍は、日本が国債を発行して戦争ができるようになっては困る。だからそれができないように国債発行の権限を極めて限定的に絞り込んだのです。
 ならば、実際に戦争になった場合、国民は座して死ぬのを待つしかないのか。いや、そうではない。その場合は、日米安全保障条約の規定に基づき、米軍が日本を守る。だから、国債発行の権限を極めて狭く限定しても不都合はない。これがGHQの論理です。
 つまり、日本は、日米安保条約の見返りとして、財政法4条を受け入れざるを得なかったのです。このような不条理な規定を飲ませるため、占領軍は、大蔵省(当時)を懐柔します。内務省はじめ他の省庁はみな解体や再編を余儀なくされますが、唯一大蔵省は解体など組織変更は一切なされなかったのです。財務省は組織温存のためGHQと取引をしたのです。
 このような過程を経てできた法律ですから、旧大蔵省は終始一貫、この財政法4条を盾に、国債の発行を極めて厳格に運用してきたのです。これが厳然たる歴史の真実です。
 これこそが長期に亘る、日本経済停滞の根本原因です。大蔵省にとっても、安全保障は米軍にゆだね、その余力を経済成長に注ぎ込むことができたので、この不合理な財政法の見直しに触れることはなかったのです。彼らにとって、この財政法は、意外に居心地がよかったのです。戦後は、着の身着のまま、著しく生活物資が不足していましたから、放っておいても生産活動は急激に伸びました。貧乏人の子沢山、子供も増え続けていたので、食糧が足りない、家も足りない。何を作っても売れる、諸悪品でも売れる。日本は成長の意欲に満ち満ちていたのです。しかし生産手段が余りに足りない。そこで国は、口べらしのため、ブラジルをはじめとする中南米に移民を送り込んでいました。北朝鮮ですら「地上の楽園」と称し、多くの移民を送り込んでいたのです。文字通り、移民という名の棄民です。
 そのような時代背景の中では、軍事力に力を注ぐ必要はなく、経済も自然に発展を続けることができたのです。財政法4条の存在が邪魔になることもなかったということです。

長期低迷で財政法の矛盾が顕在化

 しかし、時代は変わりました。テレビ、洗濯機、冷蔵庫の三種の神器、カラーテレビ、クーラー、自動車の新三種の神器の時代を経て、経済は豊かになりました。高度経済成長の時代は過ぎ去ったのです。そしてはっと気づいたら、世界はどんどん成長しているのに、日本だけが30年近くも取り残されている。
 気が付いたら、世界のどこにもプライマリーバランスなどと言うバカげた指標で経済を運営している国などどこにもない。日本だけが、「国の借金はいけない」、「国の借金が1、000千兆円を超えた。国民一人あたり1000万円を超える借金をしている計算になる」、と大騒ぎをしているのです。金額が変わるだけで、毎年、同じ論法です。
 あげく、「財政健全化」という名の下で、消費税は3%からスタートし、5%、8%、10%と増やしてきました。
 その結果、日本は、増々消費が縮小し、企業の収益も拡大せず、よって労働者の賃金が上がらない、という悪循環が延々30年近くに亘って続いてきたのです。
 となれば、誰が考えても、何か日本はおかしい。どこかがおかしい、と疑問に思うはずです。
 私はこれまでこのコーナーで、財政健全化路線では、日本は長い沈滞状況から脱出することができないと繰り返し述べてきました。つまり、積極的に財政を活用し、経済を浮揚させることが必要だと述べてきたのです。国の支出を悪と捉えるのではなく、国の支出はイコール国民の収入と捉え、国民の収入が増えれば、消費も増える、消費が増えるなら企業は設備投資を増やす、その結果、経済は活性化し、税収も増える、という正の循環に戻すべきだと主張してきたのです。
 これに対し、財務省は、終始一貫、財政健全化という名の緊縮財政論を一歩も踏み出していません。財務省流にいえば、「財源がないから」というわけです。財務省は、これまで財源がない理由として、基礎的財政収支すなわちPB(プライマリーバランス)という言葉を使って説明してきました。このPB論は、財政収入と財政支出のバランスをとるということです。一方の予算を増やしたなら、その増分に見合う別の項目を減額すべし、という考え方です。つまりゼロサムゲームです。誰かの所得が増えれば誰かの所得が減らざるを得ない。年間の税収が100と決まったら、支出も100で抑えるというのが基本思想ですから、これでは経済の発展など望むべくもありません。

マスコミも緊縮財政派

お墨付き新聞

 日経新聞や読売新聞をはじめとするマスコミも、すべてといってよいくらい、財務省のちょうちん持ちです。8月14日付けの読売新聞は、社説で次のように述べています。

<読売新聞社説>
(前略)幅広い層が負担する消費税は景気に左右されにくく、社会保障財源にふさわしい。少子高齢化が急激に進むなか、消費税に財源を求めたのは適切な判断だった。(中略)政府は10月から、一定の収入のある75歳以上の高齢者の窓口負担を1割から2割に引き上げる。負担能力に応じた仕組みを着実に導入すべきだ。
(中略)さらなる消費増税を含め、総合的な見地から、次の改革の議論を始めるべきではないか。

