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小泉大臣は科学的データに基づき地元住民を説得すべきです

小泉大臣は科学的データに基づき地元住民を説得すべきです

釈明と謝罪に失望

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 初の大臣ポストに就いた小泉進次郎議員が、環境大臣となって、どのような行動をとるか注目されていました。
 記者会見の場で注目された発言は、福島第一原発の汚染水浄化後の処理水をめぐるものでした。前任の原田義昭前環境大臣が、辞任に当たって「私の所管外だが、処理水は思い切って放出し、希釈するほか選択肢はない」と発言したことについて、地元から反発の声が出ていました。
これを受けた形で、小泉大臣が、次のように述べたのです。
 「所管外で、(原田氏の)個人的な見解」と言いながら、「福島の皆さんの気持ちを、これ以上傷つけないような議論の進め方をしないといけない」と述べ、更に翌12日に福島県の内堀雅雄知事や漁業関係者を訪ね、「原田氏の発言は国の方針ではない」と釈明し、「率直に申し訳ない」と頭を下げたのです。
 小泉大臣は、汚染水浄化後の処理水について、科学的データを前提とせず、「福島の皆さんの気持ちを傷つけないように」という一点にのみ神経を使っていたように思われます。
 小泉大臣のこのような物言いは、政治家として、地元の反発を避けたいという気持ちの表れと理解することができます。

原田前大臣は現職時にきちんと意見表明すべき

 私は、原田前環境大臣の発言も、小泉大臣の発言も納得することができません。先ず、原田前大臣ですが、「処理水は思い切って放出し、希釈するほか選択肢はない」と思うなら、現役時代にきちんと意見表明すべきです。「所管外だから」と言うなら、辞任時にも、「所管外のことにはお答えできません」と筋を通すべきでした。
 そもそも論として、汚染水や処理水をどう処分するかは、経産省の所管でしょうが、処理水を放出することに関し、環境への影響・保持の観点から環境大臣として所見を述べることは許されるはずです。もちろん、科学的知見に基づく意見が前提です。
 また、小泉大臣も、処理水の問題は、「所管外」と言いながら、福島県知事に釈明したり、「原田発言は国の方針ではない」だの、「率直に申し訳ない」だのと言う必要はありません。つまり、所管外の、関係ない人が出張って行って、釈明したり、お詫びをしたりする必要などないのです。言うならあくまでも科学的知見に基づき、意見を述べればよいのです。

汚染水と処理水

 そもそも、今回問題になった「浄化後の処理水」ですが、我々科学の知識のないものにとって、「汚染水」と「処理水」の区別すらよく分かりません。また、現地にどのくらい溜まっているのかもよく分かりません。一応、念のため、汚染水と処理水を理解するため、資源エネルギー庁のホームページの説明を以下にお示しします。

資源エネルギー庁の説明文(ホームページより)

 汚染水は、原子炉の内部に残る、溶けて固まった燃料(「燃料デブリ」と呼ばれます)を冷却し続けるために水を使うことなどから発生しています。汚染水対策は ①漏らさない ②近づけない ③取り除くという3つの基本方針のもとで進められていますが、そのうち「取り除く」対策としては、汚染水に含まれる放射性物質のリスクを下げるための浄化処理がおこなわれています。
 汚染水は複数の設備で浄化処理がおこなわれていますが、中でもカギとなっているのは、「多核種除去設備(advanced liquid processing system、ALPS)」と呼ばれる除去設備です。ALPSは、「多核種除去設備」という名称があらわす通り、62種類の放射性物質を取り除くことができます。(注:ALPSは東芝が開発した放射性物質除去装置)
 実は、東日本大震災が発生してから2年後の2013年頃までは、このALPSが開発中であったため、「セシウム」以外の放射性物質を取り除くことができていませんでした。その結果、「セシウム」以外の放射性物質を含んだ高濃度の汚染水を、敷地内のタンクで貯蔵することとなっていました。
 しかし、ALPSが稼動した2013年以降は、高濃度汚染水からさまざまな放射性物質を取り除くことができるようになりました。この、ALPSを使って浄化処理をおこなった水は、「ALPS処理水」と呼ばれ、敷地内のタンクに継続的に貯蔵されています。敷地内にあるALPS処理水は、貯蔵にあたって二重の堰(せき)を設け、定期的にパトロールをおこなうなどして、漏洩を防ぐように努めています。
 ALPS処理水は、ALPSでも取り除くことのできない「トリチウム」を含んではいるものの、前述したように大部分の放射性物質を取り除いており、「セシウム」のみを取り除いた事故発生直後の汚染水とは、安全性の面で大きく異なるものです。

保管されている処理水の量

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 第1原発の敷地内で保管されている処理水は、河北新報の報道によれば、令和元年8月現在、115万ンとされています。処理水には、汚染水からトリチウム以外の放射性物質の大半を除去したALPS処理水と、別の装置で一部の放射性物質を先行して取り除いたストロンチウム処理水がありますが、後者も将来、大部分をALPSで処理するとのことです。
 タンクは20年12月末までに容量137万トンを確保する計画で、その時点でたまっている処理水は126万トンと推計されています。さらに建屋への地下水流入などで継続的に発生する汚染水が1日150トン前後あるため、タンクは2022年6~10月に容量がいっぱいになると予想されています。
 東電はタンクのさらなる増設は敷地の制約上、困難とみています。仮に処分しなければ、今後の廃炉作業に必要な使用済み核燃料や溶融核燃料(デブリ)の一時保管施設などを建設できなくなるか遅れが生じると説明しています。
 このため、政府の小委員会は、別の作業部会が2016年6月にまとめた海洋放出、地層注入など5つの処分方法を基本に風評被害対策も踏まえ、絞り込む方針とのことです。これによって、実質的に期限が区切られたことになります。

世界基準に合わせ放流すべき

 このように、処理水をいかに処分するかについては、日程的にもかなり切迫しつつあります。現地に設置されたタンク群をみても、その深刻さが伝わってきます。これは単なる東電という一企業の問題ではなく、国として本格的に取り組むべき課題と言うべきです。
 2022年に満杯になり、もはや拡張の余地がないのだとすれば、その処理水を外洋に放出する措置を真剣に検討しなければなりません。上に述べたように、ALPSで処理した水は「処理水」として外洋に放出することが世界基準に照らし可能なのか否かの検討です。
 資源エネルギー庁の説明によれば、「ALPS処理水」は、トリチウム以外の放射性物質はすべて除去したというのですから、あとはこのトリチウムの含有量が世界基準で許容されるレベルのものか否か、という科学的データに基づく判断のみが残されている、ということになります。
 世界にも原発は沢山あります。原発がある以上、炉心を冷却するための冷却水が使われ、使用後の水は外洋や川などに放流されています。その実態を示したのが、下図です。
              
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 このように、外国でも使用後の冷却水は外洋などに放出されているのですから、日本だけが許されない、ということはあり得ません。現に、福島原発以外で稼働中の原発でも、冷却水は外洋に放出されています。
 上図を拡大すれば読み取れると思いますが、フランスのラ・アーグ再処理施設では、何と液体で1京3,700兆ベクレル、気体で78兆ベクレル(2015年現在)ものトリチウムを放出しているのです。
 隣の意地悪爺さん、韓国も、古里原発では液体で、年間、約36兆ベクレル、気体で約16兆ベクレル、月城原発でも、年間、液体で約17兆ベクレル、気体で約119兆ベクレルのトリチウムを放出しているのです。自分のところも放出しているのに、日本にだけは異を唱える韓国という難癖国家。 
 当然ですが、福島原発だって、事故前には同様にトリチウムを放出していました。これまで放出していたものが、事故後には放出できなくなる、という科学的根拠は何もないのです。あるのは風評という阻害要因だけです。
 前述したように、トリチウムだけは除去できないということですが、この点について、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月18日放送)に出演したジャーナリストの佐々木俊尚氏が、次のように述べています。

ジャーナリスト佐々木俊尚氏

 トリチウムだけは現在の技術では除去できないのですが、これは自然界にも存在する物質であり、一定の基準値以下であれば排出はおろか、飲料水としての利用も問題ありません。現在、福島の原発内のタンクに貯められている100万トンの水は、(一部は再処理してから)希釈すれば人体・環境に無害な水として対応(=海洋放出)できるものです。あたかも有害物質が大量に貯められているかのような表現は、風評被害を助長するものであり、まったく望ましくありません。

 つまり、放出することが許されるか否かは、単なる科学的データの問題でしかないのです。

▶▶▶科学的データについて、もう少し知りたい方は、次の動画を参照してください。→トリチウム海洋放出~科学的論拠と印象論

小池都知事が乗り出すべき

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 このように、ALPS処理水の外洋放流の問題は、本来、科学の問題であり、政治の問題ではありません。しかし、現実には、この問題が科学の問題として論じられず、地元漁民などの風評に基づく反対運動になってしまっているというところに悲劇があります。
 本来、こういう場面では、政治の出番となります。政治的解決を図るためには、地元の説得をすることはもちろん必要ですが、その前に、福島原発から電力を供給してもらっていた関東、とりわけ東京都が率先して協力の姿勢を示すことが重要です。
 科学的データにより、外洋放出に問題がないなら、先ず小池都知事が、「東京湾に放出します」と宣言するのです。もちろん、恩恵を受けるのは東京だけではありませんから、神奈川、千葉のベイエリア地区の自治体も連携して放出に協力する必要があります。それが恒常化すれば、地元福島の漁業関係者も放出に協力するようになるでしょう。
 問題は、東京都が率先して協力するか否かです。小池百合子知事は、築地市場を豊洲に移転する際、豊洲の地下にベンゼンなど人体に有害な物質が検出されたと言って、移転時期を遅らせた人物です。この時、小池知事は、「安全はあるが安心がない」と言いいました。科学的根拠より、風評の方を優先させたのです。
 冷静に考えれば、地下からどのような有害物質が検出されようと、市場業務には何ら影響を及ぼしません。なぜなら魚の洗浄や床清掃に使う水はすべて表流水、すなわち世界で一番きれいだと言われる水道水を使うんですから、何の影響もないんです。それなのに左翼系マスコミが騒いだからでしょう。移転時期の延期を決めてしまいました。こういうのを「ポピュリズム政治」と言います。ですから、小池都知事は、地域住民やマスコミが騒げば、放流に協力することはないでしょう。
 その点、大阪の松井市長が、「科学的に問題がないなら、大阪湾に放流することに協力する。持ってきなさい」と述べたのは立派です。風評に流されず、科学的データを前提として是非を判断しているからです。

小泉進次郎はやはりポピュリスト政治家

 私は、かねてより小泉大臣の力量については、疑念を抱いていました。「演説はうまい」「二枚目である(くやしいけど)」ということに異論はありません。しかし、彼のこれまでの政治的実績にどんなものがあるのでしょう。私には、彼の提案した「こども保険」くらいしか思いつきません。
 このこども保険は、保育や幼児教育を無償にするため、その財源として、現在の社会保険料に上乗せして資金を集める仕組みでのことです。保険というものは、「偶然性」が肝になります。20歳から60歳までの現役世代の人がこの保険に加入するとして、子育ての終わった現役世代は、偶発事象がまず起こりえない。よってこれらの人は「こども保険」に入るメリットはなく、保険料の取られ損になってしまいます。すると、被保険者は、これから子育てをする若い人にならざるを得ない。しかし、これでは保険になりません。これなら広く浅く集金できる税金の方が良い、ということになります。子育ては、国民全体で担うべき課題だからです。

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 今回の小泉大臣の発言も、「所管外」と言いながら、釈明したり謝罪したり。わざわざ出張っていく必要などあるのでしょうか。
 台風15号による被災地見舞いも同様です。有名な小泉大臣が現地視察に来てくれたと喜ぶ地元民も少なくないでしょう。しかし、被災地を環境大臣が見舞ったからと言って、被災地救済に具体的な貢献ができるのでしょうか。被災地の救済は、総理が現地視察をするのはいいとして、具体的な復旧は国交大臣(道路や河川などの復旧)や農水大臣(農地の復旧)、厚労大臣(水道の復旧)、経産大臣(電力の復旧)、総務大臣(激甚災害指定)の所管でしょう。いち早く環境大臣が現地に出張って行った感覚が、私には理解できません。まあ、人気のある大臣の顔見世興行の意味はあるとして、直接、所管事業とは関係がなさそうに見えます。
 小泉大臣が行うべきは、釈明と謝罪ではなく、科学的合理性があるので、国民が一致協力して、「ALPS処理水」を海洋放出することに協力して頂きたい。菅直人厚生大臣のカイワレ大根の風評被害事件の時のように、何なら私が「ALPS処理水を飲んであげましょう」といったパフォーマンスを見せたらどうでしょう。「おう、飲めるレベルのものなのか」と風評も鎮まるかもしれません。
 そういう演出なら、所管外であっても、頼もしく思えたことでしょう。敵役にでもなる、泥を被ることができる、風評被害と敢然と戦う、そういう政治家でなければ、到底大成はできないでしょう。風評におもねるような政治家など、害悪でしかないからです。
 いずれにしろ、遠く大阪から声をあげてくれた、松井大阪市長、さらにこれに同調してくれた吉村大阪府知事に敬意を表したいと思います。これぞ、あるべき政治家、野党の見本と言うべきです。(令和元年9月20日記)

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