飛行機へのペット持ち込みは貨物扱いでやむなし
飛行機へのペット持ち込みは貨物扱いでやむなし
犯人追求より再発防止こそ最優先に
羽田空港に着陸したJALの航空機が海上保安庁の航空機と衝突した事故。本当に驚きました。元旦に能登半島地震が起き、日本中が大騒ぎになっている折、翌日にこの事故は起きたのです。自室にいた私は、妻が階下から、「テレビを見て!羽田で飛行機が衝突して炎上しているわよ」と大声で知らせてきたんです。
急いでテレビをつけると、正にその映像が繰り返し流されていました。元旦の能登半島地震に続き、2日も大事故。今年は年明けからこんな大きな出来事が連続して起きるなんて、縁起が悪いな~と思いました。
この航空機衝突事故発生の責任をめぐっては、着陸した日航機側に責任があるのか、海上保安庁側に責任があるのか、あるいは管制側に責任があるのか、さまざまな意見が飛び交いました。どうやら海保の飛行機側に責任があるかのような結論になりそうですが、このような大事故が生じた場合は、警察が乗り出して犯人探しをし、刑事事件として立件するのが通例になっているようです。
しかし、このような大事故の場合は、厳しく犯人捜しをするのではなく、「再発防止」という視点から、問題解決に取り組むべきだと思います。なぜなら、刑事責任追及という視点から関係者の取り調べを行うと、双方の機長や管制官など関係者は、己の責任逃れをしようとするため、虚偽の証言をする可能性が高くなるからです。仮に海保の機長に責任がありとされた場合、生じた損害は余りに巨額であり、一個人に全責任を取らせることなどできるはずもありません。
このような場合、一般国民にとっての利益は、責任追及よりも、今後二度とこのような事故が生じないようにすることこそ重要です。この観点から、関係者にはあらかじめ「免責特権」を与え、正直に証言してもらい、再発防止をするにはどうすればよいのか、を真剣に検討すべきです。
ペット持ち込み問題の是非
今回の事故に関連して、もう一つ小さな(?)論争がありました。事故機から全員が脱出できたことは不幸中の幸いであり、世界中から驚きと称賛の声が上がりました。が、その陰で、貨物として預けたペットが2匹、死亡したことに関し賛否両論が渦巻きました。ペットも客室に持ち込ませるべきか否か、という議論です。
結論から言えば、私は、ペットを同伴する場合、その保管場所は貨物室でよい、と思っています。昨今の世情では、ペットを溺愛し、ペットの治療費に人間以上のお金を使い、死亡後は、人間と同じような位牌を作り、お墓まで建てるという人も少なからずいるようです。そのような人からすれば、ペットは、家族同然、人間と同じ扱いがなされているのかもしれません。
しかし、どこまで行ってもペットはペットです。ペットは飼い主にとって家族同然、いやそれ以上、亭主より大事という人もいるかもしれません。私のように80歳を超したような人間は、カミさんから「ペットの方が大事」と言われてしまうかもしれません。
もちろん、それはそれで仕方がありません。しかし、それは、あくまでも個人の認識であり、他人から見れば、ペットはどこまで行ってもただのペット、どこにでもいる「動物」にすぎないのです。
旅客機の乗客にとって、今回のような生死を分けるような場面では、人命こそが最優先されるべきものであり、ペットが亡くなることは受忍しなければなりません。多くの乗客だって、頭上の荷物格納庫(オーバーヘッド・ラック)に入れた荷物を持ち出したかったのは山々のはずです。荷物の中には、パスポートはともかく、現金や衣類、記念となるお土産類などが沢山詰まっていたはずです。
それを承知のうえで、キャビンアテンダント(CA)は、「荷物は取り出さないでください!!」と大声で連呼していました。機体が炎上する様子が見られ、煙も機内に充満し始めていました。CAは緊急時対応として、極めて適切な指示をしていたのです。ペットも人間と同じ、などと言って、そのために人命が損なわれたのではたまったものではありません。何よりも優先すべきは人命であり、それ以上に大切なもの、優先すべきものはないのです。
称賛される機長らの行動
それにしても、機長やCAの行動は立派でした。どこの脱出口を開けるべきか、CA同士が連絡を取り合い、適切なドアだけを開けました。一歩間違い、炎上しているドアを開けてしまったなら、脱出シートはおろか乗客も炎に包まれていたことでしょう。
また、機長も立派でした。大部分の乗客が脱出した後、機内をすべて見回り、幾人かの残った乗客を誘導し、無事避難させたというのです。お隣の韓国では、476人が乗った客船セウォル号が沈没し293人が亡くなるという痛ましい事故がありました。
このときの船長イ・ジュンソクは、沈没しかけた客船から真っ先に逃げました。船長の制服を脱ぎ捨て、一般乗客のふりをして脱出したのです。いかに契約社員の身分であったとはいえ、船長が真っ先に脱出するなど、日本では考えられません。その船長と今回の日航機の機長とのコントラスト。日本という国に生まれて本当によかった、とつくづく思います。機長とCAの皆様に、深甚なる敬意と感謝を申し上げます。(R6・1・19記)
a:403 t:1 y:0