時事寸評 書評コーナー

welcome to shimada's homepage

農水省は「国民のための農政」に徹せよ

農水省は「国民のための農政」に徹せよ

コメ高騰の無策

こんなにある

 このところのコメ価格の値上がりは異常です。日本人の主食であるコメの値段が1年で倍になるんですから、驚きです。この価格、昨年から急騰し始めました。稲刈りの始まる前あたりに、時の農水大臣が「今年の収穫量は平年比プラス10%の見込みだから、稲刈りが始まれば次第に価格は下がっていく」と自信たっぷりに述べていました。
 しかし、実際の価格は逆に右肩上がりを続け、今年に入ってからは更に上昇を続けてきました。つまり、「米の専門家」であるはずの農水省の「見立て」は、常にはずれっぱなしだったのです。慌てて備蓄米の放出を決定し、昨年3月以来3回入札を繰り返しましたが、一向にコメ価格は下らない。
 なぜ備蓄米を放出しても価格が下がらないのか。その理由は、二つです。一つは、入札業者が農協関係者ばかりで、小売り業者や小売に近いコメ業者が皆無だったからです。二つは、落札業者に「原則1年以内に同質同量の米を納付せよ」と義務づけていたからです。大量の米を落札しても、1年以内に同質同量の米を納入しなければならないとなれば、そのための保管倉庫を確保しておかなければなりません。どこかの貸倉庫を借りるとなれば、その賃料だけで利益は吹き飛びます。普通の民間業者にそんな余裕などありません。
 因みに第2回目の備蓄米放出は7万336トンでしたが、落札したのはほとんどが農協関係者でした。JA全農(全国農業協同組合)が全体の94.2%を落札し、残り0.8%を全農以外の業者が落札したんです。しかも、全農以外と言ってもほとんど農協に近い関係者ばかりです。福井農協が1,980トン、全国主食集荷協同組合連合会(全集連)が1,085トン、残り1,000トンのみが米穀集荷業のカワチョウライスという結果でした。3回目の入札も96.8%がJA全農が落札しています。つまり、備蓄米はすべて全農及び農協関係者が引き受けてしまっているのです。身内が身内業者に売っているようなものです。
 要するに、農水省は、備蓄米の放出と言いながら、裏で一般の民間業者が入札に参加できないような仕組みを作っていたのです。福井農協や全集連と言っても、その名前からみて全農の同族会社と言っても差し支えないでしょう。全国組織である全農から指示されれば、言うことを聞かざるを得ない組織ばかりなのです。こういうのを日本では「茶番」あるいは「出来レース」というんです。
 このような状況ですから、農水省は備蓄米放出の条件を変更せざるを得なくなりました。落札した備蓄米の返納期限を「1年以内」から「5年以内」に変更したのです。しかし、このような小手先の変更が価格低下につながるかは大いに疑問です。なぜ、販売したものを返納の条件などつける必要があるのでしょうか。再度、備蓄する必要があるなら、自分で調達すれば済むことでしょうに。傲慢で融通の利かない役人の考えそうな発想です。

江藤農水相のとんでも発言

嘘はついてない

 消費者がコメ高騰に苦しんでいるさなか、江藤農水相がとんでも発言をしました。5月18日、佐賀市で開かれた自民党の会合で講演し、その中で「コメは買ったことがない。支援者が沢山下さる。食品庫には売るほどある」などと述べたのです。確かにその通りだろうと想像できます。だから嘘は言ってない。
 しかし、庶民がコメ高騰で生活苦で苦しんでいるさなか、所管の農水大臣が「米は売るほどある」と言われたんじゃ、誰でも頭に来ます。所管大臣として、庶民の暮らしに思いを致すなら、いくら自民党員向けの講演とはいえ、あまりにひどすぎます。真面目に仕事をしろ、と言いたくなります。これも苦労知らずの二世議員でお坊ちゃまとして育てられた故なのでしょう。二世議員は、親の遺産を相続税なしで引き継げる特権があるからです。お金には困らない、食べ物にも困らない、という超恵まれた人種なのです。
 そして、この能天気大臣の後任として任命されたのが、なぜか国民的人気の高い小泉進次郎です。
 この小泉議員。言わずと知れたあの小泉純一郎元首相の御曹司です。この小泉議員の力量は、先の総裁選出馬時の討論会でおよそ見当がついています。つまり、「二枚目・二世議員」という以外、さほど、いやほとんどとりえのない議員だということです。
 環境大臣も歴任していますが、その時の政策もひどいものでした。CO2削減に取り組み、地球温暖化を防止するため「レジ袋の有料化」を進めました。大局的に見てレジ袋を有料化してどれほどの効果があるのか、そもそも四界を海に囲まれた日本にとって、地球温暖化という問題に真剣に取り組む必要などあるのか、という根本問題を科学的見地から探求すべきでした。その観点からすれば地球温暖化などという問題は、日本が真剣に取り組むべき課題ではないということは、ちょっと機転を利かせれば理解できたはずです。
 であれば、レジ袋の有料化など、いかに愚かで愚劣な政策であるのか、が理解できたはずです。いや、政策などという高邁な言葉を使う必要もありません。そもそも買い物をしてくれた商品を裸で渡すなど、日本の麗しい文化と相入れない行為です。それを強要する政治家など、日本の政治家とは言えません。
 また、彼は、記者から「国民に負担を強いるCO2削減計画の目標値43%はどのような根拠に基づくものか」と問われたのに対して、「空を見ていたら43という数字がおぼろげに浮かんだんですよね」と回答したという話も有名になりました。

馬鹿なのか

 更に、先の総裁選での答弁が余りにひどかったというので、「余りに勉強不足」との評価が定着しました。ですから、この小泉大臣、農林部会長も経験した農政通との評価があるようですが、私は全く期待していません。そもそも石破内閣の行く末は、よく持って3カ月、決して1年は持ちません。そんな内閣に期待などしようもないではありませんか。
 早速、彼は珍妙な発言をしました。「コメは5キロ2000円で店頭に並ぶようにします。輸送費は国が負担します。」一見聞こえはいいですが、本来負担する必要のない輸送費を国が肩代わりするってことでしょう。税金を使って安くするんじゃ意味ないんじゃないですか?

