財務省解体デモは貧困国民の心の叫びだ
財務省解体デモは貧困国民の心の叫びだ
このデモは国民の悲鳴

今、財務省正門前で毎週のように「財務省解体」を叫ぶデモが繰り返されています。珍しいデモです。なぜか。このような役所の組織解体を求めるようなデモは、これまで行われたことはなかったからです。これまでも中央官庁の不祥事「消えた年金」問題や「ノーパンしゃぶしゃぶ」問題など、マスコミを賑わした事件はありました。
特に、大蔵省(当時)の「ノーパンしゃぶしゃぶ」問題は、2002年に発覚した不祥事で、大蔵省の官僚が高級クラブでの接待を受け、不適切な行動をとっていたという事件です。この問題を契機に、大蔵省は金融庁と証券取引等監視委員会を設置し、金融監督・検査機能を強化しました。また、大蔵省自体も2004年に名称も財務省に改組されました。大蔵省の機能や組織の見直しが行われたのです。
しかし、それによって財務省の力は大きく縮小されたのか、といえば、「ノー」というしかありません。つまり、財務省は、あらゆる組織、権力を使って、相も変わらず日本の政治、経済、行政、マスコミなど、あらゆる分野において、権力を行使し、財務省に都合のいいように、日本をコントロールしてきたのです。
もちろん、その結果、国民の大多数が豊かになり、将来への希望が持てる社会になったというのなら、文句は言いません。
ところが現実は、多くの国民が経済的に困窮し、将来への希望も持てなくなってきている。そのことへの不満・苛立ちが、今回の「財務省解体デモ」へとつながっているのです。
なぜ財務省解体なのか
本来、国民生活が困窮し、将来への希望が持てないというなら、その不満は政治家、特に、時の政権与党に向かうのが筋というものです。
それなのに、なぜデモが政権党や野党に向かわず、財務省なのか。それは、今の政治は自民党や野党の立民が仕切っているのではなく財務省だ、ということを国民は皮膚感覚で知っているからです。なぜなのか。以下その理由を述べましょう。
第1に、財務省は、マスコミを完全に抑えています。マスコミは「軽減税率」という甘い汁を吸わされ、そのため、正面から財務省を批判することができません。また財務省内に記者クラブという特別優遇の部屋を与えられ、レクと称して資料や説明を受けなければ、記事もまともに書けません。よって、財務省批判は極力抑えざるを得ないのです。マスコミ人は分厚い予算書など1ページも読んだことがないでしょう。ですから財政健全化と言われればその通りに書き、プライマリーバランス(PB)と言われればその通りに書き、決して正面から批判をしません。
国の借金は1300兆円を超えた、国民一人当たりの借金は1000万円を超えた、などという説明もそのまま記事にし、だから緊縮財政はやむを得ない、増税もやむを得ない、という財務省の論理をそのまま垂れ流してきたのです。国の借金を言うなら、対となる資産も言うのが常識というものです。民間企業の経営が健全であるか否かは、財務諸表で判断します。国だって全く同じです。
しかも「借金」というが、それは国民の借金ではありません。私たちは国から借金などしていません。国が発行した国債は民間銀行などを経由して日銀が買い取り、日銀は「国庫納付金」としてほぼ全額(!)国に戻しています。これを繰り返しているだけです。未来永劫、国がなくならない限り、これを繰り返すことができるのです。
これに対してギリシャやロシア、アルゼンチンなど、国家破綻した国はいくらでもあるじゃないかという意見もあるでしょう。しかし、これらの国はその理由があります。ギリシャはユーロ通貨ですから自国通貨は発行できない。ロシアやアルゼンチンも、自国通貨でなくドルで借金をしていた。そのため償還できなくなって破綻したんです。日本は完全に自国通貨で国債を発行しているんですから破綻のしようがありません。財務省も対外的にはそのように反論しています。
このような実態を国民は知らず、しかも首根っこを掴まれているマスコミがその実態を正確に報じないのです。文字通り、マスコミが「マスゴミ」と言われる所以です。
