防衛力強化は国債発行で対処すべきです
防衛力強化は国債発行で対処すべきです
無能ぶりをさらす岸田首相
岸田首相というのは本当に頼りにならない政治家です。この人を見ていると、財務省の顔色ばかり見ている、小物政治家という気がしてなりません。政治家として何が一番大事なことなのかが分かっていないのです。
言うまでもなく、政治家、特に国会議員にとって一番大事なことは、「国民の生命財産を守ること」です。これ以上に重要なテーマはありません。国民が生命財産の心配をすることなく、安寧に生活できることは何事にも勝る最優先の重要課題なのです。
特に、今のような緊迫した国際情勢下においては、どのようにして国民を守るかは喫緊の課題と言ってもよいでしょう。なぜなら、隣の大国、中国のトップ、習近平は今年10月に開催された共産党中央委員会において3期目の党主席に選出され、政治局常務委員6人をすべてイエスマンで固め、独裁体制をより強固なものにしました。その習政権は、日本の領土である尖閣諸島の接続水域に連続157日航行するなど軍事的脅威を高めているだけでなく、台湾への軍事的関与を強めています。
台湾侵攻は、軍事的手段によるか、非軍事的手段によるかは即断できませんが、極めて高い確率で軍事的衝突を引き起こすとされています。問題はその時期です。米軍の軍事専門家は1,2年以内の可能性があると分析する者もいます。中国国内ではゼロコロナの方針に反対し各地で暴動も起こっています。このような住民の不満を外に向けるというのは、古来、独裁者の常用する手法でした。その意味でも、日本は、確固とした守りを固めるべきは当然です。台湾有事は日本有事だと述べたのは暗殺された安倍元総理です。日本はその地理的位置関係から、台湾有事に際しては、中国と軍事衝突にならざるを得ない、という関係にあるのです。左派の中には「紛争は話し合いで解決せよ」などと平和ボケをした意見を言う勢力もいますが、余りにもノー天気であり無責任です。
他方、ロシアも今はウクライナにかかりきりになっていますが、台湾有事という事態になれば、中ロは軍事的に協力関係に立つことはほぼ間違いないでしょう。北朝鮮も、日米側に立つことは考えられません。そしてこれら3国は、いずれも核保有国であり、中国、北朝鮮は完全な独裁国家です。ロシアもほぼほぼ独裁政権といっても大きな間違いではありません。
日本は、こうした牙を剥いた独裁核保有国に取り囲まれているのだ、という基本認識を持たなければなりません。大東亜戦争の敗北により日本は降伏し、連合国、実質は米国の支配下におかれ、戦闘能力を奪われました。その代替として日米安保体制がある、ということになっています。周辺国と戦闘状態に入れば、米国が核の傘を守ってくれるというわけです。
しかし、この「核の傘」は国際政治アナリストの伊藤貫氏も言うように、幻想にすぎません。日本が中国から核攻撃を受けたとき、その報復としてアメリカが中国に対して核攻撃をしてくれる、というのは幻想にすぎない、ということです。米国民の立場からすれば、日本が核攻撃を受けても、米国が核攻撃を受けたわけではない。それなのに米国が中国に核攻撃をすれば、必ず核による報告を受ける。これは自明のことです。そんな事態を米国民が許容するはずがありません。つまり、日本が中国から核攻撃を受けても、米国が日本のために核で反撃するということはあり得ないのです。
このことは何を意味するか。日本自身が独自に核武装をする必要がある、ということです。自分の国は自分で守る必要があるということです。「日本国民の生命財産を守る」という観点からも、日本独自の核保有が必要なのです。
現在、政府が重要テーマとして検討しているのは、岸田総理が訪米時に発言したとおり、「GDP比2%」の防衛費を確保することです。
防衛費1兆円のために増税する?