農政の抜本改革が必要

 さはさりながら、日本の農業政策がこのままでいいとは絶対に言えません。農業政策には、待ったなしの抜本改革が迫られているのです。
 なぜなら、今、農業の担い手の平均年齢は、2023年時点で68.7歳とされています。既に2年経過していますから、既に平均70歳に達しているはずです。あと5年もすれば、平均75歳です。体がついて行かない年齢です。早急に抜本改革が必要とされる所以です。
 農業の目指すべき方向は、「主食であるコメは常に余っている状態が正常!!」でなければなりません。そのためには、次のようなことを実行する必要があります。
 ①当面の措置として、米価引き下げのためコメの緊急輸入をすること
 ②将来的には農業の大規模化を目指すこと
 ③そのためには民間企業が農業経営を自由に行うことができるようにすること
 ④若者が新規参入できるよう農地の売買規制を撤廃すること(ただし外国資本は極力排除する。特に敵性国家については相互主義を理由に断固排除すること)
 ⑤中山間地など、農地としての競争力の低い農地については個別に所得補償などの手当てを行うこと(景観・保水機能の維持にも必要)

 これらの施策を総合的に実施することが必要です。特に、民間企業に農地を解放することにより、農地活用の手法は急速に進展することが期待されます。例えば、トウリーアンドノーフと言って水を使わない乾田直播農法の普及や、衛星やドローンを活用した近代的米作りの手法なども早急に検討し普及させる必要があります。
 これらを実行するためには、農協をはじめとする農業従事者から大きな反発も予想されます。しかし、彼らとて、今のまま推移すれば農業に未来はない、と思っているはずです。それを説得し改革することこそ、政治家に課せられた責務です。

農政の基本は自給自足

みんな生きてる

 日本の食糧自給率はカロリーベースで僅か38%にすぎません。この自給率を高めるためには、種や苗、肥料などについても自給できるようにしなければ、食糧安全保障の観点からは十分でありません。物価の優等生と言われた卵でさえ、その雛は95~96%が外国産の「種鶏」から生まれたものです。つまり、日本人の食糧は極めて危ういバランスの上で維持されているのです。
 生産の基になる種や苗、肥料などは十分に確保されていなければ、国民は安心して生活できません。このため、これまで日本は、種子法を制定し、都道府県がその種子や苗の開発を担ってきました。
 しかし、日本はこの大事な「種子法」を廃止し、自ら種や苗を育成する機能を放棄してしまいました。なぜか。モンサントやバイエルといった遺伝子組み換え作物を得意とする外国企業が日本市場に参入しにくいという理由からです。民間企業の参入が阻害されるという美名のもとに、押し切られたのです。
 その結果、遺伝子組み換え作物についても、米国の圧力により、それを表示することさえ禁じられてしまったのです。日本政府は、「種子法は現代においてその役割を終えている」などと言っていますが、とんでもありません。国民の「食の安全と食料の確保」、すなわ食料の自給自足は、国防と並んで国の最重要課題なのです。武器による侵略がなくとも、糧道を絶たれれば、アッという間に国家は消滅してしまいます。そのことは、現在、ガザ地区において、困窮した国民が炊き出しの配給を求め、争って鍋や釜、コップを差し出す光景を見れば明らかです。国を占領するのには、必ずしも武器は要らないのです。

今も日本の占領体制は続いている

 そのことを十分に知り抜いているアメリカは、米軍基地を置いて日本を監視するほか、脱脂粉乳などを配給し、日本人を手なずけ、更に、日本の高名な学者に「コメを食べると馬鹿になる」といった本を書かせて、コメからアメリカが量産している小麦の消費へと誘導していったのです。
 どうしてそんな愚かな政策を行ったのか。米国による占領政策の結果としか言いようがありません。戦後の教育もすべて日本は悪、アメリカは善、という思想でなされてきました。その多大な影響は、戦後抜きがたく維持され、あらゆる分野に影響を及ぼしました。食料や種苗、肥料などをアメリカに依存するようにされたのも、その一環にすぎません。
 日本人の胃袋をアメリカに握られてしまったのです。本来日本は、ハリネズミ国家として軍事的に独立し、そのうえで、教育、文化、食糧安全保障などを確保する必要があったのです。
 しかし、今の石破政権にそんな高望みをしてもどうなるものでもありません。新たな農水大臣にも、高邁な食糧政策は期待できないでしょう。願わくば、農政全般について大所高所から俯瞰し、アメリカから自立した農政を展開して頂きたいものです。
 小泉大臣よ、小さな農業団体を保護するようなチンケな農業政策でなく、消費者を保護するという観点から先ずはコメの大幅輸入から始めてみたらいかがですか。米価はすぐに下がります。農業関係者は怒り狂うでしょう。それくらいの大胆な発想で取り組めば、国民も「オッ、なかなかやるな」と見直すことになるでしょう。でも、あと数カ月しか持たない石破政権のもとでは、到底無理な注文というものですね。(R7・5・23記)

a:104 t:2 y:0

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional