時事寸評 書評コーナー

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新たな運転技能検査は高齢者いじめだ

新たな運転技能検査は高齢者いじめだ

来年5月から実施

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 新聞を見て驚きました。来年5月から、新たに「運転技能検査」が実施されるというのです。聞いてないよ~という感じです。
 この技能検査は、過去の違反歴など一定の要件に該当する者のみを対象にするというんですが、なぜ今まで必要とされていなかったものが、急に必要とされることになったのか。まず、この運転技能検査を受けるべき要件から見てみましょう。
・要件①75歳以上の免許保有者であること
・要件②起点日(免許有効期限の直近の誕生日から160日前)から過去3年間に信号無視や速度違反など11類型の違反歴があること
 つまり、来年5月からは、この2つの要件を充足する75歳以上の高齢者は、新たに運転技能検査を受けなければならないことになった、というわけです。
 一連の認知症検査だけでも煩わしいというのに、更に、この運転技能検査をも受けなければならないことになった、というわけです。高齢者にとっては、「もういい加減にしてくれ!」というのが本音でしょう。私も立派な後期高齢者ですから、はらわたが煮えくり返っています。

11類型の違反とは

 では、この11類型の違反とはどのようなものなのでしょうか。警察庁が示した項目は、次のようなものです。

運転技能検査の対象になる11の違反類型

・信号無視
・逆走、反対車線へのはみ出しなど
・追い越し車線を走り続けるなど通行帯違反
・速度超過
・横断や転回などの禁止違反
・踏切の直前で停止しないなど
・交差点の右左折で左端や中央に寄らないなど
・交差点での安全不確認や他の車両への妨害など
・横断歩道を渡る歩行者の妨害など
・前方不注意や安全不確認など安全運転義務違反
・携帯電話使用など

 これらの項目を見て、自分も該当する可能性があると思った人も多いのではないでしょうか。私も、数年前、「一時停止違反」として捕まったことがあります。一時停止の標識がある田舎道の交差点での出来事でした。左右の見通しが効き、交通量も極めて少ない。その時も、正面からも、左右どちらからも車は来ていませんでした。
 このため、最徐行して左折したところ、どこかに潜んでいた若い巡査が追いかけてきて、反則切符を切られたというわけです。「最徐行はしたが、完全に停止はしなかった」というのが、若い巡査の言い分でした。私の車の後についていた車も同様に反則切符を切られる羽目になりました。
 左右が十分に見通せる田舎道で、どうして一時停止のマークが必要なのか、今でも納得できません。しかし、このような違反でも、「交差点での安全不確認」として、この運転技能検査の対象になるのでしょうか。11類型が示されていますが、6類型において「など」という文言がついています。つまり、この「など」に該当している可能性もある、ということになります。

受験要否の通知が来るのか

 上に述べたように、「起点日(免許有効期限の直近の誕生日から160日前)から過去3年間」なんて言われても、多くの人は困惑するばかりでしょう。対象者は認知症の検査を強要されている75歳以上の高齢者です。こんな「起点日から過去3年間」だなんて言われても、ピンとくる人はほとんどいないはずです。一カ月が30日と決まっているわけではないんですから、カレンダーと睨めっこして、きちんと調べなければ起点日なんて分かるはずがありません。

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 つまり多くの高齢者は、起点日の判断が正確にできない、11類型に該当するのかどうかも分からない。まして自分の違反がこの「など」に該当するのかどうかも分からない。
 私の場合も、一時停止違反がこの「交差点での安全不確認」に該当するのか否かも正確に判断できません。自分は該当しないと思い、認知症検査の方だけ気にしていたら、突然、「運転技能検査が未了になっていますよ」なんて言われる可能性もあります。この運転技能検査を受検しなければ、認知症機能検査を受けられないんですから、問題は深刻です。小泉進次郎のレジ袋有料化と同じくらいの愚策、大混乱必死の悪政、と言ってよいでしょう。

罪刑法定主義に反しないか

 過去の行政罰を蒸し返すように、再度、運転技能の検査義務を課すというのは、罪刑法定主義に反しないのか、という根本問題もあります。一時停止違反で反則切符を切られ、つまらなく退屈な講習などを受けさせられ、少なからぬお金まで払わされ、それで済んだと思っていたら、忘れた頃になって、再度、運転技能検査という義務を課せられる。二重処罰と感じるのが普通の感覚でしょう。
 刑法の基本理念に「罪刑法定主義」というものがあります。あらかじめ法律の定めがなければ、遡って罰せられることはない、ということです。中国のような独裁国家ならいざ知らず、本来、何の定めもなかったのに、遡って罰する(再度罰する)なんていう国家は、到底民主主義国家とは言えません。
 来年から、実施しようとしている運転技能検査は、過去に既に定められた行政罰を履行した者に対して、新たな義務を課するという点で、罪刑法定主義に反する疑いがあります。少なくとも、多くの高齢者は、皮膚感覚でそう感じると思います。
  

