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川内原発の停止要請は政治的パフォーマンス

川内原発の停止要請は政治的パフォーマンス

性急な停止要請

 鹿児島県の三反園知事が九州電力に対して、川内原子力発電所の1,2号機を直ちに一時停止するよう要請したとのことです。三反園知事は、テレビ朝日で政治記者をされていましたが、彼が知事選に立候補したことまでは知りませんでした。

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 彼が新人知事として、原発の即時停止を要請しているということは、テレビニュースで知りました。選挙期間中に「原発の即時停止」を公約にしたんでしょうね。「朝日」と名がつくと、何でも反対の左翼イメージが浮かんできますが、彼も、テレビ朝日でコメンテーターをしていましたし、ニュースステーションにも出演していました。ですから名前と顔はよく存じ上げています。要するに、有名人というわけです。有名人だから選挙にも強い。朝日新聞もテレビ朝日も全面的にバックアップしてくれる。

 そして見事当選。あげく言うセリフが「直ちに原発を停止せよ」。本当に無茶苦茶です。選挙で当選したら何でもできる、と考えるこの浅はかさ、レベルの低さ。本当に嫌になります。
 そもそも知事だからといって、原発を停止させる権限はありません。日本は法治国家です。何を根拠にして原発停止を求めているのでしょうか。しかも、九州電力が一時停止の要請には応じられないが、10月以降の定期点検に合わせて特別点検を行うと回答すると、再度、文書で「直ちに停止して、再点検・再検証」を求めたというのです。知事に当選したくらいで、何を思いあがっているのでしょうか。

原発は悪なのか

 そもそも、原発=悪なのでしょうか。マスコミで碌を食んでいる人間は、自分たちがすべて善、正義の味方のような傲慢な態度をとりますが、大変な誤りです。過去の事例で示しましょう。
 嘗て、ダイオキシン騒動というものがありました。三反園知事も関与したあのニュースステーションが火をつけたのです。久米宏キャスターが所沢のゴミ焼却炉から出る煙の中に猛毒のダイオキシンが含まれている、と報道したんです。しかも連日です。ですから、殆どの日本人の記憶に残っている筈はずです。
 この放送によって、所沢周辺の農作物は風評被害によって甚大な被害を受けました。「所沢」というだけで全く売れなくなってしまったんです。所沢だけでなく、その周辺地域の農家も大変な損害を被りました。ダイオキシン=悪のイメージが定着し、家庭用の焼却炉すらも、すべて販売停止になりました。今でもホームセンターで、家庭用焼却炉は殆ど入手できない筈です。家で庭の落ち葉を焼くことすら、犯罪であるかのようなうしろめたさを感じるようになってしまったのです。「たきびだ たきびだ 落ち葉焚き」なんていう歌詞の童謡「たき火」も、死語になりつつあります。
 しかし、そのダイオキシン騒動、今はどうなっているのでしょうか。現在、ダイオキシンそのものは猛毒ではなく、ダイオキシンによって死亡した人間は一人もいないとされています。ダイオキシンで死んだとなれば、ニュースになるはずです。天下の「朝日」なら、即刻取り上げるはずです。

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 そもそもダイオキシンが一番出る場所はどこか。中部大学の武田邦彦教授によればそれは焼き鳥屋だと言います。鰻屋さんも同じかもしれません。つまり、焼き鳥も鰻も炭火で焼きます。炭火が一番ダイオキシンを発生させるんです。ダイオキシンが猛毒だというなら、焼鳥屋や鰻屋のおやじさんはすべて短命ということになります。とんでもない話です。人類の祖先は、竪穴式住居の中で、毎日薪をくべ火を囲んで生活していたんです。それが猛毒だというなら、人類はとっくの昔に絶滅しています。
 北イタリアのセベソというところで、次のような事故が起きたそうです。1976年7月、この町にある農薬工場で化学反応の暴走が起こり、推定130kgものダイオキシンが噴出し、周辺数キロの範囲に飛び散り、17,000人がこれを浴びたというんです。しかもまずい対応のために避難が始まったのは事故から1週間が経過し、住民がたっぷりとダイオキシンを吸い込んでからになってしまった。住民の血中ダイオキシン濃度は通常の2,000~5,000倍にもはね上がり、悲惨な事態を予見してイタリアのみならずヨーロッパ一円がパニックに陥ったというんです。
 ところが驚くべきことに、22億人分の致死量(モルモットでの換算数値)のダイオキシンが狭い範囲に降り注いだこの事故で、死者は一人も出なかったんです。奇形児の出産を恐れて中絶した妊婦もたくさん出ましたが、胎児にも特別な異常は見られなかったというんです。出産に踏み切った女性たちの子供や直接ダイオキシンを浴びた住民たちは、その後長い間追跡調査を受けていますが、体質によりクロロアクネ(吹き出物に似た数ヶ月で治る皮膚病)が出た人を除けば、病気の発生率・死亡率などに特に異常は見られなかったというんです。