 これでは、財務省の主張そのものであり、このままでは今後も経済発展は絶望的です。何ら根本的解決策は示されていないのです。税収が少ないから国民の懐に手を突っ込み金を巻き上げろ、では国民は増々身を固くして節約志向になります。文字通り、財務省もマスコミも、財政法の呪縛にとらわれたままです。
 大手の新聞社なら、なぜ日本経済は低迷から脱却できないのか、その根本原因は何なのか、何か解決策はないのか、といった視点からの問題提起をすべきです。本当に呆れるばかりです。このような論調は、読売新聞にとどまらず、大手新聞、テレビ、基本的には全く同じ論調なのです。

早急に財政法4条を廃止すべき

 今、日本に求められているのは、財政法4条の撤廃など、財政のあり方を根本的に見直し、経済を普通の国並みに発展させ、中国や北朝鮮など、無法で野蛮な国家から、日本の安全を守ることです。そのためには最低限、防衛費をGDP比2%の水準まで引き上げることが必要です。
 経済規模を2倍に引き上げるにはかなりの時間がかかるでしょう。即効性のあるのは、財政法4条を廃止し、国債発行によりGDP比2%を実現することです。つまり、2,3年かけて5兆円の防衛国債を発行することです。この程度の発行では決してインフレになどなりません。
 財政法の改正に関しては、財務省をはじめ、さまざまな抵抗が予想されます。しかし、国民の命がかかっているのです。憲法改正をするよりも、はるかにた易い筈です。今、政権与党は、憲法改正に必要なだけの議席数を持っているんです。ならば、戦後、GHQに強制された財政法改正一つできない理由はありません。それすらできないというならば、岸田政権は早期に退陣していただくしかありません。今こそ、経済の発展は、国民の安全にも直結する最重要課題なのだ、との基本認識が必要です。

松田学

 なお、当然ですが、私は日本経済復活のためには、財政法4条撤廃が唯一無二の方法だと述べているわけではありません。この方法によらず、養育費や教育投資、科学技術研究経費など、投資的経費については、現行の財政法4条の下でも支出できるとの解釈を活用すれば、これらを別途、特別会計で処理し、歳入として使える範囲を拡大すれば、事実上、積極財政論を実現することも可能と考えています。このことは財務省が法解釈のバイブルとしている小村武・元大蔵事務次官の「予算と財政法」の101ページでも、裏付けられています。
 また、参政党党首の松田学氏の提唱する日銀の保有する国債をデジタル化し、国民が活用できるようにすれば、経済活性化に大きく貢献することも間違いありません。
 本稿では、これらの方法があることを承知のうえで、より根本的な解決策として、占領下、GHQによって強引に押し付けられた財政法の改正によって、経済復活を成し遂げるのが本筋であると主張するものです。

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最後に

 財政法4条の改正は、日本の精神的な自立のためにも必要です。戦後80年近くも経過したというのに、未だに外国の軍隊を国内に置き、彼らに国民の安全を委ねているなどという国家は、真の独立国家とは言えません。日米同盟は表面上確固としたものにみえます。しかし、それとて大統領が変わるごとに「尖閣は日米安保の範囲に含まれますか?」などとお伺いを立てなければならないのは、真の独立国の姿ではありません。

ミサイル防ぐ

 民主主義の国家においては、選挙の洗礼があり、政権交代もあります。嘗て村山富市の自社さ政権、目を覆うばかりの民主党政権もありました。アメリカだって、基本政策の異なる民主党と共和党が互いに政権を争っています。日本は、その都度、日本防衛の基本は変わらないのか、とお伺いを立てなければならない。これが本当に独立国といえるのでしょうか。
 真の独立国ならば、自ら国を護るという気概と確固とした防御体制の構築が必要です。今日に至るまで、財政法4条という自らの首を縛り、経済発展を阻害する法体系を唯々諾々と受け入れている日本国のあり方こそ、問われなければなりません。オバマ米前政権で核・ミサイル防衛担当を務めたブラッド・ロバーツ元国防次官補代理は、中国は日本を攻撃できるミサイルを1900発保有していると述べています。対する日本は公共の地下シェルター一つありません。北朝鮮のミサイルが日本列島を横断したとき、秋田県住民はみんなで小学校の体育館に避難しました。ミサイルが貫通しないような頑丈な体育館なのでしょうか。日本人の防衛意識はその程度です。
 今こそ、日本は、財政法4条を撤廃し、経済を富ませ、真の独立国として自分の足で樹とうではありませんか。(R4・8・19記)

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