円安の含み益を即時国民に還元せよ
円安の含み益を即時国民に還元せよ
知らぬ顔の半平の財務省
マスコミは、円安で物価が上がり、中小企業は経営に苦しんでいる、といった報道をしています。確かに円安になれば、輸入物価が上がるから消費者は物価の値上がりに苦しむことになります。また、中小企業の多くも、直接、輸出産業に従事しているわけでもないので、経営に苦しんでいることでしょう。
しかし、物事には、常に、「表と裏」があります。損をする人たちがいれば、必ずその裏側に得をする人がいます。
現在の円安など、その典型と言ってよいでしょう。マスコミは円安のマイナス面ばかりを強調するから、円安は悪いことだ、という雰囲気になりますが、日本国全体で考えたとき、本当に円安は悪いことなのか。結論から言えば、円安は、むしろその国家にとってプラスの方が多い、とされています。
例えば、日本銀行は、「円安には輸出促進などプラスの効果と物価高による消費減少などマイナスの効果とがあるが、トータルでみればプラス」との認識を示しています。内閣府の短期日本経済マクロ計量モデル(2018年版)でも、「対ドルでの10%の円安は1年間の累積効果でGDPを0.46%押し上げる。当初は円安による物価上昇で個人消費は弱くなるが、輸出や設備投資の増加効果が波及していく中で、個人消費も円安のプラスの効果を享受するようになる」と述べています。
このことは、経済学で「近隣窮乏化政策」としても立証されています。一つの国が自国の通貨を安くした場合、この国と取引をする国に対してすべてマイナスの効果を及ぼす、という理論です。つまり、一国の通貨が不当に安すぎる場合には、常に近隣国はマイナス効果を受けるというもので、近隣国からすれば「円安の国は迷惑な存在でしかない」、というわけです。
だからこそ、アメリカのトランプ次期大統領候補は、自分が大統領になったら、「直ちに、日本に円安の是正を求める」と叫んでいるのです。
ならば日本はどれほど潤っているのか
では近隣窮乏化政策によって、日本はどれほどの恩恵を受けいているのか、ということになります。
令和6年7月1日現在における円は161円です。この水準の円は安すぎる、円安だというわけです。ならば、いくらならば適正な水準なのか。適正な円の水準は110円くらいとされています。円の価値は、ドルとの交換比率で決まるからです。つまり円の価値は「円の総量をドルの総量で割った値」が適正な水準(=理論値)になる、というわけです。この理論値は、高橋洋一嘉悦大教授の試算によれば、110円くらいとされているのです。
本来、110円が適正な水準であるとするならば、160円超は、明らかに高い、いや、「安すぎる」ということになります。1ドル50円もの差がある場合、一体誰が得をするのか。
得をする分野の筆頭は、輸出企業です。安い価格で輸出できるわけですから、企業にとっては輸出しやすい。どんどん輸出できるからどんどん儲かる。インバウンドの観光客なども恩恵を受けます。強いドルをもって日本に来れば、同じドルで沢山買い物もできるし、安い価格で美味しいものも沢山食べられる。それに付随して、ホテル、旅館、土産品など、観光産業も潤います。
逆に、円安によって苦しむ人たちもいます。その筆頭は、一般の消費者です。円安は、輸入物価を押し上げる効果をもちますから、一般の消費者は「モノの値段」が上がり大変です。特に、高齢者など、年金暮らしの人にとっては、大きな苦痛をもたらします。他方、現役世代は、勤務先の賃金上昇などでカバーされる部分もあるので、痛みは比較的少ない。
いずれにしろ、このように、円安の効果は、常に、マイナスの効果とプラスの効果がない交ぜになります。しかし、相対的に国全体としてみれば、常に、プラスの方が大きいとされているのです。
庶民は円安の恩恵を受けているのか
前述したように、円安は、国全体としてはプラスの方が大きい、とされています。中でも最も多くの利益を得るのは誰か。それは「政府!」です。政府は、外国為替資金特別会計(外為特会)を運営し、巨額の為替差益を得ているのです。
