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マイナンバーカードは総合判断でプラスの方が多い

マイナンバーカードは総合判断でプラスの方が多い

自分が自分であることの証明

画像の説明

 ある時、役所の窓口に行き、自分が自分であることを証明するのがいかに難しいことであるのか、実体験しました。印鑑証明をもらいに行った時のことです。備え付けの用紙に必要事項を記入し、窓口に提出したところ、「印鑑登録証」をお持ちですか?と聞かれたんです。「いえ、持っていません」と答えると、「本人の申請であるかどうか分からないので、証明書は発行できません」というんです。
 「いや、私本人が申請しているんですから間違いはないでしょう」と言っても、「いえ、登録証がないとだめです」の一点張り。
 つまり、「本人の存在」より「印鑑証明書の存在」の方が証明力が高い、というわけです。この時、ハタと気付いたのは、「自分が自分であることを証明するのは極めて難しい」ということです。「本人かどうかはこの顔を見てくれ」と言ってもダメなんです。確かに、窓口の人から見れば、本人の顔を見ても本人かどうかなんて分かるはずがありません。貴方の顔より、印鑑登録証の方が信用できる、証明力が高い、というわけです。
 自分が自分であることの証明は、一応、免許証でも可能です。免許証には顔写真がついているからです。でも、その免許証を持っていても、それで病院の診察を受けようとしてもダメです。別途、健康保険証が必要なのです。つまり、免許証も健康保険証も、用途が決まっていて、その都度使い分けをしなければいけないのです。
 もっとひどいのは、銀行のキャッシュカードや病院の診察券です。銀行は銀行ごとにキャッシュカードが違います。さらに同じ銀行でもキャッシュカードとローン用のカードが違ったりします。ですから金融機関だけで5,6枚になるのは当たり前です。病院は病院で内科や耳鼻科、皮膚科など診察を受ける病院ごとにカードが異なります。さらに、商店街の発行する利用券や航空会社の発行するマイレージカードから図書館の発行する図書館利用カードに至るまで、街にはカードが溢れています。私のカードホルダーには40枚くらいのカードがあります。とてもじゃないが、使い分けは困難です。

引っ越し時は煩雑な手続きの山

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 事程左様に、世の中にはカードが溢れ、どこに行っても自分の身分を証明する証明書の提出を求められます。その究極は、引っ越し時でしょう。引っ越しを経験した方ならお分かりでしょう。いかに多くの手続きが必要であるかを。
 市役所の窓口で転出届をするのはもちろん、電気・ガス・水道・インターネット回線・携帯電話の移転連絡、郵便物の転送手続き、国民健康保険証、乳児医療証、(子供の)検診補助券、後期高齢者医療被保険者証、介護保険証、年金手帳、印鑑登録カード、銀行、クレジットカードの住所変更、電気、ガス、水道の終了届け・・・等々、あげたらきりがないほど、日本は手続きだらけ。そのうえNHKまで「引っ越したらお早めにお手続きを」なんて言う。
 勿論、その間に引っ越し業者への依頼や費用の値決めなど、やるべきことは山ほどあります。もう考えただけで「引っ越しは嫌だ~!!」と叫びたくなるほどに、さまざまな手続きに溢れています。
 何とか、簡素化できないか。つまり一か所で何でも処理できるような徹底した「ワンストップサービス」システムはないものか、と考えるのは当然です。

