ロシアのウクライナ侵略から学ぶべきこと
ロシアのウクライナ侵略から学ぶべきこと
明白な侵略行為
ロシアが隣国ウクライナを侵略しました。プーチン大統領による許されざる暴挙です。一方的な侵略行為でありながら、プーチンは、核攻撃使用の意志すらちらつかせています。何という無法ぶりでしょうか。
ウクライナは、ロシアとNATO諸国との中間に位置し、地政学的に見れば、両勢力の緩衝地帯となるべき位置にあります。ロシア側から見れば、その緩衝地帯がなくなることは耐えられない。いや許されない。緩衝地帯がなくなり、いきなり喉元に刃をつきつけられる恐怖を感じる、ということなのでしょう。
1962年、キューバ危機の原因となった旧ソ連によるキューバへのミサイル配備と同じ構造です。当時のケネディ大統領は、そのような危機は許さないとして、核戦争の脅威をも顧みずキューバの海上封鎖を実施し、ソ連軍のミサイル持ち込みを阻止したのです。
ですから、ロシアの立場に立てば、その気持ちは理解できなくはありません。モスクワとウクライナ国境線とは約500kmの距離です。ミサイルなら数分で到達可能です。その位置にNATO軍がミサイルを構える、ということになれば恐怖を感じるのは理解できないわけではありません。
しかしそれでもなお現実の攻撃となれば、ロシアが全世界から猛反発を受けることは分かっていたはずです。ロシアが売るべき主な商品は、天然ガスと原油など天然資源しかありません。世界から猛反発を受ければ、これすら輸出できなくなる可能性が大きい。ドルの国際決済機構たるSWIFTからの排除という制裁も覚悟する必要があるのです。
このためプーチンは、敢えて北京冬季オリンピックに出席し、習近平に「貸し」を作ったのです。ヨーロッパが輸入を拒否した場合、代わって中国が輸入するとの内諾を交わしたのです。
しかし、そのような事情を斟酌してもなお、独立国として平和裏に活動している他国にいきなり武力侵攻するという行為は、決して許されることではありません。逃げ惑う住民や破壊される国土の惨状を見るにつけ、このような愚かな戦争を回避する方法を模索しなければなりません。日本は、このウクライナにおける出来事から何を学ぶべきなのか。よくよく考える必要があります。
私たちが考えるべきことは、次のようなことです。
第一は、他国による侵略から国土を防衛するにはどうすればよいか、ということであり、第二は、非常事態が生じたとき、生活に必要なエネルギーや食糧をどのように確保するか、ということです。
防衛の要諦は集団安保体制
現代戦において、一国のみで戦争を回避することは極めて困難です。今の世界で自国のみで国を守り切れる国と言えば、米国、ロシア、中国位のものでしょう。これらの国は領土大国・軍事大国であり、かつ核大国でもあります。しかも、中国以外は資源大国でもあります。これら以外の国は、一国のみで国の防衛を成し遂げられる国はありません。例外的にスイスという永世中立国がありますが、中立を維持するため、全国民に徴兵制を敷き、徴兵時に使用した使い慣れた武器を全家庭に常備し、国全体をハリネズミのようにして外国からの侵入を防いでいます。対GDP比で見る軍事費も、例年2.2%から2.5%の間で推移しています。
このような例外的な存在を除けば、国同士が連帯し、相互防衛体制を構築する以外に方法がありません。このため日本は、日米安保体制を構築しています。が、この体制も盤石とは言えません。前トランプ大統領は、「日本が戦争をするときは米国が守り、アメリカが戦争をするとき、日本人はソニーのテレビを見てこれを観戦しているだけだ」と批判し、同盟の破棄すらちらつかせました。
またアメリカの大統領が変わる都度、「安保条約が尖閣にも適用される」ことを確認しなければ安心できません。米国が経済的に弱体化していく中では、非常に危うい体制なのです。しかも、そのアメリカ、民主党と共和党で理念を共有せず、互いにいがみ合ってもいます。アメリカ一国に依存する安全保障体制では決して盤石な体制ではない、ということを日本ははっきり認識しておく必要があるのです。その意味で、安倍元総理が提唱したクワッドと呼ばれる日、米、豪、印の連携は対中国対策として評価すべきです。今後、更にこれを軍事同盟にまで高め、相互援助防衛体制にすることが求められます。