今回の財務省解体などというデモは極めて珍しい。本来、ニュース価値が十分あるにも関わらず、ほとんどニュースにもなっていません。「報道しない自由」を十分に利用しているのです。なぜか。財務省に睨まれたくないからです。
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政治家も抑える財務省
第2に、財務省は、政治家も抑えています。
財務省は、主要な政治家も抑え、コントロールしています。なぜコントロールできるのか。それは政治家の弱点を掴んでいるからです。政治家である以上、幅広い支援者などさまざまな人的つながりをもち、多額の資金も必要とします(多分)。裏で脱税や不倫をしている政治家もいるでしょう。こういった巷の情報は、全国に張り巡らした財務省の地方組織、特に税務署などが掴んでいます。税務調査と称して、嫌がらせをすることも可能です。

税務署などの地方組織は、政治家が財務省にとって都合の悪い言動をすると、それらの裏情報を出してきて、潰そうとします。
その一例は、国民民主党の玉木代表がいわゆる103万の壁を178万円に引き上げるよう求めた際、早速、不倫の問題が浮上しましたね。財務省はこのようなネタを常に手元に置いておき、財務省に不都合な場面になるとこういった情報を出してきて、マスコミや国民の反感がそちらに向かうよう誘導してして抑え込もうとします。多くのお金を動かす政治家は、税務署に弱い。日本の税制は極めて複雑で分かりにくい。しかも猫の目のように毎年くるくる変わる。痛くもない腹を探られたら、「脱税」として政治生命も失いかねません。
また、政治家は公共事業など、地元に貢献しなければ次の選挙の当選も危うくなる。当然、予算獲得に向けて国交省や財務省などに陳情に行かなければならない。財務省に対して強い態度が取れない構造がここにもあるのです。
中央官庁も抑える財務省
第3に、財務省は中央省庁の組織も抑えています
私は現役の頃、建設省(現国交省)に在籍していました。その当時、本省の会計課長は財務省(当時は大蔵省)からの出向者でした。本州四国連絡橋公団に出向した時も、会計課長は財務省からの出向者でした。こんな状態ですから、他の官庁も推して知るべしです。防衛省も会計検査院も、会計課長は財務省の出身です。

会計検査院とは政府や地方公共団体の会計を監査し、適正な運営が行われているかを確認する組織です。その組織が、金を配分する財務省からの出向者で占められているというのは余りにも異様です。言い方は悪いですが、泥棒に金庫の番をさせているようなものです。この態勢で税金の使途に関し公正な判断などできるのでしょうか。一般に、お金を配る部門とお金を使う部門が一体となった組織は、不正の温床となりやすいのは世の常識です。こんな言い訳が通用するなら、すべての組織の会計責任者は財務省出身者で占めるべき、ということになります。実際に、中央官庁のほぼすべての会計課長は、財務省が独占していると言っても過言ではないでしょう。
私の在籍していた当時、「道路特定財源」というものがありました。道路を利用する人から徴収する税金は道路整備だけに使うべき、という目的税です。極めて分かりやすい論理です。これなども、財務省に押し切られ、一般財源化されてしまいました。道路特定財源なら、建設省が差配して、道路整備の緊急性など実態を把握して個所付けをすることができます。一般財源になれば、建設省の差配から離れます。財務省の役人は、すべての予算を手中に置き、自由に差配できなければ気が済まないという人種なのです。
このようにして、予算は本来の目的を離れ、財務省は、予算編成権、税務調査権などの権限をフルに活用して、権限を拡大強化してきたのです。もちろん、財務省は都道府県など、地方組織も抑えています。地方組織は、直接支配しなくとも、総務省を通じてコントロールすることもできるし、予算の陳情などを通じてコントロールすることも可能です。直接、職員を派遣するまでもないのです。もちろん、副知事クラスにはかなりの数派遣していますが、それは本人の知見を広げるための研修、といった意味合いのものです。
