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国の少子化対策は本質を突いていない

国の少子化対策は本質を突いていない

岸田政権の少子化対策

 岸田政権は、少子化対策として8兆円の予算を組むとしています。子供を増やすために予算の大盤振る舞いをする、というわけです。その中身は何か、と言えば次のようなものです。
◎児童手当として、①所得制限を撤廃し、②対象年齢の上限を引き上げる、そして③多子世帯をより手厚く保護する
◎保育所を親の就労状況に関わらず利用可能にする
◎小中学校の給食費を無償化する
◎新婚世帯への住宅支援を行う
◎高等教育費支援を大幅に拡充する
◎出産費用の保険適用を具体的に検討する
◎「出世払い奨学金」を拡充する
 これらのメニューを見て、これで日本の少子化問題が解決すると思っている人はどれだけいるでしょうか。
 確かに、これらのことを実施すれば、子育て世帯には経済的に大きな福音になるでしょう。でも、これらの施策には重要なポイントが欠けています。それは、これらの施策は、基本的に既に結婚し、子供を育てている家庭に対する支援になっているからです。既に結婚し、子供のいる家庭に手厚い保護をすれば、本当に子供は増えるのでしょうか。
 先ず、データから見てみましょう。子供の出生率を見るには、合計特殊出生率というデータが有効です。一人の女性が一生の間に産む子供の数を示しているからです。

合計特殊出生率

合計特殊出生率

 この表は、1973年には一人の女性が2.14人産んでいたが、2020年には1.33人しか生まない、ということを示しています。つまり、47年前には、二人の夫婦から平均して2.14人産まれていたわけですから、人口減少は起こらない、ということになります。しかし、47年後の2020年には1.33人しか生まれない、というように変化してきたということです。二人の夫婦から1.33人しか生まれなければ、当然、人口は減っていきます。これが日本における少子化の根本原因です。
 次に、ここでもう一つのデータを示します。有配偶者出生率というものです。これは結婚した夫婦が子供をもうける割合ということです。結婚した夫婦が、必ず子供をもうけるわけではありません。そこで、統計的に結婚した夫婦がどのくらい子供を産むのか、その割合を示したのが有配偶者出生率です。

有配偶者出生率

 このデータから分かることは、結婚した夫婦の生む子供の出生率は、35年前も今もほぼ同じということです。いやむしろ若干ではありますが、現在の方が子供を産む割合は増えている、ということが見て取れます。
このことは何を意味するのか。そうです。結婚しさえすれば、今も昔も同じように子供を産む(=子供数は減らない)、ということです。

結婚しない若者が増えている

 更に、次のデータで見ていきましょう。総務省統計局の国勢調査によると、日本人男性の生涯未婚率は2000年に10%を突破。以降は年々上昇を続け、2015年時点では男性で約23%、女性で約14%にもなるという結果が出ています。

生涯未婚率

 このことは私たちの皮膚感覚でも理解できます。生涯結婚しない男女が増えているのです。特に、1990年頃から急激に増加しています。これは日本の経済が伸びず、「失われた30年」と言われた時代とほぼ重なっている、ということに注意が必要です。国民の所得、賃金が伸びない、ということがその背景にある、ということを無視することはできません。

出産適齢期の結婚数が減っている

 更に、別のデータで、出産適齢期である35歳未満の結婚率というデータがあります。これによると、次の通りです。

35歳未満結婚率1

 この表は、35歳未満で結婚する人がの数が減っているということを示しています。35歳という数字が何を意味しているか。それは、女性にとっての出産適齢期ということです。結婚適齢期とか出産適齢期などという用語は、差別用語のような響きがあり、あまり使いたくはありません。しかし、生物である人間には、おのずから出産に適した時期というものがあります。女性の排卵という事象も、従来は、卵子が新たに生成され、それが一個ずつ排卵によって体外に排出されるものと理解されてきました。
 最新の医学研究の結果によれば、女性の卵子は生まれたときから体の中にすべてビルトインされており、それが一個ずつ排出されてくるものだということが分かりました。ということは、年齢を重ねれば重ねるほど卵子は古くなる、ということになります。つまり、受精の時期も、若い時期の方が受精しやすいということも普通の常識感覚として理解できます。換言すれば、できるだけ早く結婚し、子供を産むことが、本人にとっても国家にも良策ということになります。
 ところが、現実は、この出産適齢期である35歳までに結婚した女性の婚姻率は、過去35年間に90.9%から65.4%にまで激減しているのです。つまり、晩婚化です。このことが日本の少子化の根本原因になっている、とみることができます。