では、どのようにしてGDP比2%の防衛費を確保するのか。岸田首相の示した財源案は、2023年度から27年度までの間に約43兆円が必要になる。その財源として、①歳出の削減、②決算剰余金の活用、③防衛力強化資金、④自衛隊の施設整備費によって賄う。④の施設整備費1.6兆円は国債発行によって賄うというものです。そしてそれでも不足する年間約1兆円分については、法人税、復興特別所得税、たばこ税を増税することによって賄う、というものです。
要するに、国の防衛に要する費用を既存の税の見直しや増税によって賄う、というわけです。そして岸田首相は、防衛国債の発行について「未来の世代に対する責任としてとりえない」と述べています。防衛のための国債発行を頑なに拒否しているのです。これはまさしくプライマリーバランス(PB)に固執する財務省の意思そのものであり、財務省のポチというに相応しい態度です。
何をおいても国民の生命財産を守れ
岸田首相は、国の防衛のための国債発行は考えられない。未来の世代に対する責任としてとりえない、と言います。ですが、冒頭に述べたとおり、国会議員として最も重要な職務は、「国民の生命財産を守ること」です。これ以上に重要な任務はありません。仮に、外国勢力によって国が侵略されたとするなら、何をさておいても、侵略者と戦わなければなりません。予算がないから戦えない、などと寝言を言っている暇はないのです。それほどに国防は重要なのです。国民の多くが死に絶え、文字通り「国破れて山河あり」の状態になっても、財政秩序を守ったと国民に胸を張れるのでしょうか。
冗談ではありません。未来の世代の国民が、国を破壊され親兄弟姉妹が殺され、その状態で「きちんと財政規律を守ったよ」とバトンタッチされて喜ぶのでしょうか。岸田首相にも子供さんがおられますから、よく聞いてみたらいかがですか。こんな常識も通じず、よく一国の首相が務まるものと呆れるばかりです。
経済を豊かにするという発想がない
岸田首相の話を聞いていると、この人には、経済を豊かにし、その中から財源を生み出すという発想がないことを痛感します。国民が豊かになれば、消費が刺激されます。消費が活発になれば、企業は工場など設備投資をし供給を増やします。企業が儲かれば従業員の賃金も上げられる。こういう正の経済循環こそが経済発展と税収増の基本です。織田信長のとった楽市楽座の思想です。
これまではこの状態を作ることができなかった。中国や東南アジアの方が人件費が圧倒的に安いため、現地に工場を作り、大量生産、大量販売をした方が有利だったからです。こうして日本企業の多くは海外に進出していきました。その結果、日本の国内経済は火が消えたようになりました。賃金上昇のない状態が30年近くも続いたのです。これに追い打ちをかけたのがコロナ騒動です。国内では大騒ぎする必要もないレベルであったのに、政府もマスコミも医療業界も自治体も、恐怖を煽り大騒ぎをしました。その結果、コロナ関係費だけでも70兆円もの大盤振る舞いとなったのです。国債だってバンバン発行したではありませんか。まあ、コロナの話はここではこれ以上触れないでおきましょう。
円安は日本の経済発展にプラス
この日本の不況も大きな転機を迎えました。円安という神風が吹いたのです。円安を称して「悪い円安」と喧伝するマスコミや評論家も少なくありません。確かに、円安は外国から日用品や資源を輸入する場合には、その分余計にお金を払う必要があるので、輸入業者にとってマイナスになります。輸入価格が上がれば生産コストが上昇し、物価上昇につながる。物価が上がれば消費者も困ります。これが悪い円安と言われるゆえんです。しかし、その反面、輸出業者にとっては、安くなった円で輸出できるので競争力が高まり有利になります。
ですから、円安というだけで、日本にとって有利なのか不利なのかは即断できません。経済学者はこのことを「Jカーブ効果」として説明します。すなわち、円安の当初は輸入物価の高騰により、国民は打撃を受けるが、円安を奇貨として生産拠点を日本に移す企業が増える。その結果雇用が拡大し賃金も上昇する。賃金が上れば消費も拡大し生産も刺激される、というわけです。
しかも、日本にとって、ここで更なる「神風」が吹いたのです。中国経済の崩壊が見えてきたからです。前述したように、新たにスタートした習近平政権は、イエスマンばかりを揃えた独裁体制です。独裁者が人民の苦しみを憂いる頭脳明晰な人物であったなら、中国は増々大きく発展し、名実ともに世界の大国になるでしょう。しかし、日本と世界にとって少しだけ幸運なことは、この国家主席、文字通り暗愚の宰相、ボンクラ宰相でした。