その額はいくらなのか。前述した高橋洋一氏の試算によれば、外為特会の含み益は約40兆円ある、とされています。40兆円は国民一人あたりに換算するといくらになるのか。1兆円を日本の人口で割ると8,333円ですから約8,300円。掛けることの40兆円ですから、「国民一人当たりに約30万円超を配分することが可能なる」、ということになります。
赤ん坊から老人まで、全国民一人当たり30万円を配ることが可能なのです。このお金は財務省が汗水垂らして稼いだお金ではありません。為替の変動に伴い生じた余得、いわばあぶく銭なのです。だったら、このお金を生活に困っている貧困層や年金暮らしの人たちに配ってもよいではないか、という議論が起きてもおかしくありません。いや、貧困層とか年金暮らしとか、区別すると各所からさまざまな不満が噴き出てきますから、全国民に一律30万円として配るのがよい。
マスコミは含み益の国民への還元の旗振りを
しかし、このようなことを言うマスコミはほとんどありません。本来、このようなことは、庶民の味方であるべきマスコミが率先して問題提起すべきです。それを言わないのは、単なる無知なのか。いや、財務省に懐柔されているか、財務省の「財政健全化論」に阿っているか、のいずれかでしょう。
財務省は、この超円安の現状においても、決して為替差益を言わず、為替介入をして円安を抑えようとしています。政府と日銀は過去最大規模の9兆7885億円の為替介入を実施しました。確かに、一時的に円安は抑制されましたが、すぐに元に戻ってしまいました。長期的には、円安傾向は続くと市場から見られてしまったからです。
このような為替介入による円安や円高を抑制する政策は、基本的に間違っています。一時的に抑制しても、為替は、前述したように、本来あるべき水準(円の総量をドルの総量で割った値)、すなわち適正水準に近寄っていくからです。政府や財務省は、急激な円高や円安は国民生活に与える影響が大きいなどという理由をつけて、為替特会の必要性を論じ、今回のように為替介入を行ってきました。
しかし、繰り返しますが、為替は、本来、変動相場制を採用している以上、自由な市場の原理に任せるというのが、基本原則です。もっと言えば、政府は相場に介入してはいけないのです。日本の保有する外為特会の総量は、先進諸国に比べ約10倍も多く、その多さは異常とされています。今回の為替介入でも、アメリカから「日本の為替介入は適当でない」、として日本は「為替操作監視国」に指定されてしまいました。これは為替は、本来、自由な市場原理に任せよ、という意思表示でもあるのです。
しかも、この政府による為替介入は、前述したように、一時的な効果を有するにすぎず、長期的な効果を期待することはできない、ということを理解する必要があります。事実、今回の介入も、一時的なものでしかなかったことがその後の為替の変動を見れば、明確に証明されています。つまり、投じた9兆8千億は、ムダ金だったということです。
国民に還元するよう国民運動を起こそう
国民は、今こそ、声を大にして、円安によって潤った外為特会の差益を国民に還元するように訴えるべきです。その還元の仕方も、安倍のマスクに見られるような、余りにものんびりした方法でなく、マイナカードに紐づけられた口座に即時に振り込む方式にすべきです。現在、マイナカードの発行に拒否反応を示している人もいるようですが、行政の効率化という観点からも、国民はこのマイナカードの活用に積極的に協力すべきなのではないでしょうか。
そして、更に円安が進んだ時には、更に10万円、20万円の即時入金が期待できるなら、円安万々歳ではありませんか。与党も野党も、こういうときにこそ、大いに政治力を発揮すべきなのではありませんか。国民に円安による剰余金を還元して損をする人は誰もいないのです。
いや、一人だけ損をする人がいました。財務省です。財務省はあり余る外為特会の剰余金を民間企業(銀行)に預けて金融機関に恩恵を与え、その見返りに多くの天下りポストを確保しているのです。つまり財務省は、本来、国民に還元すべきお金を自分たちの私腹を肥やすためにのみ、使っているのです。その実態を暴くことも、マスコミの大事な仕事なのではありませんか。(R6・7・2記)
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