とるべき対策は明らか

 このことを前提にすれば、国として、とるべき対策、その方向性は明らかです。
 できるだけ早い時期(晩婚化防止)、つまり「35歳くらいまでに出産できるようにする」ことこそ、本人のためにも、また国家のためにも有益ということになります。
 このような言い方をすると、女性を「生む機械」だなどと言って批判する人もいるでしょう。決してそんなことを言っているのではありません。国の安全と経済的繁栄を図るのは、為政者の当然の義務です。最大の責務と言ってもいいでしょう。このため、その為政者の立場で物事を考えるなら、国の衰退をもたらす少子化を克服するのは重要な政治課題であるべきです。そして、その少子化を防ぐには、データに基づき、その根本原因を探るのは、決して非難されることではありません。
 このような観点で、現在の少子化対策を考えるなら、現在、岸田政権が6兆円を費やすとしている異次元の少子化対策は本質を突いていない的外れの対策と言わざるを得ません。

早期結婚促進策こそ緊急の重要政策

 以上のようなことを考えるなら、日本における少子化対策は、
①できるだけ早く結婚できるようにすること、そして
②新婚生活が順調にスタートできるようすること
 このことこそが、日本における少子化対策の肝となるはずです。
このような観点から、再度、岸田政権が提示した少子化対策のメニューを見てみます。これらの項目の中で、的を射たものは新婚世帯への住宅支援のみ、ということになります。
 つまり、岸田政権の示した少子化対策のメニューの大部分は、すでに結婚した後の夫婦に対する施策になっているのです。もちろん、これらの施策は、これから結婚しようとする若者にとって将来への希望を与えるものであり、有益ではあります。
 しかし、彼らにとって先ず重要なことは、
①良い相手を見つけること、であり
②安定した新婚生活をスタートできる見通しがたつこと
であり、そのうえで、子育てなど、安心して生活できる環境が整備されること、に尽きるのではないでしょうか。

自治体の無料結婚相談窓口を充実させよ

 若い世代に早く結婚してもらうにはどうすればよいか。先ずは、結婚相手を見つけやすくすることが重要です。私の若い頃は「世話焼きばあさん」という存在がありました。独身の女性や男性がいると、何かと世話を焼き、「釣り書き」や「見合い写真」をもって、見合いを奨めてくれたものです。ですから見合いの機会というものはいくらでも(?)ありました。私のような不出来で安月給の人間でも、5回以上は見合いの機会に恵まれました。しかし、今の時代、そういう世話焼きばあさんは、ほとんどいなくなりました。
 代わって登場したのが、専門業者による結婚斡旋業者です。しかし、これらの専門業者の斡旋による見合いは、料金が高かったり、見合い回数の制限があったりで、必ずしもうまく機能しているようには見えません。また、最近ではマッチングアプリを活用したネット見合いも盛んになりつつあるようです。私自身、このようなマッチングアプリを利用したことがないので、具体的な批評はできませんが、ネットに自分の写真をさらすことに対する不安や、写真の加工も容易にできること、更には犯罪に引き込まれる可能性もあること、などを考えると、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
 だとすれば、このような場面では、信用のある公的な機関が斡旋の労をとるのが一番です。現に、いくつかの自治体でそのような窓口を設けてあっせん業務を行っているところもあります。国としても、このような公的機関によるあっせん業務を積極的に行えるよう、財政上の支援をすべきだと思います。今の日本で必要なのは、先ず、出会いの場を積極的に設け、結婚に結び付けることが、少子化対策にとって極めて重要な第一歩である、ということを認識すべきです。

新婚世帯が10年間安心して住める住宅を提供せよ

 次に、結婚したばかりの新婚夫婦が必要とするのは、住むところです。結婚はしたが、安月給の悲しさ、程よい良質の住宅が見つからない、というのでは結婚に二の足を踏んでしまいます。そこで、国は、これら新婚夫婦に特化した住宅を確保できるよう、積極的に家賃補助を行うべきです。
 結婚しない若者の多くは、結婚して住宅を借りるだけの資金がない、という人も多いはずです。とにかく、結婚して住むところさえあれば、文字通り「一人口は食えないが二人口は食える」ようになるのです。
 先にあげたように、9兆円の予算を使って、すでに結婚している夫婦に補助をするよりは、「とにかく結婚まで導き」、「家に住んでもらえさえすれば」、「少子化」という日本の難題は、かなりの部分解決できるのです。国は、まず、この部分に焦点を当て、そのうえで財政的余裕があるなら、前述したような、諸施策に投資すればよいでしょう。