いずれにしろ、今回のロシアによるウクライナ侵略行為により、近隣の多くの国がNATOへの参加をより強く求めることになるでしょう。プーチンの狙いは、逆効果になるのです。
(注:その後、ロシアと国境を接するモルドバとジョウジアが3月6日、正式にEUへの加盟を申請しました。加盟するには、全加盟国の承認が必要なうえ、法の支配や汚職の撤廃、経済の安定といった条件も満たす必要があります。)
台湾、尖閣、沖縄への懸念
集金、いや習近平の中国は、経済的にみればすでに破綻している状態、と言っても過言ではありません。「共同富裕(ともに豊かになる)」の理念のもとに、IT産業を潰し、教育産業を潰し、文化芸能産業を潰し、そして富裕層を潰しています。「保8」すなわち経済成長率8%を維持しなければ、雇用を維持できないと言われる中国で、既に公式統計では4%程度の成長しか達成できていません。しかも、この公式データは都市戸籍をもつ都市住民だけの数字であり、農村戸籍をもつ出稼ぎ農民の失業率はカウントされていません。このため、経済評論家柯隆氏など専門家の分析によれば、実質の失業率は20%超と言われているのです。社会での競争を諦めた「寝そべり族」と言われる若者が多くなっているのも、その兆候の一つです。国民の中に多くの不満がマグマのように溜まっている状態、と言ってよいでしょう。
習近平は、3期目の国家主席の座を安泰なものにし、更に共産党主席の座をも確保するためには、何らかの功績を打ち立てる必要に迫られています。その目標が「台湾進攻」または「尖閣奪取」なのです。
習近平は、これらの行為が「力による現状変更」として世界から猛烈な批判が出ることは十分承知しています。その際のリアクションがどのようなものになるのか、それを現在進行形のロシアによるウクライナ侵攻という現実を見ながら思案しているのです。従って、日本としては、このロシアによるウクライナ侵略という暴挙を、絶対成功裏に終わらせてはならないのです。
プーチンの決断の背景
今回のロシアの暴挙の根底には、プーチンのNATOへの対抗心や恐怖心がある、ということは上に述べました。しかし、どのような理由があるにせよ、ロシアほどの大国が独立国である隣国を武力で侵略するなど、許される行為ではありません。世界を敵に回す、ということも予想できたはずです。
では、なぜプーチンはそのような大胆な行動をとることができたのか。主な理由は、次の3つでしょう。
①バイデン政権は米中対決を最大の国家的課題としており、二正面作戦をとるほどの力はない。しかもウクライナへの攻撃は安全保障条約を結ぶNATOへの直接攻撃ではない。また、直近でアフガン撤退の失敗により、国家的威信が傷ついているなどの事情から、アメリカは直接この侵略行為に武力で介入することはない。
②ヨーロッパ、特にドイツは原油や天然ガスの供給をロシアに依存しており、経済制裁がなされるとしても最小限に抑えられる。また、最悪、ヨーロッパへの供給が停止されても、北京冬季オリンピック開催時に、予め中国が代替してエネルギーを購入すると内諾している(多分)。
③ウクライナは核兵器を保有しておらず、軍の装備品も旧式のものが多いということは、同国が旧ソ連の一部であったことから十分に知り抜いている。
これらの事情から、プーチンはウクライナ侵略を数日以内に成功裏に終わらせることができる、と踏んでいたのでしょう。
弱体化したアメリカ
アメリカの潜在的脅威は、中国であり、ロシアではありません。ロシアは、国土こそ大きいものの、人口も少なく経済力も韓国程度であり小さい。IMF(国際通貨基金)が発表した2021年の世界各国のGDPによれば、韓国に次ぐ11位となっています。対する中国は、国土も大きく、経済力もGDP世界第2位を占め、大きい。しかも、毎年、軍事力を増強し、アメリカと並ぶ軍事大国になりつつあります。いや既に軍事大国になっています。その中国は、アメリカを凌ぐ世界覇権への野望を隠そうともしていません。国内的にはチベットやウイグル、東モンゴルを占領し、英国との合意を無視し、香港で非民主的な強権体制を敷いています。特に、チベットやウイグルにおける人権弾圧は苛烈を極め、世界の非難が集中しています。
そのような凶暴な中国こそが、アメリカが当面する最大の脅威であり、敵なのです。
エネルギー資源確保のため原発を活用せよ
欧州諸国は原油や天然ガスなどエネルギー資源の供給をロシアに依存しています。特に、ドイツは、メルケルの時代にすべての原発を廃止するなど、脱炭素対策に積極的に取り組んでおり、ロシアへの依存度が極めて高い。このためプーチンは、ヨーロッパは強烈な軍事的制裁には踏み切れない、と読んでいたことは前述したとおりです。案の定、米国はじめヨーロッパ諸国も、武力による対抗手段は使わず、経済制裁という微温的な対抗手段をとるしかなかったのです。このように、エネルギーを他国に依存する、ということは安全保障上の観点からも極めて危険なのです。
この観点から、日本もエネルギー政策を根本的に見直す必要があります。私見ですが、次の2点から考える必要があります。
①既存の原発を早急に再稼働させること
東日本大震災の発生前、日本には54基の原発がありました。電力需要の30%前後を原子力で賄っていたのです。しかし、福島第一原発事故の発生により、原発に対する不信感や不安感が広がり、原発建設は急減速を強いられました。事故から10年を経過した2021年時点で再稼働した5発電所の9基のみにとどまっています。原発は再稼働すれば、1基あたり年間数百億円規模の収益押し上げ効果が期待できるとされています。また、脱炭素化の流れにも沿っています。その意味で、早急に再稼働に向けた努力を官民挙げて取り組む必要があります。
②小型原発を早急に稼働させること
従来の原子炉を小型化しコストと建設費を抑えた「小型モジュール炉(SMR)」や炉心溶融が起きにくく、発電しながら水素の作れる「高温ガス炉」などについても、早急に検討すべきです。太陽光や風力といった再生可能エネルギーの利用では、エネルギーコストの上昇を抑えることはできません。自然エネルギー=環境にやさしい、などと言う妄言に騙されてはいけません。杉山大志氏著の「脱炭素はウソだらけ」を読んで、データを元して議論していただきたいものです。日本は、一刻も早く、エネルギー政策の大転換を図る必要があります。
レーザー兵器やレールガン兵器の開発を急げ
ロシアによるウクライナ侵略に学ぶべきこととして、中国による侵略に備え、日本は早急に守りを固める必要があります。現在、日本の防衛は極めて心細く危うい状態にあります。日米安全保障条約のみに依存した極めて危うい状態にあるのです。
このような不安を払しょくする手段として、敵の攻撃を無力化するレーザー兵器や高出力マイクロ波兵器、それにレールガン兵器というものがあり、日本はこれらの開発に着手しています。これらの技術が確立すれば、戦争の姿を根本から変えうる可能性がある、とされています。つまり、ゲームチェンジの可能性があるのです。
①レーザー兵器
レーザー兵器とは、レーザーのエネルギーによって敵の兵器などを破壊し又は機能を喪失させる兵器です。米軍は当初、2020年代半ばまでの実装を目指して開発を進めてきました。この兵器は、エンジンの動力を利用して充電することを前提としており、何発撃とうとも弾薬や弾倉が空になることがない、という優れものです。高い技術力を誇る日本にこそ適した兵器として、米国は日本に協力を求めてきています。
②高出力マイクロ波兵器
これは軍用無人機ドローンへの対抗手段として開発されているものです。高出力のマイクロ波をビーム状に照射することで電子機器を無力化するもので、ドローンに照射すれば内部の電子制御システムをなどを故障させることが可能になるというものです。標的に光速で到達し命中率も高い。人体に生じたがん細胞をレーザーで焼き切る、あの技術の応用です。照射方向を簡単に変えられ、弾数の制約がないなどの利点がるため、ドローンによる飽和攻撃にも対処可能とされています。
③レールガン兵器