十分な余裕期間が確保できるのか

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 仮に、十分な余裕をもって警察から事前の通知が来るとしましょう。でも、認知機能検査も同時並行的に手続きをとらなければなりません。運転技能検査受検でモタモタしている間に、認知機能検査が受けられなくなってしまったなんてことも多発するのではないでしょうか。
 「免許有効期限の6カ月前から何回でも受験できる」(つまり何回もお金を取られる!)とされているので、通知はその前に来るものと思われますが、それにしても認知症検査とダブルでこのような技能検査を課せられる高齢ドライバーにとって、本当に過酷な制度というべきです。
 なぜなら、一度この運転技能検査に不合格になったと仮定すると、再度、受検会場を確保しなければなりません。「免許有効期限の6カ月前から何回でも受検できる」という建前になっていますが、免許有効期限が間近に迫っているのに、まだ合格できていない。これでは認知機能検査の申し込みもできないことになります。
 まあ、それでも何とか運転技能検査が合格できたとしましょう。今度は、認知機能検査の日程を確保しなければなりません。私は、認知症検査の制度が導入されたときに、検査会場を確保するために大変な苦労をした経験があります。いくら電話をしても「話し中」で通じなかったんです。妻と共同で、二つの携帯を駆使して3時間も4時間もかかってやっとつながりました。しかも、自分の望んだ近場の会場を確保することはできませんでした。
 この時ほど、行政不信、いや警察不信を強くしたことはありません。勝手に制度を作り、金を徴収するのに、電話一本繋がらない。こんな不親切な行政はありません。
 一時停止違反で捕まった時も、完璧に左右の見通しが効く田舎道で、なぜ一時停止が必要なのか、合理的な理由を求めましたが、納得のいく説明はありませんでした。とにかく、標識があるから完全に一時止まる必要がある、というだけです。合理的な説明ができないなら、そんな標識は撤去すべきですが、今でも一時停止の標識が撤去される気配は全くありません。
 以来、免許更新時に、「交通安全協会へ加入いただけますか」などと聞かれると、「加入しません!」と断固拒否しているのです。死ぬまで加入することはないでしょう。

受検料で新たに3,550円も徴収

 この運転技能検査を受けるための受験料は3,550円です。高齢者にとって、決して安くない金額です。しかも、すでに認知症検査時に、検査費用として750円、さらに高齢者講習で5,100円、合計5,850も必要です。しかも、しかもです。実はこの認知機能検査、獲得点数によって費用も違ってくるんです。

認知症検査における得点別の費用

49点未満 7,950円
49点~76点未満 7,950円
76点以上 5,100円

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 49点未満と49~76点未満が同額なら、76点未満と76点以上の二つの区分で足りるはずなのに、なぜか3段階に区分されているのです。いずれ値上げする魂胆である、と推測されます。
 このように、高齢者は、認知機能検査で最低でも5,100円、運転技能検査で3,550円、合計8,650円は最低必要ということになります。点数が悪かった人は、11,500円です。私も認知機能検査で、時計の時刻を記入する際、12時、3時、6時、9時を数字で記入し、ほかは-で表示したところ減点され、11,500円を払わされました。「時刻はすべて表記してください」と言ったはずだというわけです。まるで小学校低学年並みの扱いをするのが、認知症検査というわけです。「注意力不足」を理由に費用を多くとれるというなら、今後もこういう引っ掛け問題がなくなることはないでしょう。引っ掛けて高額の料金を取るというのは、詐欺商法と同じではありませんか。
 このような詐欺的商法が許されるなら、高校や大学受験で、点数が低かった受験生からはより高額の受験料をとることも許される、ということになります。警察庁が認めているくらいですから、全く問題はありません。