チベットやウイグルで現地住民を弾圧し、ヒットラー顔負けの強制収容や臓器摘出・売買など人権弾圧を行い、香港でも無謀で非道な弾圧により民主主義を封殺しました。そして国内的にも「共同富裕」との看板を掲げ、IT規制、ゲーム規制、カラオケ規制、タレント規制など文化的側面にも規制をかけました。また英語教育の禁止など教育への規制も強化しました。せっかく成長軌道に乗ってきたビッグテックなど新興企業はシュンとなってしまいました。アリババの創業者ジャック・マー氏など逃亡し、日本に潜伏しているとの情報も流れています。
加えてコロナ対策は「ゼロコロナ」を志向したために、各地で住民が暴動を起こす事態となっています。
要するに、やることなすこと、嘗ての毛沢東の行為と瓜二つなのです。このことによって、中国に進出した多くの外国企業もたまらず、中国から脱出することを模索しています。日経新聞の調査によれば、中国脱出を考えている外国企業は5割に上るとのことです。更に、その脱出先として9割の企業が日本を想定しているというのです。日本は、教育レベルも高く、まじめで親切な国民性。そのうえ先端技術も優れており、治安もよい。こういった点が評価されているのでしょう。
いずれにしろ、暗愚の宰相が牛耳る異形の国家中国より、日本を志向する企業が今後どんどん増えることになるでしょう。ただ、これだけで日本経済が発展するとは考えていません。技術革新というエンジンも必要です。卓上電話からスマホに至る過程を見れば明らかなように、世界は常に絶えざる技術革新を伴って発展してきました。日本企業の回帰や外国企業が集中すれば、人手不足の問題も生じます。しかし、それらは技術革新によって乗り越えられるはずです。
日本経済は、このような二つの神風によって、大きく発展することになるはずです。経済成長は防衛力強化の大きな味方です。経済成長の果実が防衛力強化に役立つからです。
ですから、岸田首相は、この円安の好機をとらえ、経済の大きなうねりを取り込めばよいのです。日本に回帰する企業だけでなく、外国企業にも活躍の場を与える。円安効果で日本の物価は安い。日本が大好きな訪日観光客は、日本の物価の安さに驚きます。しかも優れた観光地が日本各地に目白押しです。これらの観光客が各地でお金を落としてくれます。
増税することに熱心になるのでなく、海外に逃れた日本企業の回帰、外国企業の積極的誘致など、経済活動を活発にすることに意を用いればよいのです。そうすれば、1兆円などというチビた増税話などしなくても、数十兆円の果実は容易に得られるのです。国家を運営する者は、そのような大局的な発想を持つことが必要です。
外為特会も活用できる
今、国会では5年後の1兆円を議論していますが、その程度のお金は外為特会資金を活用することでも捻出できます。2022年3月末時点で、国の外為特会には158兆円の資金があります。この158兆円は円が平均110円だった時に購入されたものとされています。その円が現在140円レベルまで円安になったものとすれば63兆円の含み益ということになります。従って、その1割程度を売却するだけでも6兆円程度の益出しをすることが可能になります。
財務省出身で外為特会に精通した国民民主党の玉木代表も、「今年1月と10月初めの為替レートを比べ外貨準備高に約37兆円の含みが出ており、これを経済対策の財源とすべきだ」と述べています。1兆円の財源確保について、たばこ税や復興特別所得税、法人税を云々する前に、これらで十分に賄えるレベルだということを認識すべきです。
法人税を引き上げることには特に注意が必要です。法人税の引き上げは、企業の追い出し政策でもあるからです。折角日本回帰を進めようとする企業の足を引っ張ることになるだけでなく、従業員の賃金上昇の足枷にもなりかねないのです。
家計簿発想を転換せよ
財務省やマスコミは、国の財政を語るとき、必ずと言ってよいほど国の借金は1000兆円を超えた。国民一人あたり800万円以上の借金がある計算になる、といった説明をします。この言い方は文字通り、家計簿式説明です。この欄でくどいほど述べてきましたが、国の財政は家計とは異なります。家計は収入の範囲で運営しなければなりませんが、国の財政は違います。
詳しくは述べませんが、①国には徴税権という特別の権能がある、②通貨発行権能がある、③国債発行権能がある。この三つを列挙するだけでも、国の財政と家計とは大きく異なることが分かります。