レールガン兵器とは、マッハ5超の「極超音速」で飛ぶミサイルの迎撃を主目的にするものです。火薬でなく、砲身の中に取り付けたレールに電気を通すことで生まれる電磁力を使って弾丸を発射するというものです。防衛装備庁の実験ではマッハ7に近い速度で射出することが可能で、連射も可能とされています。
日本は、これらの「日本的」な兵器の開発により、中国のような無法国家に対峙する必要があります。
核シェアリングも重要な検討課題
プーチンがウクライナを侵略した原因の一つは、ウクライナが核を持たない国であったことです。いかに弱小国であっても、核を保有しているならば、簡単に手出しはできません。北朝鮮が核の保有にこだわる理由はそこにあります。
日本には非核三原則なる摩訶不思議な理念がありますが、この原則は法律でもなくましてや憲法の規定でもありません。佐藤栄作首相当時の国会決議にすぎません。ですから、時代の流れ、変化に合わせ、これを変更していくべきは当然のことです。
安倍元総理は、ドイツと同じように、米国の核をシェアする形で日本も保有できるようにすべき、という趣旨のことを述べています。菅前総理も核のシェアを議論することに前向きの姿勢を示しています。責任ある政治家ならば、当然の発言だと思います。日本も、ドイツに倣い、早急に米国との間で協議を開始すべきです。
単独で国家を守ろうとするなら、北朝鮮のような核保有に拘る独裁体制を非難できません。民主主義国家どうして国の安全を確保するなら、NATOのような軍事同盟関係が必要です。日米同盟の危うさについてはすでに述べました。日本の存立を確かなものにするためには、クワッドを軍事同盟にまで高めるか、そうでないなら米国の核をシェアリングさせてもらうか、その二者択一こそが現実的な議論となるべきだと思います。もはやいつまでもノー天気に、「平和ボケ」していることは許されないのです。中国という無法国家が、いつ行動を起こすべきか、虎視眈々と狙っているからです。
プーチンがウクライナに攻め込み、無慈悲に破壊と殺戮を行っているのは、ウクライナにあった核兵器を放棄したからでもあるのです。すなわち、嘗てウクライナには核兵器がありました。核弾頭1240発、大陸間弾道ミサイル176基があり、旧ソ連から独立した時点で、ウクライナは世界第3位の核保有国だったのです。その核をもっていれば、ロシアによる侵略は絶対になかったはずです。
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最後に
アメリカは、前述したように、すでに世界の警察官の座を降りています。ウクライナ侵略という明白な侵略行為についても、経済封鎖という生ぬるい手段しか行使できません。警察官がいるなら、直ちに現場に駆け付け、警棒なりピストルなどで犯人を退治します。その正義の警察官が今の世界には存在しないのです。
そのような状況の中で、仮に、中国が台湾に侵攻した場合どうなるか。台湾とアメリカには軍事協定がありません。台湾関係法という法律はありますが、これはアメリカの国内法であり、台湾を国家と同等に扱い、防衛兵器を供与できるというに過ぎません。中国が台湾に侵攻した場合、アメリカの国内法の縛りにより、議会の承認が必要になるなど、一定の手続きが必要であり、国内世論の動向も無視できません。
国内手続きに手間取っている間に、台湾進攻が完了している、ということもあり得ます。その時日本はどうするのか。「台湾有事は日本の有事」というのが日本の認識ですが、憲法や自衛隊法など国内法の制約により、即応態勢がとれるのか、心配でなりません。
日本が今回のウクライナ侵略に学ぶべきことは、有事においていかにしてエネルギー資源を確保するかであり、台湾や尖閣有事に際していかにして即応できるようにするかです。脱炭素化などという国力を弱める妄言はデータに基づいて反論し、中国による一人勝ちを抑える必要があります。また、日本の存立を確保するため、憲法や国内法の改正を急ぎ、かつ日本的兵器の開発を進めるなど、現実に即した対応を緊急に行うべきです。残された時間は余りにも少ないのです。(R4・3・4記)
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