米のイラン攻撃は日本の危機になるか
米のイラン攻撃は日本の危機になるか
イスラエルがイランを攻撃

6月13日、イスラエルがイランを攻撃しました。空軍200機以上の戦闘機での攻撃です。約100か所のイラン国内の軍事及び核関連施設への攻撃です。標的はウラン濃縮施設、ミサイル基地、レーダー関連施設などです。事前にモサドがイラン国内に侵入し、これらの重要施設やドローン基地などを精査し、対空ミサイル遮断作戦を実施したため、イランの防空網の多くが無効化され、イスラエルは空域支配が実現できたとのことです。
日本にとって、この攻撃自体が驚きでしたが、もっと驚いたのは、攻撃の際、同時にイスラエルの高官20人以上を殺害したことでした。しかもその役職は陸海空軍を統括する参謀総長、革命防衛隊司令官など錚々たるメンバーばかりです。それだけではありません。核開発関連の科学者10~14人が殺害されています。
このような他国の高官、それも直接戦闘を指揮すべき重要な高官をピンポイントで殺害したということは、事前に相当な準備をしていなければ到底できることではありません。日頃からその人物の行動を子細に把握していなければ実行できるはずがないのです。殺害の方法は、戦闘機やドローンに搭載された精密誘導ミサイルや爆弾を用いて実施されたものとされています。驚くべき命中精度です。イスラエルは、日頃から重要人物に関し、正確な位置情報を把握していたということですね。平和ボケした日本では到底想像もできません。そういえば、嘗て、車の中の助手席に乗っている人物だけをドローン攻撃で殺害したが、運転手は無事だったなんて事件もありましたね。
なぜ攻撃したのか
イスラエルの攻撃の目的は、「イランの核装備は絶対に許さない」、という一点にあります。イランは1979年のイスラム革命以降、「反西洋」「反帝国主義」を外交方針の根幹に据えており、その理念に基づいて同盟やパートナーシップを築いてきました。シリアやイラクと緊密な同盟関係を構築するほか、ロシアや中国とも連携を強めています。
また、イランは、国家ではない非国家組織であるヒズボラやフーシ派といった武装組織などとも連携し、資金や武器援助をしているとされています。イランは、自国の影響力を及ぼすため、直接の戦争を避けつつも、これらの国家や武装組織を利用しながら、自国の思想を中東地域に広めようとしているのです。
イランは、イスラエルという国の存在を認めず、隙あらば壊滅したいと考えている国でもあります。しかし、そのイスラエルは軍事大国であり、イランが単独で倒せる相手ではありません。しかも、イスラエルは、アメリカという強い後ろ盾を有しており、イスラエルを攻撃すれば必ずアメリカが出てきます。正面から戦って倒せる相手ではありません。
そのイスラエルは、既に密かに核兵器を保有しているのではないかと噂されています。イスラエルは、安全保障の関連から、核を保有しているか否かを明言しない、という立場を保持しています。しかし、世界の常識では既に核兵器を90発保有しているとみられています。ですから、敵対国であるイランは、対抗上、自ら核を保有しなければならない、との強い思いを持っているはずです。
しかし、世界は、イランにのみ核保有国にさせまいと動いています。イランを核兵器不拡散防止条約(NTP)に加盟させ、核査察を受け入れるよう迫っているのです。イランが核開発に邁進していることは、すでに世界の常識になりつつあります。イランはこのNTPに加盟しているにも拘らず、核査察を断固拒否しているのがその表れです。イランに潜り込ませた諜報組織の情報によれば、ウラン濃縮は、既にいつでも核兵器に転用可能なレベルに達しているとされています。
このような状況から、イスラエルからすれば、核兵器が完成する前にこれを叩こうとするのは当然です。自ら核を保有しながら、他国の保有を許さないというのは、理不尽ですが、それが通用するのが世界の常識でもあります。
アメリカの後ろ盾を持つイスラエルは、査察を受け入れないイランこそ中東の火薬庫だとして、これを叩く正統性を主張し、アメリカも消極的ながらもこれを支持する姿勢を見せているのです。
イラン核施設への攻撃