新制度の悪辣さ

 このように、認知機能検査+高齢者講習で5,850円(最低額)払い、今回さらに運転技能検査で一律3,550円踏んだくろうというんですから極めて悪辣です。
 なぜ悪辣なのか。その理由は、違反歴がある者に対する運転技能検査が必要だというなら、年齢など関係ないはずです。老いも若きも、「違反歴が悪い」というなら、平等に運転技能検査を行うべきです。若者は不問に付され、なぜ高齢者だけにその義務を課すのか。その理由を万人が納得できるよう、実績の数字に基づき、きちんと説明すべきです。
 また、この運転技能検査を実施したら、違反ドライバーは本当に減少するのか、その合理的な根拠を示すべきです。本当に事故率が減少するというなら、当然、全ドライバーを対象にすべきです。そうでないなら、なぜ高齢者だけが対象になるのか、データに基づき、その合理的な根拠を示すべきです。
 このような悪辣な手法は、新型コロナへの対応と全く同じです。なぜ感染するのか、感染のメカニズムがよく分からないのに、飲食店やカラオケ店などが狙い撃ちされました。これらの業界は業界団体がなく、よって反発が少ない。それを見越して、自粛要請のターゲットにされたのです。後で分かったのは、「50%以上の感染源は家庭だった」ということです。それはそうです。家族はそれぞれ学校で、職場で、通勤通学途上などで、さまざまな場所で人と接触し感染します。それを家庭に持ち込むんですから、最大の感染源、クラスターの元であることは常識レベルでも理解できます。
 我々高齢者も高齢者団体などありませんから、発言力が極めて弱い。そのため、こんな理不尽な費用徴収のターゲットにされたということです。

高齢者の事故率は決して高くない

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 事故率でいうなら、高齢者よりも若者の方が事故率は高い、というのが過去の統計データで明らかになっています。アクセルとブレーキの踏み間違いも、高齢者も若者もほぼ同じ、むしろ若者の方が多いくらいです。
 高齢ドライバーが加害者となる深刻な事故が増えている、と言えるためには、その事実を「事故率」で証明しなければなりません。100人当たり、あるいは1,000人当たり、どの程度増えているのか、データで示さなければならないのです。
 では、警察庁発表のデータで調べてみましょう。上の図は、年齢別の事故件数の推移です。警察庁発表の図に矢印などを加えて見やすくしたものです。図中の「第一当事者」とは、その事故に関わった人のうち、いちばん過失が重い人のことです。
 この図で分かるように、交通事故全体の件数は、どの年齢層で見ても減少の一途をたどっています。高齢者による事故件数は増えているのではなく、逆に減っているのです。先ずこの点を押さえておくことが重要です。
 減少の度合い、つまり減少率は、若年層が急激に減少しているのに対して、高齢者層の減少割合が少ないように見えます。しかし、これは、高齢者人口の増加(このグラフでは、免許保有者数の増加)に対して、若年層人口が減少していることから説明できます。若者人口が減少傾向にあることに加え、経済的事情などから、最近は免許を取らない若者が増えているのです。
 つまり、高齢者が第一当事者となる事故件数は、総数としてみれば、決して増えているわけではないのです。それなのに、なぜ高齢者ばかりをターゲットにするのか。全く合理的な根拠がありません。
 現在のやり方は、「一般的に高齢者は事故が多い。マスコミも高齢者の事故は大きく報道するが若者の事故は大きく報道しない。よって、高齢者を対象にし、もっともらしい制度を作ってもマスコミや高齢者の反発は少ないだろう。」というレベルの制度改正であろうと思われます。

天下りポストと財務省との結託

 このようなことを考えると、この運転技能検査という新たな制度は、
①警察OBが自動車教習所などへの天下りポストを確保するため
②財源確保により、財務省に恩を売り、予算獲得を有利にするため
との狙いが透けて見えます。
 警察庁の推計では、免許更新する75歳以上の高齢者は年間約200万人に上るといいます。同庁はそのうち実車試験の対象を7%程度と見込んでいるとのことです。ということは、200万人×0.07×3,550円=4億9700万円です。高齢者から新たに5億円をむしり取ろうということです。
 多くの高齢者は現役世代と違い、年金以外の収入がないのに、つまらない講習を受けさせられ、読みもしない教本を与えられ、3,550円もむしり取られるんですから、本当に腹立たしい限りです。しかもこの金額、数年後には必ず値上がりします。
 中国と同じで、これまで警察庁は常に「サラミ戦術」で国民を騙してきたからです。このサラミ戦術の一例はシートベルトです。最初は運転手と助手席だけの装着義務でした。数年経ったら、今度は後部座席も義務化されました。その数年後は、観光バスの乗客も義務化されました。今はもう赤ん坊まで義務化されてしまいました。こうして日本は、日一日と息苦しく住みにくい世の中になっていくのです。(R3・11・8記)

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