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 現在、ダイオキシンは猛毒という風評だけが残ったままです。国は早速、「ダイオキシン類対策特別措置法」なんて法律を作り、組織をつくり予算を確保しました。めでたしめでたし、お役人様万歳です。もちろん、テレビ朝日は何ら責任をとろうとはしていません。たった一人の死亡者もいないというのにです。焼鳥屋のおじさんも鰻屋のおじさんも、毎日元気でダイオキシンを吸っています。お役人様も、一度作った法律は飯の種ですから絶対に変えることはないでしょう。
 東京新宿の牛込柳町の「鉛中毒事件」なんていうものもありましたね。文京区の医療生活協同組合の医師団が住民の血液検査をして、労災の補償基準である鉛の量を超えているとし、朝日新聞が問題視し、この記事を連続して掲載したんです。新聞の見出しには「返せ空気を 晴らせ苦痛を」、「なぜ鉛を絶滅できぬ 怒りの住民大会」なんていう記事が連日掲載されました。もちろん、テレビ朝日に続き、他の局でも連日のように報道がなされましたから、皆さんの記憶にも残っている筈です。
 ところが事実はまったく違っていたんです。測定値はすべて大ウソ。大気中にも住民の血液中にも、鉛は通常の量と変わりがなかったんです。驚くべきことに、体が不調だとか、苦しんでいるという人すらいなかったんです。
 この事件で朝日新聞は「報道は間違っていたが、みんなが鉛の危険性を知ったことが大きかった」なんていうトンデモ論を展開し、自己弁護しているんです。慰安婦報道の誤りを認めた時と全く同じ論理のすり替えです。もちろん、当時の新聞記事はなかったことにするため、縮刷版などからはすべて関連記事は削除してしまったそうです。
 韓国の慰安婦報道や南京大虐殺などもその典型です。歴史教科書を「侵略」から「進出」に書き換えたなんていう事件もありました。すべて誤報でした。「ないものをある」ことにするのは、マスコミ、特に朝日の常套手段なのです。

■武田邦彦教授の動画はこちらから鉛中毒とダイオキシン

エネルギー政策では高度な政治判断が必要

 今回の三反園知事の即時停止要請も、原発=悪という決めつけが前提になっています。原発のような巨大装置については、稼働の是非は、ローカルの知事が個別に判断すべき問題ではないと思います。少なくとも、現在稼働している装置を停止させるためには、しっかりした科学的知見の裏付けが必要です。
 論理的な判断の手順としては、①我が国のエネルギー政策はどうあるべきか、②そのなかで原発はどのように位置づけをすべきか、③原発を必要とした場合、どのような安全基準が必要か、④その安全基準を守ることは可能なのか、といった流れで検討がなされるべきです。
 俺は選挙で選ばれたんだ、すぐやめろ、という単純発想では、またダイオキシンや鉛中毒、慰安婦報道の過ちを繰り返すことになります。
 私も、個人的には原発に100%の信頼を置いているわけではありません。なぜなら、いくら人知を尽くして安全性を確保しても、テロの襲撃や北朝鮮のようなならず者国家によってミサイル攻撃など受けたら、甚大な犠牲が出ることは避けがたいからです。

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 しかし、想定の範囲をそこまで広げてしまうと、何もできなくなってしまいます。それに、人類の進歩発展の歴史は、すべて多くの犠牲の下に積み上げられた成果の上に成り立っているものです。たった一人の犠牲も出してはならぬと言うなら、飛行機や電車はおろか、車でさえこの世に登場できなかったはずです。我が国の交通事故の死者は、今でも毎年4,000人以上出ています。昭和45年頃には年間1万6千人を超していました。事故死も重要な問題ですが、人類はそれを上回る利便性という恩恵を優先してきたのです。そのため、いかにすれば死者数を減少させることができるのか、に腐心し努力してきたのです。
 原発も同じではありませんか。世界の趨勢から見ても、原発のない国造りには無理があります。ドイツは原発のない社会を実現したと言いますが、フランスなど周辺国から電気を買っています。その周辺国の電気は原発によって作られたものです。自分の国さえ安全なら、よその国の安全なんてどうでもよい、ということです。いずれにしろ、陸続きのヨーロッパと島国の日本とでは事情が違うんです。
 確かに核燃料の焼却灰という負の遺産をどうするか、という問題はあります。でも、人類はこれまでも、大きな障害を次々と乗り越えてきたんです。今は明確な回答がありませんが、必ずや未来の人類が問題の解決をしてくれるはずです。
 

知事は性急な結論を出すべきではない 

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 三反園知事は、自分できちんと科学的知見をもとに判断したのでしょうか。少なくとも現段階で、原発はエネルギーコストが最小の貴重なエネルギー源です。その安いエネルギー源を直ちに停止したら、市民生活がどうなるのか、また、その及ぼす地域経済の影響はどうなるのか、十分な検証をしたのでしょうか。彼が知事として初登庁したのが7月28日だそうですから、僅か40日の間に2回も停止要請をした、ということになります。
 ということは、原発の是非について、自ら科学的な検証を行ったということではなさそうです。実際に九電に要請した理由については「周辺住民の安心・安全を確保する観点から」と言うだけで具体的な中身は示されていません。
 住民の安心・安全を確保するために、原子力規制委員会が厳しい技術基準を定め、審査し、結論を出しているではありませんか。川内原発は、この厳しい技術基準をクリアし、再稼働し、現在は何の異常もなく運転しているのです。文句を言うなら、再稼働を承認した原子力規制委員会に異議申し立てを行い、本格的な技術論争を行うべきです。
 いずれにしろ、国の運命をも左右するようなエネルギー源の確保とその安全性の問題については、朝日新聞的な政治イデオロギーによって判断すべきではありません。自分の属していた朝日新聞が、これまでに犯した数々の失敗事例に深く思いを致すべきです。もう政治的パフォーマンスには国民は飽き飽きしているんです。(H28・9・9記)
 

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