教育国債を発行し特別会計で運用せよ

 私は、従来からこの欄で教育国債を発行し、特別会計で運用せよと主張してきました。端的に言えば、教育への資金投下を長期投資と位置づけ運用するのです。
 具体的に言えば、保育所や幼稚園はもちろん、小学校から大学卒業まで基本的にすべての養育費と教育費を無償化するのです。こんなことを言うと、とうとうお前は気が狂ったのか、と言われるのは覚悟のうえです。
 投資には短期投資と長期投資があります。教育投資は文字通り長期投資です。子供が生まれて成人し、勤労所得を得るようになるまで一方的に資金を投下し続けなければならないからです。

画像の説明

 しかし、成人し、勤労し又は事業を経営するようになれば、今度は所得税をはじめ様々な税金を負担するようになります。良質の納税者になるのです。新幹線を作り、巨大なダムを作るには、用地買収を含め、数十年の歳月を要します。完成し又は稼働するまでは、1円の収入もありません。それでも必要なものであれば、粛々と実行するのです。そして完成すれば、きちんと投下した資本は100%、いやそれ以上に回収できます。投資とはそういうものです。教育投資とはそういうものです。資金投資を惜しみ、ろくな教育も受けさせず、生活保護に頼らざるを得なくなるような人々を量産するのがいいのか、きちんとした教育を施し、良質な納税者を量産するのがいいのか、結論は明らかです。
 その成果を数量的に把握することは困難だとしても、教育投資が明白に回収可能な良質の投資であることは明らかです。この点に関する説明をすると長くなるので、詳しくは私の過去の記事を参照して頂きたいと思います。

▶▶▶養育費と教育費を国債で賄えば日本の未来は明るい

 子供を国の富を生み出す国の宝、資産と考えるのは世界の常識です。だからこそ、北欧やシンガポールのように、成長している国はどこでも教育に力を入れているのです。
 子供たちの教育を充実させることは、「国民の将来の所得を増やし」「将来の失業を減らす」ことと同義なのです。その教育のために国債を発行することが認められない、という理屈はありません。

最後に

 令和2年6月21日の読売新聞に「あすへの考」という一面ぶち抜きの記事が掲載されていました。「少子化対策打てど響かず30年」というタイトルです。
 じっくり読んでみた結論は「少子化が注目されて30年。経済や人々の価値観が関わるだけに少子化対策の特効薬はない。今求められているのは、家庭や社会における子供の価値や役割について、改めて一人一人が考えてみることではないか」と結んでいました。論者も匙を投げたという感じです。

大家族2

 しかし、社会政策の中で解決できない問題など、ほとんどありません。
人口が減少していても経済発展している国は、アイスランドやノルウエーなどいくらでもあります。これらの国では豊富な自然資源を活用した産業や観光産業などで経済発展を遂げているのです。
 日本だって、本当は高い技術力や製品力を持ち、海外市場での需要も高いため、経済発展を続けることは十分に可能です。最近話題のチャットGPTに代表されるように、人間の能力をはるかに上回るAI技術の進展により、人間の頭数はほとんど問題にならないくらい、省力化技術が進展しています。
 ですから、これからの社会は、人間の頭数ではなく、いかにしてこれらの技術を活用していくべきなのか、そこにこそ日本人の叡智・技術力を生かしていくべきなのではありませんか。そして同時に、一人よりも二人、二人よりも三人、家族がいる方が人生何倍楽しいかを、為政者が熱く語るべきなのではありませんか。
 そのためには、子育て環境を整備するため、「異次元の教育国債を発行」し、行政による結婚相談(斡旋)機関をもれなく整備し、新婚世帯が安心して10年間住める居住環境を確保することも必要です。
 「異次元の少子化対策」と銘打つならば、岸田総理、異次元の政策を実行しましょうよ。必ずや名宰相として名を残しますよ。バカ息子を乗り越えて頑張りましょう。(R5・5・17記)

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