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米のベネズエラ大統領逮捕をどう読み解くべきか

米のベネズエラ大統領逮捕をどう読み解くべきか

突然の逮捕劇

 アメリカの特殊部隊が南米ベネズエラの首都カラカスを急襲し、現職のマドゥロ大統領を拘束。そのうえアメリカに移送し刑務所に収監した。我々純朴な日本人には余りに破天荒な事件で、思わず「口あんぐり」となりました。こんなことができるなら、日本も特殊部隊を北朝鮮に送り込み、拉致被害者たちを実力で奪還したしたいものだと、つくずく彼我の感を強くしました。

まどうろ

 報道によれば、トランプ大統領はマドゥロの第1次政権時も、対立する野党指導者を強力に支持した経緯もあり、マドゥロの「追放」は悲願だったとのことです。しかし、いくら悲願だったとしても、他国の大統領を拘束しアメリカに引き連れ刑務所にぶち込む、などと言うことが秩序と平和を愛する国際社会において許されることなのか。
 これが許されることならば、今後、中国が台湾に乗り込み、頼成徳総統を拘束し、中国本土に移送し刑務所にぶち込むことも許される、ということになります。また、日本も、北朝鮮に乗り込み、極悪非道の誘拐魔として金正恩を逮捕し拉致被害者を奪還後、彼を日本の刑務所にぶち込み、裁判にかけたいものです。
 と、このように考えた末、なぜアメリカにそれが出来、日本にはできないのか、と考えざるを得ません。それは、詰まるところ国際社会というのは、力関係、つまり腕力によって成り立っているからという以外、合理的な説明のしようがありません。力のあるものが勝ち、力のないものがそれを受け入れざるを得ない。現実社会の人間関係がそうであるように、力のある者が我が物顔で振舞い、弱い者はそれを受け入れざるを得ない。それが国際社会でもほぼ同じ原理で運営されている、と考えるべきなのでしょう。
 これは文字通りサバンナの「弱肉強食」の社会と同じであり、到底人知の発達した人間社会の姿ではありません。いや、サバンナの世界の方が遥かに道徳的なのかもしれません。なぜならサバンナ社会では、不必要に多数の獲物を殺すことはあり得ないからです。
 今回のアメリカの行動は、このような前近代的な社会における野蛮な行動とみるべきなのでしょうか。
 私の基本的な考えはこれとは異なります。つまり、ロシアや中国による行動様式と、今回のアメリカの行動様式には大きな差異があると考えているからです。以下、そのことについて考えてみましょう。

アメリカの行動原理

 先ず、アメリカの行動を見て、我々外部の人間が冷静に観察し分析してみることにしましょう。アメリカは、基本的に、次のような行動原理を軸に動いているように思えます。
第1 ベネズエラはアメリカの裏庭に属する国であり、域外でしかも世界の覇権を争う中国による介入など絶対に許すことができないこと
第2 世界一の埋蔵量を誇るベネズエラの石油利権を絶対に手放すことはできないこと
第3 ドルの支配体制を脅かす者は絶対に許すことはできないこと
これらのことについて、以下述べてみたいと思います。

米国の裏庭を荒らす者は絶対に許さない

 世界地図を広げてみるまでもなく、ベネズエラはカリブ海に面しており、直接アメリカに接しているわけではありません。しかし、メキシコ湾とカリブ海を一体としてみれば、アメリカの裏庭と見ることができます。その裏庭をよりにもよって、アメリカと敵対する中国が牛耳っている。これはアメリカにとって極めて腹立たしいことです。しかも、ベネズエラの大統領は現在のマドゥロ大統領はもちろん、前職のチャベス大統領もバリバリの反米政権でした。
 しかも、その反米大統領がアメリカへのコカイン密輸にも深く関わっていたというのです。それが事実であるかどうかは、部外者にはよく分かりません。
 世界最大の経済大国であり、軍事大国でもあるアメリカに反旗を翻すベネズエラ。しかもその国が世界第2位の経済大国としてアメリカと覇を争う中国と密接につながっている。そのことだけでもアメリカを苛立たせるに十分です。そのような振舞いをプライドの高いトランプは絶対に許せない、と考えていたことは容易に想像ができます。
 周知のとおり、アメリカと中国は覇権を争う者同士として、これまで互いに対立してきました。その中国は鄧小平の時代、「韜光養晦(とうこうようかい)」、すなわち「力を隠し、時が来るまで静かに実力を養う」ことを国の基本としてきました。諸外国も「中国は経済発展をすれば、いずれ自由と民主主義を愛する平和国家になるだろう」と信じ、中国に積極的に投資してきました。
 ところが、その後の政権は一向に民主国家への道を歩まず、それどころかその後の政権も共産党一党独裁体制を堅持してきました。特に習近平が共産党主席になってからは、覇権主義的な意思をむき出しにし、近隣諸国を威圧・威嚇し、領土的野心も露わにするようになりました。その野心は、習近平がトランプ大統領に対して、「太平洋は広いので、アメリカと中国が共に受け入れられる十分な空間がある」といった趣旨の発言をしたことでも露呈されています。
 中国が掲げた一帯一路の政策も、世界制覇の意図のもとで仕組まれた覇権主義的行為であったことが、次第に露わになってきました。台湾進攻もその一環です。世界は温和な民主的国家の誕生を期待していましたが、成長するにつれそれがフランケンシュタインに変貌していることに気づいたのです。
 このような乱暴狼藉、不遜極まりない国家がアメリカの裏庭にまで進出し、世界一の埋蔵量を誇る石油資源を横取りしようとする姿勢が許せない、というのが今回のベネズエラ侵攻の理由の一つになっていることは間違いありません。