イスラエルはイランに張り巡らせた諜報組織から、核施設の所在は十分に把握していたとみられます。しかし、これらの施設は地下80m付近にあるとされ、通常の爆弾でこれを破壊することはできません。唯一可能とされているのは、アメリカが保有するバンカーバスター爆弾であるとされています。この爆弾は、地下80mまで到達し、しかる後に爆発するという優れものです。
アメリカのトランプ大統領は、イスラエルの後ろ盾として、イランに対して「即時全面降伏」を促しています。この全面降伏に応じなければ、2週間以内に攻撃すると脅しをかけていました。
そのさなか、たった今この原稿を書いている最中、まだ1週間もたっていないというのに、アメリカは、イランに対して核施設3か所にバンカーバスターによる攻撃を行ったとの報道が流れました。75発の精密誘導弾を使用、内14発がバンカーバスター爆弾だったというのです。
イランの反撃はどうなる

今後は、イランがどのような反撃に出るかです。トランプ大統領は自身の交流サイト(SNS)で、「イランが反撃に踏み切れば今夜よりはるかに大きな武力で対応する」と強くけん制しています。
イランも、一方的に攻撃されたまま何もしないという訳にはいかないでしょう。国民の世論がこれを許さないからです。その時、アメリカはどの程度の「はるかに大きな武力で」対応するか、ということになります。
イランは、直接アメリカと戦うことはできないと考えているはずです。したがって、アメリカの一番嫌がる方法を検討していると思われます。
一つは、戦線を拡大させることです。戦線をイラン以外の国にも拡大させれば、多くの国を巻き込むことが可能になります。中東におけるアメリカの軍事基地は、バーレーン、カタール、クエート、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、イラク、シリア、ヨルダンなどにあります。
これらの国に置かれた米軍基地のいくつかを叩くことで、戦線を拡大させることは十分に可能になります。トランプ大統領は、戦線の拡大を望んでいません。イラン以外での戦闘行為など、決して望んでいないはずです。イランは、これらの米軍基地を叩くことによって、戦線を拡大させ、持久戦に持ち込むことが可能になると考えているはずです。
ホルムズ海峡封鎖はあるか
二つは、ホルムズ海峡の封鎖です。ホルムズ海峡は、最もポ狭いところで33kmしかなく、封鎖しようとすれば、十分に可能です。実際に封鎖しなくとも、封鎖すると宣言するだけでも世界のエネルギー事情に大きな影響を及ぼすことが可能でしょう。同海峡は1日当たり50~70隻の商船(タンカー、LNG船など)が通行しているとされ、原油の量で見ると、日量1,700万~2,000万バレルが輸送されているとされています。
このため、ここを通って原油を輸入している国は、多大な損害を被ることになります。たとえ1隻だけでも、タンカーが被害を受ければ、他の商船やタンカーは、自重せざるを得なくなります。
日本は、原油の約8割(80~90%)をホルムズ海峡経由で輸入しているとされています。
新たな石油ショックとして、嘗ての石油ショックの再来となります。日本は、嘗て生じた石油ショックの経験から、200日分の石油を備蓄していますが、「なくなる」となれば、大きな混乱は避けがたいでしょう。
中國の台湾進攻はあるか
米軍のイラン攻撃を最も喜んでいるのはどこか。それは中国であり、ロシアです。ロシアは、アメリカがウクライナに対して武器援助という形で側面支援していますから、その力が減衰するので当然喜びます。
だが、最も喜ぶのは中国でしょう。中国は、台湾進攻を「革新的利益」と位置付けています。しかし、米軍と直接対峙する力は「今はないと」見るべきです。経済力がガタ落ちになっているからです。北京、上海はもちろん、中国の主要都市ですら経済が完全に麻痺しています。習近平にも、嘗ての力はなく、既に実権を失ったとの見方が有力です。
従って、この機に行動を起こすとすれば、習近平亡き後の態勢でということになるでしょう。そのためには、早急に体制の変革が必要になります。それまでは時間がかかる。
アメリカも、「最大の敵は中国」と狙いを定めています。中東に十分な時間を割く余裕はないのです。
そういう中、日本はトランプから防衛費の大幅拡大を求められています。日本は、この機を逃さず、防衛費の拡大を図り、中国からの侵略に備えるべきです。尖閣諸島に自衛隊を常駐させるなど、独立国としての体制整備を図ることが何より重要です。台湾有事は日本有事でもあるからです。
イスラエルとイランが和解のニュース
と、ここまでイスラエルとイランの戦闘、アメリカ参戦のニュースについて述べてきましたが、たった今、本日6月24日、朝8時のNHKニュースで、アメリカの仲介により、イスラエルとイランが和解した、とのニュースが流れました。余りにも早い展開です。これが事実なら、本稿を書く必要もなかったということになります。このニュースの信憑性が高いことを祈るばかりです。(R7・6・24記)
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