システム共同化の願いはこれまでも

 これまでもシステム共同化のため、様々な制度構築の試みがなされてきました。せめて役所関係の手続きだけでも、簡素化できないものか、という発想で様々な試みがなされてきたのです。グリーンカードや住基ネットなんて言葉、聞き覚えがあるでしょう。
 グリーンカードは、税務当局が主導した制度です。国民に納税番号をつけ、支払い側からのデータを基に収入状況を捕捉して「脱税を防ぐ」というものでした。脱税を防ぐというんですから、誰しも文句をつけようがないはずです。しかし、この制度も農業者や中小企業経営者、自営業者などから反対の声が上がりました。「脱税防止反対」とは言えないので、「個人情報は基本的人権であり、それを国に握られるのは嫌だ」、というのが表向きの理由でした。要するに、国民が国を信頼していない、ということです。
 次に指向されたのが「住基ネット」です。これは「行政を効率化して無駄をなくす」というもので、これも表向きは反対しようのないものでした。行政を効率化するとは、「コンピュータの活用など電子行政を推進し、国民の便益を向上させる」ということです。ですからこれも表向き反対するのは困難です。しかし、この住基ネットを活用するためには、「国民に番号をつける」ことが前提となります。反対者は、これについても「国民総背番号制の復活だ」などと主張することによって、情報システム構築という大目的は達成できなかったのです。
 ならば、この住基ネットシステムは廃止されたのか、と言えば、そうではなさそうです。私たちは、既に住基ネットなんて消滅したと思っていますが、役所が一度立ち上げた制度は、簡単には廃止しません。転んでもただでは起きないのが、役人根性というものです。
 今回のマイナンバー制度の下でも、役所の説明によれば、「マイナンバーは、番号法の制定に伴い、個人に個人番号が付番されることとなるが、個人番号は、住民基本台帳ネットワークシステム(注:住基ネットのこと)で使用する住民票コードを変換して生成されるものである。」と説明されています。マイナンバーは、住基ネットの住民票コードを基礎として作られているものである、というわけです。

賛否両論あるが

 今回のマイナンバー制度についても、当然、賛否両論があります。反対論は、基本的には国民総背番号制に反対したときと同じです。要するに、国に銀行口座など個人情報を把握されたくない、ということです。預金残高などは重要な個人情報だ、というわけです。
 昨年、すべての国民に一律10万円を支給する特別定額給付金という制度がありました。この10万円をもらうためには、①オンラインでの申請か、②郵送方式のいずれかの方式を選択することが可能でした。私はオンライン申請をしようとしましたが、電子署名のやり方が分かりにくかったので、郵送方式でもらいました。いずれにしろ、このため役所側で事務手続きに要した期間は、約1年程度バタバタしたのではないでしょうか。
 考えてみれば、国からすべての国民に一律10万円を振り込むだけのことですから、予め、任意の金融機関に口座番号を紐づけておけば、「即日、瞬時に」全国民に配布できたのです。瞬時に実現できることを、延々1年もかかって処理したということです。
 その紐づけがなかったゆえに、地元自治体が、全住民の住所に必要書類を郵送し、それを回収し、振り込み手続きを取る、なんて面倒で膨大な作業を必要としたのです。

コロナで見えた役所の前近代的体質

熱がある

 この一事を見ても分かるように、今の日本、デジタル化社会に完全に後れを取っている、と言わざるを得ません。
 その典型例は、前述した10万円給付の事例だけでなく、新型コロナへの対応でも明らかになりました。
 新型コロナに感染した可能性のある患者は、医者に行くことを禁じられました。「熱のある患者は、先ず、保健所に行け」というわけです。私もかかりつけ医に「先生、熱が出た場合はどうすればいいですか」と質問すると、「うちでは診ないので、受付に用紙があるので、それを見て保健所に行ってください」と説明したのです。かかりつけの医者が熱のある病人を診もしないとは、一体どういうことでしょう。
 保健所の職員は、医者ではありませんから診察も治療も投薬もできません。何もできない保健所の職員が、一体何をすると言うのでしょう。医者はコロナに感染するのは嫌だからと、自分たちの独占業務である診療義務を放棄したのです。警察が治安を守らず、消防士が火事が怖いからと火を消さず、自衛隊が死ぬのは嫌だからと国を守らない、というのと同じです。

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 このため、保健所の窓口がパニックになったことは周知のとおりです。その過程で明らかになったことは、役所間のやり取りが今でもFAXを使用しているという実態です。熱のある患者のデータが、FAXでやり取りされていたのです。医者も感染者数や重症者のレセプトを作成し報告するために、深夜まで手作業で資料作成を強いられたなんて話も聞いたことがあります。こんな事務効率の悪い作業をデジタル化のこの時代に延々と行っていたのです。
 今のように、コンピュータが高度に発達し、多くの企業ではリモートでの勤務さえ当たり前になっている時代に、手書きの文書をFAXでやり取りをしている、などというお役所体質をみると、もう笑う気力すらありません。

多くの国民に不都合はない

 このような役所の前近代的体質を考えると、デジタル化は焦眉の急という感じがします。特に、マイナンバーカードと健康保険証、免許証の共有化は是非とも実現していただきたいものです。
 この共有化に反対する勢力がいるのも事実です。反対の理由は、個人情報が洩れるとか、銀行口座が管理されてしまうとか、セキュリティに不安があるとか、いろいろ述べています。
 しかし、セキュリティの問題は、既に先進各国が実施しており、後追いの日本はその欠点をカバーしつつ制度設計をすればよいので、特に問題にする必要はないでしょう。また、銀行口座が管理されてしまうと言いますが、それは大金持ちの心配であって、普通の日本人が心配するレベルのものではありません。行政とのつながりを持つ口座を一つに限定しておけば済む話です。行政が、国民のすべての口座を知る必要があるのは、脱税防止のためでしょう。行政がすべての口座を知りたいとなれば、大きな問題になり、その時点で反対すれば済む話です。しかも、億単位の大金持ちなら、資金を海外に逃がすなど、いくらでも脱税、いや節税の方法を知っています。たかだか数百万や数千万程度の小金持ちの国民が心配する必要などないのです。
 また、マイナンバーカードで健康保険証と紐づけしておけば、医療費控除や確定申告なども極めて簡単になります。簡単にならないなら、文句を言う権利があります。医療機関は患者の保険資格をスムーズに確認できるようになります。また、患者が同意すれば、医師や薬剤師が、過去の診療情報に関するデータにアクセスして閲覧することも可能になる、とされています。また、薬の過剰投与や検査の重複を避けられるというメリットも期待できるでしょう。

通名排除にも絶大な効果

高橋洋一

 嘉悦大学の高橋洋一教授によれば、現在の健康保険証は外国人などに悪用され、医療費の増大につながっている、とされています。健康保険証には顔写真がありませんから、他人の保険証を持って診察を受けても分からない、というわけです。保険証に記載する氏名は通名併記でもよいということになっていますから、他人になりすまして受診することは容易だというわけです。
 このような通名使用は在日外国人による使用が一般的でしょうが、社会的にはあまり問題視されてきませんでした。高橋氏によれば、それはマスコミ人に外国人が多く、よってマスコミが大々的に報道しないことによる、とされています。
 こんなことで我々の医療費が増大しているのだとするなら、このような通名による使用を防止するためにも、顔写真付きのマイナンバーカードは大いに意義がある、ということになります。

▶▶▶マスコミは絶対言えないマイナンバーカード反対の本音(高橋洋一)

問題点は、走りながら改善を

 このように、脱税をするほどの大金持ちではない一般の国民にとって、マイナンバーカードはメリットの方が圧倒的に多く、デメリットはほとんどありません。強いてデメリットをあげるなら、行政に個人情報を知られてしまう、ということですが、我々の個人情報の多くは、既に役所に知られています。収入関係は確定申告を通じ税務当局に知られ、家族関係や身体の健康情報、不動産所有関係は市役所や法務局に知られ、犯歴や交通違反の記録は警察に知られ、というように、殆どの情報は行政当局に知られているのです。
 今更何を隠そうというのでしょうか。嫌がって忌避しているよりは、必要な範囲でデータの一元化を図り、デジタル社会を有効に活用し、より便利により快適に過ごすことを考えるほうが、より有益なのではありませんか。日本は、習近平や金正恩の支配する恐ろしい専制独裁の共産主義国家ではないのです。(R4・10・24記)

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