選挙の洗礼を受ける知事や市長より、お車と秘書がつく美味しい天下りポストが山ほどあるのです。米つきバッタのように、選挙民に頭を下げる首長より、その方が余程美味しいのです。
なぜこれほどの権力がもてるのか
以上述べたように、財務省はあらゆる組織に浸透し、裏から日本の屋台骨を動かしています。その力の源泉は上にのべたように、予算の配分権と徴税権を握っているからです。税金を徴収する権限と税金の配分権の両方を持っていれば鬼に金棒です。
このことは家計を考えてみればすぐに理解できます。夫がサラリーマンとして働き給料を銀行に振り込んでもらい、妻が銀行から降ろす。妻がその支払先を自由にコントロールできれば、一家の権力は妻に集中します。日本の多くの家庭がこの形態だとされています。国連人権委員会などが、日本は男女平等の社会じゃない、などといって日本を非難することがあります。とんでもありません。財布の紐を握っている主婦こそが家庭の主(支配者)なのです。多くの夫は「月3万円の小遣いを、せめて3万5千円にしてほしい」と妻に陳情し、妻から「しかたがないわね~飲み会は断りなさい!」など、嫌味を言われながら小遣いを「増やしていただく」存在なのです。だからこそ欧米では、夫が家計の紐をがっちり握って離さないのです。「お金こそ力の源泉」ということを、知り抜いているからです。
歳入庁の分離と食料品の消費税を廃止
以上のことから、一般国民がより豊かな生活を送れるようにするためには、政治家や中央官庁に陳情するよりも、財務省を改革することがもっとも有効な方法であることが理解できるでしょう。国民は、財務省解体こそが最善の方法であることを皮膚感覚で理解しているのです。
すなわち、財務省を解体し、その権限を縮小することこそが、国民生活を豊かにする唯一の方法だということを理解しているのです。
では、そのためにはどうすればよいのか。
私見になりますが、財務省の権限を縮小するためには、次のような措置を講じることが必要です。
財務省が直ちにやるべきこと
①徴税の権限と予算配分の権限を完全に分離すること
②食料品にかかる消費税を全廃すること
③マスコミに恩恵的に与えている軽減税率を直ちに廃止すること
④各省庁などに出向させている会計課長などをすべて本庁に戻すこと
この4つを実行するだけで大きな効果があると思います。財務省は必死になって抵抗するでしょうが、これはやりきらないとだめです。余りにも権限が集中しすぎているのです。
徴税権など税務部門を完全に別組織にする

第1の徴税権など、税務部門を財務省から切り離すことは極めて有効です。上に述べたように、財務省は不都合な政策が実行されそうになると、必ず、脱税や不倫などの情報を出してきます。税務調査は正当な業務執行ですが、使いようによっては、「脅し」として使うこともできるからです。ですから、このような権限は財務省から切り離すことが重要です。
第2の食料品にかかる消費税です。私も年金暮らしで、妻の買い物に付き合うのでよく分かりますが、最近の食料品値上がりの激しいこと。本当にびっくりします。それほど買ったつもりでなくとも、あっという間に7千円、8千円になります。まとめ買いをすれば、1万円なんてあっという間に飛んでいきます。
だってキャベツ1個700円から800円もするんですよ。トマト3個買って500円ですよ。物価の優等生、卵も今は劣等生です。
そこに10%の消費税が上乗せされるんですからたまりません。「ごはんを食べたら罰金を取る」、と言われているようなものです。国会議員は、歳費のほかに毎月100万円、使途自由で一切税金のかからないお金をもらっています。新幹線に乗れば乗車賃もグリーン車はタダ。もちろん飛行機も。更に、自分が亡くなった場合、お金を政治資金管理団体に入れておけば、その資金は相続税の対象外。何という理不尽(!!)。それは自分たちで有利な制度を作れるからです。次々とアホな二世、三世議員が出てくるのは当然なのです。そういう人種にはこの庶民の暮らしなど分る筈がありません。
財務省前に集まった多くの庶民は、この生活苦に喘いでいるんです。ですから「せめて食料品だけでも!!」、消費税のかからないようにするのが、本当の政治というものではないでしょうか。食料品は庶民のささやかな「命の灯火」なんですよ。私立高に通う世帯に現行の39万6千円から45万7千円に引き上げるなんていう政策より、もっと緊急性の高い政策だと思いませんか。
第3の、各省庁に出向させている会計課長などはすべて、財務省に戻すべきです。こんなことは余りにも当然です。財務省出身の課長は、財務省の顔色を見ながら予算要求するのは明らかだからです。これでは、本来、あるべき行政の姿が実現できないのは、火を見るより明らかです。
第4のマスコミへの軽減税率については、以下、項改めて述べます。。
マスコミへの軽減税率適用を全廃すること
多くの国民が財務省の前で解体を叫ぶのは、止むにやまれぬ気持の発露であることは間違いありません。このような状態に至ってもなお、マスコミは財務省批判を展開していません。前述したように、これはマスコミが財務省に懐柔されているからにほかなりません。
軽減税率の適用という甘い汁(鼻薬)を吸わされているだけではありません。築地にある朝日新聞本社の土地は、国から払い下げられたものであることは有名です。読売新聞東京本社の土地だって、国から払い下げを受けたものです。「国有地の払い下げ」は、財務省の権限なのです。
このように、財務省に反旗を翻さなければ、「甘い汁」を吸うことができるのです。舌鋒鋭く、財務省批判を展開することが困難であるということは十分に理解できるでしょう。
このように、財務省は、政治家、マスコミ、財界などに幅広く浸透し、天下り組織の拡大など、自らの権益の拡大と維持に勤しんでいるのです。その結果が、国民生活の向上、収入の拡大に結び付いているなら、これほどの不満は生じません。

過去30年の長きにわたり、サラリーマンの収入は上がらず、実質所得も増えてきませんでした。右のグラフをご覧ください。これはエンゲル係数の推移です。エンゲル係数とは、家計の消費支出に占める食糧費の割合です。食糧費なんて毎月そんなに変動するものではありません。収入が上がったからといって、ご飯を三杯の四杯も食べるわけではありません。
金持ちも貧乏人も食べる量はほぼ同じです。中身の質が少し違うだけです。よって貧乏人は家計に占める食費の割合が高くなり、金持ちは小さくなる。分かりやすい指標です。このエンゲル係数、過去10年で急激に上昇しています。つまり、収入は増えないのに、食費の割合が急激に上がっているんです。過去30年間、サラリーマンの給料は上がっていないのに、今度はエンゲル係数まで急上昇。貧乏人ほど苦しくなっているのはこのデータでも明らかです。それでも現役のサラリーマンなら救いもあります。毎年、給料のベースアップが期待できるからです。しかし、年金生活者にはベースアップもありません。
これでは低所得者が怒るのは当然です。国民民主党の「所得を増やす」というフレーズが国民の心に響いたのは当然です。そしてまたしても財務省は、いつものフレーズ、「財源はどうするんだ」などと宣い、これを阻止しようとする。この「財源はどうするんだ」というセリフが破綻していることを国民は既に知ってしまっているんです。詳しく知りたい方は、参考図書として掲げておきましたので、そちらからご覧ください。
このように、多くの国民は財務省の財政健全化のウソ、プライマリーバランスのウソ、そういった嘘を見ぬいてしまっているんです。もう黙っていられない。そういう怒りの発露が、今回の財務省解体デモの本質なのです。(R7・2・20記)
関連動画
▶▶▶国民負担率の推移
▶▶▶財務省前でのデモの様子(1)
▶▶▶財務省前でのデモの様子(2)
▶▶▶デモの様子(3)
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