しかも、国には、財政運営により経済を発展させ、国民を豊かにする使命があります。家計にそれはありません。道路や橋、ダムや港湾、飛行場、新幹線などインフラを整備し、国民の健康福祉の増進や教育の充実、科学技術の振興も計らなければなりません。家計にはそのような役割もありません。根本的に異なっているのです。
これほどに大きな違いがあるのに、家計簿式説明をし、二言目には国の財政が大変だ、だから増税が必要だといったところに話が行きます。結論が先に見えているのです。
今回の防衛費増額についても、さまざまなところから予算をかき集め、何とか防衛予算を確保しようという従来の財務省流の発想から抜けきっていません。
そもそも国の借金が毎年増えていくのは当たり前のことです。銭や文、両などを貨幣単位とした江戸の昔から、貨幣の量は一貫して増え続けています。私の子供の頃はお大臣様と言われるお金持ちは「100万長者」と言われました。100万円でも気の遠くなるような大金持ちだったのです。でも今は、お金持ちと言えば、最低1億くらいは持っているという認識でしょう。このように、お金の量は毎年増えていくのが当たり前なのです。
民間企業でも、トヨタやホンダ、松下電器などの借入金は、毎年増大しています。よって、社員1人当たりの借入金(負債)は、毎年増大しています。それでも社員一人当たりの借金が1,000万円を超えた、などといって騒ぎません。工場や商品、債権や特許権など、それに見合う資産があれば、何の問題もないからです。つまり、貸借対照表の発想です。
それなのに、なぜ国の場合だけ家計簿になぞらえて、国の債務がこれだけ増えた、1人当たりの800万円以上の借金をしている計算になる、などと偏った報道をするのでしょうか。しかも負債の話はするが、それに見合う資産の話はしない。資産と負債の関係を同時に説明をしなければ、財政の健全性など判断のしようがないではありませんか。
防衛国債発行こそ最善
今回の防衛予算をめぐる論争の結論は、「防衛国債の発行」が最善です。なぜなら今の日本の財政は、その国債を発行するに十分な余裕があるからです。
それを説明するために、国の貸借対照表を見てみましょう。国の貸借対照表を語るのに最も相応しい人物は財務省OBの高橋洋一氏です。彼は現役時代の1995年に初めて国のバランスシートを作成した人物です。その高橋氏が説明する国のバランスシートの概略図は右の通りです。
図中の銀行券等500兆円というのは、発行済みのお札のことです。お札は持っていても国から利息などもらえない形式負債なので、本来、負債にカウントする必要のないものです。
国債発行額は1500兆円が負債ですが、これに対応する資産は国が保有する資産1000兆円と日銀が保有する国債500兆円です。日銀が保有する国債に対しても利払いをする必要がありますが、利払いをしても債務償還費として同額のお金が国に戻ってきます。従って、実質上、国にとって負債ではない、と言ってもよいでしょう。残りの国の資産1000兆円のうち80%以上が利益を生む金融資産とされています。従って、国が負債として1500兆円を持っていても、何の痛痒を感じる必要がないのです。
よって、防衛国債として10兆円や20兆円を発行することにしても、財政上何も問題は生じないのです。ましてや1兆円の国債のために法人税やたばこ税、復興特別所得税から回すなど、全く必要がないのです。
最後に
以上、縷々述べたように、防衛力増強のために、増税する必要は全くありません。必要ないどころか、害悪でしかありません。せっかく円安効果の恩恵により日本経済が上昇カーブを描こうとしているこの時期に、増税などもってのほかです。岸田首相には、いかに国家観がなく、また財政運営の能力もないかの証明でもあります。
今は、粛々と必要なだけ速やかに防衛国債を発行し、適宜、日銀が回収すればよろしい。日銀が買い取った国債は、永久国債にしてもいいし、真面目に利払いしてもいいんです。どうせ利払いと同額が債務償還費として国庫に戻ってくるんです。
そしてしっかりと日本の防衛力を高め、国民は枕を高くして寝る。岸田首相は、そのうえで、オーストラリアやインドはもちろん、フィリッピンやインドネシア、ベトナムなどと緊密に連携し、アジア版NATOの構想を練ったらいかがですか。また、遠く英国やフランスとも共調し、中国の暴虐を許さない強固な体制を築く。それこそが安倍元総理の恩に報い、日本国民に奉仕する道なのではないでしょうか。(2022・12・16記)
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