ドルの支配体制を維持したい

 もう一つの理由は、ドル支配体制の維持と考えるべきでしょう。アメリカはこれまでもドルの信認が危うくなると強権を用い、あるいは制度変更を図るなどしてドルの支配体制を維持してきました。長らくドルと金を交換できる体制(ブレトンウッズ体制)を敷いた時期もありましたが、今はそれもなくなりました。金本位制から突如「金庫に金はない」として、ドルと金との交換を一方的に停止しました。ニクソンショックです。
 金との交換が停止されたなら、ドル本位体制は崩壊するのが筋というものですが、現在に至るもドル本位制は続いています。ドルの支配体制とはすなわち、世界貿易の決済にドルを使用し、しかも、ドルの発行権限がアメリカにのみある状態のことです。日本を含め他の国がドルを発行する権限は一切ありません。
 このドル支配体制に反発した国もありました。ブラジルやロシア、インド、中国、南アによる「BRICS」諸国がこのアメリカの牙城を崩そうとしていますが、現在のところ実現していません。各国の利害が一致しなかったり、民主主義国や独裁国家も混在するなど、共通の価値観にズレがあるからです。
 アメリカはドル支配体制によって最も利益を得ている国ですから、何としてもこの体制を維持したいと考えています。これまでもこの支配体制に挑戦した国に対して、さまざまな理由をつけてその国の支配体制を崩してきました。リビアの独裁者カダフィやイラクのフセイン大統領を亡き者にしたのがその典型です。
 イラクに攻め込んだのは「大量破壊兵器を隠し持っている」という理由でした。しかし、結果的に大量破壊兵器などありませんでした。ですから侵攻の理由を変え、殺害理由はイラク国内の村での住民に対する処刑・拷問・弾圧というものでした。ならば、これは純粋に国内問題です。本来、アメリカのような超大国が大量破壊兵器、すなわち核兵器を保有しているかどうかといったレベルの情報探知能力がないはずがありません。つまり、核兵器などないことを知りながら、フセインを殺害したのです。
 なぜか。それはフセインが米のドル支配体制に挑戦していたからです。フセインはイラク産原油の決済通貨を米ドルからユーロに変更するなど、あからさまに米ドルの支配体制に挑戦していたのです。
 ベネズエラのマドゥロ大統領も、自国産原油の取引にあたり、中国との取引は人民元で行っていました。ドル建てでの取引を拒否していたのです。つまり、ドル支配体制に挑戦していたということです。
トランプは、いろいろな理由をつけていますが、私は、マドゥロ大統領が中国と組んで、ドルの支配体制に挑戦した。これを許すことはできない、というのが最大の理由だったと思っていますが、諸兄はどう思いますか。

最後に

 冒頭に述べたように、今回トランプがベネズエラに武力侵攻し、現職大統領を拘束し裁判にかける行為は、明らかに国際法(という法律はありませんが)に違反していると思います。では、侵攻しない方がよかったかと問われれば、否と答えざるを得ません。つまり、トランプの行動を密かに支持せざるを得ないのです。
 なぜか。現在の世界は魑魅魍魎の世界です。国連とか国際法とか言っていますが、そもそも国連は機能してるんですか。拒否権を有する5大国が自ら戦争を起こし、隣国に侵攻しているではありませんか。中国のように、近隣の小国を威嚇・恫喝し、理不尽にも隙あらば領土・領海を奪い取ろとしています。南シナ海をめぐる領土・領海をめぐって、中国が勝手に線引きした9段線は無効だとする国際司法裁判所の最終判断を「紙屑」と言って一方的に破り捨てたのも中国です。お隣のブータンという国は、既に中国に20%も領土を侵略されています。
 自分に都合のいいもは受け入れ、都合の悪いものは破り捨てる。一体国際法なるものはどこにあるんですか。こうありたいと願う国際法学者のきれいごとではありませんか。
 つまり、今の世界は、ほぼ弱肉強食の世界であり、こういう実情を前提とするならば、大悪より小悪、独裁より民主。よりましな体制、よりましな考え方の側に立つしかないではありませんか。日本だって、その周囲を見渡せば、ロシアや北朝鮮、中国など、核を持ち、敵意と憎悪をみなぎらせたような国ばかりではありませんか。韓国だって、ありもしない慰安婦問題や徴用工問題、竹島領有権問題など、日本から見れば理不尽な様々な問題を抱えています。
 北朝鮮だって、日本の国内で多くの日本人を拉致し、その事実を国のトップが認めたにもかかわらず彼らをそれを返そうとしない。ならばトランプが行ったように、平壌に特殊部隊を送り込み、金正恩を拘束し、拉致被害者を全員取り返してほしい。それは多くの日本人の願いです。中国の傲慢さは既に述べたので、ここでは繰り返しません。
 このように、トランプの行為をみて国際法違反と評価するのは簡単ですが、トランプによる政治体制と中国やロシア、北朝鮮の独裁体制などを比べるなら、トランプの体制の方がはるかに常識的で分かりやすい。
 お前はどちらに支配されたいのか、と問われれば、私は明白にトランプ側であり、決して中国やロシアの側ではありません。(R8・1・7記)

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